ビーストテイマー・ナタ72
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老夫婦たちの引っ越しを手伝った後、ゲイザーとフラウは自宅に戻りました。もう遅くなっていたので、すぐに二人は寝室へ行きます。

 

「今日は私は床で寝ます。フラウはベッドで寝てください」

 

「なぜですか?あなたが床で寝ると言うなら、私も床で寝ます」

 

「私の今の姿では一緒に寝られませんから…」

 

「その姿で一緒に寝たら、嫌がると思ったのですか?私だって獣人なんですよ?嫌がるわけがないでしょう?」

 

「いえ、この姿ではあなたを抱く事は出来ないからです…」

 

「私が人間の姿だからですか?それなら私も獣人化します」

 

フラウは白銀の獣に変身しました。あまりにも美しいその毛並みに、ゲイザーは心を奪われます。

 

「あなたの獣人化した姿を初めて見ましたが、獣人になっても美しいですね…」

 

「私も獣人化した姿を、あなたに見られるのが怖かったのです。嫌われてしまうんじゃないかと思って…」

 

「私が今、獣人化しているからでしょうか?獣人の姿の方が魅力的に見えます」

 

「きっとそうですね。私はゲイザー様がどんな姿であろうとも、心は変わりませんが…」

 

その夜、二人は獣人の姿のままで愛し合いました。

 

「昨日は私の父を説得してくれてありがとうございました。フラウがいなければ父は決してマルヴェールに来るとは言わなかったでしょう」

 

「いえいえ、ゲオルグ様が私の事を気に入ってくださって、とても嬉しかったです」

 

「父は美人には弱いのですよ…。まあ私もそこは父に似ていますが…」

 

「ゲイザー様は美人に弱かったのですか?私にはそうは見えませんけど…」

 

「男は大体、美人に弱いです。綺麗な女性が店員だと、欲しくなくても買ってしまったり…」

 

「意外ですね…。ゲイザー様は財布の紐が硬いように見えましたが…」

 

「確かに私は金銭管理には厳しいです。そこも父に似てしまった…。ただし女性にプレゼントを贈るのは好きです。母にも誕生日には必ずプレゼントを贈っていました」

 

「ゲイザー様の選ぶプレゼントはセンスが良さそうです。以前、ナターシャちゃんにあげていたワンピースも素敵でしたし…」

 

「あれは店員に選んでもらっただけですよ?」

 

「でも最初に店員が選んだ服は断っていたでしょう?」

 

「ナターシャが地味な色は好まない気がしただけです」

 

「それが良いのだと思います。もらう人が喜ぶかどうかを判断できるのがセンスの良さです」

 

「そう言えばフラウにはプレゼントを贈ったことがありませんでしたね…」

 

「まだお付き合いして一ヶ月も経たないうちに結婚してしまいましたからね…」

 

「本当はもっと段階を経てから結婚するべきだったのですが、順序を一気にすっ飛ばして結婚してしまった気がします…」

 

「あの…、ゲイザー様にお願いがあるのです。ちょっと欲しいものがあって…」

 

「はい、なんでしょう?欲しい物が何かあるなら、プレゼントしますよ?」

 

「私の肖像画を描いて欲しいのです。ゲイザー様のご実家のリビングに飾られていた、お母様の肖像画を見てから、ずっと描いて欲しいと思っておりました」

 

「執務室には肖像画を飾るのは一般的なので、良いと思いますが、プロの宮廷画家を雇った方がよろしいかと思われます」

 

「私はゲイザー様の描いた絵が欲しいのです」

 

「私の絵は下手の横好きです。騎士団では人相書きを作る似顔絵捜査官に任命されていた事もありますが…。それは単に絵を描ける人が騎士団員には少ないからですよ」

 

「サラさんの似顔絵は描いて差し上げたのでしょう?」

 

「あれは母がサラの顔を見たがると思ったから描いただけです」

 

「サラさんは描いても私は描きたくないと言うのですか?」

 

「そんなことはありませんが、執務室に飾られるなら、もっと良い絵師を雇うべきです」

 

「ゲイザー様以外の絵師の描いた絵など欲しくありません」

 

「わかりました…。そこまで言うなら断れないですね。美人を描くのは苦手なのですが…。母もサラも上手く描けませんでした。本人は気に入ってるようですが…」

 

「私は美人ではありませんよ?」

 

「フラウが美人ではないなら、この世に美人は誰もいなくなりますね」

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第72話です。
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