ビーストテイマー・ナタ109
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朝食はファンからもらったアップルパイをアークが切り分けてみんなで食べました。

 

「甘過ぎる…。母上のアップルパイには負けるな」

 

「私は美味しいと思いますけどねー」

 

「ナタもおばちゃんの作ったアップルパイの方が好きー。このアップルパイ、パサパサしてるの」

 

「母上のアップルパイは生地がしっとりしていますね。私も市販のアップルパイは口に合わないのですよ」

 

「せっかくファンが作ってくださったので、私は嬉しかったのですが、不評のようですね…」

 

「あの…このアップルパイ、変な物が入ってます」

 

フラウが一口も手を付けずに言いました。

 

「これは…毛ですね?」

 

「私のアップルパイだけ、偶然入っていたのでしょうか?」

 

「ナタのも毛、入ってるー」

 

「捨てた方が良いかもしれません…」

 

「あのファンの女性からは悪意は感じなかったのですが…」

 

「悪意はないでしょうけど、歪んだ愛情を感じますね」

 

「アイドルって大変なんですね」

 

ゲイザーが外に出たがらないのでカードに封印して、ナタとアークはアラヴェスタにやって来ました。

 

「ゲイザー様は心配性過ぎます」

 

「おじさんは勇者だから大丈夫なのにー」

 

「あっ、そうだ!ナターシャ様、ゲイザー様を鑑定に行きませんか?」

 

「もうナタは絶対カード売る気ないよ?」

 

「ゲイザー様のお値段が知りたいのです」

 

アークに連れられてナタは魔法屋にやって来ました。カウンターにゴシックファッションのバンドマンの絵のカードを差し出します。鑑定士はいつもより時間をかけて、カードを見ています。

 

「これは珍しい…。こんなぶっ飛んだステータスのカードは初めて見た…」

 

「おいくらになりますか?」

 

「今までこんなカードはなかったからな…。値段の付けようがない…」

 

「と言う事はこのカードの価値はゼロ?」

 

「いや、売ってくれるなら三億出すよ?」

 

「なぜ三億も?理由を説明してください」

 

「このカードは全部ステータスが平均的なんだが、ラックだけ飛び抜けて高い」

 

「本当ですね…。他はそれほど高くありませんが、なぜ三億にもなるのです?」

 

「ラックが高いって事は、命中率と回避率が異常に高いって事だよ?」

 

「なるほど、他のステータスは全て私が勝っていますが、ラックだけは遠く及びませんね…」

 

「例え弱くても敵の攻撃を全て回避すれば負けないし、命中が高ければ相手が強くてもいずれ倒せる」

 

「最強のカードって事ですか?」

 

「使い方次第だねぇ。こう言う特殊なカードは欲しがる人はいくらでもいるよ?売るって言うなら、ちょっと裏で現金を用意して来るが?」

 

「ナタ、おじさんは絶対に売らなーい!」

 

「なんだ、また冷やかしか?さっさと帰っとくれ」

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第109話です。
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