真・恋姫無双 〜黄龍記〜 第二話 |
真・恋姫無双 〜黄龍記〜
第二話
進むべき道 一刀新たなる戦場へ
周辺地域の賊徒一掃から数日後
一刀が住まう邑に何の前触れも無く突然五千の騎馬軍団を率いた官軍がやって来た。
彼等が掲げる旗印は『盧』
冀州・広宗にて官軍の主力を率いて黄巾賊の主力と激戦を繰り広げている筈の盧植将軍の旗印であった。
(何故盧植将軍が?)
と、一刀が首を傾げる中、盧植将軍は天の御使いと噂される一刀との会談を望む。
対する一刀は盧植将軍の目的と真意を確かめる為に、その申し出を承諾。
二人は聞き耳を立てられる事の無い周囲を見渡せる庭園にて話をするのだった。
まず自己紹介に始まり、その後暫しの間お互いのこれまでの行動や今現在の状況などを話し合う。
因みにその際、一刀に真名が無い事を知って盧植将軍が驚いたり、逆に盧植将軍が宦官の左豊が要求した賄賂を断った為に降格された事等を知る。
そんな話を四半刻(約三十分)程続けた頃、徐に表情を一変させた一刀が話し掛けた。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか?」
真剣な顔つきで話し掛ける一刀に、盧植も居住いを正す。
「そうじゃな・・・単刀直入に聞こう、北郷は今の漢王朝の施政と状況をどう思う?」
「どう言う意味ですか?」
「そのままの意味じゃよ。仮にも漢に仕える将軍の言葉ではないが、そう遠くない内に漢王朝は滅びるじゃろう。
例え心ある者達が漢の復権を目指しても、出来る事はせいぜい滅びの時を十年、或いは二十年程遅らせる事位じゃろうな。
どちらにせよ漢王朝の滅びは避けられまいて」
「・・・ハッキリと言いますね。ですがまあその見立ては正しいでしょうね。
既に漢王朝に往時の力は無く、宮中内に巣食った私利私欲に走る悪官達の粛清すら出来ない有様
その結果、民は貧窮しやがて耐え切れなくなった民衆が黄巾賊として立ち上がると言う悪循環を生み出してしまった。
そして同時に黄巾の乱は大陸各地で爪を研いでいる諸侯達に『漢王朝に昔日の力無し』と言う認識を与え、この機に中央の混乱を逆手に取って自らの野心と野望を果たそうと考える状況を作り出してしまった」
漢王朝の滅びを予見する盧植の言葉に内心驚きながら、一刀も今の現状を省みた意見を話す。
そんな一刀の言葉に盧植は「うむ」と一度頷く。
「まったくもってその通りじゃよ。今はまだ大丈夫だが、何か一つでも切欠さえあれば・・・・・」
「・・・遠からず大陸全土を巻き込んだ未曾有の混乱が起こる、か・・・」
一刀の言葉に再び盧植が頷く。
そして盧植は・・・
「北郷よ、奇しくも天の御使いと呼ばれる御前はこれから始まる乱世をどう生きる?」
偽りは許さないと言う顔で一刀に問い掛けた。
盧植の問い掛けに対し、一刀は考えを纏めるかの様に眼を瞑る。
暫し後、ゆっくりと眼を開いた一刀は自らの答えを返す。
「俺は天の御使いなんかじゃない。
もし俺が天の御使いならもっと多くの人達を助ける事も、救う事も出来た筈だ。
だが助けられなかった人は大勢いるし、救えなかった者も沢山いる。賊の討伐の折には犠牲も多く出した。こんな俺が天の御使いなんて大層な存在な訳がない。
俺は唯の人間だ。確かに人よりも優れた武を持っているかもしれない。他の誰も知らない様な知識や技術を持っているかもしれない。
それでもやはり俺は唯の人間に過ぎない・・・・・・だから」
「だから?」
「だからこそ俺は自分に出来る事をする。
俺を信じて着いて来た人達の為、途中で傷付き犠牲となった者達の為、そしてなにより俺が俺である為に、全てを背負い前へと進む。
天の御使いとしてでは無く、一人の人間北郷一刀として・・・・・・これが俺の答えだ」
「そうか・・・・・(天の御使いでは無い、か・・・調べた限りではこの者は流星が落ちたとされる四年前に突然この地にやって来たと聞く。管路の占いと符合する点も多く、僅か数年で大富豪にもなっている事を考えるとやはりこの者が天の御使いか?
だが天の御使い云々は兎も角、この者は間違い無く英雄の、王の資質を持っている。それも類稀な・・・本人は気付いていないようじゃが、切欠さえあればこの者はいずれ昇竜となって誰よりも高い天へと駆け上がるじゃろう。
もしかしたらこの者が今この時、この地に現れたのは天の采配なのかもしれん。ならば儂のすべき事は唯一つ、この者が天へと駆け上がる切欠を作る事のみじゃな)
・・・北郷よ、お前にこれをやろう」
盧植は懐から一枚の紙を取り出して一刀に渡す。
「!、これは鉱山の所有権を漢王朝が認める証書!」
「そうじゃ、それがあれば役人は勿論、例え州牧と言えども迂闊には鉱山に手が出せん。
鉱山の安全が確保出来ればこの邑や周囲の村の者達の生活は安泰、お前も自由に動けるじゃろう。後はお前の決意しだいじゃよ」
言うべき事を全て言い終わると盧植は立ち上がって庭園を後にしようとする。
その時・・・
「盧植将軍・・・・・ありがとうございます」
一刀が盧植を呼び止め、頭を深く下げて礼を言った。
そんな一刀に盧植は一つ頷いて庭園を後にするのだった。
盧植の訪問から数日後
一刀は黄巾賊討伐の為に義勇軍を再編していた。
一刀に絶対の忠誠を誓う直属の私兵団以外の者達は、周辺地域に蔓延る賊徒を討伐する為に各邑や村々から集められた志願者達である。
一刀の志に無理矢理付き合わせる訳にはいかない。
その為、黄巾賊討伐を目的とした新たな義勇軍を募る必要があったのだ。
そして一週間後・・・一刀にとって嬉しい誤算が生じる。
最低でも兵力二千は欲しいと思っていた一刀の前には、私兵団の騎馬隊一千騎に歩兵三千、弓兵一千の計五千の兵が集まっていたのだ。
最初に集まった義勇軍の兵の内、半数以上が家族の下へと帰っていったが一刀を慕う一部の兵は残ってくれた。
加えて一万五千の黄巾賊を僅か三千の兵で討ち破った事で、一刀の名声は知らない内に周辺各地に広まっていた。
そのおかげで遠方からの志願者も続々と集まり、最終的に五千もの兵となったのだ。
そして予備も含めた武具、兵糧等の確保が終わっていよいよ出陣の時が来た。
「皆 色々世話になった」
見送りに集まった邑の人達に加え、周辺の村々からも大勢の人が見送りに着てくれた。
皆 口々に「北郷様ご無事で」「何時でも戻って来て下さい」などと言って一刀の出陣を見送っていた。
「長老、鉱山の運営、管理はお願いします」
「判っておる。邑の者達も手伝ってくれると言うとる、何も心配せずに己の進むべき道を進みなされ」
「ええ、ありがとうございます・・・・・よし!義勇軍はこれより冀州の広宗へと向かい盧植将軍と合流後、黄巾賊討伐を行う。全軍出発だ!」
「「「「「おおおおお!!」」」」」
一刀の号令の元、五千の義勇軍が出発する。
大勢の人々の歓声と励ましの言葉を受けながら・・・
邑から出発して数刻後
後衛の兵士が一刀の元に駆けて来た。
「申し上げます!後方より砂塵、騎馬がこちらに向かって駆けて来ます」
「騎馬が?・・・一騎だけなら敵の可能性は低いな。一応警戒する様に後衛の軍に伝えろ」
「はっ、判りました」
暫くして再び伝令が一刀の元に駆け込んだ。
何でも立派な武器を持った武将らしき者が一刀に目通り願いたいと言っているらしく、一刀はそれを受け入れて会って見る事にした。
「君か?俺に会いたいと言うのは」
「は、はい・・・えと、天の御使い北郷一刀様ですか?」
「天の御使いかどうかは兎も角、一応俺が北郷一刀だけど・・・君は?」
「わ、私は徐晃と言います。
その、天の御使いと噂される北郷一刀様が黄巾賊討伐の為に義勇兵を集めていると聞きましたので、よろしければ私も義勇軍の一員に加えて頂けたらと思って邑に行ったのですけど・・・」
「既に出発した後だったので、ここまで追って来た、と・・・そう言う事かな?」
「は、はい」
「(徐晃か・・・確か魏の五大将軍の一人に数えられる智勇兼備の将だったよな。それがまさかこんな大人しそうな女性とは・・・・・俺の知る三国志の逸話通り大斧を携えているし、本人に間違いないんだろうけど)・・・・・判った」
「あ、それでは・・・」
一刀の返事に嬉しそうに顔を綻ばせる徐晃
一刀はその笑顔に(かわいいなぁ)と内心思いながらも言葉を続ける。
「その代わり君の実力を見せて欲しい。
女性だからと言って馬鹿にする訳じゃないけど、これから俺達が向かう場所は戦場、死地だ。
生半可な気持ちと覚悟で付いて来られる場所じゃない。それでも俺と共にと言うなら付いてこれるだけの力と実力を示して欲しい」
かなり厳しい事を言う一刀。
しかし一刀の言う事は正しい。
義勇軍の向かう先は戦場、文字通り命の取り合いが平然と行われる場所だ。
それ相応の気持ちと覚悟がなければ正気ではいられない。
だからこそ一刀はあえて厳しい言葉を投げ掛けるのだ。彼女の事を思って・・・・・
因みに義勇軍に参加している兵士達の一人一人が一刀から同じ事を問われて、それ相応の覚悟を心に決めた者達である。
「判りました。あの・・・・・・お手柔らかに」
だが、そんな一刀の思いを知ってか知らずか徐晃は受け入れた。
そして一刀と徐晃がそれぞれ剛槍と大斧・鬼斬を持って対峙する。
「・・・いきます」
言葉と共に徐晃が大斧を掲げて馬を駆け出させる。
対する一刀は槍を構えて正面から迎え撃った。
「はぁっ!」
ブォン
交錯の瞬間、風を切る音と共に大斧・鬼斬が勢い良く振り下ろされる。
ガギイィィィン
一刀はその重い一撃を槍の柄で難無く受け止めて見せた。
「流石ですね、私の全力の一撃を難無く受け止められるなんて」
自信のあった全力の一撃を難無く受け止められた事で、徐晃は一刀の実力が自分よりも遥か高みにいる事を感じ取っていた。
「でも・・・まだまだです!」
しかし徐晃は怯む事無く一刀に仕掛けていく。全力で・・・・・
到底敵わない事を彼女は既に理解していた。しかし武人の一人として自分よりも遥か高みにいる武人と手合わせ出来るこの機会を逃すつもりは徐晃には無かった。
己の持つと力と技量の全てを尽くして戦える事に高揚する心。
そんな彼女は雄雄しくも美しく・・・何時の間にか義勇軍の兵士達の眼を釘付けにし、その心を捕らえて離さなかった。
そして一刀もまた徐晃の力と技量に内心舌を巻いていた。
まだまだ到底自分には及ばないものの、経験を積んで力と技量を伸ばせば間違い無く歴史に名を残す一角の武将に成れると確信していたのだ。
そして・・・手合わせを始めてから四半刻が過ぎた頃、
「やぁあああっ!」「はぁあああっ!」
ギィイイン
袈裟斬りに振り下ろされる徐晃の大斧を、一刀は半回転させる事で得た遠心力を上乗せした槍の一撃で弾き飛ばした。
ヒュンヒュンヒュンヒュン ドン!
弾き飛ばされた大斧が回転しながら落下、そのまま地面に突き立つ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・御見事です」
「君もね徐晃、改めてこれからよろしく」
「えっ!?それでは・・・」
全く敵わなかった事でてっきり参加を認められないと思っていた徐晃は驚いた顔をする。
「ああ、喜んで君を迎え入れるよ」
「あ、ありがとうございます!
ならば北郷様、改めて自己紹介をします。私は性を徐、名が晃、字を公明、そして真名が桜といいます。
私の事は桜と呼んで下さい。これからよろしくお願いいたします」
「判った、なら俺の事は一刀と呼んでくれ。
元々真名と言った名を持たない身、一刀が真名に一番近いからそう呼んでほしい」
「えっ!?真名が無い・・・判りました。では一刀様と呼ばせて頂きますね」
真名が無いと言う一刀の言葉に驚いた徐晃だが、この方は天の御使いと言う話を思い出して納得した。
その後、徐晃はその実力を認められて一刀の副将となる。
いきなりの大抜擢に驚き慌てる徐晃だが、義勇軍の兵士達も一刀の決定に異存は全く無く、そのまま徐晃は副将に就任するのだった。
そして頼もしい仲間を得た一刀は、改めて黄巾賊討伐の為に兵を進めるのであった。
第二話いかがだったでしょうか?
オリキャラの盧植、徐晃の登場。
唯予告していた真・恋姫無双の人物が出てきませんでしたね。
義勇軍の戦力強化を考えてオリキャラを出す事にしたら、予想以上に本文が長くなってしまい・・・申し訳ありません。
次回は間違いなく登場するのでご勘弁を・・・・・
なお、一刀とオリキャラのプロフィールなどもそろそろ投稿しようと思いますので、そちらの方もお楽しみに。
因みに徐晃=桜のプロフィールですけど、同サイトに投稿画像をされている郁さんの物を真名だけ変えて使わせて貰う事にしました。
真名を変えたのは花言葉の為です。
花言葉を調べれ頂ければ理由が解るかも・・・
何か問題があるようでしたら菖蒲に変える事も考えます。
ではこの辺で、次回もこうご期待!
説明 | ||
三作目投稿ーーっ! 見習いを卒業です。 |
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コメント | ||
期待の新戦力ですね。活躍を期待します。(ブックマン) 徐晃使って頂きありがとうございます〜。真名の変更かまいません。適当に決めただけで花言葉とかは特に意識して無かったので;(郁 ) 北方の智者と言えば沮授とか田豊とかかな。(トーヤ) 間違った 冀州にいるさいえんは 崔?季珪のほうじゃった Orz(リアルG) 慮植は数年後、賄賂を渡さなかった事で濡れ衣を着せられ、退場する訳ですが、一刀が入れば、何かが起こる・・・ 次作期待(クォーツ) 北方をうろついておる知将かぁ ……いつもの二人組みのどちらかかのぅ 個人的には蔡?文姫とか誰か使わんかなぁと思っておるが (なに?お前が使えとな……(リアルG) 次はだれが出てくるか、気になります!!(キラ・リョウ) さて、まず1人目だが武で1人知で1・2人ほしいとこだが次は誰だ?(st205gt4) |
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