ビーストテイマー・ナタ123
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三十年前の宮廷食堂。騎士団員たちがミネルヴァの噂話をしています。

 

「やっぱりミネルヴァは一番イイ女だよなぁ」

 

「そうか?ミス・アラヴェスタに選ばれてお高く止まってる気がするぞ…」

 

「そりゃお前、こっぴどく振られたからって逆恨みしてるだけだろ?」

 

「他の侍女なら、ちょっと誘えばやらせてくれるんだが…」

 

若かりし頃のユリアーノが、宮廷食堂に現れてビュッフェをトレーに盛り付けると、ミネルヴァの噂話をしている騎士団員の隣に腰掛けました。

 

「綺麗なバラにはトゲがある。ガードが固いのは自分を安売りしたくないからだろう?」

 

「ユリアーノなら顔も良いし、ほっといても女が寄ってくるだろう?」

 

「それが挨拶をしただけで逃げられてしまうんだ。私の何がいけないのだろう?女の扱い方は本には載っていないからわからない」

 

「百年に一度の秀才って言われてるユリアーノでもわからない事があるんだな」

 

「すまないが私に女の口説き方を教えてくれないか?」

 

「壁際に追い詰めて、お前が好きだと言いながら、壁を手でドンッ!とやると良いらしいぞ?女はそれでグッと来るそうだ。侍女たちが話してるのを盗み聞きした」

 

「そんな紳士的ではないやり方で、本当に女が落とせるのか?今より嫌われそうな気がするのだが…」

 

「ああ、でもユリアーノみたいなイケメンに限ると女どもは言ってた」

 

「うーむ、騙されたと思ってやってみるか…。今以上に嫌われる事はないだろうし、当たって砕けてみるよ?」

 

ユリアーノはミネルヴァが廊下を掃除をしているところに近付きました。教わった通り、壁際に追い詰めてから手を壁にドンッと置きます。

 

「ユ、ユリアーノ様!あの…、私に何のご用でしょう?」

 

「えっと、その…。今日は良い天気ですね!」

 

「ええ、そうですね…」

 

ユリアーノはどうしても好きだと言えず口をもごもごしています。ミネルヴァも胸のドキドキが収まらず、息が苦しくなって来ました。

 

「その手を退けていただけますか?こんなところを人に見られたら変な噂を立てられて困ります」

 

「ああ、すみません…」

 

ユリアーノが壁に置いていた手を退けると、ミネルヴァは小走りで逃げて行きます。様子を見ていた騎士団員が物陰から出て来て、落ち込んでるユリアーノの背中をポンっと叩きました。

 

「ダメだった…。ますますミネルヴァに嫌われてしまった」

 

「まあ、そう落ち込むなって!お前なら他にいくらでも相手はいるさ。なんなら女を紹介しようか?」

 

「父上から成人したら恋人を作れば良いと言われていたが、成人しても恋人の作り方がわからないのに、一体どうやって作れと言うんだ?」

 

…つづく

説明
昔、書いていたオリジナル小説の第123話です。
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