ビーストテイマー・ナタ110
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アークはいつものように噴水の前で練習弾きを始めます。女性ファンがちらほら集まって来ました。そこに騎士団の者が数名現れたのです。

 

「練習中にお邪魔して申し訳ありません。アーク殿、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」

 

「はい、騎士団の方が何のご用でしょうか?」

 

「私は騎士団長のテオドールと申します。以後お見知りおきを」

 

「あなたは確か昨日のライブを観に来られてましたね」

 

「実はメサイアの曲を聴いて感動しまして、あなたを宮廷楽士にスカウトに来たのです」

 

ファンの女性たちがそれを聞いてザワザワと噂話を始めました。

 

「宮廷楽士ですか?僕はここでファンの皆さんに曲を聴いて欲しいのですが…」

 

「数件ではありますが、騒音についての苦情も騎士団には寄せられていました。問題なしと捨て置きましたが、あまりにも苦情が多い場合、活動停止命令も出るやもしれません」

 

「それは脅しなのでしょうか…」

 

「いえ、そんなつもりはないですよ?私はメサイアのファンですから」

 

「騎士団の方でもロックを嗜まれるのですね」

 

「ええ、若い頃は私もリュートを少々、やっておりました。ところでダーク殿の姿が見えませんが?」

 

「兄は体調を崩していて、今日は演奏出来ないそうです。元々、兄はあまりバンドにはノリ気ではなくて、僕が無理に誘って連れて来ていましたので…」

 

昨日、ファンレターを渡して来た地味な女性が割って入って尋ねてきます。

 

「アーク様、ダーク様はご病気なのですか?」

 

「昨日のライブの後に気分が悪くなってしまったらしくて、しばらくは来たくないと言っていました」

 

「そんな!ダーク様のお姿を拝見するのだけが密かな楽しみだったのに…」

 

「ダークなんかのどこが良いのよ?」

 

昨日、アップルパイを渡して来たファンが言いました。

 

「あんたなんかにダーク様の良さはわからないわ!あの憂いのある表情が良いのよ」

 

「ダークってなんか影があるって言うか、悪の香りがプンプンするんですけどー?」

 

「喧嘩はやめてください…」

 

「ああ、ダーク様のお姿を一目で良いから見たい」

 

「おじさんなら、ここにいるよー?」

 

ナタはゲイザーのカードを見せてあげました。

 

「こ、これは…ダーク様のカードじゃない!?これ、私に売ってください!!」

 

「ダメーッ!それ三億の価値があるんだよ?」

 

「三億ってゲイザーの手配書並ねぇ」

 

テオが咳払いをします。

 

「とにかく、宮廷楽士の件はダーク殿にも伝えてください。では私はこれで…」

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第110話です。
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