俺の助手は奈落の王妃
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いつもの風景、いつもの夕暮れ、こざっぱりとした保健室にて、俺はたそがれていた。

目を通すようにと言われた今日からここで使われる教科書の山。

俺は歴史の教科書を開くと、ここ最近起きた事件が載っていた。

 

――――『((王妃|モルガン))((の|・))((災禍|ラウンズ))』……この学園最新にして最悪の事件、或いはそれを起こしたこの学園の生徒達の総称だ。

彼らはそれぞれの信念、野望、欲望、矜持等を胸に結託し、それらを成就せずに敗れた。その主犯である元生徒会副会長は……実は俺の助手だったりする。

そしてとっちめたのは俺の弟子のユーザだったとか何たる偶然か……まあ助手にはアイツの飯食い仲間を標的にした自分を呪ってもらおう。

「取り返しがつく内に考え直した方がいい」といった忠告は何度もした。それを聞かなかったのはきっと、助手の決意が固かったからだろう。

 

助手は生まれた頃から影が薄かったようで、産んだ親にすら認知されずに孤児となったが、人の良い老夫婦に養子として引き取られた。

だがそんな義理の両親も彼女を忘れる事が度々起こり、遂には忘れ去られて新しい養子を迎え入れる始末。

そんな人生を送っている内に自己承認欲求が膨れ上がり、それが向上心となった事で文武両道才色兼備の実績を叩き出した。

だがそれでも足りないとばかりにでっち上げや濡れ衣、更には洗脳によるマッチポンプまでも駆使して、他者を踏み台にしてでも徹底的に手柄を立てていった。

 

…………だがしかし、とんとん拍子に実績(と犠牲)を積み上げた事でつかみ取れる筈だった生徒会長という栄光を、転入生に掠め取られた頃から狂いだした。

更に手柄のでっち上げの為に危険分子と思われるある少女を囲んでリンチしたら返り討ちに遭い、右腕に等しい存在を失ってしまった事でなりふり構わなくなった。

 

怪しい商人らと共謀し、飲酒がバレた自警団と協力関係を結び、危険分子と思われるが普段はほぼ無害な一人の少女をターゲットに、執拗な嫌がらせと濡れ衣とでっち上げで追い込むようになる。

その為に学園に破壊活動を行ったり、何の関係もない生徒達まで巻き込んだり洗脳したりとやりたい放題だった。

そして遂には強硬手段を取り、連行と称して少女を拉致った。

数日に渡って洗脳を施し、人格改変を行うつもりだったのだろう……己が見込んだ後輩にやったように。

 

そんな中、少女と親しい少年と、少女と飯食い仲間だったユーザが立ち上がり、証拠集めに奔走した。

変なツテを得たのか、みるみる内に少女の身の潔白を証明できる証拠が十分に揃った事を知って喜んでたのを聞いてほっこりしたのを思い出す。

だが助手のアイツは自分の身の危機を察したのか、自警団を使って少女の親友だった少年に暴行を加えて人質にし、実物の証拠を全て没収、隠滅した。

「万策尽きた」と俺は思っていたが、ユーザにはアテがあったようで、先ず最初に邪魔となる自警団に殴り込んだ。

 

自警団の一人が言った「友達を助けるという優越感に浸って自己満足する為に動いてる偽善者」と言う言葉にキレていたユーザによって、自警団は物理的に且つ日が沈む間もなく壊滅した。

ただ助けたいという一心を、そんな事を思った事のない暇人に「自己満足」だの「偽善」だのと知ったかぶりに馬鹿にされたようだったと、殴り込む前のユーザは言ってたっけ。

その後、剣幕立てて聞く耳持たずを無くすためにのした団員達の中で副団長を名指しし、「恩人と同じ立場になってると優越感に浸ってるこいつこそが偽善者だ。僕らと一緒にするな」と叫んだ。

名指しされた少女は精神的なダメージを受け、入院期間が他の団員達より少し伸びた……悲惨な過去から救われたという行動原理を根幹から否定されたと思ってもしょうがない。

自分たちがやってた事が偽善だと誤解されない為の事だったらしいが……やりすぎだよユーザ。

 

助手の計画が実行される筈だった当日、拉致って洗脳を施した少女は先日こっそり救助されて保健室のベッドでおねんねしてる。

だが助手にはその情報が入っていない……隠蔽と偽装が上手く働いているようだ。

そして計画通りだったら洗脳済みの少女が飛び出して来る所をユーザが飛び出し、生徒達にかかった洗脳を解いた。

受験勉強そっちのけで教え込んだ事が活きたようで何よりだ……物覚えが良いもんだからってホントごめん。

そして助手の存在感を消し飛ばす程のオーラを出して出てきたのは生徒会長。調査で調べ上げた助手の……副会長のこれまでの悪事を全て暴露した……こうなったらもう取り返しがつかない。

【これまでの】とは高等部の頃だけの事ではなくもっと前、【老夫婦を洗脳して養子になったあの頃】から【少女を洗脳して暴れさせて自分の株を上げようと計画して失敗したたった今】までの事全てだ。

 

全て暴かれた事で何もかも終わったと絶望したと思いきや、「負けないでよ」という((呪い|エール))に突き動かされた助手は逃走した。

追いかけるユーザ、阻む用心棒、間に入って助太刀に来た保護者のハックル・クラッキンが「俺が足止めするから先に行け」とユーザを先に行かせる。

そして追い込まれる助手、追いついたユーザ、そこは何時も右腕的存在が昼寝していた屋上。

「観念しろ」と言うユーザを後ろからぶん殴る鉄拳ガール。不意打ち食らってよろめくユーザの前に更なる助っ人が現れ鉄拳の相手を引き受ける。

 

今度こそ追い詰められた助手、だが突っ込んで来たユーザにカウンターを食らわせる。性根が腐ってても文武両道の実績持ち、単調な戦い方なんて相手にならない。

対してユーザ、ここまで足止めを退けながら走りこんでた上に先ほどの不意打ちで消耗気味、考えが纏まらず単調な攻撃しか出来ない。

しかもここで助手、自分の存在感のなさと洗脳の応用で自身の存在を認識し辛くして来るもんだから空振りからのカウンター、空振りからのカウンターと最早動いてるってだけのサンドバック。

いつの間にか刺されてた謎の商人の吹き矢で更に意識も焦点も定まらない中、なぶられるユーザ。

だが意識が朦朧とする事で余計な考えが浮かばなくなり、ただ一点のみに思考が絞られた事で逆にクリアとなり、全ての絶望が希望に転じた。

 

ユーザは思考が一点に纏まると動きが最適化されて、とんでもなく強くなる。そして直感だけで敵を感知出来るから助手の動きが手に取るように解ってしまう。

それを知らない助手は勝ちを急ぎ、誘われてると知らずにカウンターを取ろうと突っ込んだ……が、逆にカウンターを取られて重い一撃をもらった。

さらに流れるように膝蹴り、アッパー、屋上ネットに叩きつけと一撃一撃を正確に叩きこむ。しかも全て顔に当てるもんだから歯が折れるわ顔腫れるわで大変だ。

この時のユーザは助手を「倒す」事しか頭にないからかリミッターが外れており、意識が朦朧としているから最早本能だけで動いている状態だ。

洗脳の応用で認識を誤認させてもすぐに看破され、コンプレックスだとしても利用した存在感のなさも意味を成さなくなった助手は、戦ってた鉄拳ガールと助っ人がユーザを止めに入るまで蹂躙された。

 

こうして主犯だった助手とその共犯者らは捕まり、それぞれ相応な処罰をされたがそれは表向きの話で、実際は裏で人体実験だとか売買だとか売春だとかに使われる事となった。

生徒会は会長によって丸々入れ替わり、処罰を免れた残りの自警団員は新生生徒会の使いっ走りとしてこき使われているようだが、以前と比べれば大分マシらしい。

そして共犯者の一人である謎の商人と関わっていた知り合いを偶然見つけたのでこっそり逃げようとしてる所を捕まえた。

どうやら裏で糸を引いてたようなのでちゃんと学園に許可をとってから自分から死を望むようなお仕置きを敢行したが、多分懲りないと思って徹底的にやったら心が壊れてしまった。

この学園の立場やこれまでの常識や規則が覆された事で大きなうねりを上げて変化していったが、数日もしたらこれまで通り平穏な日常が戻ってきた。

 

……とまあ、大体はこんなとこだろうか。この保健室も以前までは賑やかだったが、助手がいなくなって保健室の主が完治してからはさびれたものだ。

ユーザもユーザで生徒会長と屋上で空を眺めているようだが……協力してもらう際に約束事でもしたのだろう。

女に縁がないと思ってはいたが……なんだ、普通にボーイミーツガールしてるようで何よりだ。

俺も俺で、そろそろ出迎えてくれる相手が欲しい……要するに嫁が欲しい。

 

これは誰にも言ってない事だが、金をこっそり溜め込んでいる。

出会った当初から助手がこうなる事は予想していたから、保釈なり買うなりしてでも引き取る準備を整えていた。

保健室の主を治してライブにて生きた歌を聴くという目的は果たしたし、次は助手を貰うとしよう。

後ろにいると安心するし、有能だし、これからこき使いたいんだよね。問題児ばかりのこの学園じゃ、この先色々大変になりそうだしな。

 

そういや俺の名前を言ってなかったな……俺の名前は保険医ハックル、保健室の先生さ。

かしこまらず気兼ねなく、ハックル先生と呼んでほしい。

この実は話、特許やら著作やらと色々絡むから伏せてるせいで、内容が粗削りなんだ。

もし知りたいなら……そうだな、もう一つの名前を当ててみてくれ。

説明
とあるコラボの残骸を使いました。
伏せ過ぎて荒くなったけどそれでもよければ
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二次創作の二次創作 語り ほぼパクリ? 

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