ビーストテイマー・ナタ73 |
アラヴァニア大陸の辺境の地。アラヴェスタ騎士団が領主の邸を訪れていました。ドアを乱暴に叩きます。
「ゲオルグ!アラヴェスタ騎士団の者だ。ここを開けろ?」
しかし物音一つせず、辺りは静まり返っています。
「開けなければ強行突破する!これは警告だ」
しばしの間、沈黙が流れます。
「返事がないな…。よし!やれ?」
騎士団員は庭に回り込み、一面ガラス張りの部屋の前に狙いを定めて、ガラスを破ると中に突入しました。
「騎士団長!中はもぬけの殻でした」
「ゲイザーの手配書を役所に出す前に来たと言うのに、なぜ勘付かれた?」
「ゲイザーの奴が先回りして両親をどこかへ逃したのではないかと…」
「奴は騎士団員には珍しいインテリ系だったからな…。脳筋揃いの我々より、何手も先を読んで動いている。同じインテリ系のギルバートですら奴にはかなわなかったからな…」
「チェスで対戦しても奴は恐ろしく強かったです。五十回に一度しか勝てたことがありませんでした」
「一旦、城に帰還して国王様にこの件をご報告してから、手配書をアラヴァニア全土に拡散する」
アラヴェスタ城に帰還した騎士団長は国王に報告しました。
「おのれ、ゲイザーめ!小賢しい奴だ…」
「いかがいたしましょう?国王陛下」
「余も一度は奴の頭脳を見込んで、騎士団長の地位を与えてしまったが、余に逆らった時点で首をはねておくべきであった…」
「しかし逆に仲間ならば心強い…。安易に解雇にせず懐柔しておけば、優秀な手駒として使えました」
「あのように頭の回転が速い男は信頼するのは危険だ。いつ謀反を起こされるかわからんからな」
その頃、マルヴェールの執務室では、フラウとゲイザーとアークの三人が、国の今後の方針について、相談していました。
「ゲイザー様が国王に即位される事を望む者もいます。これは覆面調査で国民から意見を集めた結果です。ご覧になってください」
「私では国王は勤まりませんよ?フラウの方が国民から慕われています。前国王の娘ですからね」
「ゲイザー様は軍師タイプですからね。トップに立つより、君主に仕えて智謀を巡らす策士の方が性に合うのでしょう?」
「確かに私にはナンバーツーの方が動きやすいです。国王になってしまうと、夜の街の酒場へ遊びに行く事も出来ませんし…」
「優れた軍師がいる国は強いです。国王など飾りに過ぎません」
「ゲイザー様がそう望まれるのなら、私はこの国のお飾りになります。実質上、今この国を動かしているのはゲイザー様ですから」
「フォン様が築いた基盤が出来上がっていたので、それをそのまま活かすだけですから、簡単な仕事ですよ?」
「フォン様のやり方は私はあまり好きではありません」
「気に入らなかった部分は改正したでしょう?まだ気に入らない事がありますか?」
「いいえ、私には政はわかりませんので」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第73話です。 | ||
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