ビーストテイマー・ナタ44 |
ゲイザーはフラウの涙を手で拭いました。
「あなたは私の事を軽蔑しているのでしょう?ただ欲望に溺れた、愚かでだらしない女だと思っておられるのですよ」
「そんな事は思ってもいません。私はあなたを賢くて美しい完璧な女性だと思っています。私にはもったいないくらい素晴らしい人ですよ」
「だったらどうして私を求めてくださらないのです?」
「私は自分自身が許せないのです。ただ欲望を満たす為だけに、あなたを抱いてしまっている事が愛情だと呼べますか?」
「あなたから抱かれている時、私は愛情しか感じていませんでした。嫌だと思った事は一度もありません」
「例えそうだとしても、あなたを抱いた後にいつも後悔しています。欲望に打ち勝てない自分自身を殴りたくなる時があります…」
「なぜ後悔するのです?私は後悔などした事がありません」
「私には人の愛し方がわからないのです。誰も傷付けたくないのに、私はいつも誰かを傷付けてしまう…」
ゲイザーは立ち上がって上着を羽織りました。
「こんな時間にどこへ行かれるのです?」
「眠れそうにないので、少し外の風に当たって頭を冷やして来ます…」
深夜でも裏通りにある酒場には、まだ明かりが灯っていました。
「良かった…。まだここにおられたのですね」
「おう!お前、ゲイザーじゃねぇか…。どうかしたのか?」
以前ここで会った獣人の男は酷く酔い潰れており、寝ぼけ眼で返事をしました。
「妻と夫婦喧嘩をしましたので、相談しに参りました」
「もう夫婦喧嘩になったのか!まだ新婚ホヤホヤじゃねぇか…。一番楽しい頃だろう?」
ゲイザーは掻い摘んで夫婦喧嘩の経緯を説明しました。
「それはゲイザーの方が悪い!嫁が可哀想だ」
「私が悪いのですか?それはなぜでしょう…」
「俺なんてさー、お願いしても嫁が嫌だって拒否するんだぞ?嫁の方から迫られて悩んでるなんて、贅沢な悩みだ!」
「私は妻を愛していますが、妻と一緒にいるとすぐにいけない事を考えてしまうのです。騎士として恥ずかしい考えだと思います」
「はぁ?一体、あんたはどんな教育を受けて育って来たんだ!親の顔が見てみたいよ…」
「すみません、厳しい家庭だったもので…。他の人からも同じような事を言われた事があります。私の家庭の教育の仕方が間違っていたのでしょうか?」
「うーん。間違いと言うか、あんたよくその環境で捻くれずに育ったなぁ。俺はあんたの事が心配だよ…」
「いえ、捻くれてしまって成人後すぐに家を飛び出して実家には帰らないのですが…。母が心配しているでしょうけど、たまに手紙を書くだけです」
ゲイザーが家に帰るとフラウは涙で枕を濡らしていました。
「フラウ…。まだ起きていますか?」
「寝られるわけがないでしょう…?」
「私が全て悪かったです。反省しましたので、許してくれませんか?」
「ゲイザー様は何も悪くないです。私がワガママなのが全て悪いの…」
「もし眠れないのでしたら…、抱いてもよろしいでしょうか?」
「本当は抱きたくないのでしょう?」
「いえ、本当は抱きたくて堪らないのをずっと我慢していました…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第44話です。 | ||
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