英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇
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5月21日、午前7:00――――

 

翌朝、現状を知った生徒達が重苦しい空気を纏っていながらも結社の動きに対していつでも動けるように厳戒態勢でいる中心が折れたユウナは目は覚めてもベッドから起き上がらず、ベッドにい続けた。

 

〜デアフリンガー号・ブリーフィングルーム〜

 

「―――それでは、今回例の要請書は私が渡します。」

一方その頃リィンに対する要請(オーダー)の書類を持ったセシリアはリィンと対峙し

「あれが……」

「………メンフィル両皇帝からの要請書か。」

「リィンさんとヴァリマールをこの1年動かしてきた……」

「そしてその”対価”として新興の大貴族に内定しているシュバルツァー家をメンフィル皇家が庇護する誓約書でもある要請書ですわね。」

「ホント、よく考えられている要請書ね。」

セシリアが持つ要請書を見たアリサ達がそれぞれ複雑そうな表情をしている中シャロンとセリーヌは静かな表情で呟き

「……朝早くからお疲れ様です。今回はシルヴァン皇帝陛下の側妃の教官がいる為、レクター少佐ではなく教官が渡す事になったのですか?」

「ええ。そもそも、アランドール少佐は今それどころではないでしょうし。」

「え…………それって、どういう事なのでしょうか……?」

リィンの問いかけに対して頷いて答えたセシリアの話が気になったトワは不思議そうな様子でセシリアに訊ねた。

 

「申し訳ありませんが、今はそれについて説明している時間はありません。明日になればわかると思いますから、その時までお待ちください。―――それでは始めて構いませんね?」

「ええ、異存はありません。」

「”灰色の騎士”リィン・シュバルツァー。――――メンフィル両皇帝の要請(オーダー)を伝える。”結社”の狙いを見極め、クロスベルの地の混乱を回復し、可能ならば”執行者”を討伐せよ。」

「その要請――――引き受けました。」

セシリアが宣言と共に差し出した要請書に対して答えて受け取ったリィンは会釈をした。

「当然、私達も手伝わせてもらうわ。」

「及ばずながら私も協力させて頂きますわ。今回の相手は相当危険ですから、お嬢様とお嬢様の将来の伴侶であられるリィン様を守る為にも”死線”の力、とくと震わせて頂きますわ。」

「ええ、姉さんの動きを確かめる必要もありますし。」

「監察院の許可も貰った。どうか助太刀させてくれ。」

「アリサちゃん、エマちゃんにマキアス君、シャロンさんも……」

「……ありがとう。遠慮なく力を貸してもらう。」

アリサ達の協力の申し出にトワが嬉しそうな表情をしている中リィンは静かな笑みを浮かべて頷いた。

 

「勿論我々も助太刀させて頂きます。」

「シルヴァン陛下からも私達の加勢は許可されていますから、遠慮なく私達も戦力として数えて貰って構いませんよ。」

「ありがとうございます。お二人共、改めてよろしくお願いします。」

サフィナとセシリアの協力の申し出にリィンは会釈をし

「兄様。私とアルフィンも加勢させて頂きます。私達はその為にもサンドロッド卿に鍛えて頂いたのですから………」

「後方からの援護はお任せください。それにいざとなったらベルフェゴールさん達にも加勢して頂きますわ。」

「ああ、二人共期待している。――――構いませんね、ミハイル少佐?」

エリゼとアルフィンの申し出にも頷いたリィンはミハイル少佐に確認した。

 

「……勝手にするがいい。オルランド”准佐”とランドロス教官。君達の同行は許可できないが。」

「…………。」

「へーへー、言われなくてもわかっているぜ。」

ミハイル少佐に視線を向けられたランディは目を伏せて黙り込み、ランドロスはつまらなそうな様子で答えた。

「ま、何としても”特務支援課”を始めとしたクロスベルの英雄達にこれ以上活躍して欲しくないエレボニアとしては、絶対に認められないのでしょうね。」

するとその時女性の声が聞こえてきた後帽子を被ったエルフの女性がブリーフィングルームに入って来た。

「え、えっと、貴女は一体……?」

「あ、貴女は……!」

「何者だ。ここは関係者以外立入禁止――――」

エルフの女性の登場にトワが戸惑っている中セレーネは目を見開いて驚きの声を上げ、ミハイル少佐がエルフの女性に注意しようとしたその時

「残念ながら私も”関係者”なのよね〜♪―――――リィンにセレーネ、それにランディにとっての。」

「リ、リィンとセレーネ、それにランドルフさんの”関係者”、ですか?貴女は一体………」

エルフの女性がからかいの表情で答えてミハイル少佐の注意を制止し、エルフの女性の話を聞いたマキアスは戸惑いの表情でエルフの女性を見つめた。

 

「フフ…………―――――私の名前はエルファティシア・ノウゲート。クロスベル双皇帝が一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーの側妃の一人で、かつて”特務支援課”に所属していたわ。よろしくね、トールズ第U分校と旧Z組のみんな♪」

「何……っ!?」

「ええっ!?と、”特務支援課”の……!?」

「そう言えばかつて”特務支援課”にはヴァイスハイト陛下を含めた3名のクロスベル皇族の関係者達も所属していた話は伺っていましたが、まさかエルファティシア皇妃陛下がその一人だったとは………」

「それにとんでもない霊力(マナ)も秘めているわね………その耳といい、少なくてもアンタは異種族なんでしょう?」

エルフの女性――――ヴァイスの側妃の一人であり、かつて”特務支援課”に所属していた事もあるエルファティシア・ノウゲートが自己紹介をするとミハイル少佐とアリサは驚き、シャロンは静かな表情で呟いてエルファティシアを見つめ、セリーヌは目を細めてエルファティシアを見つめた。

「ま、この耳を見れば少なくても私が”人間”ではない事はわかるでしょうね。私はエルフ――――”ルーンエルフ族”よ。」

「自然や精霊と共に生きる伝承の存在である”森の民”――――”エルフ”……!それもエルフの中でも最高位のエルフ族である”ルーンエルフ族”だなんて………!?」

「フフ、それとエルファティシアさんはかつてエルフ族の国の一つ―――”エレン・ダ・メイル”という国の女王でもあったのですわよ?」

「ええっ!?じょ、”女王”!?」

「君達がかつて所属していた”特務支援課”とやらは僕達”旧Z組”も比べものにならないくらい、とんでもない人材が集まっていたんだな……」

「ハハ…………―――お久しぶりです、エルファティシアさ―――いえ、エルファティシア皇妃陛下。エルファティシア皇妃陛下がこちらにいらっしゃったのは、もしかしてヴァイスハイト陛下の指示で俺達の助太刀をしてくれる為に……?」

エルファティシアが自分の種族を答えるとエマは信じられない表情でエルファティシアを見つめ、セレーネの話を聞いたアリサは驚き、疲れた表情をしたマキアスに視線を向けられたリィンは苦笑した後エルファティシアに会釈をして訊ねた。

「以前のように”エルファティシアさん”でいいわよ。話を戻すけど、リィンの推測通り、ヴァイスに言われて貴方達に加勢する事になったわ。今回の敵の一人である”劫炎”とやらに対して優位に立てる力が私にあるとの事だからね。」

「えっと………エルファティシア皇妃陛下はエルフの中でも最高位の”ルーンエルフ族”ですから、魔術に長けている事は推測できますが、あの”劫炎”を相手にどのような優位な部分があるのでしょうか……?」

エルファティシアの説明が気になったエマは遠慮気味にエルファティシアに訊ね

「”神聖属性”――――つまり、亡霊や悪魔と言った”魔”の存在の弱点である”破邪”の魔術を最も得意としているわ。ま、治癒魔術や純粋属性の魔術も扱える上当然アーツの適性も高いから、後衛からの援護は大船に乗ったつもりでいていいわよ。」

「”破邪”の魔術………なるほどね。亡霊である”劫炎”にとって、亡霊――――”魔”の存在にとって弱点である”光”――――つまり”空属性”や”神聖属性”による攻撃が最も効果的でしょうね。」

「そうですわね……実際セティ様達に開発して頂いた”神聖属性”や”魔”の存在に対して最も威力を発揮するこの武装による”劫炎”に対しての攻撃も相当効果的でしたわ。」

エルファティシアの答えを聞いたセリーヌは納得した様子で頷き、セリーヌの言葉に続くようにシャロンは静かな表情で自身の武装を取り出して呟いた。

 

「うふふ、亡霊になった事で亡霊特有の弱点である”神聖属性”が弱点になった”劫炎”にとって強力な”神聖属性”の魔術の使い手であるエルファティシアお姉さんは”天敵”のような存在でしょうね。――――それにしても、このタイミングで特務支援課出身のエルファティシアお姉さんを加勢させるなんてヴァイスお兄さんは見事にエレボニア帝国政府に対しての”反撃”をしたわね♪」

「……………」

「レ、レン教官………」

意味ありげな笑みを浮かべたレンに視線を向けられたミハイル少佐は複雑そうな表情で黙り込み、その様子を見たトワは不安そうな表情をし

「だぁっはっはっはっ!このタイミングでエレボニアに対して反撃をするとは、さすがはヴァイスハイトだ!」

「ハハ……まさかここで俺達の代わりにエルファティシアちゃんを投入するとはな……ちなみにエルファティシアちゃん一人でこの演習地に来たのかい?」

ランドロスが豪快に笑っている中ランディは苦笑した後エルファティシアに訊ねた。

「いえ、私の護衛兼私同様リィン達の”助っ人”を命じられた人物と共にこの演習地に来たわ。」

「え……クロスベルからの協力者がまだおられるのですか?一体どなたが……」

「もしかしてその方も”特務支援課”に縁(ゆかり)のある方なのでしょうか?」

エルファティシアの答えが気になったエリゼは不思議そうな表情をし、アルフィンがエルファティシアに訊ねたその時

「ふふっ、”縁”というよりも”因縁”というべきかもしれないがな。」

黒髪の長髪の男性がブリーフィングルームに入って来た!

 

「な――――」

「ええっ!?ど、どうして貴方がここに……!?」

「ほう〜?」

「おいおい………あのリア充皇帝は何を考えていやがるんだ……?」

「クスクス、確かに”特務支援課”と”因縁”があるという言葉は間違っていないわね♪」

黒髪の長髪の男性の登場にリィンは驚きのあまり絶句し、セレーネは驚きの声を上げ、ランドロスは興味ありげな様子で男性を見つめ、ランディは疲れた表情で呟き、レンは小悪魔な笑みを浮かべ

「バ、バカな……貴様は元クロスベル国防軍長官―――――”風の剣聖”アリオス・マクレイン………!クロスベル動乱後逮捕され、拘置所で服役中の貴様が何故この場に……!?」

ミハイル少佐は信じられない表情で声を上げた後黒髪の長髪の男性―――――かつて1年半前に起こった”クロスベル動乱”の主犯格の一人にして、元A級正遊撃士であり、リィンの剣術の流派――――”八葉一刀流”の皆伝者の一人である”風の剣聖”アリオス・マクレインを厳しい表情で睨んだ。

「”クロスベル国防軍”といえば確か”クロスベル独立国”の時のクロスベルの軍の名称だったはずだが……」

「そ、それに”剣聖”という事はもしかしてその方は………」

「リィンやアネラスが修めている剣術の流派――――”八葉一刀流”の”皆伝者”なのかしら?」

「ええ、そうですわ。――――”風の剣聖”アリオス・マクレイン………かつては”クロスベルの守護神”と称えられ、レミフェリア公国で起こった国家を揺るがす程の大事件を解決した事からS級正遊撃士への昇格が何度も打診されていたA級正遊撃士でしたが、その裏ではディーター・クロイス元大統領―――いえ、イアン・グリムウッド弁護士の”同士”の一人としてクロスベル動乱の為の暗躍をし、更には”碧の大樹”でも”特務支援課”を阻み、”特務支援課”に敗北後逮捕されて拘置所に幽閉され、今は服役中のはずですわ。……恐らく実力はサラ様をも軽く上回るかと。」

「ええっ!?サ、サラ教官を軽く上回るって……!」

マキアスは戸惑いの表情でアリオスを見つめ、驚きの表情でアリオスを見つめるエマの言葉に続くように推測を口にしたセリーヌの推測にシャロンは頷いて答え、シャロンの推測を聞いたアリサは信じられない表情でアリオスを見つめた。

 

「フッ、罪を償い続けている俺と違い、今も実戦に身を置いているサラと比べれば、俺の方が遥かに劣ると思うがな。」

「ハハ………それよりもどうして拘置所で服役中のアリオスさんを俺達の助っ人にする事をヴァイスハイト陛下達は決められたのでしょうか?」

アリサの言葉に対して静かな笑みを浮かべて指摘したアリオスの言葉に苦笑したリィンはエルファティシアに事情を訊ねた。

「ヴァイスハイト達からもエレボニアの諜報関係者がクロスベルの領土に潜んでいる事で、その捜査や摘発の為に今はまさに文字通り”猫の手も借りたい”――――それこそ、実力がある犯罪者の手も借りたい状況だから、”黒の競売会”の時に戦ったマフィアの若頭と一緒にアリオスも一時的に釈放して私達の協力をさせているのよ。―――――クロスベルに貢献する事で”恩赦”としてそれぞれの”罪”に対する”減刑”をする事を条件にね。」

「そのような事情があってアリオスさんを………」

「”減刑”と引き換えに犯罪者相手に司法取引をして国家の事件解決の協力をさせるなんてめ、滅茶苦茶で非常識過ぎる……!」

「フフ、ですがかつてリベール王国にてクーデターを引き起こした”情報部”も結社の”福音計画”による”導力停止現象”が起こり、結社が王都(グランセル)を襲撃した際護送中の間援軍として駆けつけて救援した事と引き換えにクーデターの罪を許してもらい、釈放してもらったという前例がありますから、それを考えるとそれ程おかしくはないかと。」

エルファティシアの説明を聞いたエリゼは驚き、マキアスは疲れた表情で溜息を吐き、シャロンは苦笑しながら答えた。

 

「……ん?おい、ちょっと待て。エルファティシアちゃん、さっき”黒の競売会でやり合ったマフィアの若頭同様”アリオスのオッサンを一時的に釈放したって言ったよな?って事は、まさかとは思うが”キリングベア”の野郎も……!」

「ええ、今はオルディスにいるロイド達の協力者の一人として、ロイド達と共にいるわ。ちなみにロイドの話だと、割と協力的な態度を取っているとの事よ。」

「犯罪者を”減刑”と引き換えに協力者として事件解決の為に協力させている事も驚きですけど、その犯罪者が協力的なのも驚きですね。」

「まあ、自身の働き次第でどれだけ”減刑”されるかにも直結しますから、自分だけでなく部下や上司であるマルコーニの罪を少しでも減らすためにも協力的な態度を取っているのでしょうね。」

ある事に気づいたランディはエルファティシアに確認し、エルファティシアは苦笑しながら答え、話を聞いていたセシリアとサフィナはそれぞれ苦笑し

「マジかよ、オイ………ったく、そこの仮面のオッサンと比べればまだ常識を弁えている方だと思っていたが、結局はあのリア充皇帝も仮面のオッサンと”同類”じゃねぇか!?」

「クク、ヴァイスハイトは何といってもこのオレサマが唯一”永遠の好敵手”と認めた男だからな!常識というつまらねぇ”壁”なんてかる〜く、ブチ破って当然だぜ?だぁっはっはっはっ!」

エルファティシアの答えを聞いたランディは疲れた表情で肩を落としてランドロスに視線を向け、視線を向けられたランドロスは口元に笑みを浮かべた後豪快に笑い、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

(えっと……その”キリングベア”って何者なのかしら?)

(わたくしもロイドさん達からその方の事を聞いた程度で実際に会った事があるのは一度だけなのですが………”キリングベア”という二つ名を持つ方――――ガルシア・ロッシという方はかつてクロスベルの裏世界を牛耳っていたマフィア―――”ルバーチェ商会”の若頭さんで、元”西風の旅団”の猟兵で、しかも”部隊長”すわ。)

(ええっ!?フィーちゃんがいた猟兵団――――”西風の旅団”の……!?)

(それも”部隊長”という事は、”連隊長”の”罠使い”や”破壊獣(ベヒモス)”と並ぶ使い手なのかもしれませんわね。)

(し、しかも”ルバーチェ商会”ってエレボニア人の僕達でも知っている程の有名なマフィアだぞ!?確か連中は2年前のD∴G教団事件に深く関わっていたから、逮捕されたらしいけど……)

(”風の剣聖”の件といい、そんな大事件の関係者達を釈放して戦力として扱うなんて、”あらゆる意味”で常識外れの皇帝みたいね、”黄金の戦王”とやらは。)

アリサの小声の質問に答えたセレーネの説明を聞いたエマとマキアスが驚いている中シャロンは冷静な様子で呟き、セリーヌは呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「しっかし、まさかあんたがリア充皇帝の司法取引に応じてリィン達に力を貸すとはな。自分に対しても厳しいアンタだったら、『かつてクロスベルを騒乱の渦に巻き込んだ元凶の一人である自分には資格がない』とか言って、リア充皇帝の司法取引に応じなかった事に驚いたぜ。」

「――――勘違いするな。実際、未だに俺は俺自身が犯した罪を忘れていないし、ガイやクロスベルの民達に対する償いは俺の一生では到底償い切れないと思っている。俺がヴァイスハイト皇帝の司法取引に応じた目的は”減刑”ではなく、ガイやクロスベルの民達に対する”償い”として、クロスベルを再び騒乱の渦に巻き込もうとする結社の残党達からクロスベルを守る為だ。」

苦笑しながら話しかけたランディの言葉に対してアリオスは静かな表情で答え

「アリオスさん…………」

「ったく、その厳しさも相変わらずだな………」

「クク、さすがはかつて”クロスベルの守護神”とも呼ばれた男だけあって、例え罪を犯した後でもクロスベルを”外敵”から守る考えは変わっていねぇようだな。」

「うふふ、今回の”要請”はクロスベルを外敵から守る為でもあるのだからかつてクロスベル動乱を引き起こした元凶の一人である”風の剣聖”も信頼できる”助っ人”ね。」

「フン………」

アリオスの決意を知ったセレーネは驚き、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ランドロスは口元に笑みを浮かべ、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ミハイル少佐は鼻を鳴らして厳しい表情でアリオスを睨んでいた。

「………――――事情が違えど、クロスベルを結社から守りたいという考えは俺達も同じです。”八葉一刀流”の”二の型”の皆伝者にしてS級正遊撃士候補に挙がっていた元A級正遊撃士である”風の剣聖”と肩を並べて戦える事、アリオスさんと同じ”八葉一刀流”の剣士として光栄です。アリオスさんの協力、喜んで受けさせて頂きます。―――――改めてよろしくお願いします。」

静かな表情で呟いたリィンはアリオスに利き手である右手を差し出し

「……ああ。我が風の太刀、お前のクロスベルでの要請(オーダー)を成功させる為に存分に利用するがいい。」

リィンの行動に一瞬驚いたアリオスは静かな笑みを浮かべて自身も利き手である右手を差し出してリィンと握手をした。

 

「ふふっ、世にその名を轟かせ、しかも同じ流派である”八葉一刀流”の”灰色の騎士”と”風の剣聖”の共闘の誓いの握手なんてレアな場面、グレイスが知ったら、その場面を写真に撮れなかった事に物凄く悔しがるのじゃないかしら?」

「あー……確かにあの姉さんなら、本気で悔しがるだろうな………――――って、今気づいたけどオッサン、武器は大丈夫なのか?片方の相手は幽霊なんだから、幽霊相手に普通の武器だとほとんど攻撃が効かねぇぞ?」

二人の握手を見てある事を推測したエルファティシアに視線を向けられたランディは苦笑しながらグレイスが悔しがっている様子を思い浮かべた後ある事に気づいてアリオスに訊ねた。

「その心配は無用だ。―――――利剣『神風(かみかぜ)』。ヴァイスハイト皇帝より依頼されたディオン三姉妹が俺の為にわざわざ鍛え上げた”太刀”で、俺にこの太刀を授けたディオン三姉妹の説明によると”魔”の存在に対して絶大な威力を発揮する退魔の太刀との事だ。」

「セティさん達が………」

「………確かにその”太刀”にもとんでもない霊力(マナ)が秘められているみたいね。―――それこそエマ達が殲滅天使から貰った”匠王”自らが鍛え上げた武装同様”古代遺物(アーティファクト)”クラスのとんでもない霊力が感じられるわ。」

「ええ…………一体どんな製法で、こんなとてつもない武装を鍛え上げる事ができるのかしら、ウィルフレド様達は………」

「うふふ、さすが”工匠”ね♪」

ランディの質問に対して答えたアリオスは自身の得物である太刀を鞘から抜いてリィン達に見せて説明し、アリオスの説明を聞いたアリサは驚き、目を細めて呟いたセリーヌの言葉に頷いたエマは考え込み、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。

 

「――――ランディ。正直役不足だと思っているが………”ランディ達”の代役、俺達”Z組”と”特務部隊”が務めさせてもらう。」

そしてランディの正面に身体を向けたリィンは決意の表情で答え、リィンの言葉にランディが驚いている中アリサ達はそれぞれ頷いた。

「リィン君、みんなも………」

「はは………―――生徒達は任せてくれ。通信やクロスベル政府の動き、装備の改良だったらティオすけやお嬢、それにセティちゃん達も最大限協力してくれるはずだ。だから頼む――――”俺達”の代わりにどうか事件を解決してくれ!」

その様子をトワが驚きの様子で見守っている中ランディは苦笑した後リィン達に自分達―――”特務支援課”の”想い”を託し

「頼まれました!」

託されたリィン達はそれぞれ力強く頷いた。

 

その後――――トワ達が生徒達に今後の動きについて説明している中、リィンは新Z組のメンバーを呼び集めた。

 

〜デアフリンガー号・3号車〜

 

「……………」

「教官……行くんですね。」

「昨夜、オルキスタワーの屋上に現れた”結社”の二人と”神機”を何とかする為よね?」

リィンやセレーネと対峙したクルトは目を伏せて黙り込み、アルティナとゲルドは静かな表情でリィンとセレーネに目的を確認した。

「ああ………だが今回、君達の同行を止めるつもりはない。」

二人の問いかけに頷いたリィンの答えを聞いたクルト達はそれぞれ驚いた様子でリィンとセレーネを見つめた。

「フフ、そんなに驚く事はないと思いますわよ?以前に約束した事もありますが、昨夜の”道化師”との戦いも一歩も退かずに、互角以上に戦ったのですから今の皆さんでしたら、決して足手まといになりませんわ。」

「だが――――このままユウナを放っておいてもいいのか?」

クルト達の反応にセレーネが苦笑しながら答えるとリィンは真剣な表情でクルト達に問いかけた。

 

「…………それは…………」

「…………とても放っておけません。」

「今、ユウナを放っておいたら、多分ユウナはもう2度と立ち上がれなくなるわ。」

「………演習先が決まった時からずっと無理をしてたんだろう。帝都内に家族もいることだし、一時帰宅を勧めてもいいんだが………だが――――こんな時だからこそ彼女自身に気づいて欲しいんだ。第U分校生として、クロスベルを愛する人間として今、何をすべきなのかを。そしてできれば――――4人揃って追いかけてきて欲しい。」

「…………あ…………………」

「僕自身、迷いもありますが………了解しました。」

「………必ず、ユウナと一緒に教官達に追いつくわ。」

リィンの頼みにアルティナは呆けた後静かな表情で頷き、クルトとゲルドは決意の表情で頷いた。

「ああ、頼んだ。――――それとできれば”伝言”を頼みたいんだが……」

そしてリィンとセレーネがアルティナ達に何を伝えている様子をアリサ達は見守っていた。

 

「………新Z組か。いいクラスじゃないか。」

「そうね。迷い、悩んでそれでも前に進んで……」

「ふふ、それが未来の自分を形作っていくんですよね。」

「アンタたちも大概、迷いまくってたもんねぇ。」

「ふふっ、アルティナ様達もきっとお嬢様達のように未来の御自分を見つめられるでしょうね。」

リィン達の様子をシャロンは旧Z組のメンバーと共に微笑ましそうに見守り

「うふふ、セシリアお姉さんも鼻が高いのじゃないかしら?教え子が立派な教官になっているのだから♪」

「いいえ、私からすると”まだまだ”ですが………新米の教官としては、”上出来”の部類だと思っています。」

「そうですね……新米でありながら着任して僅か2ヵ月弱で生徒達にあそこまで慕われる教官は滅多にいませんものね。」

「ふふっ、あの様子では新旧Z組が揃って協力する事が訪れる日が近いかもしれないわね……」

「ええ………そしてそれが実現する事もオリヴァルトお兄様の望みなのでしょうね……」

からかいの表情を浮かべたレンに話を振られたセシリアは苦笑しながら答えた後静かな笑みを浮かべ、サフィナは感心した様子でリィンを見つめ、エリゼとアルフィンは微笑ましそうにリィン達を見つめ

「それにしても、少し前まではただの軍人見習いだったあの子が”英雄”になって、教官として人にものを教える立場になるなんて、本当に人間は寿命が短い代わりに成長が早いわね〜。」

「そうだな…………(ガイ……お前が”特務支援課”に残した”想い”はしっかりと受け継がれているぞ……)」

興味ありげな様子でリィン達を見つめながら呟いたエルファティシアの意見に頷いたアリオスは今は亡き親友の顔を思い浮かべていた。

 

その後、デアフリンガー号から出たリィン達はまずクロスベルで情報収集をする為に導力バイクにそれぞれ乗ってクロスベルへと向かった―――――

 

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という訳でクロスベル篇での終盤で参戦するクロスベル側のゲストキャラは魔導巧殻のエルファティシアと零・碧からまさかのアリオスですwwなお次回、リィン達はある零・碧キャラと再会する話を書いています。というか前々から疑問に思っていましたけど、原作でのクロスベル篇での相手はマクバーンとカンパネルラに対してこっちのメンバーは後衛ばっかで実質前衛はリィンしかいない事にええ………って思いました。前衛は二人入れるのが鉄板なんだからせめてシャロンをスポット参戦させるか、シャロンが無理なら新Z組メンバーの誰かを参戦させて欲しかったと何度も思いましたね……(遠い目)

説明
第56話
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