真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 59
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〜祭りの後〜

 

「うっ」

 

瞼に朝日が当たる感じがして目を覚ます。

 

「……………あ〜」

 

 意識はまだはっきりしないが、昨日のどんちゃん騒ぎの事をだんだんと思いだしていく。

 

「………飲みすぎた」

 

 と、そこであることに気が付く。

 

「雪華?」

 

 そう。アイツがボディプレスをしてこなかった。いまだにはっきりしない頭で周囲を見渡せば隣に白の長い髪が流れていた。

 

「すぅ……すぅ……」

「……こりゃ珍しい」

 

 よくよく考えれば朝のこいつの寝顔は見たことがなかったな。

 

「みゅぅ……」

 

 って、よくよく考えれば当たり前か。

 

「俺がうなされていたから、だったよな」

 

 そう言ってその頬を突く。

 

「にゅぅ〜……」

「ぷっ」

 

 かわいらしく嫌がるその様を見て思わず笑いがこぼれ出た。

 

「……守らねぇとな」

 

 俺は雪華に掛布団をかけ、一応心配しないように心斬を雪華の近くに置いてから外へ出る。

 

「くぁ……」

 

 日差しを浴びてあくびを一つ。と、そこへ声を掛けられた。

 

「玄輝殿?」

「ん? ああ、愛紗か」

 

 ぼんやりとした頭で返事を返すと急激に意識が覚醒しだす。

 

「愛紗!?」

「はいっ!?」

 

 互いに素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「ど、どうしたんだこんな早くに?」

「げ、玄輝殿こそこんな早くにめ、珍しいですね」

 

 そこで会話が止まる。

 

(……くっ、星の奴に言われたことが頭の中で反響しやがる)

 

“玄輝殿のその感情は恋としか言いようがあるまい!”

 

(だぁ〜!!! なんだってこんなタイミングなんだ畜生!)

 

 脳内で頭を掻きむしりながら猛烈な勢いで転げ回るが現実ではなにも起ってはいない。相変わらず妙な沈黙があるだけだ。

 

「……あ〜」

 

 ダメだ、もう耐えられん。こうなったら無難な提案を……

 

「そ、その玄輝殿」

「へっ!? あ、いや、なんだ?」

 

 しようとしたところで愛紗から話しかけられて思わず慌てふためくのを最小限に抑えて答える。

 

「その、こちらを」

 

 そう言って彼女が差し出したのは、何時ぞや預けた形見の腕輪だった。

 

「……御母堂の形見とは露知らず、つい長く預かってしまいました」

 

 その表情はどこか申し訳なさそうにも見えたし、己を恥じているようにも見えた。

 

「…………ん〜」

 

 だが、そんな彼女の顔は見たくない。自分の手で開いていた愛紗の手をゆっくりと閉じさせる。

 

「げ、玄輝殿?」

「……もう少し、預かっててくれ」

「で、でも!」

「……俺が愛紗の真名を呼んだ日、覚えてるか?」

「それは」

「なら、その時言った言葉の通りだ。俺は戻ってくる。その時に改めて受け取りたい」

 

 だから、と一呼吸置いて。

 

「もう一度、預かっててくれないか?」

「……………………」

 

 少し長めの沈黙の後、彼女は小さく頷いてくれた。

 

「そういう事でしたら。大切に預からせていだたきます」

「そうしてくれ」

 

 そう言って互いに小さく笑い合う。

 

「……あなたは、そうやって笑うのですね」

「ん? なんだよ、いきなり」

「いえ、昨日も思ったのですが玄輝殿の本当の笑顔というのを見たような気がして」

「ぬっ」

 

 くそ、今ので引いてた熱がぶり返してきた。

 

「……あんまり見るな」

「さて、それは約束できませぬ」

「……お前、星みたいだぞ」

「おや、それは心外ですね」

「そうやって返すところなんかまさしくそうだ」

 

 どちらが先だったか。兎にも角にも互いに噴き出してさっきよりも少し大きな笑い声が出てきた。

 

「……げんきぃ?」

「と、起こしちまったか」

 

 部屋の中から雪華の声が聞こえたので、愛紗に目配せをしてから部屋に戻る。

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「おはよう、雪華」

「…………?」

「……お前、寝ぼけてんのか?」

「……げんきが、わたしよりはやくおきてる?」

 

 寝ぼけ眼で俺を見た雪華はそのままベッドに倒れ込んでしまう。

 

「……夢」

「おい、そりゃどういう意味だ」

「すぅ……すぅ……」

「……また寝やがった」

 

 でも、心斬は抱くのにちょうどいいのか(俺としては抱き心地最低だと思うのだが)抱き着いたまま寝てしまった。

 

「ったく」

 

 その額を痛くない程度に小突いてもう一度掛布団を体にのせる。

 

「寝てしまったのですか?」

 

 部屋の外から様子を見ていた愛紗の問いに肩を竦めて答えると、静かに部屋を出た。

 

「さて、早く起きたはいいがどうするかな」

「……仕事をしようという気はないのですか?」

「………………ないな。黄仁とか羽倫(うりん)とかに引き継いじまったからな、仕事」

 

 幸いと言っていいのか、あるいはそうなるように朱里やら雛里やらが配置してくれたのか、まぁ、何にせよ優秀な奴らがいたおかげで俺の仕事はすべて引き継いでしまったのだ。

 

「……昨日の宴の時に通りかかって話はしていましたが、それでもやはり何か手伝うのが筋では?」

「ん〜……」

 

 それはそうなんだがなぁ……

 

「……まぁ、今日は休みという事で」

「……天の国のお方というのは休むことが多いようで」

「なんだよ、北郷と一緒ってか?」

 

 仕事量は違うだろうが、少なくとも仕事をさぼったことはないぞ。脱線はしたことあるが。

 

「ええ。あれやこれやと理由をつけて休む時間を作ろうとするところがよく似ております」

「うぐっ!」

 

 ……それは否定できないかもしれん。

 

「別にそれが悪いとは思いませんが、頻度は考えていただきたいものです。そもそも」

「ストーップ!」

「すとうぷ?」

「止まれってことだよ。北郷の奴、言ってないか? たまに」

「……天の国の言葉は難解なのが多いですので」

 

 確かに、言われれば分からなくはない。

 

(ストップは英語だしなぁ……)

 

 と、今はそれどころじゃない。愛紗のお小言を回避しなければ。

 

「さっきも言ったように今日は休みだ。誰が何と言おうと休みだ。というか、現状は仕事をする隙間がないと言える」

「その隙間を」

「故に!」

 

 お小言を声でつぶして、続きを強引につなげる。

 

「今から街へ出るついでに警邏をする! というわけでこれから着替えるのでこれにて!」

「むぅ……」

 

 避難するような視線は無視して部屋に戻って服を着替える。

 

(さて、勢いでああは言ったものの……)

 

 警邏するにも外で活動するにも金が要る。

 

(…………旅の資金も考えると、このぐらいか)

 

 後で溜めたりいざというときのへそくりを考えて差引いた金子を取り出すと、釘十手を差して部屋を出たのだが、なぜか愛紗がまだそこにいた。

 

「……え〜と、何か用か?」

「……玄輝殿がしっかり警邏をするのか心配ですので、ご同行しようと思いまして」

「なん、だと……?」

 

 二つの意味で危険信号が鳴る。一つ目は言わずもがな俺の突然の休日が仕事に変わりそうなこと、もう一つは二人で街に繰り出すという事はいわゆるデートと言うものになるのではないかということだ。

 

(待て待て待て! それは色々と危険すぎる! 色々と!)

 

 くどいかもしれんが危険だ。正直、何をすればいいのか、何を話せばいいかなんて全く分からん。

 

「あ、いや、その、さすがに普段の警邏から見れば緩いだろうが、別にサボるなんて……」

「何か一緒に行くことに不都合や不満がおありなのですか?」

「……ないです」

 

 ダメだ、これは逃げられん。

 

(さらば、思いがけず手に入りそうだった休日よ……)

 

 こうして俺は愛紗と一緒に警邏に赴くことになったのだった。

 

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はいどうもおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

……更新はしたがいいが、あとがきネタが出ませぬのでこれにて失礼!

 

また次回!

 

……あ、何かありましたらコメントにお願いいたしますです。

 

説明
白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
胸襟を開いて愛紗と逢瀬〜(玄輝を冷やかす) ほれ、行くところまで行っちゃいなよ玄輝〜(煽る煽る)(はこざき(仮))
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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