ビーストテイマー・ナタ71
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老夫婦の荷造りが終わると、ルーシーは定員オーバーなので、ゲイザーはナタにこう言いました。

 

「ナターシャ、私をカードに封印しなさい。ルーシーに乗れるのは三人が限界だからね」

 

「私もカードに封印してください。お父様とお母様はお席にどうぞ?」

 

「仮にも女王陛下だと言うのに謙虚な嫁だな」

 

「お姉さんもナタの使い魔になるの?侍従関係の契約するね!」

 

ナタは宝石箱から真っ白なカードを出して、呪文を詠唱すると、ゲイザーとフラウを二枚のカードにそれぞれ別々に封印しました。鎧を着た獣人と、シスターの絵が浮かび上がります。

 

「あっ、お姉さんもウルトラレアカードだ!ほら虹色に光ってるでしょ?」

 

「まあ!子供たちの間で流行ってるビーストカードゲームと似てるわねー」

 

「もう白いカードがなくなっちゃったから、新しいビーストカード買ってもらわないと、仲間を増やせないよ」

 

「本当にこの子供はビーストテイマーだったのか?ありえん…」

 

「あら!ゲイザーだって、このくらいの歳で剣の腕は素晴らしかったでしょ?この村で百年に一度の天才だと謳われていたくらいですもの」

 

「あれはわしが仕込んだからだ!ゲイザーが三つの頃から、毎日厳しい特訓を課してきたからな」

 

マルヴェールに無事到着すると、ナタはゲイザーとフラウを召喚しました。

 

「ゲイザー様のお父様、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「わしの名か?ゲオルグじゃが」

 

「ゲオルグ様の名義でお屋敷を登録しますね」

 

フラウは執務室で書類を作成して、ゲイザーの父親にサインをさせました。

 

「ではお屋敷へご案内致します」

 

ゲイザーとフラウの邸の近所にあった、一番豪華で大きな邸に老夫婦を連れて来ました。

 

「少し汚れているかもしれませんので、使いの者を寄越します」

 

「まあ!広いお庭。何も植わってないけど花壇もあるわね」

 

「ふむ、なかなか良い邸だ」

 

「フラウ、わざわざこんなに良いお屋敷を、私の両親に用意しなくても…」

 

「この邸は数年前、フォン様の為に建てられたのですが、フォン様は昔から住んでおられる、あの邸がお気に入りだそうで、引越されなかったので、ずっと空き家になってたんです」

 

「確かにフォン様の邸は居心地が良くて、私でも引っ越したくなくなりますね」

 

「ナタもあのお屋敷の方が好きー!」

 

邸の中に入ると蜘蛛の巣があちこちに張っていました。フラウは蜘蛛の巣を振り払いながら、言いました。

 

「やはりしばらく人が住まないとこうなりますね」

 

「このくらいなら、私でも掃除出来ますよ?」

 

「お母様は休んでいてください。今、使いの者を呼び寄せます」

 

「そんなに気を遣わなくても良いわよ?私に出来る事は私がするから」

 

「フラウ、この表札に書いてあるのは、もしやこの邸の売値ですか?」

 

「はい。なかなか買い手がつかなくて…。私たちの住んでる家はここより少しお手頃価格ですね」

 

ゲイザーは値札のゼロを数えました。

 

「私の給料の三年分ですね」

 

「ゲイザー様のお給料は、一般的な家庭の十倍ですけどね」

 

「なるほど、給料の半分を支払っても六十年ローンになりますから買い手がつかないのも、頷けます」

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第71話です。
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