英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇
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エレベーターから降りたリィン達がエントランスホールに出るとある人物がリィン達に声をかけた。

 

〜オルキスタワー・エントランスホール〜

 

「ははっ――――早速会えたか、リィン、セレーネ。」

「え………」

「貴方は――――」

自分達に声をかけて近づいてきた人物―――マキアスを見たユウナとアルティナは呆け

「マキアスさん……!」

「ハハ、そっちも列車で来たばかりなのか?」

セレーネは驚き、リィンは苦笑しながらマキアスに対して返事をした。

「いや、昨日クロスベル入りして朝一番でここに参上したんだ。君達の演習と同じく今日からクロスベル軍警察との共同業務の開始でね。これから局の先輩と、皇帝陛下に”ご挨拶”しなくちゃならない。」

「そうか……俺達も挨拶してきたばかりさ。―――その、しっかりな。」

「はは……まあ、覚悟はできているよ。けど確か、ヴァイスハイト皇帝陛下はクロスベルにいた頃の君達の上司でもあったのだろう?それを考えると気は少し楽になるよ。」

「ふふっ、ヴァイスハイト陛下は皇帝でありながら気さくな方ですから、そんなに緊張しなくていいと思いますわ。」

マキアスと親しく会話している様子のリィン達が気になったユウナ達はリィン達にある事を訊ねた。

「えっと、ひょっとして。」

「そちらの方も―――――」

「ええ、”旧Z組”の一人で現帝都(ヘイムダル)知事の息子さんですね。」

「”旧Z組”という事はリィン教官達の昔の仲間の方ね……」

アルティナがマキアスの事について説明するとクルトとユウナはそれぞれ血相を変え、ゲルドは静かな表情で呟いた。

 

「あのレーグニッツ知事の……!」

「な、名前は知らないけどホント大物ばかりじゃない……!」

「えっと……”知事”ってどんな職業の人なのかしら??」

マキアスが誰の息子であるかを知ったクルトとユウナが驚いている中ゲルドは不思議そうな表情で首を傾げた。

「アルティナも久しぶりだな……話は聞いたが、本当に見違えたな。そちらの3人もよろしく。マキアス・レーグニッツだ。クロスベルには君達第U分校と同じく”司法監査院”の出張として交換留学に来ていてね。」

「”司法監査院”………」

「……確か、司法の立場から行政機関をチェックするという………」

「成程、そうでしたか。――――この時勢にわざわざ茨の道を選択されたんですね。」

「”茨の道”……?ああ、その”司法監査院”?という所は政治家の人達にとっては厄介な所みたいだから、マキアスさん達は外国であるクロスベルに出張させられたのね。」

マキアスの自己紹介を聞いたユウナが呆け、クルトが考え込んでいる中アルティナとゲルドの感想を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「アル、ゲルド……あんた達ねぇ。」

「二人ともさすがに失礼すぎるだろう……」

「ハハ……君達の言う通りだ。エレボニアにある”全ての”行政機関に不正などの問題がないかどうかチェックする――――エレボニア政府まで厳密には対象になるんだからな。」

アルティナとゲルドの言動にユウナとクルトが呆れている中マキアスは苦笑しながらアルティナとゲルドの意見に同意した。

「そ、それって……」

「……大変どころの話ではなさそうですね。」

「ええ……エレボニア政府にはマキアスさんにとってのお父君であられるレーグニッツ知事も所属しているのですから………」

「だが、彼はあえてその道を進む事を選んだ。―――頑張っているみたいだな?」

「ああ、現実の壁の厚さにヘコみそうにはなるけどね。だが、そんなものは他のみんなだって同じだろう?」

「ああ………そうだな。」

リィンとマキアスがお互いの拳を合わせると、青年がリィン達に近づいて声をかけた。

 

「マキアスく〜ん!面会の許可が下りたよ!」

「ああ、ライナー先輩。―――紹介します。1年半前の内戦時協力関係だった特務部隊に所属していたリィンとセレーネ、そして二人の教え子です。」

「ああっ、あの有名な――――いや〜、マキアス君から君達の事は色々聞いてるよ〜!」

マキアスにリィン達を紹介された青年―――ライナーは驚いた後親し気な笑顔をリィン達に見せた。

「はは……恐縮です。」

「フフ、1年半前マキアスさんにはお世話になりましたわ。」

ライナーの言葉に対してリィンとセレーネは苦笑しながら謙遜した様子で答えた。

「先輩、ヴァイスハイト皇帝陛下を待たせたらまずいのでは?彼らも忙しいみたいですし話はまたの機会にしましょう。」

「そ、そうだね。気を引き締めなくっちゃ。――――士官学院の演習だって?大変だろうけど頑張ってね!」

「リィン、セレーネ。夜にでも連絡する。君達もどうか頑張ってくれ。」

「は、はい!」

「またな、マキアス。ライナーさんも。」

「……ご武運を。」

「頑張ってください。」

「それではわたくし達も失礼しますわ。」

「……失礼します。」

その後マキアス達と別れたリィン達は特務活動を開始した。

 

〜30分後・34F〜

 

「―――それではフラン皇妃陛下、これからよろしくお願いします。」

「了解しました〜。あ、その前に私の事は”フラン”でいいですよ〜?ヴァイスさんと結婚して身分上は一応側妃ですが、クロスベル軍警察では普通の警察のオペレーター扱いをしてもらっていますので〜。」

30分後ヴァイス達との面会を終えて執務室を出たマキアスは面会の際に紹介されたクロスベル軍警察のオペレーターを務め、ヴァイスの側妃の一人でもあるフラン・シーカーに軽く会釈をした。

「そうなんですか?それじゃあ、遠慮なくよろしくお願いします、フランさん。」

「はい〜。フフ、それにしてもあの”旧Z組”の人とこんな形で知り合うなんて、不思議な出来事ですね〜。」

「……?フランさんは僕達―――”旧Z組”の事をご存知なのですか?」

ライナーの言葉に頷いた後微笑みながら呟いたフランの言葉が気になったマキアスはフランたちと共にエレベーターに向かって歩きながら不思議そうな表情でフランに訊ねた。

「フフ、マキアスさん達――――”旧Z組”の方々は当然知っていますよ〜。私は以前”特務支援課”のオペレーターを務めていましたので。」

「!フランさんがあの”特務支援課”の関係者だったとは………という事は僕達”旧Z組”の事はリィンやセレーネから?」

「はい〜。あ、エレベーターが来たみたいですよ。」

驚いている様子のマキアスの言葉に頷いたフランはエレベーターの中へと入り、マキアスとライナーもフランに続くようにエレベーターの中へと入った。するとその時別のエレベーターが到着し、エレベーターからセリカ達が現れた。

「へ…………」

自分達が乗っているエレベーターの扉が閉まる瞬間、別のエレベーターから降りたセリカの横顔や後ろ姿が見えたマキアスは呆けた声を出し

「どうしたんだい、マキアス君?」

「い、いえ。一瞬知り合いに似た人物が見えたような気がしたのですが……多分、他人の空似だと思います。第一その人物はリィンと常に一緒にいますし。」

ライナーに訊ねられたマキアスは戸惑いの表情で答え

「???」

「不思議な事もあるんですね〜。」

マキアスの答えにライナーは首を傾げ、フランは呑気な様子で答えた。一方セリカ達はヴァイスを訊ねていた。

 

〜執務室〜

 

「―――誰だ?」

執務室でヴァイスが一人で様々な書類のチェックをしていると扉がノックされ

「――――セリカだ。」

「ああ、そのまま入ってくれ。」

扉の外から聞こえた来た声を聞いたヴァイスが入室の許可を口にするとセリカ達が部屋に入って来た。

「どうも〜、1年半ぶりですね〜、ヴァイスハイト皇帝陛下♪」

「もう、マリーニャさんったら………―――お久しぶりです、ヴァイスハイト皇帝陛下。」

「えへへ〜、また会えたです〜。」

「うむ、久しぶりじゃ!」

「久し………ぶり………」

セリカと共にいた青髪のメイド――――セリカの”第二使徒”のマリーニャ・クルップ、シュリ、緑髪をツインテールにしているメイドと真紅の髪のメイド――――セリカの”第四使徒”のサリア・レイツェンとセリカの”第五使徒”にして古神の一柱でもあるレシェンテ、姿は少女でありながらもセリカやレシェンテに次ぐ莫大な魔力をその身に宿している魔神―――――ソロモン72柱の一柱であり、”冥き途”の門番でもある”冥門候”ナベリウスはそれぞれヴァイスに声をかけた。

「ああ、皆変わりないようで何よりだ。――――勿論ロカ殿も不老の存在である”神格者”だけあって、相変わらずの美しさだ。」

「フフ、ヴァイスハイト陛下も相変わらずですね。」

「………数多くの妃を娶っておきながら、未だ他の女性にも興味を向けるとは底抜けの女好きだな。」

ヴァイスの賛辞に特注の魔導鎧を身に纏った神官戦士―――――”軍神マーズテリア”の”神格者”の一人であるロカ・ルースコートは微笑み、セリカは呆れた表情でヴァイスを見つめた。

「いやいや、女神と将来結ばれる事が確定していながら、”使徒”達どころかマーズテリアの神格者にソロモン72柱の一柱、その他諸々の多くの様々な立場の女性達と関係を結んでいるセリカ程ではないぞ?」

「ア、アハハ………」

(クク、確かにセリカだけは他人の事は言えないだの。)

「……………下らん話はそこまでにして、本題に入れ。」

からかいの表情のヴァイスの指摘に対してシュリは苦笑し、ハイシェラは口元に笑みを浮かべて同意し、反論できないセリカは露骨に話を逸らそうとした。

 

「ああ。――――改めてになるが、俺―――いや、俺達の要請に応えて再びクロスベルの地に現れた事、感謝する。」

「………礼は必要ない。”鉄血宰相”と”黒のアルベリヒ”とやらが考えている”野望”は叩き潰す必要がある。―――――将来産まれてくるサティアが平和に過ごす為にもな。」

「フッ、たった一人の女の為だけに”神殺し”であるセリカの怒りを買った愚か者達はある意味哀れかもしれんな。――――しかし、驚いたぞ。プレイアにいる使徒達全員を連れてくる事までは予測していたが、わざわざ”冥き途”の門番であるナベリウスや”軍神(マーズテリア)”の神格者の一人であるロカ殿まで呼び寄せるとはな。」

セリカの答えを聞いて静かな笑みを浮かべたヴァイスはナベリウスとロカに視線を向けた。

「手紙に書いてある通りならば、状況はどう考えても1年半前の件を超えるからな。万全の態勢で挑む為にも二人にも声をかけた。………まあ、運良くロカにも事情を書いた俺の手紙が届き、こうして再び俺達と共にクロスベルに来たことには俺も驚いているが。」

「フフ、他ならぬセリカの為ならば私は喜んで協力するわ。それに異なる世界とはいえ、世界を”終焉”へと導く”巨イナル黄昏”とやらは”軍神(マーズテリア)”の神官の一人としても、絶対に阻止すべき事だもの。」

「黄昏……起こる事………わたし達の世界……冥き途………影響あるかもしれない、から……タルちゃん、セリカ達を手伝えって……言った………」

ヴァイスの指摘に対して静かな表情で答えたセリカはロカに視線を向け、視線を向けられたロカは微笑みながら答えた後表情を引き締め、ナベリウスは淡々といつもの調子で答えた。

 

「―――手紙の内容によりますと、”三帝国交流会”の際にも結社の残党による”実験”がある為、私達にも協力して欲しい事が手紙に書いてありましたが……具体的にはどのような協力をすればいいのでしょうか?」

「それは勿論、結社の残党共をわらわ達に始末して欲しいからに決まっているじゃろ!敵がわざわざ分散して現れてくれるのじゃから、始末して敵の戦力を低下させる絶好の機会じゃしな!」

「何であんたは真っ先にそんな物騒な考えを思いつくのよ………」

「ふえ?でも、敵さん達をやっつける為にサリア達、またみんなで一緒にゼムリア大陸に来たのじゃありませんの?」

シュリはヴァイスに要件を訊ね、ヴァイスが答える為に胸を張って答えたレシェンテの推測を聞いて呆れているマリーニャの言葉を聞いたサリアは無邪気な様子で首を傾げた。

「ハハ、まあレシェンテの推測も遠からず当たっているが………セリカ達に実際に動いてもらう事になるのは恐らく明日になると思われる。よって、今日は英気を養ってくれ。――――何だったら、魔力補充の為に”幻獣”を狩るか?もしそのつもりなら、リィン達に渡したのとは別の過去の”幻獣”が現れた資料を渡すが。」

「お前は俺を何だと思っている……?確かに魔力補充は俺にとっては必須だが、マリーニャ達がいるのだから、わざわざ必要もないのに”幻獣”を狩るつもりはない。」

「――――それよりも、その口ぶりですと”碧の大樹”が消滅してから現れなくなったはずの”幻獣”が再びクロスベルに現れたのですか?」

ヴァイスの問いかけにセリカは呆れた表情で答え、ロカは真剣な表情でヴァイスに訊ねた。

「ああ。そうなったのも”並行世界の新Z組”によると、”巨イナル黄昏”の前兆としてエレボニアとクロスベルの霊脈が繋がりつつある影響との事だからな。」

「それは………」

「………現時点でも、既に影響は出始めているという事か。」

ヴァイスの答えを聞いたシュリは不安そうな表情をし、セリカは静かな表情で呟いた。

 

「ああ、恐らくな。――――そうだ、お前達が来てくれたら渡そうと思っていた物があったから、それを今渡す。」

「へ……あ、あたし達に渡す物、ですか?」

「サリア達に何をくれるのでしょうか〜?」

ある事を思い出したヴァイスの言葉を聞いたマリーニャは不思議そうな表情をし、サリアは首を傾げてヴァイスに訊ねた。

「フッ、それは見てからのお楽しみだ。―――――ヴァイスハイト皇帝だ。すまないが、今時間はあるか?依頼していた物品を届けて欲しいのだが―――――」

そしてヴァイスは誰かと通信をし、通信を終えてセリカ達と今後の事について話していると扉がノックされた。

 

「――――失礼します、ラインフォルトです。」

「ああ、入ってくれ。」

ヴァイスが入室を許可するとアリサとシャロンが執務室に入り

「へ………あ、貴女は………!………って、あれ?前に会った時と比べると服装もそうだけど雰囲気も随分変わっているようだけど………」

執務室に入り、セリカを見たアリサは呆けた後困惑の表情でセリカを見つめたが

「―――フフ、お嬢様。そちらのアイドス様に非常に似た男性――――”嵐の剣神”の二つ名で名高いセリカ・シルフィル様はアイドス様ではありませんわよ。」

「へ……お、”男”!?ど、道理でアイドスと全然雰囲気が違う訳ね………リィンからアイドスにアイドスそっくりのお兄さんがいる話は聞いていたけど、まさかここまで似ているなんて……」

シャロンの指摘を聞くと驚き、信じられない表情でセリカを見つめた。

「え………」

(ぬ?何故その嬢ちゃん達がアイドスの事を……)

「………何故、アイドスを知っている?リィンの知り合いのようだが………」

二人の会話を聞いたシュリは呆け、ハイシェラは眉を顰め、セリカは静かな表情でアリサ達に問いかけ

「あー、そう言えばまだ言ってなかったな。金髪のお嬢さんは”アリサ・ラインフォルト”という名前でラインフォルトグループの会長の一人娘にしてリィンやセレーネ達――――”特務部隊”と共に1年半前のエレボニアの内戦終結に大きく貢献したトールズ士官学院”旧Z組”の一人だ。」

「うふふ、それとアリサお嬢様は内戦時にリィン様と結ばれた事で数多くいるリィン様の婚約者の一人に加わった方ですわ♪」

「シャ、シャロン!」

ヴァイスの説明の後にからかいの表情を浮かべて答えたシャロンの自分の事についての紹介を聞いたセリカ達が冷や汗をかいて脱力している中アリサは顔を真っ赤にして声を上げた。

 

「……なるほど、そういう事か。」

「二人にも紹介しておこう。――――そこのアイドス似の男性の名前はセリカ・シルフィル。異世界ディル=リフィーナの大国―――”レウィニア神健国”の客将だ。ちなみに”レウィニア神健国”はメンフィル帝国と同等の国力を持っていると言われている大国だ。」

アリサ達の説明を聞いたセリカが納得している中ヴァイスはアリサとシャロンにセリカの事を軽く紹介し

「まあ………」

「ええっ……!?あ、あのメンフィルと……!?えっと………どうしてそんな特殊な立場の方がクロスベルを訪れているのでしょうか……?」

セリカについての説明を聞いたシャロンは目を丸くし、アリサは驚きの声を上げた後戸惑いの表情でセリカ達を見つめた。

「旧Z組や特務部隊と連絡を取り合っている二人なら知っているだろうが、今のクロスベルはある意味独立前よりも”結社の件を含めた気がかりな事”があるからな。ちなみにその”結社の件を除いた気がかりな事”がどの件なのかは、クロスベルと某帝国との関係を考えたら言わなくても大体察する事ができるだろう?」

「………っ…………」

「フフ、という事はリィン様達とは”別口”で、クロスベルで起こるかもしれない”不測の出来事”に当たってもらう為にセリカ様達をお呼びしたのでしょうか?セリカ様を含めて周りの方々も、相当な使い手―――それこそ、結社の”執行者”を軽く凌駕するほどの方々もいらっしゃいますし。」

ヴァイスの説明を聞いたアリサが息を呑んだ後複雑そうな表情で黙り込んでいる中シャロンは苦笑しながらセリカ達を見回した。

 

「ええっ!?セリカさん以外の他の人達ってメイドに子供……?ばかりなのに、そんなに強いの!?……そちらの紅い鎧の女性が強そうなのは何となくわかるけど………」

一方シャロンの推測を聞いたアリサは驚いてマリーニャ達を見回した後ロカに視線を向け

「わらわは子供じゃないぞ!」

「サリアも子供じゃなくて大人の女性ですよ〜?」

「いや、レシェンテのその見た目だと事情を知らない人達からすれば、普通はそう見えるでしょ……それとサリア、あんたのその口調、どう考えても”子供”よ?」

「わたし………おとな………貴女達より………とっても年上………えっへん………」

「す、すみません……お見苦しい所を見せてしまって……」

アリサの言葉にレシェンテは憤慨し、サリアは首を傾げて指摘し、二人の反応を見たマリーニャは呆れた表情で指摘し、ナベリウスは静かな口調で呟き、シュリは疲れた表情でヴァイスとアリサ達に謝罪し、その様子を見たアリサとシャロンは冷や汗をかいて脱力した。

「何なのよ、この訳のわからない集団は………」

「クスクス………――――それで、話を戻しますが以前注文して頂いた商品はこちらの方々にお渡しすればよろしいのでしょうか?」

我に返ったアリサが疲れた表情で溜息を吐いている中、シャロンは微笑んだ後ヴァイスに訊ねた。

「ああ、まずはARCUSUの方から渡してやってくれ。」

「―――かしこまりました。どうぞ、お受け取りください。」

そしてヴァイスの答えを聞いたシャロンはセリカ達にARCUSUを渡した。

「これは………」

「――――”戦術オーブメント”か。だが、”戦術オーブメント”なら以前リウイ達から貰った”ENIGMA(エニグマ)・R(リメイク)”とやらを持っているが。」

渡されたARCUSUをロカが目を丸くして見ている中セリカは静かな表情でヴァイスに訊ねた。

「アリサ室長、セリカ達に”ARCUS(アークス)”についての説明を頼む。」

「あ、はい。こちらの戦術オーブメントは”ENIGMA”シリーズではなく、RF(我が社)がエプスタインと共同で開発した”ARCUS(アークス)”シリーズと言いまして―――――」

ヴァイスに説明を促されたアリサはセリカ達に”ARCUSU”についての説明をした。

 

「………なるほど。要するに”ARCUS(アークス)”とやらは”ENIGMA(エニグマ)・R(リメイク)”を劣化させた戦術オーブメントか。」

(このバカ者が。ちゃんと二人の説明を聞いていたのか?)

説明を聞き終えて最初に口にしたセリカの感想にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ハイシェラは呆れた表情で指摘し

「セ、セリカ様!確かに”ARCUSU”は”ENIGMA・R”と使い勝手が異なる部分がありますが、決して”ARCUSU”が”ENIGMA・R”に劣っている訳ではありませんよ?」

「そうね。特に”ブレイブオーダー”とやらは説明を聞いた感じ戦闘の際、かなり便利な機能だと思うわよ?」

「じゃが、クオーツによるアーツの組み合わせができなくなるから、失敗作じゃないのか?」

「はいです〜。アーツがたくさん使えないと不便ですよ〜?」

「………………」

「というかどうせあんた達は威力が高くて広範囲の上位か最上位アーツしか使わないんだから、そんなに気にする必要なんてないと思うけどね……」

シュリは我に返るとアリサとシャロンを気にしながら苦笑しているロカと共にセリカの推測が若干異なっている事を指摘している一方、レシェンテとサリアはセリカの感想に同意し、二人の言葉に続くようにナベリウスは軽く頷き、レシェンテ達に対してマリーニャは呆れた表情で指摘した。

「うぐっ………一番痛い所を容赦なく突いてきたわね………」

「フフ、皆様の仰る通りその欠点については未だ改良中の為、お恥ずかしながら克服できておりませんわ。――――ですが、その欠点を補う部分があるのが”ARCUSU”の特徴ですわ。」

アリサは唸り声を上げた後ジト目でセリカ達を見つめ、シャロンは苦笑した後説明を続けた。

 

「………まあいい。実際に戦闘に使って、どっちが有用なのか確かめればわかる事だ。――――それで、俺達に渡す物はこの”ARCUS(アークス)U”とやらか?」

「いや、それはあくまで”オマケ”だ。本命はRF(ラインフォルトグループ)とセティ達―――”工匠”が共同で開発したお前達専用の特注の移動用の道具だぞ?」

「え……セティさん達と共同で……それも移動用の道具ですか?」

「フフ、ウィルの子供である彼女達も関わっているのだから、どんな物なのかかなり興味が湧いてくるわね。」

セリカの問いかけに答えたヴァイスの答えを聞いたシュリは目を丸くし、ロカは微笑んだ。そしてセリカ達は話に出た”道具”を受け取る為にヴァイスとアリサ達と共にエレベーターでタワー地下にある駐車場まで下りた。

 

〜B1F〜

 

「これは…………」

地下に到着し、アリサとシャロンの先導によって数台の導力バイクが置かれている場所まで移動して導力バイクを見たセリカは目を丸くし

「こちらは”導力バイク”といいまして、”導力技術”が存在しない異世界の方々である皆様方にわかりやすいように説明しますと、馬の代わりになる機械の乗り物ですわ。」

「”導力バイク”は機械ですから当然馬のように馬自身の疲労や餌の準備と言った生物に関して発生するその他諸々の問題は発生しませんし、”導力車”と違い、狭い道や山道と言った所も走行可能ですから、主に街道を外れた場所を散策する遊撃士達が購入しています。」

「まあ……それは便利ですね。」

(フム、確かに馬と違って生死を気にする必要はない上、疲労もせぬから便利だの。)

「………あの横についている物はなにかしら?」

シャロンとアリサの説明を聞いたシュリとハイシェラは興味ありげな表情を浮かべて導力バイクを見つめ、導力バイクに接続されているサイドカーが気になったロカはアリサ達に質問した。

「あちらは”サイドカー”といいまして、導力バイクを運転をしない方が乗り込む事で導力バイクの運転者の方と共に導力バイクで移動する為の物ですわ。」

「なるほどね……という事はサリアとレシェンテ、後はナベリウスはサイドカーに乗る事が決定ね。」

「なんじゃと!?わらわもあの導力バイクとやらを運転したいぞ!」

「サリアも運転したいです〜!」

「………わたし……座っているだけで移動……楽……サイドカー……いい………」

サイドカーの説明を聞いたマリーニャの提案を聞いたレシェンテとサリアが反論している中ナベリウスだけマリーニャの提案に頷いていた。

 

「レシェンテとナベリウスの背では運転するのに無理があるし、馬術の経験もないサリアには危なすぎる。――――それよりも俺達の為に特注で作ったと言っていたが、どこが特注なのだ?」

「あ、はい。通常導力バイクは戦術オーブメントのように導力バイクを動かす為に燃料である”導力”が必要なため、”導力”が無くなれば”導力”の補充を必要とする手間が発生しますが、これらの導力バイクはセティさん達――――”工匠”の方々の協力によって、止まっている時は勿論走っている時も自動的に”導力”が補充され続けるため”補充”の手間を必要としないのです。」

「あら……”燃料の補充”も必要としないなんて、とても便利ね。さすがはウィルの子供達ね。」

「はい。”導力”を自動的に補充させるという事は、もしかして”導力”を自動的に回復させる為のアクセサリーやクオーツ等もこれらのバイクに内蔵しているのでしょうか?」

セリカの質問に答えたアリサの答えを聞いたロカは感心した様子で導力バイクを見つめ、シュリは自身の推測をアリサ達に訊ねた。

「フフ、まさにその通りですわ。」

「それにしても”導力技術”が存在しない異世界の方の割には随分と”導力技術”についてもご存知のようですが………どなたか、知り合いに教わったのでしょうか?」

シュリの指摘にシャロンが頷いている中アリサは不思議そうな表情でシュリに訊ねた。

「シュリは元々技術関係を学んでいて、”匠王”であるウィル様や導力技術に詳しいゼムリア大陸の知り合いからも”工匠”や”導力技術”についても学んでいたから、シュリはこう見えても技術関連にはとても秀でているのよ♪」

「マ、マリーニャさん。幾ら何でもさすがにそれは言い過ぎですよ………」

「フッ、だがウィルに加えて”三高弟”の一人であるラッセル博士の孫娘から学んだのだから、そこらの技術者よりはシュリの方が圧倒的に優れていると思うぞ?」

マリーニャの答えを聞いたシュリは恥ずかしそうな表情で答え、その様子を見たヴァイスは口元に笑みを浮かべて指摘した。

「ええっ!?”匠王”に加えてあのラッセル博士の孫娘からそれぞれの技術を学んだのですか!?」

「うふふ、シュリ様は技術の師にとてもめぐまれた方なのですわね♪」

ヴァイスの話を聞いたアリサは驚き、シャロンは微笑みながらシュリを見つめた。

 

「………それで?ARCUSUに加えてこんな物までわざわざ用意して、何故俺達に何の見返りもなく渡す事にしたんだ?」

一方ヴァイスの真意が気になったセリカはヴァイスに真意を訊ね

「それは勿論”ディル=リフィーナ中にその名を轟かせている程の使い手であるセリカ”が旧知の仲とはいえ、わざわざ世界を超えて俺の頼みに応えてクロスベルに来てくれたのだから、俺からのせめてもの感謝の気持ちだ。ARCUSUに導力バイク……どちらもお前達にとってはお前達の世界でも役立つ物だから、金にも困っていないお前達の場合、金よりもこういった実用的な物の方が助かるだろう?」

(クク、確かにセリカはその名をディル=リフィーナ中に轟かせてはいるが、少なくても良い印象ではないだの。)

「………確かにな。――――そういう事ならば、ありがたく受け取っておこう。」

ヴァイスの答えを聞くとハイシェラが口元に笑みを浮かべて指摘している中、セリカは納得した様子で導力バイクを見つめた。

 

こうして再びクロスベルの地に現れた”神殺し”セリカ一行はヴァイスの厚意によって導力バイクを手に入れた――――――

 

 

 

 

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という訳で今回の話でセリカ達がクロスベルに現れ、まさかの導力バイクを手に入れました!セリカにバイク……何気に似合っているような気がしますwwそして今回の話で原作では登場しなかったフランが出番はちょびっとですが姉のノエルよりも早く閃Vで登場しましたww

説明
第37話
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コメント
本郷 刃様 セリカって孤高のイメージもありますから(というかスキルでホントにあるし)バイクは似合うでしょうね(sorano)
セリカがバイクに乗るとか、似合うなw(本郷 刃)
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