ビーストテイマー・ナタ21 |
ゲイザーがバーの外に出ると、空は薄暗くなりかけていました。急いで宿屋に戻ると、綺麗にラッピングされたプレゼントの入った紙袋を乱暴に押し付けて、ナタに向かって言いました。
「ナターシャ!時間がない…。早く私を封印してくれ」
ナタが詠唱を始めるとゲイザーの身体がビクンと痙攣して、身体中けむくじゃらの獣人に変身しました。真っ白なカードには鎧を着た獣人の姿が浮かび上がります。宝石箱に獣人のカードをしまうと、紙袋を開けて白いフリルのワンピースを取り出しました。
「こう言うお姫様が着るみたいな服、着てみたかったの!」
ナタは大喜びで身体に巻きつけていた毛布を剥ぎ取って、白いワンピースに着替えます。そして、大人の身体でピーターを肩に乗せたまま、夜の街に飛び出したのです。その頃、フラウも獣人に変身していました。丘の上でヴェールを外して、けむくじゃらの姿で月を見上げます。
「私に愛を語った男たちはこの姿を見て、まだ私を愛してくれる人は誰もいないでしょう…。ゲイザー様だけは例えこの姿を見ても、決して私を嫌ったりしないと信じていたのです」
月を見上げる獣人の目から、大粒の涙がポロポロと溢れ落ちました。一方、ナタが夜の街に行くと、知らない男が声をかけて来ました。
「やあ!そこの可愛いお嬢さん、俺と一緒に楽しい事しない?」
「楽しい事ってなぁに?」
「美味しいもの食べて、ダンスを踊って、それから…ムフフ!」
「えーっ、やっぱり嫌だ!おじさんと一緒にいても楽しくなさそうだし…」
「お、おじさん?俺はまだ二十五だぞ!」
男がナタの腕を乱暴に掴んだので、ピーターの必殺技が炸裂しました。
「痛ぇっ!なんだこの凶暴なペットは?」
「ピーターの前歯はどんなに硬い物でも噛み砕くんだよ?」
「ピーター?そのネズミの名前か…」
「おじさん、燃やしちゃうよ?」
ナタが掌の上に火の玉を出すと、男は怯んで火の粉を振り払いました。
「あんた…、魔女だったのか?」
「まだ使える魔法、少ないけどねー」
「おっかねぇ!退散だ」
周りで様子を見ていた男たちも逃げて行きました。
「なんかつまんない…。大人の街って楽しくないなぁ」
ナタが宿屋に戻ると部屋の中が荒らされていました。ゲイザーのリュックの中身も床にぶち撒けられています。
「あれ?泥棒さんが入ったのかな…」
ナタは自分のリュックの中身を確認しました。
「宝石箱がない!どうしよう…」
ナタは途方に暮れて、とりあえずフラウを探して、街外れの丘の方へ向かいました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第21話です。 | ||
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