ビーストテイマー・ナタ11
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傭兵仲間に裏切り者と言う悪い噂を流されてしまったゲイザーは、なかなか相棒を見つけられず困っていました。傭兵は最低でも二人以上で行動するのが普通でしたが、ゲイザーはいつも一人で行動しています。せっかく良い相棒が出来ても裏切り者の烙印を捺されている為、噂を聞いた相棒に契約を解消されてしまったからです。

 

「悪いがお前とはこれ以上、一緒に仕事は出来ない…」

 

「なぜ急に…。私のどこが気に入らなかったのです?」

 

「お前は腕も立つし、性格も良い奴だと思っていたよ。でも仲間を裏切るような奴は信用出来ない。安心して背中を任せられないからな…」

 

「そうですか…。私はあなたを心から尊敬していました。本当に残念です」

 

アラヴェスタ城の前に御触書が出されました。獣人の討伐隊に入る傭兵を募集しています。ゲイザーはさっそく応募しました。入団試験は樽の上に置かれた林檎にナイフを三回投げて、命中すれば合格です。ゲイザーは三本連続で林檎にナイフを命中させました。

 

「おい、裏切り者のゲイザーがいるぞ?」

 

「なんであんな奴がいるんだ…」

 

「あいつ、腕は立つからな。見ろよ?奴はナイフ投げの達人だ。百発百中で外したことがないらしい」

 

「あの性格で腕が立たなかったら、誰も相手にしないから、傭兵は廃業だろ?」

 

「ゲイザーと話したことがあるが、性格はそんなに悪く見えなかったが…」

 

「騙されるな!奴は丁寧な言葉遣いだが、腹黒い。油断していたら裏切られるぞ?」

 

近衛騎士団と傭兵は混合でチーム分けされて、第九班にゲイザーは振り分けられました。獣人の国・マルヴェールへ向かって各班進軍して行きます。

 

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ。でもゲイザーがいたら裏切られて死ぬかもしれない」

 

「婚約なさってたんですか?おめでとうございます!」

 

「結婚資金の為にこの討伐に参加することにしたんだ。頼むから足引っ張らないでくれよ?」

 

「結婚式には私もぜひ参列させてくださいね」

 

「お前は来なくて良い!来られても迷惑だ…」

 

周りから疎まれて、誰にも信頼されず、ゲイザーは心の中では涙を流して苦しんでいたのに、ポーカーフェイスで表には決して悲しみを出さなかった為か、余計に性格が悪いと罵られ続けました。

 

「いたぞ?獣人だ!」

 

獣人があちこちに現れました。獣人は素早い動きで森の中を縦横無尽に駆け回り、次々に仲間がやられていきます。逃げ回っていた傭兵の男が追い詰められて、ガタガタ震えて剣を構えていると、ゲイザーが獣人にナイフを投げて注意をこちらに向けました。

 

「ここは私に任せて逃げてください。あなたには婚約者がいるのでしょう?」

 

同じ部隊だった男はゲイザーを見捨てて逃げて行きました。獣人は逃げ出した男を見て怒り狂っています。

 

「そちらから喧嘩を売っておいて逃げるとは何事か!」

 

ゲイザーは通せんぼをして獣人の前に立ち塞がりました。剣術の腕には自信があったのに全く歯が立たず、圧倒されています。

 

「ダメだ…。そもそもパワーが違う!圧倒的な力の差がある…」

 

「なかなか骨のある人間だった。殺すのは惜しいが、生かして返すわけにはいかない…」

 

「獣人にも騎士道精神を持つ者がいたとは…」

 

「我々は腹を立てているのだ!か弱い女子供にまで手に掛ける…。人間は本当にろくでなしの生き物だ!」

 

「何の事を言っている?女子供を手に掛けたと言うのは私ではない…。私は弱い者いじめはしない主義だ」

 

「とぼけるな!賞金目当てで弱い者ばかり狙いおって…。人間など皆殺しにしてやる!」

 

獣人の鋭い爪の一撃が、ゲイザーの喉元を切り裂いて、目の前が真っ暗になり、気が遠くなりました。

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第11話です。
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