ビーストテイマー・ナタ58 |
ゲイザーとサラは丘の上の教会にデートに来ていました。教会の裏の岬から遠くを眺めています。
「こんなところへ、なぜ連れて来たんです?」
「良い景色でしょう?」
「ええ、そうですね…」
「これをあなたに渡そうと思って…」
ゲイザーは跪くと、姫君の手を取るようにサラの左手を取りました。
「給料の三ヶ月分ではありませんが、受け取ってくれますか?」
「これってもしかして…婚約指輪?」
「安物で申し訳ないですけど、騎士団の稼ぎのほとんどは実家の母に仕送りしてしまっているのです」
銀色のリングには小さなハート形の青い宝石が付いていました。サラはゲイザーが薬指にエンゲージリングを嵌めるのをじっと見つめています。
「嬉しいです。ゲイザー様」
「私と結婚してください…」
「なんだか今日はいつもと雰囲気が違うと思ったら…」
「朝から今日はプロポーズするぞと決めていましたので…」
そのまま教会に挙式の予約に行きました。神父が受付に出て来て、紙にそれぞれ名前を書き込みます。
「ゲイザー様、今夜は一緒にいたいです」
「騎士団の宿舎は独身専用なので、女人禁制ですよ?」
「元カレには何度か連れ込まれた事がありましたが…」
「結婚したら一軒家を購入する予定です。サラと一緒に暮らせるように。指輪代よりもそちらにお金をかけようと思いまして」
「ゲイザー様と一緒に暮らせる日が来るのが、今から待ち遠しいです」
「結婚するまでは男女席を同じくするべからずと習いましたからね…」
「そんな事を言ってる騎士はゲイザー様以外に見た事ありませんよ?」
その数日後、ゲイザーは騎士団を解雇されたのです。サラは牢の中で昔の事を思い出していました。涙が頬を伝って流れ落ちます。
「やっと幸せになれると思っていたのに…。もう私の夢は叶わないのね…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第58話です。 | ||
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