ビーストテイマー・ナタ94
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ナタがドラゴンを出したので、子供たちがドラゴンの周りを取り囲んで、鱗のような皮膚に触ったり、尻尾を掴んだりしています。ドラゴンは鬱陶しそうな顔をしながら、子供たちからなすがままにされていました。

 

「次は神父様を救い出しましょう。ドラゴンも連れて行けますか?その方がラクに済みそうです」

 

「フハハ!久しぶりの戦だ…。腕が鳴るな?」

 

フォンは拳をゴキゴキ鳴らしました。

 

「ドラゴンのお爺さん、神父様助けるの手伝ってくれる?」

 

「別に構わんが…。わしは何をすれば良い?」

 

「城の裏にある宝物庫を襲ってください。宝物庫の中には人はいませんから、怪我人は出ないでしょうが、混乱は起こせます。その混乱に乗じて、我々が神父様の処刑台に近付いて救出します。もし時間があれば宝物庫の金品を少し強奪してください。ナターシャの使い魔のピーターを買い戻したいのです」

 

ゲイザーは城の見取り図をアトリエで作成してあったので、ドラゴンにも見える様に使いの者に両端を持たせて大きく広げさせました。

 

「宝物庫は大体、この辺りです。丸みのある屋根が特徴的ですね。入り口には見張りがおりますので、なるべく怪我をさせないようにお願いします」

 

「随分と難しい注文だな…。怪我をさせてはならない理由はなんだ?」

 

「騎士団の者にも恋人や家族がおります。亡くなれば悲しむ者がいますからね」

 

「ゲイザー様、なぜ神父様を後回しにして子供たちを先に避難させたのです?」

 

「私がアラヴェスタ軍の者ならば、先に神父を救い出された場合、次は教会の子供を人質に取ると思います。神父様を助けた後だと子供たちを全員救う事は出来なかったのではないか?と推測します」

 

「確かにそうですね。でもゲイザー様が軍師なら神父様を拷問したりしないと思いますが…」

 

「あくまでもなりきって考えています。私が軍師なら神父様を晒し者にする事はないですね」

 

「本当にゲイザー様は先の先まで読んでおられて感服しました」

 

「このくらい普通ですよ?誰でも思い付く事です」

 

「ピーターの買い戻しの件も同時進行で考えておられる事も感服しております。私には思いつきもしない手ですから」

 

「盗みはなるべく働きたくないのですが、一刻を争いますので、とりあえず今回は国民の税金の一部である金品を少々、強奪させてもらいましょう。確かピーターの金額は一千五百万でしたか?」

 

「はい、今手元には八百万ほどあるので七百万もあれば買い戻せます」

 

「わかりました。七百万だけ強奪しましょう」

 

このゲイザーの計画に反対する者は誰もいませんでした。盗みは良くない事ではありますが、それほど切羽詰まっていたのです。ナタもピーターの為だからしょうがないと納得して手伝う事に決めました。

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第94話です。
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