真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 53
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「詠ちゃん、本当にいいの?」

「いいの。あのバカにもちゃんと話は通してあるわ。準備が終わったら、って!?」

「……よぉ」

 

 そう、董卓と賈駆だ。

 

「なんであんたがここ、に」

 

 そう言いながら賈駆の視線が気絶している鳳統へと移る。

 

「……変態」

「なんでだよ!」

「うっさい! 気絶している女の子を膝にのせているなんて変態がする所業よ!」

「意味わからん!」

 

 こいつ、ほんとに元気になったな、嫌な方向に。

 

「詠ちゃん、玄輝さんがそんなことする人じゃないのは知っているでしょう?」

「う、それは……」

 

 そこへ董卓が助け舟を出してくれる。

 

「お久しぶりです、玄輝さん」

「ああ、久しいな董、」

 

 本名を呼び掛けて一度咳ばらいをしてから今の名前へ言い換える。

 

「仲卓(ちゅうたく)」

「はい」

 

 そう、この陣に入る上で必要となったのは呼び名だ。最初は真名を名前として定着させようとしたのだが、そこで問題が出た。

 

 真名をどうするかだ。今までの真名が呼び名となるなら、真名が無くなってしまう。そうなれば彼女たちが後の人生で真名を預けることができないし、何より主人である北郷ですら真名を呼ばないのはおかしい。また、真名であることを周知した場合は“じゃあ、何て呼べばいいんだ?”となるのも目に見えていた。

 

 まぁ、人との交流を制限するのも当然考えられたが、世話係として任命されていたのでそれも難しいという事になり、新しい名前を考えることになった。

 

 そして、数多の案の中から選ばれたのがこの名前だ。

 

 ちなみに賈駆の方は……

 

「和駆(わか)、少しは仲卓を見習っておいた方がいいんじゃないか?」

「大きなお世話よ!」

 

 目を吊り上げて大声で言った彼女は仲卓の手を掴んで表に出ようとする。

 

「月、別の店にしましょう。ここだとおいしいお茶もまずくなっちゃう」

「詠ちゃん」

 

 だが、仲卓はそんな和駆の頭をぺしっと叩く。

 

「そんなことを言うのは失礼だよ。玄輝さんがいなかったら私たち、ここにはいなかったんだよ」

「そ、それはそうだけど……」

 

 そう言って彼女は俺を見る。

 

「……でも、あれはあくまで私の依頼だし」

「受けてくれなかったら?」

「うぅ、月ぇ……」

 

 ほんと仲卓の前では形無しだな……

 

「ん、うぅん……」

 

 なんて思っていると、鳳統が薄っすらとを開いた。

 

「ん? 起きたか」

「……玄輝しゃん?」

 

 まだ意識がはっきりしていないのか、虚ろな目で俺を見る鳳統だが、次第に光が宿り始めると状況がわかってきたのか、顔が一気に赤く染まっていく。

 

「ひゃ、ひゃわああああああああああああ!!」

 

 まさしく跳ね起きるという表現そのもので体を起こして、長椅子の上に正座をして頭を下げる。

 

「ご、ごごごめんなさい! わた、わたひ!」

「落ち着けって、謝ることは何もないだろう」

「そーよ、どうせこいつが気の利かないことでもしたんでしょ」

「おい、和駆。ちょっと不安になるから今それを言うな」

 

 思い当たる節がないわけじゃないから、正直やらかしてないかと本気で不安になる。

 

「で、どうなのよ雛里? この馬鹿がなにかやったんでしょ?」

 

 ニヤニヤしながら和駆が問いかける。その眼はまさに弱点を狙う策士の目だった。

 

「そ、そんなことないでしゅ! ちょ、ちょっとびっくりして……」

「……なぁんだ、やらかしたわけじゃないのか」

 

 ちぇ、っと舌打ちをして心底悔しそうな表情を見せる和駆。それを仲卓が諫める。

 

「もうっ! 詠ちゃん、怒るよ!」

「うえ、ごめんってば月。今日はもうしないって」

 

 仲卓に平謝りしている和駆をしり目に俺はもじもじしている鳳統に話しかける。

 

「ところで、どうして今日は一人で本屋にいたんだ?」

「っ!?」

「あ、いやすまん。一人で本屋にいるのが珍しいって思ってな」

「そ、それは……」

 

 そう言って口ごもってしまう様を見て、俺はすぐに謝罪の言葉を口にする。

 

「いや、言い辛いなら言わなくていい。聞いた俺が悪い」

「い、いえ……」

 

 そこで話がいったん途切れてしまう。

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(ええいっ! ままよ!)

 

 ここでうだうだしてようがすると決めているんだ、ならばここで迷っている暇はない!

 

「その、鳳統。今日、俺が旅立つのは知ってるよ、な?」

「っ!!!」

 

 その言葉に彼女の体が強張るのが分かる。だが、止めるわけにはいかない。

 

「その、旅立つ前にどうしても皆に言いたい、いや話したいことがある。だから、城の正門に来てもらえないか?」

「え?」

「………自分勝手だと思ってくれて構わない。ただ、せめてその清算をさせてもらえないだろうか」

 

 そこまで告げると彼女の顔は少し曇ってしまうが、小さくうなずいてくれた。

 

「……ありがとう。それともう一つだけ許してほしいことがある」

「なん、ですか?」

 

 何度目かわからない覚悟を決めて、口を開く。

 

「預かっていた、君の真名を呼ばせてほしい」

「…………え?」

 

 断られるのも覚悟でもう一度、口にする。

 

「君から預かっていた真名を呼ばせてほしい」

 

 そして頭を下げる。

 

「頼む」

 

 断られるのも覚悟している。それだけ身勝手なことをしているのは俺だ。

 

「“………………”」

 

 無言の時が流れる。雑踏がやたら大きく聞こえるが、それと同じぐらいに心音が大きく聞こえる。

 だが、そんな大きな音が流れる中に、小さく、でもはっきりと“ぽたり”という音が紛れ込んだ。

 

「鳳統?」

 

 思わず顔を上げると、そこには涙を流す鳳統の顔があった。

 

「……ひぅ」

「ちょ、鳳統」

「う、うぅぅ……」

 

 慌ててなだめようとするが、その手段がわからない。雪華をなだめる方法とは違うのは分かるが、どうすればわからない。

 

 しかし、そんな宙を泳ぐ腕の間に彼女は頭を突っ込むようにして俺の胸で泣き出してしまう。

 

「うぅううう〜〜〜〜〜〜っ!」

「ほ、鳳、」

 

 と言いかけたところで彼女が大きく首を横に振る。

 

「ま、真名」

「え?」

「まっ、まにゃで!」

 

 胸の中で顔は見せないで、泣きながら彼女はそう言った。

 

「…………いいのか?」

 

 それに言葉で答えず、首を縦に振ることで答える少女の頭に右手をのせてから望まれた名を口にする。

 

「雛里」

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

 その名前を聞いた瞬間、腰に回されていた手の感触が強くなる。

 

「…………ふぅ〜」

 

 目を閉じて安堵感やら申し訳なさやらで深いため息を吐いた。

 

(こりゃ、泣き止むまではこのままだな)

 

 まぁ、一応あいさつはできた。となれば

 

(次は、この二人だよな……)

 

 そう思って薄目で入り口のあたりにいる仲卓と和駆の二人を見る。

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「雛里ちゃん……」

 

 仲卓は涙ながらに笑顔を見せ、

 

「……女の敵」

 

 和駆は半目でこちらを睨みつけている。てか、

 

「今の流れで女の敵はいくらなんでもひどくないか?」

「うっさいだまれ!」

「詠ちゃん?」

「うっ……」

 

 ほんと形無しだな……。まぁ、おかげで話すタイミングができたが。

 

「さっきの話だが、できれば二人にも来てほしい。お前たちにもある意味関係ある話だ」

「私たちにもですが?」

「……ああ」

 

 二人は顔を見合わせるがいまいちピンと来てないようだった。

 

「今は考えなくてもいい。多分、言われれば分かるはずだ」

「……わかりました」

 

 これで3人には話ができた。あとは……

 

(劉備、北郷、孔明、張飛、愛紗と雪華か……)

 

 ん? いやまて。

 

(しまった、星には正門に来てほしいって話をしていない!)

 

 ……しかたない、外に出てないことを祈って後で話すしかない。

 

 さて、胸の中の少女が泣き止むのを待つか、なんて思っていると仲卓がこちらをじーっと見ているのに気が付いた。

 

「仲卓、どうした?」

「……私たちの真名は呼んでくださらないのですか?」

「月!?」

「い、いいのか? その、こう言ってはなんだが、そこまで一緒にいたわけではないんだぞ?」

 

 彼女たちがここに来てまだ2週間、その間まともに話せたことはないといっても等しい。

 

「いいんです。あなたには命を助けられました。その恩に報いたいという事ではだめですか?」

「……それは」

「もう一つ。私が呼んでほしいと思っているから、ではだめでしょうか?」

 

 どうやら、うんと言わないとこの話は終わりそうにないな。

 

「じゃあ……」

 

 仲卓の真名を呼ぼうとした時、隣にいた和駆が待ったをかけた。

 

「ちょちょちょ、ちょおっと待った! 月、本気なの!? た、確かに命の恩人だけど!」

「詠ちゃん」

「うっ、で、でも今回ばかりはもっとよく考えて!」

「詠ちゃん」

「う、うぅ〜……」

(仲卓って、意外と頑固だよな……)

 

 いや、頑固はちょっと違うか。芯が強いというか、決めたことは押し通すというか。

 

「……はぁ〜、もうわかったわよ。じゃあ私の真名も預けるわ」

「なんでそうなる!?」

 

 ちょ、俺なんか聞きそびれていたか!? すっごく話が飛んだ気がするんだが!?

 

「……あのね、もし仮に月だけ真名で呼んでいて、私だけ真名じゃないってのは色々と勘繰られるのよ」

「…………そういうものなのか?」

「当たり前でしょ」

「そうか、そうなのか……」

「?」

 

 くそっ、謝ることが増えちまった。

 

(…………軽いものじゃないって考えてはいたけど、まだまだ甘かったみたいだな)

 

 自分の考えを改めたところで、二人に向き合う。

 

「じゃあ、改めて」

「はい」

「ふんっ」

 

 それぞれの返答を聞いてからその名を口にする。

 

「月、詠」

「はいっ」

「……なによ」

 

 これまた両極端な返答をもらったが、また一つあいさつを終えられた。

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GW3回目の更新、とりあえず目標達成の作者、風猫です。

 

おはこんばんにちは! 皆さん、GWも残すところあと二日、いかがお過ごしでしょうか?

 

私はとりあえず目標達成しましたが、まだ時間もありますし、この後の展開をのんびり書き進めようと思います。

 

では、ここらへんで失礼をば。何かありましたらコメントにお願いいたします。

 

また次回

 

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。
大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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