結城友奈は勇者である〜冴えない大学生の話〜 その5 |
第5話〜夢〜
「はぁ、はぁ……やっばいなぁ、遅刻しそうだ……っ!」
走る。
周りの目なんて気にせず、俺はただ全力で走る。
スマホで時間を確認し、迫り来る時間に焦りを強めてさらに走る。
今日は日曜日、銀ちゃんと待ち合わせをしている日だ。
昨日のサークルの試合による緊張と疲れのせいか、ぎりぎりまで眠ってしまっていて俺は大慌てで家を出た。
その慌てようと言ったら、大学のレポートの提出時間が間近という時のそれと同等かそれ以上のものがあった。
待ち合わせ時間まであとわずか、しかし歩いて行っても5分かそこら遅れる程度の差でしかない。
知り合いとの待ち合わせに少し遅れる程度でこの焦り様は、他人には理解できないかもしれない。
しかし、それもいいだろう。
誰に理解されなくても、これは俺にとって大切な事なのだ。
俺が罰ゲームを持ち出したくせに、最初に罰ゲームを受けるのが俺とか恰好がつかない。
最初に罰ゲームを受けるのは銀ちゃん、俺の中でそれは確定事項なのだ。
もはや意地である。
「銀ちゃん!」
イネスに着くと、すでに銀ちゃんが入り口付近で待っていた。
今日は遅刻しないで来れる日だったらしい。
「はぁ、はぁっ! よっしゃ、ぎりぎり間に合った!」
「……」
銀ちゃんの前で止まり肩で息をしながらスマホを見ると、待ち合わせ時間まで30秒を切っていてた。
最初の罰ゲームが俺になるのだけは免れたようだ。
「はぁ〜……い、いやぁ、マジでギリギリだったな。とはいえ間に合ったのは違いないからな、罰ゲームは無しだぞ? ふっふっふ、最初に罰ゲームを受けるのは銀ちゃんって決まってるんだからな!」
「……」
「……あれ?」
息が整ってきたところで、さっきから銀ちゃんが妙に静かなのに気が付いた。
いつもなら「今日はあたしが先だね!」とか、「もう少し遅れてくれたら、兄ちゃんに罰ゲームできたのに!」とか言ってくるだろうに。
「銀ちゃん?」
「……兄ちゃん」
顔を上げると銀ちゃんは俯いていた。
声にもいつもの元気は微塵もなく、どこか沈んでいるようなそんな雰囲気。
そして銀ちゃんはゆっくりと顔を上げる。
その顔は悲しみに溢れていて、その目には大粒の涙が溜まっていた。
「ぎ、銀ちゃん? どうした、何かあったのか?」
「……兄ちゃん」
「ど、どこか調子でも悪いのか? 腹か、腹でも壊したのか?」
心配になり理由を聞こうにも、銀ちゃんは俺のことをただ呼ぶだけ。
そして一粒、また一粒と、銀ちゃんの目から大粒の涙が零れ落ちる。
その事に俺はどうしていいのかわからず、アタフタと無意味に手を動かしながら焦ってしまう。
「……兄ちゃん……ごめんね」
「ご、ごめん? 何がごめんなんだ?」
唐突に謝られるが、俺に謝られるようなことをされた覚えは一つもない。
だけど銀ちゃんは更にごめんと謝ってくる。
「ごめん、兄ちゃん……あたし、約束、守れなくて」
「約束って、待ち合わせのことか? 何言ってるんだよ、銀ちゃんは俺よりも早く来てたじゃないか? ほら、時間だって……え?」
再びスマホを取出し時間を見るが、そこには何も映されてなかった。
充電は寝る前にしてたし、さっきまで普通に映っていたのに。
「……」
「あ、銀ちゃん!?」
どういうことだと頭を抱えていると、銀ちゃんが歩きだしてどこかに行こうとしている。
よくわからないが、どうしてかそのまま銀ちゃんを行かせては駄目な気がした。
このまま行かせたらもう二度と合えない、そんな在り得ない不吉な予感を感じていた。
「待て、待ってくれ銀ちゃん!」
手を伸ばして銀ちゃんの腕をつかもうとするが、その手は届くことはなかった。
追いかけようとしても、俺の足はその場に縫い付けられたかのようにまったく動かない。
銀ちゃんがどんどん遠くへ行ってしまう。
「待てって言ってるだろ!? そっちに行くな、戻って来い!」
叫ぶ。
喉が壊れてしまうんじゃないかというほど、大声で叫び呼び止めようとする。
それでも銀ちゃんが歩みを止めることはなかった。
その速度はゆっくりと、だけど確実に俺から遠ざかっていく。
「っ、ちっくしょう、なんだってんだよ!?」
もがく。
しかしどれだけもがいても、足は一向に前には進まない。
それどころか、今度は体中全ての動きが緩慢になっていくのを感じた。
それはまるで蜘蛛の糸に絡め取られたかのように、もがけばもがくほど体の自由が利かなくなっていく。
「くっ、くそっ、ちっくしょう! 戻って来いよ、銀ちゃん!」
今の俺に出来るのは、ただただ叫ぶことのみだった。
「……」
そんな俺の方を、銀ちゃんは一度ゆっくりと振り返る。
そして。
「……バイバイ」
「……っ!?」
意識が浮上する。
荒い息、そして盛大にかいた汗で衣服が粘りつき気持ちが悪い。
心臓が大きく、早く脈打っている。
「……夢、か」
辺りは暗く、さっきまでの晴れた空や、いつもの待ち合わせ場所であるイネスは何処にもない。
つまりさっきまでのは夢だったのだろう。
かなり性質の悪い悪夢というやつだ。
「……?」
荒い息を整えてよく見ると、そこはいつもの見慣れたアパートの天井ではなかった。
病院で嗅いだことのある様な独特の匂いが僅かに漂う薄暗い空間の中で、目の前にあったのは見覚えのない天井。
ふとザーザーという少し耳障りな音が、絶え間なく続いているのに気が付く。
このジメジメした空気から察するに、外では雨が降っているのだろう。
「っ!? くぁっ……いっつぅ〜……なんで、こんな」
体を起こそうとすると急に体のあちこちに痛みがはしり、そのままベッドに逆戻りしてしまった。
体を動かした時、痛みとはまた別に何か動かしづらい感覚を覚えた。
試しに右腕を上げてみると、そこには綺麗に包帯が巻かれている。
それは右腕だけではなく、体のあちこちにまかれているようだ。
「……ここは」
「目が覚めたようですね」
どこだ、そう呟こうとした俺の耳に誰かの声が聞こえた。
声の方を向くと、出入り口のそばに一人の男が椅子に座っていた。
「? ……っ!?」
「ここは円鶴中央病院の病室です。2日ほど意識を失っていたのですが、無事に目を覚まされたようで何よりです」
いや、男だと思うが正しいだろうか。
その人はどこか物々しさを感じる和装で体の凹凸がはっきりとわからず、顔も特徴的なマークが印された仮面で覆われていて見えず、声だけで判断するしかないのだから。
しかしその仮面や服装だけで、俺を驚かせるのには十分過ぎる。
「……大赦の神官?」
大赦。
それはこの四国の守り神、神樹様を祀っている組織の事である。
彼らは神樹様に仕え、神樹様からの神託を受け、この四国を守り維持するお役目を担っている。
そのため世間では、総理大臣以上の権限を持つとも言われている。
やっている事が事だけに、それも間違いではないのだろう。
そんな組織の神官が今、俺の前にいた。
神事等があるわけでもないのに、こんなどこにでもいるただの大学生たる俺の所にわざわざ来るだなんて。
神官は俺に近づくと小さく、しかしゆっくりと時間をかけて礼をする。
「この度はあのような事故に見舞われ、桐生秋彦(きりゅうあきひこ)殿に置かれましては真に災難な出来事でございました」
(……桐生秋彦、殿)
自分の名前に“殿”など付けられるなんて滅多にない事で、少し違和感を覚えてしまう。
しかしそれ以上に、事務的というか機械的に淡々と話す様は、この暗い空間の雰囲気も相まって些か恐怖感を覚えてしまう。
「えっと、事故?」
「覚えておられませんか? 桐生殿がここに運び込まれてくる直前、いったい何があったのかを」
「……俺が、ここに来る前に」
◇◇◇◇◇
夕焼けに染まる空の下、俺は家への道をゆっくりと歩いていた。
今日は例のサークルの試合が行われた日だった。
緊張もしたし、動きっぱなしで、いい感じの疲労感が襲ってきている。
今夜はよく眠れることだろう。
「……そういえば、今日は銀ちゃんは遠足だって言ってたっけ」
綺麗な夕焼け空を見上げながら思い出したのは、以前海に行った時の帰りに銀ちゃんがいっていた事。
もし暇だったら俺の勇士を見に来てもらいたかったが……。
「ま、俺の勇士は明日存分に聞かせるとするか。こいつも返さないとだしな」
そう言いながら首に下げた本の形のペンダントを摘み上げて夕日にかざす。
本の形のペンダント……いや本当はロケットだったらしいけど、銀ちゃんにお守りとして預かった時に中は見るなと言われているものだ。
正直見るなと言われれば見てみたくなるのが人間というものだが、それが原因で銀ちゃんに嫌われたのでは割に合わないためギリギリ我慢している。
とはいえ、何時までも持っていたらいつ好奇心に負けて見てしまうかわからない。
明日は集まってお互いの話に花を咲かせる予定だし、その時にさっさと返してしまおう。
「……銀ちゃん、もう家についてる頃かなぁ?」
もしくは俺と同じように家に帰る途中で、友達と一緒に遠足の思い出を話し合っているのかもしれない。
でなければ明日どんなことを話そうか、ウキウキしていたりとか。
もしそうならば俺も銀ちゃんに楽しんでもらえるように、少し話を盛って話してみようか。
そんなことを考えながら歩みを進める。
……その時。
「っ、地震!?」
突然、大きな地震が響き渡った。
それは以前起きた地震よりもさらに大きなものだった。
よろける俺はたまらず体勢を低くし、ブロック塀に手をついてバランスを取る。
「……お、落ち着いたか?」
しかし、地震自体は長く続くことはなかった。
時間にして5秒か、もしくは10秒か、そのくらいで落ち着きを取り戻していた。
余震がある可能性も考えて少しじっと待っていたが、どうやら特に何もなさそうだ。
俺は一安心し、ゆっくりと立ち上がる。
「危ない!!!」
「……え?」
その時、俺の耳に聞こえてきたのは誰かの叫ぶような声。
そしてガガガッという、何かを削る様な耳障りな音だった。
俺がそちらを向こうとした時、背に大きな衝撃がはしった。
それは人間にはとても堪えることのできないだろう威力。
俺は苦悶の声を洩らす暇すらなく、その衝撃に巻き込まれるように地面を何度も転がった。
ようやく止まった時、最初に感じたのは体中にはしる痛み。
打ち所でも悪かったのか頭痛が特に酷かった。
朦朧とする意識の中、少しでも情報を得るために、動かすことも辛い体を何とか動かして視線を向ける。
最初に見たのは横転している大きなバイク、そしてその奥には俺と同じように横たわる人影が見えた。
それを見て俺は、「あぁ、俺、バイクに轢かれたのか」と段々と薄れゆく意識の中で思った。
大丈夫か!? と焦ったような声が近づいてくるが、すでに瞼を閉じた俺の視界はまっくらで相手の顔が見えない。
誰かは知らないが、心配して駆けつけてくれたのだろう。
しかしそんなことよりも、俺の中では別のことを気にかけていた。
この一瞬の間、頭に浮かんだのは満面の笑顔を浮かべる一人の少女。
元気で、お調子者で、正義感が強くて、優しくて、いつも遅刻ばかりする俺の大切な妹分。
(……ごめん、銀ちゃん……俺、明日、間に合わない、かも)
心の中で謝罪した直後、俺の意識はプツリと途切れた。
◇◇◇◇◇
「……そっか、俺」
「思い出されたようですね」
「あぁ。俺、事故に合ったんだ」
そうだ、俺はサバゲーの試合が終わった帰り道に、事故に合って意識を失ったのだ。
目が覚めたばかりでボーっとしていた頭が、少しずつ冴えてくる。
(……あれ、そういえばこの声)
「不幸な事故に見舞われ、今もさぞ混乱している事でしょう。心中お察しいたします。ですが一つだけ、桐生殿にお伝えする事があります」
「伝える事? 大赦の神官が態々、俺に?」
「とても大事なことです。心を強く持ち、しかとお聞きください」
淡々とした口調がやけに重く感じる。
神官の口ぶりからして良いことではないのだろうが、一体何を聞かされるのか。
俺は固唾をのんで、次の言葉を待った。
「三ノ輪銀様が、亡くなられました」
「……は?」
一瞬、頭が真っ白になったような錯覚を覚えた。
目の前の男の言ったことの意味が、まったく理解できなかった。
今、なんと言ったのだろう。
銀ちゃんの名前が出たのはわかったが……こいつは今、銀ちゃんが一体どうしたと言った?
一瞬、さっきまで見ていた悪夢が脳裏をよぎり、それを頭を振ってかき消す。
「ちょっと、待てよ。今、なんて言ったんだ? 銀ちゃんが、なんだって?」
「……三ノ輪銀様が亡くなられました。今から2日前の夕方、学校行事の帰り道での事です」
「……っ」
再度聞かされた内容は、まるで頭をハンマーで殴られたような衝撃を与えた。
何か言おうと口を開くも何も出てこず、俺は口を閉ざして視線をずらし、真暗な天井を仰ぎ見る。
そして右手で顔を覆い、目を瞑って視界を閉ざした。
(……銀ちゃんが、亡くなった……亡くなったって……死んだってことだよな?)
その言葉の意味を理解した時、俺の中に熱い感情が湧き上がってくるのを感じる。
震える手をぎゅっと握りしめる。
爪が食い込んで血が出るのではないかというほど強く握りしめて、そして一つ大きく深呼吸をしてゆっくり指の力を緩める。
「……俺さぁ、基本的に沸点は高い方だと思ってるんだ」
「……」
俺の唐突な言葉に神官は無言だった。
何を言っているのかわからず口を開けなかったのかはわからないが、しかし俺としても返答を期待していた訳じゃない。
俺は勝手に続きを話す。
「どんなふざけた冗談を言われても、大抵の事なら笑って流せるよ。もしくは何言ってんのお前? って呆れる程度かな。だけどさ……」
「……」
「世の中には言っていい冗談があれば、言っちゃいけない冗談があると俺は思うわけだ。それを言われたらどんなに温厚な人でも、絶対許せないっていうものがある。
いってみれば“越えちゃいけない一線”ってのが、人にはそれぞれあるんじゃないかな?」
そう言いながら、体に響く痛みを無視してゆっくりと体を起こす。
「……確かに、そうでしょう」
「だよな。じゃあ、さ」
俺は肯定を示したその男を睨み付け、胸倉をつかんで思い切り引き寄せた。
勢い余って仮面にデコが思いきりぶつかったが、そんなこと今は気にすることでもない。
「なんでお前が大赦の服着てるのか、なんでお前が銀ちゃんのことを知ってるのか、気になることはあるがそんなの今はどうでもいい。
でもよ、さっきの性質の悪い冗談は、“越えちゃいけない一線”ってのを越えてるとは思わなかったのか?」
「……」
「……どうなんだよ、何とか言ってみろよ……なぁ、三好ぃ!!!」
病院でしては怒られるだろう大きな怒声、それを仮面越しにそいつにぶつける。
大学に入った時からの付き合いで、銀ちゃんと同じくらい俺の中で大切な存在になっているそいつ、三好春信(みよしはるのぶ)に向けて。
「……三好? 何の事でしょう。誰かと間違えているのでは?」
「顔を隠した程度でばれないと思ったかよ? んなわけねぇだろ、お前の声を俺が聞き間違えるわけねぇだろうが。
確かにまだ3年っていうそこそこの付き合いだけどよ、密度で言えばもっと深いもんはあるだろ俺達は!」
「……」
初めて知り合ってから三好とは色々あった。
一緒にどのサークルにするかあちこち歩き回ったり、レポートが間に合わなくて手伝い合ったり、講義がわからなくて教え合ったり……勉強に関しては完全に俺がサポートしてもらっている立場だったけど。
大学に入って初めて酒を飲んだのも、三好と一緒だった。
酒に酔っていきなり妹自慢が始まった時は、こいつに飲ませるんじゃなかったと後悔した。
妹とずっと仲違いしてて寂しいと泣き上戸が入った時は、仕方なく慰めつつ飲ませて酔い潰らせたりもした。
先輩と飲んでる時に先輩がウザい絡みをしてきたら、三好と協力して先輩の嫌いな食べ物を無理やり突っ込んでダウンさせてやったのもいい思い出だ。
楽しい思い出ばかりではもちろんないが、何をするにしても三好と一緒だと不思議と苦ではなかった。
今では小さい頃からの付き合い、幼馴染なのではないかとたまに思えるほどに親しみを感じている。
そんな三好を仮面で顔が見えないからと言って、声までわからなくなるほど俺の耳は遠くなっていない。
その程度でわからなくなるほど、俺は薄情ではないつもりだ。
「……はぁ。なんていうか、流石は桐生って言えばいいのかねぇ? 正直、あんまりばれたくなかったんだけど」
黙ったまましばらく睨み合い―――顔は見えないから一方的にだが―――が続き、そして三好は一つため息をついてから話しだす。
それはさっきまでの事務的で、機械的な淡々としたものではなく、いつもの三好のものだった。
仮面越しだというのに、中では苦笑を浮かべているのだろうと予想できる声色である。
「知らねぇよ。っていうか、どうでもいいわそんなこと。それよりさっきの悪い冗談のこと、ちゃんと謝りやがれ。今だったら腹パン一発で許してやっから」
「……」
いつもなら「腹パンするのかよ!?」などと大げさに声を上げているころだろうに、しかし三好は何も言わない。
それがまた俺を苛立たせて、再度要求するように言葉をぶつけるために口を開く。
その前に、三好は掴んでいた俺の手に触れると、胸倉からやんわりと手を外した。
謝るまで離す気なんてなかったのに、呆気なく離れてしまったことに目を見開く。
三好は襟を正すと、入口の方へ歩き出す。
「お、おい!」
「まだ本調子じゃないのに無理するな。だけど、それだけ動けるなら問題ないだろ。俺は主治医に話し通してくるから、先に病院出て待ってろ」
「は? お前、何言って……」
「幸い骨に異常は見られなかったそうだから、俺の口利きがあればすぐに退院できる。
着替えは床頭台の中に入れてあるから、それに着替えればいいな。松葉杖は使うか? だったら、ベッドサイドに立て掛けてあるからそれを使え」
「いや、だから!」
「財布は入れてあるけど、携帯は事故の時に壊れたみたいでな。あれじゃあ、多分データもおじゃんになってそうだ。今度、新しいの買いに行ったほうが……」
「三好!」
「……」
こちらを無視して一方的に話を進めてくる三好に苛立ち、俺は声を荒げて制止する。
そこで一度言葉は止まったが、三好は俺の方を振り返らずに少し間をおいてから話を続ける。
「……説明はこれから行く場所でしてやる。そこだったら、お前も納得するだろ」
そう言うと、三好はそのまま静かに部屋を出て行った。
パタンと扉が閉まると、再び部屋に静かな空間が戻ってくる。
聞こえるのは外の雨音のみ。
「……なんだってんだよ、ちくしょう……っ!」
三好が出て行った扉を見つめながら、苛立ちを押さえるようにグッと拳を握りしめる。
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