ビーストテイマー・ナタ74 |
ゲオルグとロレインはフォンから邸に招かれました。どうやら会食を催すようです。
「移住して早々に、前国王様のご招待に預かるとは…」
「フォン様もゲイザー様のご両親にお会いしたいそうです」
「あなた、くれぐれも失礼のないようにね?」
「わかっておる!わしも没落したとは言え貴族の端くれだ」
フォンの邸に案内されると、ゲオルグは不快極まりない大きなため息をつきました。
「なんだこれは…。庶民の暮らすような粗末な家ではないか?とても王族のお住まいとは思えんが…」
「父上。この邸は、い草の床がとても心地が良いですよ?」
奥の部屋に通されると木目の綺麗なテーブルの上に、生の魚を切った料理が盛られた大皿が置かれていました。フォンは酒を薦めます。
「ゲオルグ殿、よくぞマルヴェールへ、来られましたな。どうぞ、ご自由に一杯やってください」
「しょっぱい変わった味の酒だな…。それにこの料理は生の魚か?こんな獣人の野蛮な食べ物が人間のわしに食えるか!」
「あなた、これ美味しいわよ?」
ロレインは出された料理を平然と食べていました。
「お気に召しませんでしたか?マルヴェールでは刺身は高級料理なのですが…」
フォンに雇われて侍女として働いているサラが別の料理を持って来ました。植物の根を薄くスライスして、スパイスで味付けした料理です。
「お口直しにこちらをどうぞ?」
「これはなんだ?木の根っこじゃないか!人をバカにするのも大概にしろ!?」
「あなた、これも美味しいですよ。騙されたと思って食べてみなさいな?」
ロレインは物怖じせず、なんでもパクパクと、口に入れてしまいます。
「バーダックのサラダもゲオルグ殿の口に合わぬか…。サラ、とっておきのアレをお出ししなさい?」
「はい、フォン様。かしこまりました。少々、お待ちください」
サラが持って来たのはカタツムリを焼いた料理でした。
「カタツムリ!?ふざけるな!!」
「あなた、これも絶品だわー」
「お前はなんで平気で食えるんだ!?」
「これはマルヴェールでは高級食材のエスカルゴです」
「人間にこんな野蛮な料理が食えるか!人間の食べ物を出せ?」
「しかし元々、人間も野生の動物でしたから、生の魚を食べて草の根もかじっていたのです」
「わしはステーキが食いたい…」
「ある日、山火事が起きて焼かれて死んだ獣の肉を食ったのがステーキの始まりと言われておりますが、ゲオルグ殿はステーキは野蛮な食べ物ではないと言うのですかな?」
「貴族の食事といえばステーキだろう?」
「アラヴェスタの神は刺身を野蛮だと言うが、マルヴェールは神が人の形をしているとは思っておりません。自然そのものが神だと言う考え方であり、自然に手を加える事こそが野蛮だと考える」
フォンとゲオルグが話してる間に、ロレインはサラのいるキッチンへ行って尋ねました。
「あなた、サラさんよね?あのカタツムリのレシピを教えて欲しいのだけど。私も作ってみたくて…」
「エスカルゴですか?マイマイには毒がありますので、毒抜きの為にこうしてしばらくは綺麗な餌を与えて飼育するそうです」
サラはガラス瓶に閉じ込めてあるカタツムリにリンゴを与えています。
「お庭にいるカタツムリじゃダメなの?」
「あれは体内に毒がありますので、そのまま食べると亡くなる方もおられるようです。フォン様の大好物なので手間をかけてでもお出ししたのですが…」
「まあ!怖いわー。美味しいものを食べるのは手間暇がかかるものなのね」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第74話です。 | ||
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