真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 56
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 歩くこと数十分、途中で雛里の足が止まった。何事かと思って彼女の方を見れば出店の一つに視線が向いていた。

 

「どうした雛里?」

「あ、な、何でもないです……」

 

 彼女は慌てて店から視線を逸らすが、俺は逆にそこへ視線を向ける。どうやら装飾品の出店らしい。

 

「行ってみるか?」

「あ、あの……」

 

 そのまま黙ってしまう雛里だが、何か目を引くものがあったのだろう。俺は彼女の手を引いて出店へ足を向ける。

 

「げ、玄輝さん?」

「雪華のやつもそろそろこういった飾りが欲しくなるかもと思ってな。一緒に買うものを選んでくれないか?」

「……そ、それでしたら」

 

 若干申し訳なさそうな表情をしていたが、俺の言葉を聞いて自分を納得させられたようだ。

 

 出店に着くと店主のお決まりの挨拶が飛んでくる。

 

「いらっしゃい!」

「すまないが、品物を見せてくれ」

「はいはい、どうぞご自由に! 南蛮由来の貝飾りなど色々ございますよ!」

 

 商品を何と無しに眺めていると、見慣れたものが目に入った。

 

「これは、勾玉?」

 

 そう、勾玉が一つだけ付いた首飾りだった。それも白いものと深い青色のものの二つ。

 

「ん? お客さんそいつを知っているのかい?」

「知らないで売っていたのか……」

 

 若干呆れながら言うと、店主は豪快に笑いながらそれを肯定した。

 

「いやぁ、見つけた時にちょいと加工すれば売り物になるかなぁと思いまして」

 

 この口ぶりからすると……

 

「どこかで拾ったのか?」

「ええ。海の方へ行ったときに砂浜に落ちてたんでさ」

「そうか」

 

 多分、日本から流れ着いたのだろう。

 

「いかがでしょう? そちらのお嬢様にお似合いだと思いますがね」

「ふみゅ〜……」

 

 お嬢様と言われて恥ずかしかったのか、いつものように帽子を目深にかぶってしまう。でも、ちょうどいいかもしれない。

 

「そうだな、店主この首飾りを二つともくれ」

「まいど!」

 

 そして、その内の青いほうを雛里へ渡す。

 

「え? 玄輝さん?」

「……似合いそうだと思ったんだが、その、気に入らなかったか?」

 

 俺の問いに彼女は全力で首を横に振ってそれを大事そうに抱え込むように握りしめる。

 

「……うれしいです、大切にします」

 

 そう言った彼女の笑顔は、愛紗とは違う儚くも美しい笑顔だった。

 

「……そうか」

 

 その笑顔を見た後に、手のひらにある白い勾玉の首飾りを見つめる。

 

(……あいつも、喜んでくれるだろうか?)

 

 正直、今まで買ってあげたものと言えば人形やら独楽やらの遊び道具だけだった。こういった装飾品はあげたことがない。

 

(まっ、何にせよまずは謝ることが先決だよな)

 

 これを渡すのは全部終わった後だ。

 

「他に何か見たいものはあるか?」

 

 雛里に聞いてみると彼女はさっきと同じように首を横に振って、帽子を目深にかぶったまま消え入るような声で“だいじょうぶれふ……”と返事を返してくれた。

 

「ん?」

 

 ふと空を見ると少し赤くなっていた。

 

「あ〜、すまん雛里。茶屋にはちょいと行けそうにない」

「え? あっ」

 

 そこで彼女が別れの時間が眼前に迫っていることに気が付いたようだ。

 

「…………」

「……そろそろ城に戻ろう」

「はい……」

 

 それだけ言葉を交わした後、一言も発せずに城へ戻った。だが、そこには思ってもみない光景が広がっていた。

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「お前ら……」

 

 全員がすでに正門にいたのだ。そう、まだ話していない星や劉備、北郷、そして……

 

「愛紗、雪華」

 

 愛紗の陰に隠れるように雪華がいた。

 

「………………」

 

 でも、こちらには目を合わせてはくれなかった。

 

(……今は、みんなと話すべきだな)

 

 向けていた視線を北郷へと向ける。

 

「北郷、これは一体?」

「ままっ、とりあえずこっちに」

 

 そう言って北郷は手招きしながら奥へ入っていく。

 

「お、おい」

 

 どうすべきか迷ったところを雛里が背中を押した。

 

「ひ、雛里?」

「え、えっと、一緒に行ってくれると嬉しいです……」

「…………はぁ」

 

 周りの面々も笑顔で手招きやら何やらをして奥へ向かっていく。

 

「たっく、わかったよ」

 

 そして北郷たちと一緒に歩いていくと、どこを目指しているかすぐにわかった。

 

(中庭か)

 

 となると、と思ったときに鼻にある匂いが入り込んでくる。ここまできたらどんなに鈍い奴でも気が付く。

 

「お前らなぁ……」

 

 ダメ押しとして目に入った光景に俺は呆れざるを得なかった。

 

「どうして出立当日に“宴”を開くんだよ!」

 

 そう、中庭は宴会仕様になっていたのだ。

 

「いやぁ、どうしてもこの日にしかみんな都合がつけられなくてさ」

「……だったらせめて一言言ってくれればこっちも色々調節するっての」

 

 はぁ、と嘆息するが、彼らの好意は素直にうれしい。うれしいが……

 

「……すまん」

「玄輝?」

 

 だが、俺の出立とは別の予定にはそぐわない結果となってしまった。

 

 みんなの目の前に出て、俺は口を開く。

 

「…………みんな、まずはここまでしてくれたこと、本当に感謝しかない。ただ、その前にどうしても話したいことがある」

 

 ……宴の後でもいいのではないか、そんな考えが頭をよぎるが脳内でそれを否定する。

 

(……酔いで、ごまかしたくはない)

 

 これは、普通の俺が話さなくてはいけないことなんだ。覚悟を決めた俺は一度重く閉じた口を、ゆっくりと開いた。

 

「俺と、白装束の関係についてだ」

「“っ!”」

 

 皆が息を飲んだのを感じたが、ここで止まるわけにはいかない。

 

「……宴の前に話すべきことではないかもしれん。だが、酒に酔って話したくはない。だから、俺のわがままにもう少しだけ付き合ってはもらえないだろうか?」

 

 “頼む”といって頭を下げる。その頭に最初に跳んできた声は、劉備の声だった。

 

「……玄輝さん、頭を上げて」

「劉備……」

「私ね、玄輝さんがあの時言ってくれた言葉の一つ一つが大切なものだって思ってる。だから、そんな人からの“わがまま”ならいつだって大丈夫!」

 

 そう言って、あの笑顔を見せてくれる。

 

「それに、そもそも“話を聞いてほしい”なんてわがままのうちになんて入らないよっ! ね、みんな?」

 

 その言葉にみんなが頷いてくれた。

 

「……すま、」

 

 そこまで言ってそれは違うと心の声がした。そして、言うべき言葉が口からこぼれ出た。

 

「……ありがとう、桃香」

「どういたしまして♪ ……ん?」

 

 もういい。確認なんて無粋だ。ダメだったらひっぱたかれたって仕方ない。

 

「げ、玄輝さん今……」

「……預かっていたもの、今呼ばせてくれ、桃香」

 

 驚きから喜びへ、そして笑顔へ変わっていく彼女から出た言葉を聞いて、心が晴れたような感覚がした。

 

「……うんっ!」

 

 ああ、これでもう迷いはない。あの時の“痛み”に俺はもう立ち向かえる。

 

「じゃあ、いいか?」

 

 最後に確認をしてから、俺は体を焦がす“怒り”を“憎しみ”を、ありとあらゆる“負”を思い出しながら過去を紐解いた。

 

「もう、あれは7年も前になる……」

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はいどうもおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

……なぜだ、なぜもう5月も半ばを迎えようとしている!?

 

なんてついふっと思ってしまう最近の作者ですが、皆さんはいかがでしょうか?

 

自分は”光陰矢の如し、なんてことわざがあるけど昔の人も同じような感覚を味わっていたのだろう、だとしたら少し面白なぁ”と感じてしまいました。

 

過去だろうが未来だろうが、人間なんて大して変わらないのかもしれませんね。

 

と、いったところでまた次回。

 

何かありましたらコメントにお願いいたします。

 

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。
大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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