ビーストテイマー・ナタ30
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ところが満月の夜、指揮官に任命されたゲイザーは騎士団の詰所に現れず、国王の怒りを買いました。

 

「ゲイザーよ、昨夜はどこにおった!?」

 

「誠に申し訳ございませんでした!昨夜の事はどう言うわけか、全く思い出せないのです…」

 

「どうせ夜の街に行って、酒でも飲み潰れておったのだろう?情けない…」

 

「獣人は現れたのでしょうか?」

 

「指揮を取る者が不在では、捕らえられるものも捕らえられぬわ!」

 

「罰は何なりとお受けします。このような失態を犯してしまい、国王様には合わせる顔もございません…」

 

「其の方が獣人の現れる日の予測をした事は高く評価しておる。包囲網も完璧だった…。なぜ来られなかったのかと聞いておるのだ。理由を正直に話してみよ?」

 

「覚えていないものを話す事は出来ません…」

 

「もう良い!下がれ…。記憶にないで済ませる輩を余は信用出来ぬ」

 

解雇にされるのを覚悟していましたが、国王から直々に呼ばれて獣人討伐の作戦会議に、ゲイザーは出席する事になりました。

 

「獣人の住む国はまだ見つからんのか?」

 

「森を捜索して探してはいるのですが、獣人をたまに見かける程度で、国はどこにあるのか見当もつきません…」

 

「ゲイザーは獣人の国がどこにあるか推測出来ぬか?」

 

「それは私にも皆目見当も付きません。一国を隠すと言うのは容易ではないと思いますが…」

 

「もう何年も前から探しておると言うのに、未だに獣人の国が見つからんとは…。一体、どうなっておるのじゃ?」

 

「ただ今まで調べた情報と、私が獣人と接触した際の会話の内容から、獣人が我々と同等か、それ以上の文明を持つ事は推測出来ます」

 

「何を申すか?獣人は野蛮で知能の低い生き物じゃ!」

 

「獣人は騎士道精神を重んじるようです。もし獣人が卑怯な手を使う連中だったなら、今頃この城は落とされてしまっているでしょう」

 

「其の方、余を愚弄する気か?獣人ごときに、この城が落とせるわけがあるまい!」

 

「私の推測では獣人には智謀を巡らせる者がおります。おそらく獣人を率いる者は相当の策士ではないかと…」

 

「其の方…、獣人の肩を持つ気か?」

 

「いえ、私はそのようなつもりはなく、事実をありのまま述べているだけです」

 

「ええい!余の広い心で許しておったが、口答えする輩はもういらん。騎士団を解雇する!」

 

「そうですか…。わかりました。国王の広いお心に甘えて、出過ぎたことを口にしました。申し訳ありません」

 

騎士団の宿舎で身支度をしていると恋人が現れました。

 

「ゲイザー様が国王様にお叱りを受けて騎士団を解雇にされたと聞いたのですが…」

 

「あなたとは今日でお別れですね。短い間でしたが楽しかったです」

 

「嫌です!私はゲイザー様と別れたくありません」

 

「私はまた傭兵に戻ります。妻や子を持っても養うだけの余裕はありません。申し訳ありませんが婚約は破棄させてもらいます…」

 

「あなたに稼ぎがなくとも、私が働きます。結婚式の日取りはもうすぐではありませんか?婚約が破談になったのはこれで二度目ですよ…」

 

「私と結婚してもあなたを幸せにする事は約束出来ません。あなたなら他にもっと良い相手が見つかります…」

 

「あなたは私が初めて愛した人だったのに…。他の人と結婚しても私は幸せになんかなれません!こんなに傷付けられたのは生まれて初めてです…」

 

恋人は大粒の涙をポロポロと溢しました。

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第30話です。
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