まじこい 外伝『川神の永い夜』 第一幕 |
いやー、夏も間近だっていうけど、今日の涼しさは心地いいねー。屋上へ昼飯を食べにきたかいがあるってもんだよ。
「ぼうやー よいこだ金だしな〜♪」
ぺちぺちと小気味良い音に合わせてゴキゲンに歌うユキ。
「かーねがなければケツだしなー♪」
「これこれ、あやしい替え歌を人の頭でリズム取りながら歌うのはやめなさい」
頭を楽器代わりに使われることより、俺は歌の内容が心配でならなかった。いつものこととはいえ、ユキは一瞬先の行動や発言が読めないから余計に心配だ…
「んもぅ、これからがいーところなのにー。ハゲは早すぎるよ」
「こらユキ。思春期の男子に向かって早いなんていっちゃいけませんよ」
「あはははー。準はロリではやい〜♪ で、何が早いの?」
「そういうことを聞いてもいけません」
まったくユキときたらいつもこの調子だからなぁ… まあ、俺はユキがそれで楽しいなら構いやしないんだけどな。
にしても若はさっきから考え事か… 何かの冊子に目を通しながら時々ため息もついてるようだけど、若にため息をつかせるようなことが書いてあるアレは一体なんなんだろうな……
「やれやれ… どう進んでもロクな結果が待ってませんね」
「若、それには一体何が書いてあるんだ?」
「これですか? そうですね… 言うなれば『未来ノート』みたいなものでしょうかね」
「おー、未来のぅと…… 僕がましゅまろをたくさん食べられる日とか書いてあるのかな?」
興味深そうに若の手にある冊子に顔を近づけるユキ。何やら匂いもかいでいるようだが… 匂いなんかで何かわかるのか、あれ?
「なーんて少し洒落た表現をしてみましたが、ちょっとした計画書みたいなものですよ。いろいろと忙しい身ですからね。今後の予定など忘れたら困ることが書いてあるだけですよ」
「なーんだ、つまんないのー。準がフサフサのイケメンになれるとか書いてあったら笑ってあげようと思ってたのに、残念」
「イヤこれ好きで剃ってるだけだから。ってか最初にこれやったのユキでしょうに」
「ヌ?」
いやそんなかわいらしいしぐさで小首を傾げられてもごまかされは… って、この顔は本気で忘れてそうじゃないか?
「あー、ところで若。困ることで思い出したんだが、最近F組との空気がやけに悪くなっている気がするんだよなぁ。ウチも多かれ少なかれ嫌ってる連中ばかりだけど、向こうもそれに輪をかけてひどいっつーかなんつーか…」
「互いが認め合った上で競い合うなら私も良いとは思いますが、今の状態ではただ感情的に敵意をぶつけあっている状態ですからね… 私としても大和君のいるF組とはできるだけ良好な関係でいたいものです」
「まーそのために俺が孤軍奮闘でもないが、時々F組に赴いて心のオアシスを求めに… いや平和的解決策を探りにいってるわけだしな」
とはいうものの、いくら俺たちとF組の有志がうまく事を運んだとしても、少なくともウチの連中の足並みは揃わないだろうな…
「若、なんかこういい手段はないもんかね?」
「そうですね… 政治の世界ではトップ同士が話し合う前に、事務クラスで先に話を詰めてしまってから形だけの協議と調印をもって物事を決定するというやり方がありますから、我々もこれにのっとってやってみるのがいいと思いますよ。幸いにもF組には『軍師』と評される大和君がいるわけですし、彼がその気になってくれればうまくいくのではないでしょうか」
「ふむ、直江大和か。確かにあいつならうまくやってくれそうな何かを持ち合わせてるだろうな」
「むしろこの状況なら彼が先に動いてくることも考えていたんですけどね… 思っていたより彼は奥手のようですが、遅かれ早かれ同じ考えには達しているでしょう。問題は、大和君が僕に対してあまりいい感情をもってないことですね」
「むー。トーマはいい子なのに信じてないなんてひどいなぁ。そんな悪い子は三つにたたんで大きなゆで卵をスライスする奴でこうすぱーっとしちゃうんだー」
「そんな猫とネズミが追いかけっこするアニメに出てきそうなことを考えてはいけません」
「おうべいかー!」
パシーンといい音が響き渡る。ユキはどんだけ俺の頭がお気に入りなんだろうな、本当に…
「ま、そういうことなら細かい段取りは若に任せた方がよさそうだな」
「ですね。こういうことは私の方が適任でしょうから」
「僕は何をすればいいのかな?」
「ユキは私たちの応援をしてくれるだけで充分ですよ」
「それじゃあ新作紙芝居を作って、頑張るトーマを癒しちゃおう〜! るんたたるんた〜♪」
「ふふっ、期待してますよ」
んー、若には悪いがユキの紙芝居で心癒されるというのはイマイチ理解できないぜ。あの見終わった後のえもいわれぬモヤモヤ感ときたら… っと、予鈴が鳴っちまったな。
「さぁ、そろそろ戻りましょうか」
「ウエストミンスターが僕を呼んでいる〜。お日様も呼んでいる〜。死神も呼んでいる〜」
「縁起でもないことをいっちゃいけません!」
-続-
『川神の永い夜』第二幕 予告
「オッスオラ松風。こまけぇこたぁおいといて、さくっと三行でばしっと予告決めちゃうZE?」
「大和に」
「冬馬が」
「ウホッ?!」
「さらば大和。YOUのことは永遠に忘れないYO…」
「松風、そんな誰得で危険な空気をかもし出しそうな予告をしてはいけませんよ……」
説明 | ||
序章ということを差し引いてもメインキャラが誰一人 出ていないことに気づきました。自分の中では小雪や準は メインを張ってもいいくらい好きなんですけどね… |
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コメント | ||
京は喜びそうだが最終的には誰得な展開ですよね。ネタ的には嫌いな展開ではないけどwwwww(EOS) コメントありがとです。次回の展開は… おや、誰かきたようです(きささげ) 松風……そんなこと言ったら京に潰されるZE……(夜の荒鷲) あれ?大和? ま、 ま さ か・・・ 次作・・・ほんのり期待(クォーツ) |
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