燃える風車
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 風車が燃えているよ、とテクちゃんが言うので僕は久しぶりに外へ出て公園へ行った。

 公園へ着くと丘まで登って、そこから風車を見ると果たして風車は燃えていた。羽に火がついて黒い煙をあげながら、でも風車自体は回り続けているから黒い煙はぐるぐると回って複雑な模様を作っていた。

 僕はすごいねえとテクちゃんに言った。テクちゃんはすごいでしょ、と言い、ベンチに座った。僕もベンチに座った。

 それからしばらく風車の燃えるところを見ていた。テクちゃんは、風車は回転している時はなかなか止めることができないんだって、と言っていた。それがどうしてそういう理屈になるのかは言わなかったから、テクちゃんもその知識を誰かほかの人から得た借り物の知識なのだろうと思った。

 あと一時間もしたらきっとあの風車は壊れてしまうね、とテクちゃんは言っていて、それがすこし寂しそうで、というのもあの風車の建っているあたりの土地は、かつてテクちゃん一家が住んでいた土地を、市が買い取って作ったものだったのだ。だからテクちゃんはあの風車を当初は憎んでいたけれども、いまはなんだか愛着を持って見ていたらしく、それで毎日学校から帰るときに寄り道をして風車の見える公園の丘まで少し遠回りをして帰っているらしかった。

 このあいだ、テクちゃんは三年になる前に学校を辞めてしまっていた。どうするのというと、一か月ぐらい休んで、それからどうするか考えるよと社会人みたいなことを言った。僕はテクちゃんは相変わらずだなあと思っていたけれども、僕自身あんまり学校には行っていなかったから同じようなものだった。

 あの風車が壊れたら、私、また学校へ行こうかなとテクちゃんが言い、僕はうん、そうしなよ、と特に何も考えずに本当に何も考えずに言った。テクちゃんは僕がそういうとちょっとうれしそうに笑った。

 僕は風車が早く壊れるように丘の上から念を送り続けた。風車の火はどんどん大きくなっていき、風車自体を包み込むようになって、いつかみんな燃やし尽くしてしまうだろうと思われた。

 煙の臭いが、こんな離れた公園の丘の方までもちょっと漂って、僕はテクちゃんに、火事の臭いだね、と言った。

 

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