ビーストテイマー・ナタ33 |
一行は一ヶ月ぶりにマルヴェールの地へ、足を踏み入れました。
「剣士・ゲイザーよ。約束の期日だが、わしの与えた試練を達成して参ったのか?」
「はい、私の恋人のナターシャ様を連れて参りました」
ナタはゲイザーと腕を組んだままニコニコ微笑んでいます。
「ふむ、約束通りお前にマルヴェール国民になる権利を与えようぞ」
「有難き幸せにございます!」
「さっそく、婚礼の儀の準備を進めなくては。それとナターシャと申したな?獣人の妻になると言う事は獣人になる覚悟はできておるのだろうな?」
「ナタ、獣人になるの?面白そう!」
それを聞いて、フラウは慌てて止めに入りました。
「フォン様!ナターシャちゃんを獣人にするのはお待ちください…」
フォンはフラウが慌てているのを見て、ニヤリと笑みをこぼしました。
「フラウよ、なぜ止める?獣人の国には人間は住まわせられない。それが古からのマルヴェールの掟だ。知らなかったわけではあるまい?」
「はい、存じ上げております。しかしナターシャちゃんはまだ判断能力のない子供です」
「はて?わしにはそこにおるナターシャとやらが立派な大人の女に見えるのだが…」
「とぼけないでください!匂いでわかっておられるのでしょう?この子が以前にここへ訪れた際に同行していた子供である事を…」
「なんだと!ゲイザーはこのわしを騙そうとしたと言うのか?試練は失敗したと言う事だな」
フラウはフォンに嵌められたと思いました。フラウがなんと答えても、フォンに都合の良い話に進められるのがわかっていたからです。
「私は嘘などついておりません。私の愛するナターシャ様をお連れしたのに、試練は失敗したと言われましても…」
「では今ここでゲイザーがナターシャを愛しているのを証明して見せろ!それが出来ないのであらば、お前は嘘つきであると見做して、打ち首の刑に処す!」
「フォン様!こんな騙し討ちのような裁き方は横暴だと思います…」
「何が不服だと言うのだ?この男はわしを欺こうとした。そのような者を信用してマルヴェールに迎え入れるわけには行かない!」
「ナタ、どうしたら良いの?愛してるのを証明するって…。証明出来ないとおじさんは殺されちゃうの?」
フラウは覚悟を決めて、フォンの目の前でゲイザーに無理やり熱い接吻をしました。
「ゲイザー様の恋人はこの私です!」
「フラウよ!何を血迷ったか?お前は男嫌いだったはずだ!なぜそのような事を?」
「私は男嫌いなのではありません!私には心に決めたお方がいたから、誰からの求愛も受け入れなかっただけの事…」
ゲイザーは頭を掻き毟りながら呻いています。
「悪い夢を見ていた気がする…。頭が割れそうに痛む」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第33話です。 | ||
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