アリア |
“Lascia ch’io pianga
mia cruda sorte,
e che sospiri la liberta`.
Il duolo infranga queste ritorte
de’ miei martiri sol per pieta`.”
遠征先はすでに夜半であった。各々が野営をし明日に備えて眠っていた。
薬研藤四郎は喉の渇きを覚え、水を飲もうと起きだした。するとどこから微かに低く澄んだ歌声が響いてくる。声に導かれるように近づいていくと、予想していた通り、にっかり青江が倒木に腰掛けて歌っていた。彼はこちらに気がついていたようで、薬研が口を開く前に声を掛けてきた。
「やあ、薬研。起こしてしまったかな。」
「いや。水を飲むのに起きただけだ。」
そう言って薬研は自然青江の隣に腰掛けた。
「あんたが歌を歌うなんざ珍しいな。」
「そうかな。そうかもしれないね。」
「外つ国の歌か?何と言ってるかはわからんが、優しい歌だな。」
「ふふ、そう聞こえたかい。でもね、囚われのお姫様の、悲しい歌なんだよ。」
青江はそう言ったきり黙り込んだ。
「なんだってこんな所で歌なんて。眠れねえのか。」
薬研が尋ねると、たっぷりとした沈黙の後、青江は答えた。
「……君にだから白状するけれど、少し感傷的な気分になってしまってね。」
そして小さな声で付け加えた。
「この辺りには、悲しい霊が多い。」
そう言って再び黙り込んだ彼の骨ばった薄い肩に、薬研はその小さな頭をもたせ掛け、そっと目を閉じた。
「もう一度、聞かせてくれ。そうすりゃよく眠れる。」
青江は柔らかく微笑んで再びゆっくりと歌い出した。
『私を泣かせてください
残酷な運命に
溜息をつかせてください
失われた自由に
悲しみの鎖を解くのは
憐れみだけ』
了
出典:ヘンデル作曲『私を泣かせてください』
説明 | ||
祥子さんお誕生日おめでとうございます! 私もお祝いをお贈りしたい!という気持ちと、青江さんにこの曲を歌ってほしい!!という欲望から生まれた小話。 に 妹が表紙を描いてくれました!! ありがとうそしてありがとう。 妹「にか薬はピエタ」 曲は、ヘンデル作曲オペラ「リナルド」第2幕のアリア 「私を泣かせてください」 です。 とっても叙情的で素敵な曲なのでぜひ検索して聴いてみてください。 2015年8月18日 08:07 |
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刀剣乱腐 にか薬 掌編 | ||
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