結城友奈は勇者である〜冴えない大学生の話〜 その6 |
第6話〜またね〜
病院を出て雨の当たらない場所で待っていると、三好が車を回して乗るように言ってきた。
俺は不機嫌なまま「おう」と一言だけ答えて、体が痛まないようにゆっくりと後部座席に乗り込む。
ルームミラー越しに三好がチラッと見てくる。
「助手席に乗らないのか?」とでもいうような目に、俺は視線を外に向けて逸らす。
それを見た三好は小さく息を吐き、車を走らせた。
「松葉杖、使わなくて大丈夫だったのか?」
「……問題ねぇよ」
「そっか」
ベッドから降りた時に少しフラッとしたし体中痛みもしたが、それでも歩けないほどではなかった。
記憶にある限りだと大型のバイクに轢かれたはずだが、俺の体は骨折の一つもしていないらしい。
サークルの荷物を持っていたから、それがクッションにでもなったのだろう。
「……仮面、取らないのか? そんなもん付けたまま運転して、事故るのは勘弁しろよ?」
「あぁ、見た目ほど視界が悪いわけじゃないから大丈夫だ。まぁ、邪魔と言えば邪魔だけど、着替えも持って来てなかったし仕方ないさ。
そもそも大赦の神官や巫女の素性ってのは、あんまり公にするもんじゃないんだ」
そういうものか。
まぁ、大赦なんて総理大臣以上に権力を持つなんて言われている組織だ、むやみに素性を明かしたら取り入ろうとする輩も出るかもしれない。
面倒臭そうだが、色々と慎重にならざるを得ないのだろう。
「じゃあ、なんでその服で病院に来たんだよ。今日、俺が目覚めることがわかってたのか?」
「いや、今日は見舞いに来てただけだ。本当は入院した当日に見舞いに行きたかったんだけど、こっちも色々と忙しくてな。正直俺も、今日お前が目覚めるとは思わなくて、あの時は少しびっくりしたんだぞ?」
「見舞いに、ねぇ。それこそ、いつもの服でよかったじゃないか。身バレ云々言うなら、なんでわざわざそんな服着てきたよ?」
「あ〜、仕事が一段落したのがついさっきでな、そのまま直行で見舞いに行ったんだよ。まぁ、目覚めてもバレないだろうって、高をくくってたところもあったりな」
「それ、本気で言ってるなら見くびりすぎだ。本当にばれたくなかったら、声も変えるくらいして来いってんだ」
「ははは、流石に冗談だよ。俺だって、桐生がもし顔隠しててもわかる自信あるし……でも、ほんと、なんでだろうな。来る前に着替えてくればよかったのに、そんな簡単な事すら頭から抜けてたんだ。俺も、色々と参ってたのかもな」
声に疲労の色が見える。
色々と忙しかったと言っていたけれど、それは本当のことなのだろうと思えた。
「……ふぅ。いや、なんでもない。大したことじゃないさ、俺の事なんてな」
「……そうかい」
聞いてみようかとも思ったが、そう言って俺は追求を止める。
どことなく言いたくなさそうな雰囲気を感じたからだ。
言いたくない事なんて誰しも持っている物だろうし、今俺が気になっていることとは関係なさそうな気がしたから、どうでもよかったというのもある。
窓の所で頬杖を突きながら聞いていた俺は、何気なく外を見る。
見知った風景が視界を横切っていく。
いつの間にか大橋市に入ったらしい。
「で、どこまで連れて行く気だ? そこそこ走ったけど」
「あぁ、もう着く」
そう言った少し後、三好はゆっくりと車を停車する。
一体どこだと外を見て、俺は途端に顔をしかめた。
三好が車を止めた場所、そこは葬儀場の駐車場だった。
「……おい」
「降りろ。話は会場に行ってからだ」
そう言うと、三好はさっさと車から降りてしまう。
ここに来るまでの間に少しは冷えた頭が、またカッと熱くなった。
「……ちっ、まだ性質の悪い冗談を続けるつもりかよ!」
先に車を降りた三好は、俺を待たずにさっさと中へ入っていく。
今はそれを後から追う事しかできないのが何より悔しかった。
「……」
会場へ着いた時、俺は言葉を失ってしまった。
そこは手前三分の二あたりが客席で埋め尽くされていて、その奥に広い舞台がある感じの大きな会場だった。
舞台の上の最奥には神樹様を模した御神体が置かれ、その周囲を囲むように沢山の供花が飾られている。
これでも何度か葬式には参加したことはあるが、ここまで豪勢な式は初めて見た。
しかし、そんなことで言葉を失ったわけではない。
俺は無言のまま中央の道を進んでいく。
歩きながら俺の目が釘付けになっているのは、神樹様の前にまるで供えられるように置かれている一つの骨壺。
それもまたこの場に相応しいくらい金がかけられているとわかる立派な作りで、その表面には骨壺に入れられているであろう遺骨の故人の名が刻まれている。
“三ノ輪銀”と、達筆な字で。
「……」
舞台の前に来たところで、俺はそのまま立ち尽くしてしまった。
「今日、ここで三ノ輪銀様の告別式が行われてな、俺は祭司として呼ばれていたんだ。火葬祭が少し前に終わって、今日の予定は終了となった。明日の朝、埋葬祭が執り行われる予定だ」
三好が近づいてきて何か話しかけてくる。
「お前の所に行ったのは火葬祭が終わって、一段落ついたからだな。お役目における最悪の展開も想定はしていたが、実際に直面すると中々うまくいかなくてな。皆、本当に信じられない心境だっただろうさ」
だけどそんなのは、まったく耳に入ってこなかった。
色々なことが一度に起こりすぎて、頭が理解するのを拒否しているような気もする。
そのせいかどれもこれも、現実味を帯びて感じない。
なんというか、ふわふわした感覚というやつだろうか。
そう、それはまるで夢でも見ているかのような……。
「……夢? ……は、はは、はははははっ」
「桐生?」
俺がふいに笑いだしたことを訝しみ……いや、もしかいたら心配しているのかもしれない。
三好が俺の肩に手を置いてくるが、気にも留めなかった。
「そっか、これは夢なんだ」
ここに来てから色々と考えていた。
いや、考えていたのは三好が大赦の神官の恰好をして、病室にいた時からずっとだったけど。
上手く働かない頭で色々と考えて、考えて、たくさん考えて。
そして今、ようやく答えが出てきた。
そう、これは夢なのだと。
「そうだよ、夢だ。これは夢、さっきまで見てた悪夢の続きなんだ。だっておかしいじゃないか? 俺が事故に合っただけならまだしもさ、目が覚めたら銀ちゃんが死んでたなんて。
今度一緒に遊ぼうって約束していた二人が同時に不幸にあって、片方は意識不明になりもう片方は死んでた?
こんな不幸な偶然、悪夢以外の何物でもないだろ。今時の漫画でも、こんな在り来たりな悲劇そうそうないっつうの」
「……桐生」
「思えば三好が大赦の神官だったっていうのも、なんつうご都合主義な展開だって話だ。確かに三好は頭もいいし運動だってできる万能野郎だけど、流石に俺の友人になった奴が偶然大赦の神官でしたって、どんな確率だよ。ほんと、漫画みたいな超展開じゃないか。色々と使い古されて、在り来たり感があるけどよ。
あぁ、でも、在り来たりとはいっても一回りして新鮮なのかな? ネット小説とかじゃ、まだまだ在り得そうな展開だし。主人公が事故に合って意識不明になって、目が覚めたらヒロインが死んでいたって。
主人公が悲しみにくれていると、友人が大きな組織の人間であることを暴露し主人公に接触していく。
そして友人から主人公が事故に合ったのも、ヒロインが死んだのも、それはすべて悪の組織の陰謀だという真実を知らされる。
主人公は悪を憎み、大切なヒロインの敵を取るために悪の組織と戦うことを決意する。
そして主人公は、波乱万丈な非日常に進んでいくのであった、ってか?
ははは、ほんと漫画みたいだ。現実じゃ在り得ないよなぁ?」
「……桐生、もう止めるんだ」
三好が俺の肩を揺さぶりながら声を掛けてくる。
それでも、俺の内から溢れ出る言葉の波は収まることを知らない。
「それとも、もしかして本当はこれ全部、銀ちゃんが仕組んだ悪戯なのか? 約束の日に遅刻しちまって、2日だっけ? そんなに待たされたら怒るのも無理ないもんな。
いつもの銀ちゃんの遅刻ベストタイムをここまで圧倒的に更新したら、そりゃ怒るわ。そっか、そういう可能性もあったな。
こんな大がかりな仕掛けまで作って、どこで知り合ったか三好のことまで巻き込んで。めっちゃ金掛けてるけど、それだけ怒ったってことだよな。今頃、悲しむ俺を見てどこかでほくそ笑んでるんだろ?」
これだけ大きな会場なら、隠れる場所もたくさんあるだろう。
銀ちゃんくらい背が低ければなおさらだ。
俺は会場中を見渡しながら、どこかに隠れている銀ちゃんに向けて呼びかける。
「なぁ、銀ちゃん、悪かったよ。こんなに遅刻して俺が悪かった! だから、もう出てきてくれよ!
土下座しろっていうなら土下座してやるから、罰で何かしろっていうなら何でもしてやるから! だから……だから……っ!」
「桐生!」
「っ!?」
その時、俺の頬を強い衝撃が襲った。
体に力も入らず、抵抗すらできない俺の体は吹っ飛び、すぐ後ろの設置されている椅子に勢いよくぶつかった。
力なく頭を上げると、三好が腕を振り抜いている状態なのが見えた。
それを見て、あぁ、俺はあいつに殴られたのかと、上手く働かない頭で考え付いた。
殴った時に外れたのか、三好がかぶっていた仮面がカランと床に落ちる。
その時に見えた顔は悲しんでいるやら怒っているやら、よくわからない表情をしていた。
本来なら「何すんだ!」と殴り返している所だが、今は到底そんな気分にはなれなかった。
俺は仰向けに寝転がり、ボーっと電気のついていない沢山の照明がある天井を見上げる。
なんだかもう、今は何をする気も起きなかった。
そんな俺の耳に、ゆっくりと近づいてくる足音が聞こえる。
三好だろう、ここには俺とあいつしかいないのだから。
「……なぁ、桐生……三ノ輪銀様は、他人が悲しむようなことをするような子だったか?」
「……んなわけ、ねぇだろ」
三好がどこか労わりを感じさせる声で問いかけてくる。
それに俺は否定で答える。
銀ちゃんはお調子者で時々悪戯をしてくることもあるけど、他人を気遣うことのできる優しい心を持った子だと俺は知っているのだから。
誰かが悲しむようなことをするような子ではないと、俺は知っているのだから。
「……なぁ、桐生……痛いか?」
少し間を開けて、三好が再び問いかけてくる。
「……ちょう、痛ってぇ」
殴られた頬は少し腫れてるし、口の中も切れたらしく血の味がして気持ち悪い。
椅子にぶつかった背中もそうだし、ぶつかったせいでもともと傷だらけの体にも響いてすごく痛い。
「そうか。なぁ、桐生……これは、夢か?」
「……何、言ってんだよ三好」
再三問いかけてくる三好に、チラッと視線だけ向ける。
夢か、だって? こんな現実的じゃない出来事が起きている世界だぞ。
こんな世界、そんなの決まってるじゃないか。
「……………夢………………だったら、よかったのになぁ」
体の中の空気をすべて吐き出すかのように、重く長い溜息が出てくる。
分かってる、これが夢なんかじゃなく現実だってことくらい。
この体を走る痛みが、この胸を締め付けるような痛みが、これが夢じゃないということを教えてくれる。
これは夢じゃない。
悪夢にしか思えないけれど、これは正真正銘の現実なんだ。
現実だからこそ、こんなに辛く、悲しいのだ。
「……なぁ、三好。なんで、銀ちゃんは死んじまったんだ?」
気を抜けばすぐに涙が出てきてしまいそうになるのをグッと抑え、俺は三好に説明を求める。
「三ノ輪銀様は、神樹様からのお役目を受けておられた」
「お役目?」
「そうだ。2日前の遠足の帰り道でも、神樹様からのお役目を受け、そして勇者として殉じられた」
「……勇者? ……勇者ねぇ、本当に漫画みたいじゃないか。あれか? 人類を支配するためにやってきた魔王とでも戦ってたのか?」
「お役目については、部外者に話すことは固く禁じられている。悪いがお前に話すことはできない」
部外者、そういわれて内心ムッとするが、三好を責めることは出来なかった。
俺は銀ちゃんのことを本当の妹のように思っているとはいえ、それでも家族でも何でもない部外者であることに間違いはないのだから。
「……お役目ってさ、鷲尾ちゃんとか乃木ちゃんも関わってるのか?」
銀ちゃんが普段から名前を出すくらい仲良くしている、俺もまだ一度しか見たことのない少女達のことを思い出して聞いてみる。
「あぁ、そうだ」
「……あれ、それは教えちゃってもいいわけ?」
どうせ答えてくれないだろうなと思いながら聞いてみたのだが、結構あっさりと答えてくれた。
「あまり言いふらすものではないけどな。それでもクラスメイトや教師といった普段からかかわりのある人達は、彼女達がお役目を受けていることは知っている。もちろんその中身は伏せているが。
全てを秘匿して完遂できるほど、神樹様からのお役目は簡単なことではない」
「……簡単じゃない、か」
お役目、一体どんなことをしていたのだろうか。
命を落とすようなことをしていたのだ、さぞかし辛かったに違いない。
いつからそんなことをしていたのかは知らないけど、少なくとも何時も俺といる時は笑顔を見せてくれていた。
辛いはずなのにそんなそぶりを見せることもなく、楽しそうに笑っていた。
「……なんで、銀ちゃんじゃなきゃいけなかったんだろうな」
「……」
「あんな小さな子が命がけのお役目なんて、なんでしなきゃいけなかったんだよ。そんなの大人がすればいいだろ?
確かに銀ちゃんは運動神経よかったけど、俺だって子供よりは力あるっつうの。なんでまだ年端もいかない子供に任せるんだよ」
「……肉体的な力が重要じゃないんだ。さっきも言ったようにお役目は、勇者となるためには、神樹様に選ばれた者でなければならない。
神に見初められるのは、いつの世も無垢な少女であった。三ノ輪銀様は選ばれたんだ。鷲尾須美様も、乃木園子様も。
そしてお前は選ばれなかった……俺も含めて、な。ただ、それだけのことだ」
不満を零すだけのの独白でしかなかったが、律儀にも三好は言葉を返してくれた。
優しくもなんともない、ただの厳しい事実を。
「……ちっくしょう、何が“見初められるのは無垢な少女”だよ。小さい女の子が好きなだけだろ、神樹様のロリコン野郎が!」
「……いや、あのな? ……はぁ、まったく。頼むから、大っぴらに神樹様の悪口を言うのはやめてくれよ? 俺だって大赦の神官なんだから、あんまり庇えないぞ」
神樹様は四国の守り神、崇め奉られる存在。
それは四国に住む人間、すべてに共通してある常識である。
神樹様の悪口を言う事自体に明確な罰則はないが、悪口を言ったことを知られれば咎められ、下手すれば村八分のようなことをされる可能性だってあるかもしれない。
だから三好は大赦の人間として、そして友人として注意してくれているのだろう。
それでも俺の神樹様に対する不満は消えることはないけど。
「……この際だから、もうぶっちゃけちまうけどさ。実を言うと俺な、お前の事を監視してたんだわ」
「は? 監視?」
唐突に何言ってるんだと、三好に怪訝な表情を向ける。
見るとどこか困った様な、迷っているような表情にも見えた。
「そうだ……そもそも三ノ輪銀様を含め、鷲尾須美様、乃木園子様は大赦に関わる家柄の子達なんだ」
話しを聞いていて薄々そんな気はしていた。
そう言う事を俺なんかに話していいのかと思わなくもないが、三好なりに言える範囲を取捨選択して言っているのだろう。
だからそのことについては聞かず、俺は無言で続きを促す。
「他にもいくつか候補はいたんだけどな、結果として彼女達が神樹様に勇者として選ばれた。
元々大赦の中でも素質を持つ者は少数で、その中から選ばれたのが3人という少ない人数だった。
彼女達は我々大赦にとって、最も重要な存在と言える。
そんな子達を大赦が自由に遊ばせておくと思うか? まだ子供で、好奇心も旺盛な時分であるあの子達を」
「……まぁ、普通に考えてないわな。代わりきかない存在っていうのなら、できれば外に出さないで家の中で大人しくしてほしいっていうのが本音か?」
「実際、上層部の中にはそういう意見もあったんだぞ? だけど、まだ子供であるあの子達にとって、それは流石に不憫な対応だ。
だからあの子達が遊びに行くときは、大赦に関わる人間が密かに見守ることになっている」
本人達が気にならないように、陰ながら見守るということか。
銀ちゃんのことも見守っていたんだろうけど、今まで銀ちゃんと一緒にいて、そんな人がいたなんてまったく気が付かなかった。
「で、そんなある日、三ノ輪銀様が見ず知らずの歳の離れた男と一緒に、しかも仲よさそうにしているのを見つけてしまった」
「……あ〜、俺、だよな?」
「その通り。報告によれば、最初に鷲尾須美様に接触を図ろうとしていたそうだな? そして次は三ノ輪銀様。
勇者として神樹様に見初められた子達のうち1人に接触を図ろうとし、もう一人とはいつの間にか懇意になっている」
「……えーと」
「何か企んでいるのではないかと、そう見られてもおかしくないだろ? まぁ、報告してきた者の中には、特に問題ないだろうという意見もありはしたが」
銀ちゃんと仲良くなってから周りに変な目で見られるかもしれないと懸念はしていたが、まさか大赦に目をつけられていたとは思いもしなかった。
「お役目を受けた彼女達にとって、平和な日常というのは掛け替えのないものだ。
杞憂であればそれでいいが、何か悪い考えを持って近付き、彼女達の日常を踏みにじろうというのなら、大赦としても然るべき対処をしなければならない。
そして桐生がどんな存在なのかを調べるにあたり、桐生と親しくしている友人の一人が丁度大赦の人間であることが分かった」
「それが三好だな」
静かに頷く。
三好が大赦の人間だったことも驚いたが、まさか俺の監視をしていたなんて思わなかった。
俺が他人の視線に鈍感だったのかどうかは知らないが、普段の三好からは監視されてるような嫌な気配はしなかった。
「……悪かったな、桐生」
「ん?」
そんなことを考えていると、三好が沈んだ声で謝ってくる。
「お前が悪い企みなんて、持つはずがないとはわかっていたんだが……それなのに……」
そう言ってくる三好の声は後になるほどに小さく、そして少し震えているように聞こえる。
その姿は今まで初めて見る弱々しさがあり、本当にこれが三好なのかと疑問に思ってしまうほどだった。
それこそ今すぐにでも泣いてしまいそうな、そんな雰囲気さえある。
「……」
そんな友人の姿を見て、勝手とは思うがそれでも泣きたいのは俺の方だと頭を抱えたくなってしまう。
目が覚めたら事故で入院していて、三好が大赦の神官で、銀ちゃんが勇者になっていて、知らないうちに死んでて、三好が今まで俺を監視してて……。
正直、頭がパンクしそうだ。
一度にいろんなことが起き過ぎだろうに、情報過多にもほどがある。
殴られて、三好の話を聞いていて、少しずつ気持ちが落ち着いてきたけれど。
そんな今だからこそ、本当に全て夢だったらどれだけよかったことかと思う。
(……銀ちゃん)
ふと、銀ちゃんの顔が脳裏をよぎった。
それはいつもの元気な笑顔ではなく、さっきまで夢に見ていた悲しさで目に涙を浮かべた顔だった。
夢の出来事なんていつもはすぐに忘れてしまうというのに、なぜかその夢だけは鮮明に頭に残っていた。
(……銀ちゃん。君は今、笑ってるのか? それとも、泣いてるのか?)
返答の無い質問を宙に投げかける。
答えてくれる子は、その顔を見せてくれる子は、もうここにはいない。
(……笑ってて欲しいな)
それでも、と思う。
銀ちゃんに涙は似合わないから。
太陽のように元気な眩しい笑顔、それこそ銀ちゃんには似合っていると思うから。
そして、それは三好にも当てはまった。
三好が意気消沈させて、今にも泣きそうな雰囲気をしているなんて居心地が悪すぎる。
大切な妹分が、友人が、今にも泣きそうになっていたら俺はどうする? ……そんなの、決まっている。
「……ったく」
俺は痛む体に鞭を打って立ち上がり、ヨロヨロと三好の方に歩いていく。
目の前にくると、強引に肩を組んだ。
「この、バーカ」
「……桐生?」
俺がぶん殴ると思ったのだろうか、一瞬体を固くさせる三好。
残念ながら、こんなに弱々しく見える友人を殴れるほど俺はドSではない。
「そんなこと、別にいちいち謝る必要なんかねぇっつうの。大赦に言われて仕方なくだったんだろ?」
「それは、そうだけど……」
「だけど、じゃないって……それともあれか、俺と仲良くしてたのも大赦の命令だったりしたのか? 俺を監視するために、ずっと仲がいいふりしていたとか?」
「ち、違う、そんなことない! 俺はお前の事、大切な友達だと!」
俺の問いかけに必死に否定する姿は、どう見ても嘘には見えない。
というか、もし「そうだ」なんて言われてたら立ち直れなかっただろう。
そもそも俺が三好と知り合ったのは1年の時の事だし、そんな前から俺のことを監視する理由もないだろうと確信してワザと言ったところもあるのだけど。
「だろ? だったら、何時までもそんな仕様もないことを気にしてるなって。お前は俺のダチだ。それは初めて会った時から今までも、そしてこれからも変わらない。
ダチのそんなしょぼくれた所、俺は見たくねぇよ」
「……桐生」
「それでも気が晴れないっていうなら、すまないって思ってるなら、俺が許す。他の誰でもなく、大赦なんて関係なく、お前のダチの俺がお前を許す。
だからそんな顔してないで、いつもみたいにバカ話できるような関係に戻ろうぜ?」
「……っ……あぁ、そうだな……ありがとう……桐生……っ!」
少し涙ぐむ三好に、俺はただフッと微笑む。
……そして。
「……っ!? ちょ、き、桐生っ! な、なんで首絞めるんだ!?」
肩を組んだままの状態から、俺の得意技ヘッドロックに移行する。
「なーんーでーだー? んなもん、さっき殴った仕返しに決まってるだろうが!」
「は、はぁ!?」
「いやぁ、ほんと痛かったわ、めっちゃ痛かったわ。体もボロボロだっつうのに、病み上がりの奴に普通あんだけ思いっきり殴るか?
そりゃ、やり返されても文句は言えないよなぁ?」
耳元でねちっこく、そして嫌味ったらしく言い聞かせつつ、腕の力を上げていく。
「ま、待て、ちょっと待て! お前さっき俺の事、許すって言ったじゃないか!」
「あぁ、確かに言ったな。だけどそれは、俺のことを監視してたことについてだ。俺を殴ったことに関しては、また別問題だろ?」
「そ、それはお前を落ち着かせるために、仕方なく!」
「そうだとしても、なんかやり返さないと気がすまん!」
それに尽きる。
殴られてそのままというのは、俺の性に合わないのだ。
頬を殴られたら反対の頬を差し出すと旧世紀の書物にはあったそうだが、冗談ではない。
殴られたら殴り返す、一発は一発、それが俺の流儀である。
「っ、ぐぅ! せ、せめて場所、場所を考えろよ!? 式場で、三ノ輪銀様の前で、こんな暴挙は許されるはずないだろ!?」
「……いや、それはどうかな」
「はぁ!?」
俺は三好にヘッドロックを決めたまま、銀ちゃんの名前が書かれた骨壺を見る。
「銀ちゃんはな、いつも元気で、楽しいことが好きで、笑顔がよく似合う子なんだ。死んじまったからって、皆が悲しみで涙を流すところなんて見たいがはずない」
皆が悲しい気持ちでいると、きっと銀ちゃんまで悲しくなってしまうだろうから。
俺の頭の中では、夢の時の悲しみに溢れた銀ちゃんの姿が消えないで残っている。
俺はそれをかき消したかった。
「……き、桐生?」
「泣くのも、悲しむのも、他の人達が十分にやってくれただろ。だったら俺は、俺くらいは泣かないで見送ってやるさ。馬鹿みたいに騒いで、馬鹿みたいに笑って、そして見送ってやるさ。
そんな見送り方をしたっていいだろ? その方が、きっと銀ちゃんも嬉しいはずだ」
その方が銀ちゃんも、一緒になって笑ってくれるだろう。
いや、もしかしたら「まったく兄ちゃんってば、何やってんだよ」と、呆れているかもしれない。
それでもやっぱり最後は笑ってくれるだろうという確信があった。
どうせ涙を流すのなら悲しさではなく、大いに笑って涙を流してもらいたい。
「つうことで、行くぞ三好!」
「は、はぁ? 行くってどこに?」
「俺んち」
疑問を浮かべる三好に俺は即答する。
そんな俺に何か感づいたのか、三好の顔は引きつっていた。
「遅刻して告別式には出れなかったからな。これから俺達なりの告別式をするんだよ。告別式、二次会ってやつだ」
「……つまり?」
「飲むぞ!」
「や、やっぱりかぁあ!!!」
三好が腕の中でもがくが、俺は無理やり押さえつけて出口の方に引きずっていく。
「ちょっと待て、ほんと待て桐生! 俺、明日の埋葬祭でも祭司になってるんだって! どうせ滅茶苦茶飲むんだろ、そして飲ませるつもりだろお前!?
二日酔いの祭司なんて威厳もへったくれもないから! ってか、上の人に怒られちまうから!」
「知らん!」
「知らんって、そんな無責任な!」
「その心配ならいらないわよ」
「……え?」
「……は?」
いきなり第三者の声が聞こえてきて、俺達が一斉にそちらを向く。
何時の間にいたのか、出口の壁の所に寄り掛かるようにして一人の女性がそこにいた。
その女性はメガネをかけていて、キリッとした表情ではあるが、その中に少し呆れを含ませてこちらを見ている。
その女性には見覚えがあった。
「あれ、なんでこんなところにいるんですか? 安芸(あき)先輩」
それは俺達が大学時代よく世話になり、卒業後もよく一緒に飲む仲である、二つ上の先輩の安芸先輩だった。
先輩はどこか呆れるように溜息をついている。
「そりゃ、私が三ノ輪さんの担任だからよ」
「……担任? ……銀ちゃんの? ……う、うっそぉ!?」
一瞬言ってることが分からなかったが、その意味を理解した時、俺はめちゃくちゃ驚いた。
「え、うっそ、マジですか? だって銀ちゃんって神樹館の生徒で、神樹館って金持ちのお嬢ちゃんお坊ちゃんがいる学校で、そんな名門中の名門の先生が安芸先輩? うっそぉ!?」
「……その驚きはどういう意味なのか、今度じっくり話し合う必要がありそうね」
安芸先輩が頬をヒクヒクとさせていたが、驚くのも仕方ないだろう。
キリッとしていて見る人に理知的な印象を与えるこの人は、その実俺達の中で一番酒好きな飲んだくれ先輩なのだ。
この前だって一緒に酒飲んで、ベロンベロンに酔っぱらっている姿を見ている。
そんな人が神樹館に関わる人、それも先生だなんてどう考えても想像がつかなかった。
……いや、確かに前に飲み会で神樹館卒業だとは聞いた覚えはあるけど、正直それも酒の席の妄言かと思っていた。
「ちなみに安芸先輩も大赦の人間だぞ?」
「……」
三好の言葉に、今度は言葉が出なかった。
俺の周り、大赦関係の人間多過ぎじゃないだろうか。
「いや、ていうかさ? それこそ教えていい情報なのかよ」
「別にいいわよ?」
「いいんですか!?」
三好ではなく、安芸先輩直々にあっさりと肯定された。
「もともと桐生君に秘密にしてるのも、結構心苦しかったところもあるからね。時々飲み会開いているからってんで、一応私にも監視の指示は来てたし。
まぁ、監視なんて二の次で、飲み会を楽しんでたわけだけどね!」
「はぁ、そうなんですか」
「そうなのよ。それで前に私と三好君で、どっちかの正体がばれたら、もういっそのこと二人ともバラしちゃおうって話になってね」
「いや、んな軽い話しじゃないと思うんですけど……」
「実際、軽い話しじゃないんだよなぁ。あ、わかってると思うけど、他の人に言うのはNGな? バラしたの知られたら、俺達も桐生も御咎め受けることになるからそのつもりで」
「お、おう」
本当に軽い話しではなかった。
じゃあ、わざわざ教えるなよと内心呆れながら思う。
三好の場合は俺が見破ったからまだしも、安芸先輩は完全に蛇足のようなものだろう。
俺が周囲にばらさないだろうと、そう信頼して二人とも教えてくれてるのかもしれないけど。
「それで安芸先輩、心配いらないっていうのはどういう?」
「あぁ、それね。さっき電話で、明日の祭司を別の人に頼んだのよ」
「……あの、そんな勝手なこと」
「あっさり通ったから大丈夫」
「……」
事も無げに言う安芸先輩に、三好が項垂れる。
「……安芸先輩って、結構偉い立場の人なのか?」
「あぁ、いや。立場としては一応、俺の方が上なんだけどな」
「……ごめん、それも驚きだわ」
俺と同年で安芸先輩より年下の癖に、大赦での立場は安芸先輩より上とか。
やはり何でもできる万能野郎だから、大赦でも受けがいいのだろうかとちょっと嫉妬が混じる。
「私は勇者たちの指導役としての任務に就いていたからね。少しくらい融通が利くのよ」
「は、はぁ、そうなんですか」
「そうなのよ。まぁ、そんなことより、さっそく行きましょ? ……私も今は飲みたい気分だから」
そういう安芸先輩は、どこか辛そうに表情を歪める。
銀ちゃんの担任で、勇者の指導? をしていたということもあり、銀ちゃんが死んでしまったことは相当こたえているのだろう。
「で、でも、安芸先輩だって明日の埋葬祭に出るでしょ? 今から飲んで、明日に差し支えが出たら!」
「……? 出ると思う?」
「……」
「……」
でないだろうなぁと、言葉にしなかったが俺と三好の考えは一致していた。
この前も夜遅くまで飲んでいたというのに、翌日はケロッとしていたものだ。
俺や三好は二日酔いで頭が痛いし気持ち悪いしで最悪だったというのに、先輩はその隣で平然とソファーに座ってコーヒー片手にテレビのニュースを見ているのだ。
ベロンベロンに酔っぱらうくらい飲んだとしても、次の日には平常運転できる人もいるけど、この人が正しくそれである。
一酒好きとしては、羨ましい限りだ。
「ていうか、担任も参列するもんなんですか?」
「私はあくまで、大赦の人間として行くだけだから。それに三ノ輪さんの遺骨が埋葬されるのって、ちょっと特殊な場所でね。関係者以外は入れない場所にあるのよ」
「え、マジですか?」
「本当だぞ。そこに入れるのは大赦の人間に親族、それと三ノ輪銀様と同じく、お役目を受けた者達くらいだ」
「……そうなのか」
最後に言っていた“お役目を受けた者達”というのが引っかかった。
ということはそこは、勇者関係の墓ということなのだろうか。
「……まぁ、桐生君は三ノ輪さんと大分仲良かったみたいだしね。なんなら明日の埋葬祭に出れるように、私が口利きしましょうか? 三好君もいるし、これくらいの無理なら通ると思うけど」
「俺もですか? まぁ、いいですけど。桐生は今日の告別式にも出れなかったですし。で、どうする?」
二人が俺に聞いてくる。
俺は少しだけ考えて二人に答えた。
「……いえ。それは、遠慮しておきます」
「あら、どうして?」
安芸先輩が少し意外そうに聞いてくる。
三好も同じようで、俺の方を見上げてくるのが分かる。
「そりゃ、親戚とかならまだしも、俺はそういうのじゃないし。まったく関係のない人間がそこにいたら、みんな不信がるでしょう?」
「桐生と三ノ輪銀様は、本当の兄妹のように仲が良かったじゃないか?」
「んなこと知ってるのは当人たちと、監視していた大赦くらいだろ。その他の人達にとっては、完全に見ず知らずの他人だ。しかも10歳近くも歳の離れた男だぞ?
下手すれば銀ちゃんに変な疑いがかけられるかもしれない」
少し俺の気にし過ぎなところもあるのかもしれないけど。
それでもなによりも、銀ちゃんに変な疑いがかけられるようなことはしたくなかったのだ。
……それに、下手したら我慢できずに泣いてしまうかもしれないし。
「だから、俺はいいんだ。今日ここに連れてきてくれただけで、俺は十分満足だよ」
2人の何か言いたげな視線を感じる。
俺はそれから逃げるように、三好から腕を離して出口に向かう。
「……おっ、とぉ」
と、少し歩いた所でふらつき、咄嗟に壁に手をついてバランスを取る。
少しだけ恰好付け気味に言った手前、なんだか少し恥ずかしくなってしまった。
さっきとはまた別の意味の視線を背後から感じる気がする。
「さ、さぁ、行こう! 三好、家まで乗せてってくれ!」
「……あぁ、わかったよ。お前がそれでいいっていうなら、俺からは何も言わない。だからお前はゆっくり来い、俺はエンジンかけておくから」
三好は一つ溜息をつき、俺の後ろ頭を軽く叩いて先に行く。
「……ふぅ、まったく。桐生君は不器用というか、見栄っ張りというか。年をとっても、男の子はやっぱり男の子ってことかしらね」
安芸先輩も、こちらはどこか呆れたような溜息をして三好の後について行った。
すれ違いざま俺の肩に手を置いた安芸先輩は、一瞬だけしか見えなかったけど、どこか優しく微笑んでいるように見えた。
「……気ぃ、使わせちまったかな……っ」
先に歩いていく二人の背中がぐにゃっと歪む。
俺は目元にグッと力を入れ、流れてきそうになった涙を強引に堪えた。
「……泣かない、絶っ対に泣かない。さっき決めたじゃないか」
辛ければ泣けと、2人は俺を残して先に行ってくれたのかもしれない。
けど、それでも俺は泣かないと決めた。
きっと俺まで泣いてしまったら、銀ちゃんも安心して旅立てないと思ったから。
目の端に少しだけ出てきた雫を手の甲で乱暴に拭き取り、大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。
それから壁から手を放し、今度こそしっかりと立って二人に続いて俺も歩き出した。
『またね』
「っ!?」
一瞬、そんな声が聞こえた気がした。
咄嗟に会場の中を振り返ったが、当たり前ながらそこには誰もいなかった。
さっきの声は、俺の幻聴だったのだろう。
その声の主、銀ちゃんの遺骨が入った骨壺に目がいく。
思い出すのは、最後に銀ちゃんと別れた1週間前の事。
夕暮れ時にいつもの分かれ道で、いつものように「またね」と言って別れたあの日の事。
「……またな、銀ちゃん」
俺はいつも通りの言葉で銀ちゃんにお別れをする。
もう今生では二度と会うことはできないとしても、それでも俺には「さよなら」とは言えなかった。
そして今度こそ振り返らずに、俺は会場を後にした。
(あとがき)
6話目終了です。
実は5話目と6話目って一つの話だったんですけど、1話で2万文字って少し多いかな? と思ってキリのいいところ話を分けることにしました。
個人的に、1話で5000〜1万文字前後くらいというのは以前からのスタイルですし。
タグで微鬱と入れましたが、正直どこら辺から鬱に入るのか少しわからなかったり。
人が死ぬ姿、人が絶望する姿、そういうシーンがある時って、微鬱、もしくは鬱って入れた方がいいんですかねぇ?
まぁ、もしそれは違うんじゃね?というお言葉があれば訂正することにしましょう。
今回原作キャラである安芸先生と、前回から三好春信が出演しています。
以前の話の中でチラッと載せましたが、改めて二人との関係をここで簡単に説明します。
三好春信との関係は大学1年生の時からの友達という設定です。
あまり情報も多くなく、歳とかもよくわからなかったのですが、にぼっしーと兄妹ということでそこまで年齢が離れすぎでもないだろうと思い、冴えない大学生と同年代として出演してもらいました。
三好春信に関してはゲームの話で見た時からいつか出したいなと思っており、今作を書いている途中から急遽冴えない大学生の友達という配役にしたりしました。
安芸先生との関係は大学の時の先輩。同じサークル(サバゲー)に入っていて、後輩である冴えない大学生と三好兄の面倒を見てくれたのが安芸先生だったという事。
面倒を見ていくうちに先輩後輩関係なく気軽に話せるようになり、よく一緒に宅飲みする関係になりました。
ちなみに酒豪キャラはあくまでオリ設定ですので。書いていて私の中で安芸先生の酒豪キャラが定着しつつあったり……。
男二人に女一人というアンバランスな形ではありますが、この3人の中に恋愛感情は欠片も無かったり。
あくまで気の合う友人、酒飲み仲間的な感じという印象で書いてました。
三角関係とか、昼ドラチックにドロドロしたものはありません。
と、こんな感じでしょうかね。
次で一応、本編最終回になると思います。
現在も見直し訂正中ですので、近いうちに上げようと思います。
説明 | ||
6話目です。 | ||
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