高嶺の花4
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城に戻ると団長は大事そうにカルンに花を差し出した。

 

「カルン殿、花を摘んで来ましたよ」

 

「団長さん、まさかまたあの崖を登ったの?」

 

「いえ、カイト殿がわたしの代わりに取って来てくれました。しかし翅があると便利ですな。ピプル族のわたしには羨ましい限りです」

 

「それなら良かった…。もう危険なことはしないでね?カイトには何かお礼をしないと」

 

「だからカイトって誰なのよ?」

 

まだ機嫌の直らないユーリカ姫が割って入る。

 

「ああ、そうそう。カイト殿が姫様に会いたがっておられたので、もしよろしければ、姫様もご一緒に…」

 

「もちろん行くわ!団長がわたしだけ仲間はずれにしようとしたって、絶対ついて行きますからね?」

 

カルンは何やら考え込んでおり、腕組みをしながら尋ねた。

 

「ねぇ、妖精って何をあげたら喜ぶと思う?」

 

「さあ?妖精のことは妖精に聞けばわかるかもね」

 

ユーリカ姫は興味なさそうな態度である。

 

「わたしの見た感じではカイト殿は物をあげても喜ぶとは思えませんが…」

 

「わたしだってそうよ?物で釣ろうとするなんて、バカにしてるわ!」

 

「姫様…、それはもしやロジェ殿のことを言っておられるのでしょうか?」

 

「別に?ロジェに限らず、心を物で動かせると思ってるようなヒトは好きじゃないの!」

 

「カイト殿は好奇心旺盛で、ヒトとおしゃべりをするのがお好きなようでした。話し相手になってあげれば喜ぶかもしれませんね」

 

「あら?わたしと気が合いそうね!」

 

数日後、ユーリカ姫と団長は大勢の騎士団員を引き連れて、妖精の国の近辺へ来ていた。すぐにカイトが現れる。金髪のおさげ髪で片翼のラミエの姿をマジマジと眺めると、カイトはこう言った。

 

「おじさんの好きなヒトって、このお姉さんだったんだ!おじさんの言ってた通りのヒトだ」

 

「団長の好きなヒトって…。どう言うこと?」

 

「確かにラミエ殿は心の綺麗な女性であらせられますが、と言うかここにおられる女性は全てそうですね」

 

「団長…、説明してちょうだい!」

 

「姫様、これは誤解です。カイト殿は勘違いをなさっておられます」

 

「でもあのお姉さん、胸にあの花付けてるし、おじさんは好きなヒトに花をあげる為に頑張ってたんでしょ?」

 

ラミエの胸にはあの花をドライフラワーにして作ったコサージュが付けられている。

 

「あの花をラミエ殿に贈ったのは、わたしではなくカルン殿ですよ?」

 

「じゃあおじさんの好きなヒトって誰なの?」

 

「それはここでは言えませんな」

 

「おじさんは好きなヒトに好きってどうして言わないの?」

 

「言わない方が良い時もあるのです」

 

「ふーん。ボク、まだヒトの考えることはよくわかんないや…」

 

この日は天候も良く、絶好のピクニック日和だった。ユーリカ姫は大きく深呼吸してから、隣にいる団長にだけ聞こえるよう、ボソリと呟いた。

 

「ありがとう、団長」

 

「なぜ礼を言われるのです?」

 

「ピクニックに来たら気分が晴れたわ」

 

「姫様の機嫌が直って一安心しました」

 

「これからは出かける時にちゃんとわたしも連れて行きなさいよね?あなたはわたしの騎士なんだから…」

 

「姫様の仰せのままに…」

 

団長は跪いて、ユーリカ姫に敬礼をした。

 

fin

説明
片翼の姉妹の二次創作ストーリー、最終話です。
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