ビーストテイマー・ナタ24
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ナタは真っ逆さまに地面に落ちて行きました。

 

「ナターシャちゃん!」

 

フラウは思わず目を閉じてしまいます。ところが墜落の衝撃がないので、恐る恐る目を開けてみると、ナタは背中に翼を持った鎧の騎士にお姫様抱っこされて地上に降りて来ました。

 

「天使様だ!カッコいいー」

 

「やれやれ、オズワルド様も相変わらず、やる事が汚い…」

 

「お兄さん、悪い魔術師の使い魔なの?」

 

「イエス、しかし私はフェミニストなのです。こんな可愛いお嬢さん方を傷つける事はできませんので、捕らえさせていただきます。悪く思わないでくださいね」

 

ナタとフラウは後ろ手に縄で縛られて地下牢に入れられてしまいました。

 

「どうしてお兄さんは悪い魔術師の仲間になったの?」

 

「私も不本意なのですが、呪いをかけられておりまして、オズワルド様に逆らうと激痛で悶え苦しむ事になるのですよ…」

 

「ナタ、呪いをかけるの嫌い!お師匠様は呪いでビーストを従わせたりしなかったよ?」

 

「ビーストテイマーのほとんどは呪いでビーストを支配しておりますが、あのケルベロスとグリフォンは呪いがかけられておりませんでしたので、オズワルド様が呪いを施したようです」

 

「それじゃジョルジュとルーシーは悪い魔術師に逆らうと、呪いで痛い痛いって苦しむの?」

 

「そうですね…。とても耐えられるような痛みではないので、逆らう事はできないでしょう」

 

「ジョルジュ、ルーシー、可哀想…」

 

フラウも痺れを切らしたかのように尋ねます。

 

「天使様。あと一人…剣士様がいたと思うのですが、そのお方は無事なのですか?」

 

「あの剣士は拷問を受けていましたが、何も喋らないので、独房に入れております」

 

「ご、拷問ですって!?ああ、ゲイザー様。どうかご無事で…」

 

フラウは今にも気絶しそうなほど、目眩がして頭がクラクラしました。

 

「私には心眼がございますので、あの獣人の剣士が人間の姿である事も、あなたが美しい女性の姿である事もちゃんと見えておりますよ?もちろんそちらの可愛いお嬢さんが、まだ子供である事もわかっております」

 

「天使様、私は腑に落ちないのです。オズワルド様はなぜゲイザー様を拐ったのでしょう?」

 

「オズワルド様はあの剣士に恨みがあるようです。もちろんあの獣人の正体はオズワルド様にも簡単に見破れました」

 

「ゲイザー様は人様に恨まれるような事は決してしたりしません!何かの間違いでしょう?」

 

「オズワルド様の親族の仇だと申しておりました。心当たりはありませんか?」

 

ナタはしばらく考え込んでから、思いついたように言いました。

 

「あっ…!もしかして、スライムを操ってたビーストテイマーの事かな?前におじさんが倒しちゃったの」

 

「親族の起こした不祥事は裏で金を積んで揉み消したようですが、随分と周りの信頼を失ってしまったので、酷く恨んでいたようです」

 

「おじさん、そのおかげでお金がいっぱい儲かったって言ってたよー。ナタの魔導書を買う為に全部使っちゃったみたいだけど…」

 

「それでは私はこれで失礼します…。オズワルド様が言霊を飛ばして、お呼びになっておりますので」

 

鎧の天使は恭しくお辞儀をすると、檻の前からいなくなってしまいました。

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第24話です。
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