ビーストテイマー・ナタ20 |
バーには他の客はおらず、カクテルを作る為にマスターはシェイカーをシャカシャカと振っています。
「シスターは随分とフォン様を嫌っておられますね?」
「あの人は女を物としか思っていないのです。獣人の女は全てフォン様の言いなりで、フォン様に決められた相手と無理やり結婚させられるのですよ?」
「確かに国王はそのような考え方の人が多いようですね。アラヴェスタ国王も武勲を上げた騎士には褒美として女を与えていますし…」
「私にはそれで女が幸せになれるとは思わないのです」
「女性の気持ちは女性にしかわかりませんからね。だからあなたには女王になってもらいたいのですよ。あなたがマルヴェールを治めれば、そんな不幸な女性を減らせるでしょう?」
「その為に私はあの男に毎晩、抱かれても我慢しろと仰るんですか?」
「すみません…。私は別にそんなつもりで言ったわけではないのです」
「ゲイザー様と一夜を共にしてから、私は毎晩のようにあなたと過ごした夜の事を思い出しているのです」
「あの夜の事は忘れてください…。あの日、私はどうかしていました。あなたがあまりにも美しかったので、理性で抑えられなくなったのです」
「忘れられるわけがないでしょう?あの日、私は生まれて初めて、女の幸せを感じたのですから」
「あなたに私は相応しくありません。あなたほどの女性なら、他にもっと条件の良い相手が見つかります」
「条件の良い相手とはどう言う意味です?好きでもない相手と結婚する事が幸せだと言いたいのですか?」
「私はその日暮らしの傭兵です。私と結婚しても苦労するだけなのがわかりませんか?」
「わかりません!ゲイザー様と結婚すれば、毎日、幸せな生活を送れるのが目に浮かびます」
バーのマスターは話を聞いているのか、いないのかわからないほど、無関心な表情でカクテルを作り終わって、テーブルの上に置きました。
「今夜は満月ですので『フルムーン・スペシャル』でございます…」
青い液体に黄色い果物が浮かんでいるカクテルを出されました。
「ゲイザー様は私の事がお嫌いなのですか?」
「いえ、私はシスターの事を…愛しています」
「それなら…どうして私の気持ちを受け入れてくださらないのです?私が愛しているのはあなただけなのに…」
「すみませんが、日が落ちる前に宿屋に戻らないと…。月が出たら大変な事になる」
ゲイザーはカクテルを一気にぐいっと飲み干すと、お勘定を置いて店を出て行きました。
…つづく
説明 | ||
昔、書いていたオリジナル小説の第20話です。 | ||
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