なのはExtreme = Another Dimension =
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 ・ちょっとした注意とか

 

 零人「主人公の零人でーす。えっと、この作品は馬鹿作者ことBlazの処女作「魔法少女リリカルなのはExtreme」であるんですが、世界観は本編である過去の作品とは全くことなっています。理由? 作者が色々と面倒だからって匙投げたからだ。

 ってわけでこの作品はなのはExの世界観をそのままにしたパラレルってことになってるのでそこんとこよろしく。ちなみに時系列はA.s2ndのジェネシスでの戦いがなかった世界で一年経過してるって感じだとよ。自分で言えばいいものを……

 

 

 んじゃ改めて、なのはExtreme始めるとしようかッ!!」

 

 

 

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 第一話 「ありふれた日常の一幕」

 

 

 

 

 

 ……ふと。睡魔によって落ちていた意識が夢から覚める。

 だが夢から覚めたからと言って、そのまま現実の世界に引き戻されるのかと言われれば、そうではなかった。夢が終わり、一瞬だが劇場が終わったかのごとく辺りは暗くなり、実感のあるようでない意識は、まるで生まれる前か死後の世界にいるかのような闇の世界に放り出される。

 その世界が、一瞬。怖く思えた。

 

 

 ―――!

 

 

 懐かしい声がする。恐怖が薄れたのは、どこからか聞こえてきた声のお陰で、あまりに懐かしい声に、思わず涙腺が緩んだ。

 

 ―――懐かしいな。でも、この声は……

 

 かつては何度も聞いた声。聞きなれた声、のはず。なのに頭の中を探っても、その声に行き当たる人間が思い当たらない。

 なぜ。と思いたくなる。ここまで知っている、覚えているはずの声なのに。

 その声のことをどうして自分は忘れているのだろうか。

 この声の主は、一体誰だっただろうか。

 頭でそう考えるうち、意識が浮上していった。どうじに、どこからから手にした((似合う|・・・))一言を手にして。

 

 

 「―――わかってるよ。母さん」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 無意識の内に、ふとその言葉を口にしていたことに気づいた零人は乾いた目蓋を開き、まだ霞がかかったかのようにハッキリとしない意識のまま布団から起き上がる。直後、枕元に置いていたデジタル時計が鳴り響き、セットしていた時間になったので体温がこもって少し熱かった毛布をとり、起き上がろうとする。

 やや厚めの毛布一枚の中に寝間着ではなく普段着をパジャマ代わりにそのまま使うのは彼が転生する前、高校生の時からの習慣だ。

 

「………。」

 

 まだ少し頭が重く、眠気が覚めてないせいか意識もハッキリとせず、まるで記憶喪失にでもなったかのように昨日の出来事を思い出すことができない。

 そんな実感のない感覚に頭を抱えた零人はしばらく沈黙していると、浮遊感の中にあった記憶の中でゆっくりと確実にだが覚えているように忘れつつあった夢の記憶を思い出す。

 

「……お袋、か」

 

 あの時の言葉は夢の中かそれとも現実か。どちらで言ったのかは定かではないが、それでも自分がそう言ったのは確かだという確信はあった。

 

「……もうどれくらい、思い出してねぇかな」

 

 くぐもった低い声で頭を抱えながらつぶやく零人は記憶をたどり、自分の転生前のことを思い出そうとするが、まだ頭が完全に起きてないのか普段なら自然と出てくる記憶が出て来ない。

 

「あー……クソっ眠くてかなわねぇな……」

 

 まだ起きてから間もないので頭が働けてないのだろう。仕方なくまだ本調子ではない頭を抱えたまま、零人はふらふらと起き上がると自室の一角にある窓のカーテンを引き、雨戸をあけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 岡本零人。彼は転生者、と呼ばれる存在で、その名の通り第二の生を受けた人間である。

 元々は今いる世界とは異なる、極めて近く限りなく遠い世界で生きていたが、ある時に交通事故に遭ってしまい死亡。僅か十数年というあっけない人生の幕引きとなった。

 ……が。それを良しとしない神が冥界やらに行く前に零人の魂を回収。第二の生を与えることにした。その為、零人には神の力によっていくつかの「((特典|ギフト))」が与えられており、零人はその力を使い必要な時は行使していた。

 ただしただ貰えるというだけではなく、神は零人との間に特典を与える代わりに「あることを成してほしい」と頼んでいた。

 それを了解した零人は、こうしていくつもの特典と共に第二の生をスタートさせた。

 

 

「……正直。転生前の体のほうがまだマシだったな。体力なかったけど」

 

 朝食の目玉焼きを作りながら、ふと何の脈絡もなく言い出した話題は自分が転生する前、世間的に低かったとは言え高校生の身長がどれだけありがたかったのか、ということだった。

 世辞にも顔も体もよくなかったが、年相応には成長していたので身長は困らない程度にはあったらしい。その身長があれば、今の生活も少しは楽になっただろう。

 特に小学生の姿である零人は転生前よりも頭一つ以上は低くなっているので、台所も小さな台を使わなければ奥においてある調味料を使うこともできない。

 

「え。零人ちゃん、そんなに背あったの?」

 

「人並みはな。つっても頑張って170ぐらいだったから、周りと比べりゃチビだったけど」

 

 零人の話題をキッチンの向こう側で朝食の用意をしていた少女は零人よりもさらに身長が低く黒い髪をそろえ、白いワンピースを着ている。一見して大した特徴もないが、彼女の瞳は日本では珍しいルビーアイ、赤い瞳をしていた。

 名はソルナといい、零人が転生するときに神からもらった「特典」の一つである。といってもサービスに近く彼が望んだものではないが、こうして零人の身の回りの手伝いをするなど邪見にすることは滅多にない。

 

「へー……零人ちゃん、170あったんだ……」

 

「ソルナ。確かに俺、前はインドア派だったけどよ。別に年中家にヒッキーしてるニートじゃなかったんだよ。普通に学校行ってたし」

 

「あ、そうだね。それで零人ちゃん死んじゃったんだし」

 

「お前なぁ……」

 

 ソルナも神の特典ということで零人については色々と知っており、転生者であることや一応ではあるが彼の転生前のことも神からある程度の情報を取得していた。彼がかつて何をどうしていたのかまでは知らない、零人が転生者であることや、かつての事を知る数少ない人間でもある。

 

「っと。そろそろできるな。ソルナ、トースト焼いたらチビたち起こしてきてくれ」

 

「ういー。あ、あと零人ちゃん。今日さ、学校終わったらレーズンロール買ってきてね。クリスが全部食べちゃったから」

 

「アイツ、あれ買ったの二日前だぞ……」

 

 その証拠にキッチンに備えられたごみ捨て袋の中には食べ終えられた六個入りのパンの袋が捨てられていた。一日に三個というペースで食べたのだろう、と考えるのが普通だがほぼ毎朝零人とソルナがこうして朝食を作っているので、市販のパンを朝食べる機会はそう滅多にないのだ。

 

「最近、クリスがよく食べるようになったからねぇ。ランはそうでもないのに」

 

「育ち盛りなんじゃねぇか? それか高燃費なのか」

 

「どっちにしてもよく食べる娘で。零人ちゃん、預金大丈夫?」

 

「大丈夫だろうよ。いざとなりゃ神にタカるし」

 

 焼き加減を見て、もう大丈夫かな、とつぶやいた零人はこんがりとやけた目玉焼きを皿に盛りつける。白身の中にぷるん、と柔らかい黄身が揺れて、今にも弾けそうな弾力をしている。白身の広がりは均一ではないが、それがかえって目玉焼きらしいと言えて作った本人も自画自賛するように満足気な顔をしていた。

 

「うっし。今日はうまくできた。ソルナ、頼むぜ」

 

「はいはーい」

 

 こっちも用意できたよ、とトーストを皿に並べ終えたのが丁度同じだったのでソルナは軽く手を叩き焼けたパンの粉を払うと、今も寝ているだろう二人を起こすために寝室のある二階へと向かった。

 

「………。」

 

足音が遠くなり、階段を勢いよく上がる音が聞こえる。上ではソルナが寝ている少女二人を今頃叩き起こしているだろう。

自分で焼いた目玉焼きをテーブルに置き、零人は完成した今日の朝食の数々に

 

「……俺もできるようになったもんで」

 

 と自分のことながらよくできたな、と思い食卓を眺めていた。

 転生前、零人は食事のこと、それこそ料理なんてものはからっきしだった。料理は全て親任せ、自分の朝は市販のものを食べて昼は手作りの弁当を食べて。夜は母親の夕食を何食わぬ顔で食べて終える。自分で作るなど、正直子どもの頃に家庭科の授業で二、三の工程を手伝ったぐらい。簡単なものとはいえ、こうした料理を最初から作るというのは転生前であれば行えなかったことだ。

 

「ま。リョウみてーに親も居ねぇから仕方ないのかもなぁ」

 

 それが今はこうしてできるようになったというのは、零人自身も嬉しい反面自慢したいことだ。小さく傍から見ればしょうもない事かもしれないが、こうして身の回りのことが一つ一つできるようになるのは、精神的に年をとってもいいものだと感じていた。

 

 ……ただし、それが他の人間もできると言われると気分はいいものではないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「できるぞ。俺も」

 

「……は?」

 

 その後。通学路で合流した友人、霊太に今朝の話を元に話題を振ると、彼はあっけなく、そしてさも当然のように言葉を返した。

 零人ができること、つまり料理を自分もできる、と。

 この反応には流石の零人も思わず口を開けるしかなかった。

 

「いや、お前知ってるだろ? ウチは確かに親がいるけど、揃いも揃って出張で家開けることが多いっていうか、基本居ないからよ。だから、最初は俺も市販とかインスタント食ってたんだが、なんつーか飽きてよ。んで、ふと自分でも作れるんじゃねぇかって思ってよ。

で。作ったわけ」

 

「つくった」

 

「飯をな。作った」

 

「ああ。作ったのか」

 

「そうだよ。転生前から腹減ったら適当に丼もの作ってたしよ」

 

 刹那。零人の中で何かが崩れ、壊された音が響くと途端に足取りは遅くなり霊太が彼の前を歩いていく。

 

「って、なんだよ。そんなにショックか?」

 

「いや……お前も俺の同類っていうか……同じような気がしてたんだよ……」

 

「俺は別に、一言もお前と同類とは言ってねぇぞ?」

 

 いつの間にやら同類扱いされていたことと、勝手に裏切られたと勘違いしていたことに笑うこともできないどころか、同類扱いされていたことに霊太のほうが精神的に傷ついていた。人それぞれなどと言って他人のことをそこまで否定しない零人だが、思い当たることがあるとはいえ既に同類と認定されていることに、彼も流石に否定はしたかった。

 お前ほどめんどくせぇ人間はそうはいないぞ、と。

 

「第一、お前の同類つったらなのは辺りだろ?」

 

「オイ、お前それ本気で言ってんのか? 俺だって流石になのはを同類と思ったことはねぇぞ? なのははなのは、俺は俺。流石にあんな天上天下唯我独尊冷酷無比を地で行くヤツと一緒にされたらよ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――へぇ。私ってそんなにひどい人間に見られてたんだ」

 

 刹那。背筋が凍る気配を言葉の途中から感じ取り、思わず体をビクつかせた過敏な反応を零人がすると、それに連鎖して霊太も思わずつばでむせ返り、転生前のような低いせき込みをしてしまう。

 その聞こえてきた声は零人が転生してから、ほぼ毎日の頻度で耳に居る馴染みの声。明るく元気、そしてどこか優しくも危うい。顔を見ればそんな事を連想してしまう。

 厳密に言えば危ういのは自分たちなわけなのだが、と零人は付け足すが。

 

「…………えっと……なの、は?」

 

 聞こえてきた声の主が居る方向へ、ゆっくりと、しかしぎこちない動きで顔を振り向かせようとする様は、彼の意思が向きたくないのと、見なければならないという強迫観念に脅されたことによるせめぎ合いの結果で傍から見ればブリキ人形のような動きだった。

 それでもさび付いた、いや自分でさび付かせた首を半分振り向かせると、後ろ側に立っていた一人の少女を視界に捉え、零人は恐る恐る彼女の名を口にする。

 高町なのは。二人の話題に出て来ていた、零人が同類にしたくないと言ってしまった人物、その人である。

 

「おはよう。零人くん」

 

「………。」

 

 いつものように何気ない挨拶を笑顔でするなのは。

 しかし、振り返った方向を見た零人の目には周りの人間とは異なった光景が見えていた。

 栗色の髪。幼い顔。明るい笑み。そして、その笑みを覆い隠すほどに湧き出る魔力と怒りのオーラ。

 零人と霊太の視点からは笑みであるというのに彼女の表情が阿修羅か夜叉のように見えてならなかった。

 

「……阿呆」

 

 墓穴を掘った二人の光景になのはの後ろにいた、親友のフェイトはため息をついて目を逸らし、自分は弁護できないと協力を拒否。そして、さらにもう一人。零人たちと同じ転生者でありかつては敵対していたが、今は友人でありマサキは冷たく他人を見放す目でぽつりと二人を罵った。

 

「……聞こえてた?」

 

「なにが?」

 

「え゛っ……いや、その……」

 

 恐る恐る軋む口を開き、声を絞り出した零人は自分たちのしていた話について尋ねるが、なのはの笑みが崩れることはなく、まるで話を聞いていなかったかのように返す。

それが話を聞いていたという意味であるのは言うまでもない。

 

「零人くん」

 

「……は、い」

 

「覚悟はできてるかな?」

 

「か、覚悟ってまだ完了してな―――」

 

 

 

 

 

「それが((最期|・・))の言葉でいいんだね?」

 

 もはや鬼と化した彼女に言葉は通じない。というか聞いてくれるわけがない。

 その瞬間。零人の中にある防衛本能が覚醒し、足を魔力で強化させると同年代の小学生では絶対に出ないスピードで逃げ出した。

 無論。それを同じ方法で追いかけるなのはが居て、ほぼ同時のタイミングで魔力を発動して駆けだしたのだから五人の居た場所には突風が巻き起こり、その風と音を置いて行くかのようなスピードで二人の姿は瞬く間に消えていき、残った三人の視界からは三十秒と立たずに見えなくなってしまった。

 

「相変わらずおっそろしいな、オイ……」

 

「また戻ってくるぞ。そんな事を言っていると」

 

「……やめときます」

 

 このままでは自分も巻き込まれかねない、と呆気にとられながら失言した霊太をフォローしマサキはさも何事もなかったかのように二人の走っていった道である通学路を歩き出した。

 

「リョウ、偶に零人と一緒に馬鹿言っちゃうね」

 

「馬鹿というかなのはの場合地雷が多いっつーか……」

 

「……うん。それは分かるよ。私も」

 

 その後に、危険が過ぎていったことを見ていたフェイトは、遠い目で同情すると今回は巻き込まれず同罪にもならなかった霊太と軽く挨拶をして、彼の横に並んで歩きだす。

 

「なのは、偶にそういうばか話を真に受けちゃうよね」

 

「だな。まぁ、それだけ他人との関係に過敏ってことなんだろうけどよ。もう少し馬鹿と真面目を区別して欲しいっつーか。アイツの中でもう少し心の余裕を持ってほしいんだよな」

 

「心の余裕はあると思うよ。でもなのはは真面目過ぎるところもあるから、多分そこじゃないかな?」

 

「どうだろうな。真面目なのはわかるけど、あいつの場合は他人とのペースがつかめてないから、自分のペースで行くタイプだからよ。大差はないとはいえ、偶にああやって外れることもあるから、それで変な違いとかが生まれるんじゃねぇか?」

 

 自分のペースに相手を巻き込むということにはフェイトも内心では同意していた。かつて自分が関係したジュエルシードの一件といい、闇の書の事件といい。なのはは自分の中で確固たる意思を持っているが、それが時として他人を巻き込むことがあった。自分の考えを貫くという意味で取れば、それはなのはとフェイトが会ってしばらくの時の彼女が当てはまるが、それが悪い意味であれば闇の書の事件での八神家の面々との戦いが当てはまるだろう、と。

 

「正直。アイツの意思の強さには俺も感服してる。あの歳であーも頑固なんだ。だからこそアイツはあの事件をめげずに戦い抜けた。

けど、その頑固さのせいで自分の考えを他人に押し付ける時がある。他人のこと、相手のことも考えずにまずはってな」

 

「それはそうだけど、闇の書の時はヴィータたちが話を聞かなかったから……」

 

「とは言うがよ。アイツの頑固さについては思えもわかってるだろ。その意味も、結果も」

 

「……なんか、今日は意地悪だね」

 

「そうか? 俺は事実を言ってるだけだよ。ただ、本人の前では言えねぇ臆病者ってなだけでよ」

 

 本人の前では言えず、こうして陰で本音を誰かに話すしかない。そんな自分のやり方は自分でも臆病なヤツであるということは理解していた。

 だが、それでも。どうしても自分が無意識の内にそうしてしまう。本人の前では顔を窺い、線引きしたところまでした語らず。こうしてその線の向こう側のことを本人の居ないところで語る。これを臆病、卑怯と言わずして、と。

 

「残念だけど、ああやって正面から言うのは多分俺の役割じゃねぇ」

 

「……他の、零人の役割ってこと?」

 

「だろうな。アイツの場合、面倒臭くなって正面から言うからよ。俺でもあそこまで正面から言う気っつーの。度胸がないんだよ」

 

「………。」

 

 どこか達観したような顔をする霊太を見て、フェイトは思わず彼の顔を覗き込む。

 

「……なんだ?」

 

「リョウってさ。なんか、一人で抱え込むタイプだなって」

 

「どうだろうなぁ……ま。一人で何とかするってのは確かだろうけどよ」

 

「自覚してるよりは深刻だと思うな、私」

 

 転生前から、変わらないことなのかもしれない。と口に仕掛けた言葉をこらえてしまい込み、二人は通学路を歩き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――海鳴小学校

 沿岸部が近い海鳴町にある小学校は今朝も平穏無事に生徒たちが登校しており、白い制服に身を包んだ子どもたちが朝から元気のよい声を出していた。

 零人たちに遅れて学校に登校した霊太とフェイトは何事もなかったかのように教室へと入るが、その瞬間に今朝……というよりつい先ほどの出来事を思い出し、裏返った声を漏らした。

 そういえば、と。

 

「……よう。遅かったな」

 

「……お前もな」

 

「いや、コレ遅かったっていうより待ち伏せだからね。なのはだと顔が変形するからね?」

 

「お前そうやって墓穴掘るの得意だな」

 

 教室に入り、まず目に飛び込んできた光景と零人の姿に登校していた時のことを思い出した霊太は、零人がなのはと激闘のチェイスを繰り広げていたことを思い出した。うっかりと言ってしまった失言。その原因たる零人に対しなのはの制裁が行われる。それから逃れるために零人は世界最速も真っ青のスピードで爆走し、なのはもそれを追って同じようなスピードで追いかけた。

 ……その結果である零人の顔を見て苦笑しつつ内心では合唱していた。聞くよりも目の前の光景が、彼の顔が全てを物語っていたのだ。

 

「その様子だと、学校にまで逃走したはいいけど、コケてなのはに追っつかれて蹴りを二回喰らったか? ドロップと回転を」

 

「まぁアイツのスピードならできるよなー……って、アイツがそんな芸当できるタマだと思うか?」

 

「……やっぱバニングスか」

 

「まー……俺もお前が言ったようなパターンならまだよかったんだけどなぁ……ものの見事だったぜ」

 

 というのも、制裁を喰らいたくない零人が逃走しつつも学校に向かい、それをなのはが追跡していたというのは霊太の言う通り。ただ、コケたわけではなく零人の言う通り待ち伏せを受けてしまったのだ。

 学校へと逃げ込もうとしたはいいが、偶然にも同じタイミングで登校していたなのはの友人であるアリサとすずかが先に学校に来ていて校門前に立っていたのだ(厳密には入ろうとしていた、だが)。朝も早い時間なので生徒の数も少なく、逃げ切れると高をくくっていたが、零人の予想はアリサたちが居た時点で大きく外れ、そして崩れてしまった。

 学校内に逃走しようとした零人に対し、なのはがアリサに止めるように叫んだ。

 ―――手段は問わないから、止めて。と。

 朝っぱらからいきなり大声で止めてくれと頼まれたアリサも驚きはしたが、直後に向かってくる零人となのはの姿に大よその予想がついたらしく、ため息を一つつく。それが同時に深呼吸代わりになり

 

 

「朝から何してんのよッ!!」

 

「かぐらっ?!」

 

 ……といった具合に正門からストレートインしようとしていた零人に対し、アリサはピンポイントかつナイスタイミングで蹴りをかました。しかも、利き足の方の一撃だから威力は言うまでもなく激痛で、止まれない零人は無防備のまま顔面に一発。

 そして。

 

「成敗ッ!!」

 

「げほあっ!?」

 

 直後、追いついたなのはによって飛び膝蹴りを同じく顔面に食らう。威力は十分。しかも魔力によるスピードの助走が威力を向上させ、小学生の女の子が与えられるようなダメージを大きく上回り零人の顔にめり込ませた。これが二発目。

 さらにダメ押しで膝蹴りから蹴り上げを実施。まさかの二連撃に耐えられることも、守ることもできず零人は計三発の攻撃を頭部に食らった。

 

「お前本当、よく生きてんな……」

 

「とっさにイクスが頭部に防護用のバリア張ってくれなきゃ脳揺れて意識飛ぶか死んでたぜ……ったく。まさかなのはにニー喰らって蹴りももらうとは思ってなかったぜ」

 

「高町のやつ、遠距離得意っつーのに格闘させてもうまいからな」

 

「オールラウンダーっつーより確実にぶちのめせる方法知ってるだけだろ……」

 

 斯くしてそんな相手たちから攻撃を喰らいながらも生還した零人の顔にはアリサから喰らった蹴りのアザとなのはの蹴りによってすりむかれた頬にガーゼが張られていた。アリサの蹴りの痕には生々しい赤さで腫れあがっており、触らなくても痛みと感触が伝わってきそうなほどで、なのはの蹴りを喰らった部分のガーゼもかなり念入りにテープが張られており、大きさも普通のサイズよりも一回りほど大きい。

 真っ当な人間が喰らえばただでは済まないが、そこは零人たちもただの子どもではないので、デバイスが緊急防御として展開したバリアに守られてダメージが軽減しここまでの傷にとどめられていた。

 

「……で。その怪我を作った張本人たちは」

 

「なのはちゃんたちなら、多分職員室で先生らにこってり絞られてると思うで」

 

 ふと、零人たちの会話に割って入ってきた新たな声に三人は顔を声の聞こえた方へと向ける。そこにはボブカットの茶髪の少女と朱色のショートヘアの少女が、それぞれ彼らの話題に対して笑いを堪え、今にも腹から声を出して笑いそうにしている。

 なのはたちと同じく魔導師であり、闇の書の事件から零人たちと魔法について関わるようになったはやてと、彼女が持っていたかつて闇の書と呼ばれていた夜天の書の守護者でありはやての大切な家族であるヴィータ。遅れながらも大体の事情は把握していたようで、はやての顔は笑いだす寸前だ。

 

「さっきカイ先生に連行されてたからなぁ……ありゃ朝のHR延長やで」

 

「にしても、朝っぱらから災難っつーか、よくまぁそんなトラブル起こすよな零人は」

 

「ホンマやで。零人兄ぃはそういうトラブルに事欠かんからウチも見てて楽しいわぁ」

 

「お前なぁ……被害者の気持ちの考えろっつーの」

 

「そうはいうけど、大方零人兄ぃがまたなのはちゃんに不謹慎なこと言って怒らせたんやろ? 女の子はデリケートやって言ったの、忘れたん?」

 

「……そういえば、前にはやてそんなこと言ってたね」

 

 図星であり、前に警告されていたことをやってしまったので、零人も返す言葉がなく唸るだけしかなかった。

 

「ま、なのはちゃんの場合はちょっと難しいところもあるけど、例外ではないんやから。もう少し、女の子の扱いを知らんと将来お嫁さんなんて貰われへんでぇ?」

 

「言っとけ。そういってお前も男が寄り付くような性格してねぇだろ」

 

「……一理あるな」

 

「ヴィータ。お前どっちの味方だ」

 

 零人も大概な性格をしているが、はやてもはやてでどこかオヤジ臭い性格の持ち主であり、小学生ながら女性の肉体に興味を持っているので同性や家族といえど、呆れたり引いてしまうところでもある。しかも、はやての場合は前科ありなので実際は零人とたいして変わらない。

 

「この前なんてシャマルと風呂入って堂々とセクハラしてたからな」

 

「違うねんヴィータ。あれはな。ウチの中の小宇宙が言っててん。今すぐシャマルの胸揉んで演習せんとフェイトちゃんとアリサちゃんの胸が危ないって」

 

「いや、別にはやてに心配してもらうことじゃない……っていうかなんで私とアリサの胸揉むこと前提なの!?」

 

「つかお前の中の小宇宙ってなんだよ。ペガサス流星拳でも打つのか。胸揉むのに流星拳使うなんて聞いたことねぇぞ」

 

「そらそやろ。ウチが昨日考えたんやし」

 

「妄想かいッ!!」

 

 が。どうやら小宇宙については前々からだったらしく

 

「いやぁ……実はこの前、偶然見つけた動画見ててな。面白くってつい……」

 

「夏休み吹っ飛ぶ勢いのヤツ見たってか……」

 

「オイ、俺あれ見たことねぇんだけど……」

 

「ラオウ編まで読んでしまってん」

 

「お前、なんでそこと混ぜるかなぁ!?」

 

「つかお前、その漫画どこで借りてきた! あとチョイスがオヤジすぎるぞ!!」

 

 完全に別作品の話になっていたが、それでも全巻読んだらしく

 

 

「……え、そんなに年代古いの?」

 

「ああ。なんせグレアムのおっさんから借りてきたからな……アタシも読んじまった……」

 

「うん……それは、古い……ね」

 

 僅か数日と言う間に膨大な量の漫画を二人で読破したというはやてとヴィータ。その冊数の例えとして「部屋が埋まる」と言われた時、フェイトはそこまでの量なのかと驚く反面、そこまでの量の漫画を数日の間によく読んだなと、二人の暇さ加減に笑うこともできなかった。

 

「え、っていうか漫画読んで動画も見てたの?」

 

「まぁな、おっさんに漫画勧められて読んでたら面白くって、んでアニメやってたっつーからアニメも完徹して視て……おっと」

 

「……? 完徹して何か悪いの……そりゃ体にも悪いけど」

 

「いや、数日前にあの体育先生によ、色々と言われてさ……完徹するなって注意をされて……」

 

「されて?」

 

「次やったら補習って言われてる」

 

「……次は早く寝ないとね」

 

 それは仕方ない事だろう、と苦笑いをするフェイトは今度バレたらまずいんだよなぁ……とぼやきながら、寝ぐせが跳ねている頭を掻くヴィータに典型的な忠告をする。顔色も少し悪く目の下に黒いクマのようなものがあるのでまた完徹したのは明らかなことだ。

 はやてと一番仲のいいのがヴィータなので、自然とはやての行動に彼女もついて行ってしまい、気が付けば彼女と同じように夜更かしどころか完徹してしまうのだろう。ただはやての場合はヴィータよりも悪いのは彼女の目の下にできたクマの濃さでわかることで、フェイトはいつから夜更かしや完徹を始めたのだろうかと見ていたが

 

「ああ。そろそろマジでヤバイからなぁ……」

 

「ほう。なにがヤバイんだ?」

 

「そりゃ、体育先生に色々と説教と、か、よ……」

 

 刹那。後ろから聞こえてくる声に、ヴィータは今朝の零人と同じくブリキ人形のような軋んだ動きで振り返る。

 聞こえてくる声に覚えがあり、同時にその声がここに居るはずがない、居てほしくない声だったからだ。だが、声の主はしっかりと彼女の後ろに立ち、両腕を組んで仁王立ちをしている。そこには彼女たちと零人たちのクラスの担任であるちょび髭の中年ダンディである体育教師こと北村の姿があった。

 

「さて。八神両名。何か言うことは?」

 

「う、ウチも……ですか」

 

「……いや、そこは……その……」

 

「……あはははは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケ〇シ〇ウが悪いってことで……」

 

 直後。朝一番の北村の怒号が教室内、そして学校内に響き渡ったのだった。

 そして。これもまたほぼ日常の出来事ということで慣れ切っていた生徒たちは、また八神か、とため息をつきつつ自分たちの席に座っていった。

 

 

 

 

 

 

 北村の怒号が響いた学校は何事もないように一時間目の授業を始め、生徒たちは目の前の黒板に書かれることを板書していく。書かれるスピードは大して速くないので、中には教師の板書スピードが遅いのであとで書こうと机に伏せている生徒もいる。

 零人はかろうじて前を向いてノートに書き写しているが、その目は半分ほど閉じて、意識も眠りの世界へと旅立とうとしていた。朝の授業ということで眠気の冷めない零人は欠伸をするが

 

《ちゃうねん。ウチが悪いんじゃなくて面白い漫画が悪いねん……》

 

《オイはやて。さっきから念話で話しかけてくんな。五月蠅いんだよ》

 

《ちゃうねん、ちゃうねんって零人兄ぃ……聞いてぇな……》

 

 授業中にも関わらず、念話で直接零人に文句を言ってくるはやてに零人は欠伸だけでなくため息もつき、寝ようとしているのか起きているのか分からなくなってきていた。

 しかも当のはやては完徹したせいなのか、テンションがおかしく朝だというのに異様なほどのテンションの高さだった。そんなせいで、眠気のある零人にとってははやての声は安眠妨害にしかならず、今すぐ夢の世界に旅立ちたい零人は目を閉じるが

 

《零人兄ぃ〜聞いてるかぁ? 聞いてへんとウチ泣くかない事あること言うでぇ……》

 

《勝手にしろ。こっちは眠いんだよ……》

 

《…………ベッドの下に隠した本の事、なのはちゃんにチクるで》

 

「ぶっ!?」

 

 どこでそんな事を知ったのか、零人の隠していた秘蔵のアイテムのことを話題に出し、それをなのはに密告すると言い出した瞬間に思わず吹き出してしまい、眠気に誘われるがままに倒れかけていた顔がそのまま机へと向かい倒れていく。咄嗟のことで防ぐことのできなかった零人はそのまま顔面から机に墜落。鈍い音を立てて顔を打ち付けた。

 

「えっ?!」

 

「あーあ……」

 

「あっ……ど、どうしたの岡本君!?」

 

 突然噴き出して、しかも机に向かい顔を打ち付けた零人になのははビクつき、霊太は横目で眺めていたので、その姿に頭を抱える。

 静かだった教室に突如響いた声と音に驚いたのはなのはだけでなく、板書をしていた担任の山田も年甲斐もない声で驚いた声を出し後ろへと振り返る。目に入るのは前を向いている生徒だが、その中に一人顔を伏せて腕を変な形にしていた零人が居たので、直ぐ様彼が声と音の原因であることはわかった。

 

「い、いや……居眠りしかけてたら、顔から……」

 

「だ、大丈夫……ですか?」

 

「……一応、は」

 

 顔を伏せたままの零人に気遣う山田は未だ起き上がることのない彼の姿に心配になってしまう。顔でも怪我したのだろうか、と思っているが、実際はこんな空気の中で頭を打ち付けたことに恥ずかしくなってしまったので、零人が上げたくても周りの視線を見たくないあまり上げたくなかったというのが彼の本音だった。

 この静かな教室の中で突然大きな音を出したのだ。気にする者は多く、中には実際にその方向へと振り返る生徒もいる。何が起こったのか、それを目にしたいと反射的に向けてしまう視線によって零人は頭を押さえられたように動けなくなってしまっていた。

 

「お前も居眠りとはな。夜更かしでもしてるのか」

 

「いや……ちょっと思い出したことがありましてね」

 

 一体何を思い出したのかと気になるが、兎も角突然に頭を打ち付けたことには変わりないので、頭を上げろ、と言う北村の言葉には逆らわず渋々静かに顔を上げた零人は何事もなかったかのように大丈夫、と首を縦に振る。

 

「今度と寝たら承知せんぞ」

 

「ういッス……」

 

 頭をぶつけたせいで眠気もすっかり飛んでしまい、おまけに恥じを晒したということで俯いてしまう。

珍しい彼の姿になのはたちは興味ありげに見ていた。

 

(怒ると思ったけど……)

 

(普通に恥ずかしそうだね)

 

《意外とピュアなんやなぁ零人兄ぃって》

 

《はやてちゃん、ちょっとおじさん臭いよ……》

 

 見た目はまだ幼い小学生だというのに、どこかオヤジ臭いのははやての性格であり血なのだとはやて本人が断言したことがあるのを思い出すなのは。以前、彼女の出身を聞いたときに彼女の家系に関西人が居たという話をしていたことを思い出し、彼女がその影響を濃く受け継いでいるから関西弁なのだろうかと考えていた。当人も深く考えたことはないらしく、自然とその口癖、話し方を受け入れていたという。

 しかし、だからといって関西人だからオヤジ臭いという理由にはならない。零人も関西の人間は単に人を明るくすることが得意というだけで、別にセクハラが得意ではないと言っていたことがあった。となれば、そこも自然と彼女の遺伝なのだろうか、と考えてしまう。

 

《大丈夫、零人くん?》

 

《ああ。すまん。馬鹿やっちまって》

 

《ううん。けど、どうしたの。突然驚いて?》

 

《………はやてに聞け》

 

《あー……》

 

 またはやてが何か余計なことを吹き込んだのだろうと、一人零人の顔を見てクスクス笑っている彼女の顔を横目になのはは、また何を考え付いたのかと呆れていたが、実際ははやてが零人の隠し事をピンポイントで当てただけで、彼女自身が何か悪だくみを提案したわけではない。

 それでも他人のみじめな姿に笑うという有様はなのはでなくても悪人のように見えてしまう。

 

(仲いいねぇ、二人とも)

 

(とか思ってるんだろうが、実際お前もあんまし変わんねぇぞ、高町よ)

 

 羨ましいと思っているほうが実際は、他の人間から見て羨ましいことをしてるんだぞ、と言いたかったが授業中で、それを言う気もなかった霊太はまるで遠くから見守る親のような温かい上から目線で一笑した。

 

(転生者のサガ……いやお決まりってやつなのかね。これって)

 

 彼らも転生者というだけあって、避けられないある種の「お約束」というような感じだが、転生者たちは彼女たちと友好関係というものを持っている。無論、それが一方からだったり両方だったりとパターンは分かれているが、少なくとも自分のほうから積極的に話しかけてくる転生者よりは友好的だ。かつて零人たちの他にも自分が全ての中心であるオリ主系の転生者が居たが、彼がその典型的な失敗例だったと言える。自分が物語の主人公、あらゆる補正に守られ人生の勝利を約束されていると勘違いした結果が人間としての人生の破綻だった。

 

(そういや、最近あの野郎見てないな……名前も忘れちまったし……ま、いっか。転生者なら当面食っていけるぐらいの金はあるはずだし)

 

 転生者たちの特典とは別に、彼らは転生すると神によって二つのパターンが与えられる。ひとつは零人やマサキのような一人暮らし。親が居ない代わりに、一人で自由に過ごすことができ、炊事洗濯などは自分でする必要があるが家庭の制限というものを受けない。もう一つは霊太のような家族がいる転生。普通に生を受け、両親の子どもとして育てられるというもので親の加護というものがあるが転生前と同じく、どうしても行動に制限が設けられてしまう。

 が、そこは各自転生者たちの頭の使いどころだろう。零人の場合はソルナがいるので二人で生活しており、マサキも今は自炊できるほどに自立はできている。霊太は今朝の会話の通り事実上の一人暮らしなので炊事洗濯は自前でできてしまう。

 つまり、転生したからといって何でもかんでも自分の思い通りというわけにはいかないのだ。

 

「ぷっ……」

 

「はやて、後で覚えてろよ……」

 

 図星だったことにおかしかったのか遂には笑い出すはやてに、零人は恥ずかしくも怒りの目で彼女を睨み、恨み言のようにつぶやいた。

 

「あの、ところで八神はやてさん。次、貴方が問題を解く順番ですよ?」

 

「うぇっ!?」

 

 恨み言が直ぐに現実になったかのように、気が付けば自分が板書された問題を解く番であることに気づかなかったはやては不意打ちを喰らった顔で前へと振り返り、黒板にいつの間にか書かれていた問題を見て、話を聞いていなかったので裏返った声と一緒に汗をにじませる。そういえば今は授業中だったと、完全に時間どころか自分が何をしているかさえ忘れていたというはやての顔は引きつった口がひくひくと動き、黒板に書かれた問題を目で流して、そのまま目線を黒板から外した。

 

 

 

 

 

 

「めっちゃ気まずかったわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 一時間目の授業を終えて、休み時間になると開口一番に机から立ち上がり怒鳴り出すはやて。あまりに突然の出来事に周りの生徒たちは驚き、近くの席だった零人やなのはは思わず耳を塞ぎ、零人は反射的に歯を食いしばる。子どもとはいえ少女の声は高いので一瞬だが金属音のような声に耐えられなかった。

 

「って、自業自得だろうがよ!!」

 

「それでも気まずかったのは確かやろ!!」

 

「俺も気まずかったわ、恥ずかしかったわ!!」

 

「そやけどウチまで巻き込まれるのは予定外やぁ!!」

 

「授業聞いてなかったお前が悪いんだろうが!! 後で当てられたヴィータの顔見たか!? わかってるけど、答えていいのかっつービミョーな顔してたぞ!!」

 

 自分で零人を弄っておいて、そのせいで自分が巻き込まれたというが零人の言う通り、彼女のやったことは自業自得としか言えず自分の蒔いた種で巻き込まれてしまったのだ。これが零人のせいであるとは流石にはやても言わないが、彼女の言い方はもはや彼が悪いと言っているのと同じだった。

 あまりの恥ずかしさと怒りにはやては零人に組み付き、零人もそれに抵抗して膠着状態を作り出す。が、それが長く続かないのは言うまでもなく、力のある零人が勝りはやての首を絞めつける。

 

「零人兄ぃのドアホぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「俺のどこが悪いっつーんだよ! 諸悪の原因お前だろうが、いつものことながら!」

 

「ウチの予定では零人兄ぃが赤っ恥かいてその間に優雅に問題解くっていう野望やってん! それを兄ぃがぁ!!」

 

「んなもん俺の顔見てる間に解けばよかったんだろうがよ! つか優雅にってなんだよ優雅にって!!」

 

 首絞めから抜け出し、再び組み付くはやては今度は関節技を決めるように回り込み背中から腕を首に巻き付けるが、零人も負けんとはやての頬をつねる。

いつの間にか二人はキャットファイトのような喧嘩を始めており、落ち着かせようとしたなのはは完全に入る間もなくその場でどうするべきかと硬直してしまう。

 

「え、ええっと……二人とも……」

 

「やめときなさい。当分、二人で喧嘩させとけばいいのよ」

 

「そーそー。馬鹿二人を抑えるのはこれが一番だっての」

 

「え……ええ……」

 

 男女が喧嘩をしているという光景に止めるべきではないか、となのはは機会を窺うが二人の喧嘩は止まるどころかヒートアップしている。よく見れば魔力を纏って攻撃と防御に利用しており、魔導師以前に魔法を使える人間としてこのままにしておくべきかというのがあった。が、この二人の間に入れば余計こじれるのは確実。ならば二人の気が済むまでやらせればいいのではないか。関節技が入り始めた二人の喧嘩にアリサはため息をつき、霊太は他人事のように欠伸をする。

 

「やめとけなのは。前にシャマルが仲裁に入ってボコボコにされたの忘れたのか」

 

「……あー……」

 

 止めに入ろうとしたのはなのはだけでなく、過去にはやての騎士の一人であるシャマルも同様に仲裁に入ったことがあった。だが、その時に二人は魔力を纏い、今のように喧嘩をしていたので、シャマルが邪魔だった二人は魔力で攻撃を強化しアッパーと右ストレートを彼女に打ち込んだ。結果、仲裁に入ったはずのはシャマルが返り討ちにあい、五十メートルは吹き飛ばされるという大惨事になった。

 

「あれの二の舞になるぞ」

 

「それじゃあ……このままに」

 

「なのはは少しは様子見っていうのを学びなさい」

 

「いやこれ、様子見じゃないよね……」

 

 ネコのじゃれ合いから発展した喧嘩は既に教室の後ろ側で激戦区となっており、はやては飛び蹴りをして、それを受け止めて零人は八卦((何某|なにがし))といって発勁をする。それを交わしてはやては右のストレートを入れて……と喧嘩というよりは格闘戦になりつつあった。これを止めるのは確かに難しく、巻き込まれる確率は高いだろう。

だが、それを止める方法は他にもあった。それが外部からのこの一言

 

 

「次、体育の授業だから女子は更衣室。男子は教室で着替えてって先生が言ってたよー!」

 

 

 生徒の一人が教室に顔を出し、教室内に届く声で次の授業についてと更衣室への移動を促す。女子生徒たちは気づいたり、忘れてたと声に出して慌てたりと様々な反応をして持ってきた体操服の入った袋やバッグを持って教室から出ていく。

 なのはやアリサも類にもれず、体操服の袋を持って教室から出ようとするが

 

「はやてちゃーん、次体育だよー!」

 

「ってまだやってたの……」

 

 教室の後ろにある扉からなのはがはやてを呼びかけるが、当の本人は零人との戦闘の真っ最中で互いにネコの威嚇の時の姿勢のままにらみ合っていた。

 喧嘩が中断し互いに見合った状態のまま相手の出方を待つという状態。このままいけば長時間の戦闘は必須だろう。

 

「ったく……仕方ないわね。ヴィータ、少し手を貸して」

 

「あいよ。ったく、行くぜはやて」

 

 着替える時間も惜しいので、アリサは強硬手段を取りヴィータと二人ではやての首根っこをつかむと彼女の袋を持って強引に教室から退室しようとするが、まるで本物のネコの如く嫌がるはやては引きずられながらも暴れて抵抗し、零人との決着をつけようとするが既に彼女たち以外の女子生徒はおらず次の授業の時間も刻々と迫っていたので、アリサは有無も言わさず力任せに教室の外へと引っ張り出す。

 

「お……覚えとれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「んな小物臭せぇこと言ってないで、さっさと行こうぜ。もう着替える時間がヤバイし―――」

 

 教室の扉が閉まり廊下からアリサの怒鳴り声やはやての声が聞こえていたが、零人は過ぎ去った嵐を聞き届けると立ち上がって軽く息をつく。

 

「……厳しい戦いだったぜ」

 

「何言ってんだお前……」

 

「阿呆の言うことだ、気にするな」

 

「しゃーねーだろ。はやてが逆切れしてきたんだし」

 

「まぁ……確かにあれは八神が悪いわな」

 

 机に戻り、持ってきた体操服に着替える零人は先に着替えていた霊太に、そうだろ? と返すが、零人が多少大人気なく、男子としてもムキになって女の子に手を出すというのもどうか、と難色を示していた。

 

「だからってあそこまでやるか普通」

 

「仕方ねぇだろ。はやての場合、ひっかきとか抓りとかじゃなくてガチで蹴りにかかってくるからな。なのはでもビンタなのに、アイツはグーなんだぜ」

 

「握力は確か高町より低かったんじゃないか?」

 

「ああ。だから強化して殴ってる」

 

「無駄な労力使ってんなお前ら」

 

「無駄な知識にもな」

 

「……あのよ、マサキ。お前なんでそんなに辛辣なんだ。俺なんか悪いことした?」

 

 不可抗力とはいえ女に手を出したのだから、傍からすれば男性としてどうか、と言われる案件だ。いくら子どもでしかもただの喧嘩だからとはいえ、女に対し暴力を振るっているので、いくらなんでも、とは言わなかったがマサキも彼の行動には不快感はあったらしい。

 

「いくら子どもだからと言っても、俺たちの実年齢は違うんだ。それに、相手は八神とはいえ女なんだぞ。この歳で変人扱いされたくないだろ」

 

「ならあのまま流れるままにしとけってか?」

 

「いや、もう少し年相応のやり方で止めろという意味だ」

 

「年相応……?」

 

「相手は八神だ。しかもあんな幼稚な理由で逆切れしてるんだ、正論で押し切れば―――」

 

 その場合は確実にはやての不満を買い、さらに周りから冷たい目で見られるだろう。暴力を使わずともと言いたいところだが、マサキの意見の場合は大人ぶっていると反論されるとわかっていた零人は直ぐに返す。

 

「その場合、はやてがキレるぞ」

 

「………。」

 

「アイツ大人のようで子どもみたいな所あるからな。下手踏んだらさらにややこしくなる。つか、それ以前に流れにサーフィンするコイツにそんな理性的なことできねぇだろ」

 

「うぉい。俺が野生児だって言いてぇのか」

 

「え。そうだろ?」

 

「いっぺんシメてやろうか霊太」

 

 霊太の言葉に頭に血の上った零人は青筋を浮かべて彼を睨みつける。本当のことを言ったまでだろうが、と霊太も不快感を見せ互いににらみ合ってメンチを切り今度は霊太と一触即発の空気を生み出してしまう。

 が、その空気に慣れていたマサキは他の生徒とは異なりため息をつくだけで、恐れたりすることはなく、ぽつりと

 

「子どもか……」

 

 とつぶやいた。

 

「一応子どもだい」

 

「中身おっさん臭いけど子どもじゃい、姿は」

 

「………。」

 

 

 

 

 

 ―――体育の時間。

 着替え終えた零人たちのクラスは男女ともにグラウンドに移動し、そこから男女別れて授業を行う。彼らのクラスは担任と副担任がいる二人体制なので男子に一人、女子に一人とそれぞれ分かれて教師たちが授業を行うことができ、トラブルの際にも教師が二人いることで対応も早い。また幸運にも教師も男女別れていたので、零人たちの方には北村がなのはたち女子には山田がつき、同性である生徒たちと季節にあった授業を行う。

 

「にしてもよ。男女別れての授業なんて、なんか差別感じるな」

 

「そうか? 女子どもが変なことや難癖付けるよかマシだと俺は思うけどな」

 

「まぁ、そうなんだけどよ……」

 

 炎天下……とまではいかないが日差しの強い日の下で体育座りになって整列する男子生徒たち。零人と霊太もその中に紛れ、担任であり体育教師である北村の話を聞きながら小声で話をしていた。

 体育教師であり彼らのクラスの担任でもある北村は典型的な熱血系の教師だが、単純な昔ながらのではなく、時に厳しく、時に優しい。いわゆる親のような性格の教師で彼を慕うのは教師生徒共に学校内にも多い。なので生徒たちの気持ちもわかる彼は話を短く切り上げると、さっそく今回の授業の内容を告げる。

 

「では準備体操の後、男子は今回トラックを十周ほど走ってもらう」

 

 北村が言った直後。生徒たちの間からえー、と不満の声が上がりそれぞれ何故だ、どうしてだとわめいていた。零人たちも例外ではなく、嫌悪感丸出しの零人と霊太は本音丸出しで嫌な顔をしている。彼らの顔を見て言いたいことは分かる、と北村も怒鳴りはしないが理由を説明する。

 

「ま、そうなるな。だが、今年の夏休み前に近くの自然公園で体力測定も兼ねた長距離走を実施するのはお前たちも知っているだろ。その為の体力をつけるためだ。夏場だからと言ってだらけていたら夏休みに疲れるのは自分たちなんだぞ」

 

 北村の言葉に生徒の何人かは俯いたり、目を逸らして視線を外す。どうやら彼の言葉が刺さったらしく中には目を逸らす生徒を見て笑う者も居た。

 その中には転生後はマトモに運動している零人ですらも顔を逸らしている。

 彼の言う通り、夏休みの前に全学年対象の長距離走が実施されることは五月の時点で告げられていた。それを忘れていたという生徒もいるが、本当にするのか。今しなくてもいいではないか、と思う生徒たちも多い。

 

「女子も文句は言っていたがちゃんとしていたんだ。男だけが楽してるというのも、締まらないだろ? 別に女にモテる持てないやメンツは関係ない。今後女子に馬鹿にされたくないのなら、それ相応の実力は持っておけということだ」

 

「先生ぇ、腹減ったので休んでもいいっすか」

 

「いいわけあるか。不知火、お前だけ二周ほど足してもいいんだぞ」

 

「そりゃ勘弁……」

 

 完全に逃げの言い訳をした霊太に対し北村が目も合わせずに素早く返す。それには面倒ごとが増えることは嫌だと霊太も従わざるえず、小声かつ不満ありげな言い方ですみません、と言うと押し黙ってしまう。

 季節が夏に近づきつつあったので、グラウンドも零人たちが思っていたよりも熱を帯び、むしむしと地面と空からの挟撃をかけてくる。そんな日に十二周も走るのは零人も他の生とも嫌だったので、それ以上の言い訳をいう者はいなかった。

 

 

 

「男子はランニングのようね。でも北村先生のことだから、それだけで済まないとは思うけど」

 

 一方、男子の一団と少し離れた距離で準備体操を終えていた女子は男子生徒たちの授業内容が微かに聞こえてきたので、ランニングであることを知るとアリサは授業時間的にそれだけでは終わらないと予想し、すずかとなのはも同意見だったようで、恐らく何かしら残った時間で別のことをするのだろう、と口をそろえていた。

 ただフェイトは、そうだろうか、と否定的だったので

 

「そうかな……? 私は多分、時間がないと思うけど……」

 

「あれ、フェイトちゃんはアリサちゃんの予想否定派?」

 

「なんとなくだけどね。でも、アリサの可能性だってあると思うし……半分は直感かな」

 

 とこの後のことを想像する。彼女の予想では男子生徒の中にも足の遅い生徒がいるので、彼が遅いせいで時間を多く食うのではないか、と考えていた。

 

「うーん……フェイトにそう言われるとそうなりそうな気もするわね……」

 

「でも、ウチのクラスってそんなに遅い子いるかなぁ?」

 

 同学年の中でも零人やなのはたちの居るクラスは特に身体能力のレベルが高く、魔導師として肉弾戦を戦う零人たちはもちろんのこと、彼らほどではないが同年代の中でも体力に自信のある生徒は多い。……若干一名、忘れ去られている生徒を除けばだが。

 その忘れている一名のことを思い出せず、なのはは十周走り切って、また別のことをするというアリサの予想に賛成していた。

 

「ほらほら、男子の予想をしてへんで、こっちはドッチボールやでみんな」

 

「はやくチーム分けしようぜ」

 

 男子生徒たちの授業についての予想で談義していたなのはたちに、ボールを持ったヴィータとはやてが待たせている生徒たちの代わりに声をかける。二人の後ろには既に二組に分かれて、もう一組とは違いまだ始まらないのかと待っている女子生徒たちが居たので、それに気づいたなのはたちは申し訳ない顔でドッチボールのチーム分けを始める。

 それと時を同じくして、遅れてだが準備運動を終えた零人たちは、北村のホイッスルに合わせてランニングを開始。横目でなのはたち女子生徒たちの様子を窺いつつもグラウンドのトラックを走り始めた。

 

「いいよなぁ、女子はドッチでよ」

 

「俺は勘弁だな。ドッチは嫌いでよ」

 

 走り出して早々にドッチボールを始めていたなのはたちの姿に、霊太が声を漏らす。ランニングとはいえ暑い日に走る気は到底起きないのか、他の生徒たちが早く終わらせたいと足早に走り出したのに対し転生者三人はつかず離れずを選択し、他の生徒たちよりも少し遅い速度で走っていく。

 

「へぇ、お前ドッチとか嫌いだったのかよ」

 

「ああ。あまりいい思い出もなし、やる気にはなれなかったな」

 

「いじめっ子のトラウマってやつか?」

 

「うるせぇよ。ああいうので自分の力を示したい奴らが嫌いだっただけだよ」

 

 適当な速度で走り、先頭集団を眺めながら言う零人の表情に、霊太は言葉を返さずにふーん、と答えると同意することも否定することもなく、そこで話を打ち切った。

 しかし今度はその近くを走っていたマサキが二人に聞こえる程度の声で話に加わる。

 

「俺もだ」

 

「なんだ、マサキもかよ」

 

「子供の頃、そんなことを経験したせいか運動を力の見せどころ、暴力の見せ場としか見えなくなった。だから、俺はそんな場所には居たくもなかった」

 

「………。」

 

 根暗な奴らだな、と二人の過去の話についての感想を口にせずため息をつくと三人は遅れ気味だった速度を少し上げて先頭集団のあとをついていく。無論、三人の運動能力は彼らよりも上なので本気を出せば前に出ることはできる。だが、無駄な体力やそもそもあまりトラブルを起こしたくないという考えで目立たず目立ち過ぎずの位置である中間点がベストポジションであることをわかっていた彼らは適度な距離を保ちながら息苦しい様子もなく先頭集団の後をついて行った。

 

「……そういやよ。飯のあとの授業ってなんか変わってたんだっけ」

 

「ああ。なんか児童委員かなんか決めるためのだってよ」

 

 走っているだけで暇だな、と考えていた零人はふとこの後の授業のことを考えると今日の時間割に変更があったことを思い出し話題を二人に振る。

 児童委員会、いわゆる中学高校の生徒会のようなものの委員を決めるために、選挙演説のようなものをすると言っていたので、それに丸々一時間が消えることを覚えていた霊太はラッキー、と小声で漏らす。

 同じくマサキはその時間のことについては覚えていたようで

 

「そういえば、その委員に八神が立候補してたな」

 

「はやてが? ああ。そういやそうだったな」

 

 前に総合の授業時間を使って誰が立候補するかという話題が出た時にはやてが挙手し、出ることを決めていた、ということがあったので零人は物好きだな、とつぶやいていたのを思い出す。

 

「けど、委員会ってなにするんだっけか」

 

「さぁな。俺寝てたし」

 

「生徒の自由だろ。校則の緩和と規制、そんなところだ」

 

「なんかねぇ……ま、後ではやてに聞くか」

 

 

 

「にえっきしっ!!」

 

 ドッチボールのコート内で盛大にくしゃみをするはやては、その反動で腹が引っ込みボールがそこを通過したおかけでアウトから免れる。ボールはそのまま後ろにいたすずかの下へと跳ねたので、すずかはすかさずキャッチすると相手コート内のなのはたちに投げ返す。

 

「は、はやてちゃん大丈夫?」

 

「んっ……はぁ……大丈夫、心配かけてごめんなすずかちゃん。おかげでなんか知らんけどアウトならずに済んだわ」

 

「まさかコケる寸前にくしゃみしてボールをかわすとは思ってもなかったけどね……」

 

「運がウチに味方してくれたわ。けど、誰が噂してたんやろうな……?」

 

「零人君たちじゃないかな? なんか走りながら話してる様子だったし」

 

 すずかの言葉にボールをよけつつもトラックで走っている零人たち男子の様子を見るはやては、なるほど確かに呑気にしているな、と軽く息をつく。

 

「案外、誰が好みかって話してるんかもな♪」

 

「へっ……そ、それって……」

 

「んふふふ……零人兄ぃ以外と狙ってる子も多いからなぁ……はてさて誰が兄ぃのお眼鏡にかなうのや―――」

 

次の瞬間。

 

「あ、はやてちゃんッ!!」

 

「え……?」

 

 相手コートに居たなのはがボールを投げ終えた直後、顔を横に向けていたはやてを見て思わず彼女が叫び、それにはやてが顔を振り向かせる、がその時には全てが遅かった。

 直後、はやての顔面にボールが直撃。正面から受けたはやてはその後、目を回してその場に倒れてしまった。

 ちなみにその時のはやての言葉は

 

 

「メロンッ!?」

 

 

 だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

零人「えー青少年並びにあの時まだ厨二の思春期真っ盛りだったクソガキども。作品主人公の零人だ」

 

なのは「なんかすっごい開幕からひどいこと言ってるよ零人くんッ!?」

 

零人「気にするな。大抵の野郎は俺たちや作者と同じだよ」

 

なのは「あー……それは否定できない。ってそうじゃなくて予告予告ッ!」

 

零人「はいはい。時間もねぇし、タイトルな。次回「選挙と選択と全力と」」

 

なのは「次回もリリカルマジカル、頑張りますッ!」

 

零人「だといいんだけどねぇ〜……って霊太のヤツ、なに叫んでんだ?」

 

 

 

説明
自分がかつて書いていたなのはExのパラレルストーリーです。詳しいことは最初に主人公が話しまーす。
以下、作品のイメージソング

OP「Anything Goes!」 仮面ライダーOOO(オーズ)より
ED「シャイニングパワー」 イナズマイレブンより
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タグ
シリアスとカオスのごっちゃ混ぜ 魔法少女リリカルなのは 

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