真・恋姫†無双〜天空より降臨せし白雷の守護者〜3話
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 華琳たちに真名を許されてから2日。5人は玉座で政務に励んでいた。春蘭とも無事に和解し真名で呼びあうことを許されていた。

 

明雪「真、これはどうなるの?」

 

真「それはだな・・・・」

 

 世話になる以上できることは手伝うという宣言通り真も一定の範囲内で仕事を手伝っていた。2日前に見た武の才もさることながら政治や経済にも精通し、文官としても高い能力を持つ真。それを見た曹操は改めてこの男が欲しいと強く思うのだった。

 

明雪「しかし・・・」

 

真「ん? どうしたんだ明雪?」

 

明雪「いや、真は天の国で何をしていたんだろう、と思ってね」

 

真「どういうことだ?」

 

明雪「前に言ってたわよね。職業柄一度見た顔は忘れないって。それにあの時見せた武とこの文官としての能力。とても普通の民だったとは思えないんだけど?」

 

 この発言に他の3人も反応した。それはここにいる全員が思っていたことだった。

 

明雪「あなたは一体天の国でどんな仕事をしていたの?」

 

華琳「それは確かに気になるわね」

 

 春蘭と秋蘭も同じ意見のようだ。真をじっと見つめ答えを待っている。

 

真「そういえば話してなかったな。・・・・・いいだろう。この機会に話そう」

 

 真は着ていた軍服を脱ぎ、背中に施された紋章が見えるように折りたたみ4人に見えるように置きその横に雷皇を置いた。紋章は四角い枠の中央にオオカミの装飾の施された金の盾。その盾の下のほうに重なるように本体と鞘が斜めにクロスした神刀雷皇があり、その後には刀と同じ青白い雷が描かれている。そして盾の中央には大きく『雷皇』の文字が刻まれていた。

 

真「天皇直属隠密特務治安維持部隊『雷皇』隊長。それが俺の向こうでの肩書だ」

 

春蘭「てんのう?」

 

真「天皇とはこの国の帝に当たる人物で日本を統治する方だ。俺の仕事は天皇の守護とその住まいである皇居の警護に始まり、周辺諸国の監視と情報収集、国内外の反乱分子の排除、天皇の親族や国賓の護衛、政敵の暗殺など国の裏を支える仕事だ」

 

明雪「道理で政務に精通しているわけだ」

 

真「それに陛下は俺にとって幼馴染に近い間柄だったからな。さまざまな面でよく相談を受けていた」

 

秋蘭「親がその天皇に近い立場にいたのか?」

 

真「いいや。元々俺は孤児だ」

 

華琳「孤児?」

 

真「そうだ。親の顔は一度も見たことはない。俺は当時雷皇の隊長を務めておられた陛下の父君に拾われ、氣を扱うことに長けていたから兵士になり死に物狂いで己を鍛えこの地位まで上り詰めた」

 

秋蘭「すまない。・・・・話しにくいことを聞いてしまった」

 

真「別にいいさ。それに小さいころ陛下は俺を兄のように慕ってくれた。父君や先代天皇で、もう亡くなられた陛下の母君は俺を本当の息子のように扱ってくれた。雷皇の仲間たちは俺にとって家族だった。どこの馬の骨かもわからない俺を信用してくれた。俺にはそれで十分だ」

 

 そう淡々と話す真だったがその顔はどこか嬉しそうだった。

 

明雪「そんな人たちと離れて寂しくはないのか?」

 

真「もともと少しみんなと離れて旅をするつもりだったからな。俺は戦いのことしか考えてこなかった。というよりも昔の俺にはそれしかなかった。だからいったん其処から離れて自分を見つめなおしてみろと陛下たちに言われていたんだ。ここに来れたのはかえって良かったのかもしれない。ここなら過去の自分を気にせず自分を見つめることができる」

 

明雪「そうか」

 

華琳「ならばこの時代で存分に生きるといいわ」

 

真「そうさせてもらう」

 

 真はずっと黙っていた春蘭が何かをじっと見ていることに気がつく。その視線の先には神刀雷皇があった。

 

真「どうした春蘭? ずっと雷皇を見つめていたようだが」

 

春蘭「・・・・そんな細い剣で敵が切れるのかと思ってな」

 

 自然と3人の視線もそこに集まる。確かにこの時代の剣に比べ日本刀は細く薄いため頼りない印象を受ける。

 

明雪「確かに。切りあっている最中に折れそうね」

 

真「剣を創る上での発想が違うからな」

 

秋蘭「どう違うのだ?」

 

真「君たちの考える剣は幅広で肉厚、丈夫な物で質量と力で叩き斬ることに重きを置いた剣だろう?」

 

春蘭「それが当り前だろう」

 

真「しかしこの日本刀は違う。この剣は徹底的に斬ることを追求した世界でも珍しい形式の剣なんだ」

 

明雪「どういうことなの?」

 

真「強度をある程度捨てて刀身を薄く軽くすることで切れ味を徹底的に追及したんだ。そうすることにより力で無理やり切る剣が主流なのに対して力を加えることなくその切れ味と技術で敵を斬り裂く剣を生み出したんだ。またその形状の美しさから芸術品としての珍重されることもある」

 

華琳「確かに美しい剣ね。よく見せてもらえないかしら?」

 

 華琳が手に取ろうと腕を伸ばすが途中で真がそれを制する。

 

真「俺が持って見せる分には構わない。だが、死にたくなければ俺以外の者はこの刀に触れないことだ」

 

華琳「・・・・それはその剣に触れたらあなたが私を切り殺す。そういう意味かしら?」

 

真「いいや、言葉通りの意味だ。もし俺以外の人間、この剣に認められていない人間が触れれば、そいつは一瞬にして雷にその身を焼かれ灰燼に帰すだろう。いや、塵すら残らんか」

 

 4人には意味が分からなかった。なぜ剣に触れただけで死ぬのか。疑問でしかなかった。

 

華琳「それは一体どういう事なの? ・・・・そういえば以前言っていたわね。剣に選ばれた者があなたの主になると。それと関係があるの? 答えなさい、真」

 

真「その通りだ。だがそれを話すにはまず、この刀雷皇と天皇家にまつわる話からしなければならない。少し長くなるが聞いてくれ」

 

 そして真は静かに語り始めた。

 

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真「この刀、神刀雷皇は千年以上天皇家に伝わる二振りの雷皇のうちの一本だ」

 

秋蘭「二振り?」

 

真「そうだ。遙か昔、天皇家は未曽有の危機に陥っていた。当時の天皇は平和主義を掲げた人物で過剰の軍事力は無駄な争いの火種となると軍縮を各地の豪族に命じた。それに反発した豪族たちがいたんだ。彼らは軍事で成り立っていた家で軍縮によって権力が失われることを恐れ朝廷に反旗を翻した」

 

 最初は数で押していた天皇軍だったが、反乱軍は各地の天皇家に反感を持つ豪族たちを糾合していき最終的には3分の1の豪族が敵に回る。元々天皇側の豪族たちは軍縮を受け入れた者たちばかりな上に反乱軍は軍事に従事してきた家柄ばかりのため次第に形勢は悪くなっていく。

 

真「各地で敗北が続いたある日一人の男が立ちあがる。それが二振りの雷皇の初代持主、常陸成親(ひたちのなりちか)。のちに部隊『雷皇』の前身である天皇家近従守護の役職を務めていた。天皇を深く敬愛し国を愛していた常陸は国を救うべくある場所に行くことを決意したんだ」

 

明雪「ある場所?」

 

真「その場所は日本を代表する富士という山の麓にある神々の住まう森と呼ばれる樹海、天帝の森だ。年中霧が立ちこめ樹木が生い茂り日も差し込まない。さらに地形も複雑なため別名帰らずの森とも呼ばれる場所。その奥に天へとつながる祠があるといわれている」

 

 決意を持って踏み込んだ常陸だったが、その道中は険しく森に住む猛獣たちが行く手を阻んだ。何度も死にかけ地から付きそうになりながら三日三晩さまよった。何度もくじけそうになったが天の上の忠義の心と都に残してきた妻子が彼を支えた。

 三日目の晩。ついに常陸は力尽きる。そこはわずかに森が開け夜空に満月が見えた。幻想的に美しく輝く満月の下で死ぬなら悪くない。そう思った常陸はゆっくりと目を閉じる。すると何かが常陸の脇腹をつつく。何かと目を開くとそこには通常より一回りは大きい2頭の狼がたたずんでいた。

 

真「一頭は蒼銀、もう一頭は白金の毛をした巨狼。一頭が常陸をそっと咥えてもう一頭の背に乗せどこかへ運び始めた。その時常陸は巣にでも運ぶのかと思いながら意識を失った。しかし次に目覚めてみるとそこは妙に温かかった。日の差し込まぬ森は冷え切っているはずなのに。しかも妙に体が軽い。それを不思議に思った常陸は身体を起こし辺りを見回すと、たたずんでいる二頭の狼とその奥にある常陸が探し者めていた祠。天帝の祠が目に入った。狼たちは神の従者。そして常陸が目を覚ました場所こそが彼の探し求めていたその場所だったんだ」

 

 常陸が祠の前に跪くと二頭の狼は天に向かって遠吠えを上げる。すると空間は神秘的で神々しい光に包まれていった。さっきまであったはずの壁や天井が消え失せなるで天国にでも来たかのような光景が広がっていた。

 誰かが頭を上げよと常陸に告げる。それに従い頭を上げるとそこには国の守り神たる天帝とその配下である八神将が立っていた。

 何いようかと天帝が常陸に問うと、常陸は国の現状を述べ天帝に助力を求めた。常陸の強い思いと決意。そして国を愛する純粋な心を気に入った天帝は雷帝に命じて力を貸させた。

 雷帝は常陸に刀と脇差を出すよう命じると、刀には破軍の雷を宿らせ戦いの刀とし、脇差には神将の持つ固有能力の一つで雷帝の能力である『相応しき者を選定する力』を雷とともに籠め天皇を選ぶ剣とした。これに雷皇と銘をつけ、二頭の狼と共に常陸に授けた。

 

真「その後、二振りの雷皇と二頭の巨狼を連れた常陸は瞬く間に反乱軍を鎮圧。その死後、護国の神として二頭の狼と共に今も崇められ続けている。これが神刀雷皇と天皇家にまつわる伝説だ」

 

春蘭「しかしそれは伝説だろう?」

 

真「いいや。多少の脚色はあると思うが真実だろう。実際天皇は代々雷皇によって選ばれている」

 

秋蘭「にわかには信じがたい話だな」

 

真「それを言ったら俺の置かれてる状態も十分信じがたいさ」

 

秋蘭「フッ。それもそうだな」

 

真「なら今度は神刀雷皇について詳しく話していこうか」

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真「まずは天皇を選ぶ表の雷皇『神刀雷皇・天命』」

 

華琳「どういうふうに選ぶの?」

 

真「まず天皇家に女子が生まれると雷皇に触れる。こうすることで雷皇が後に天皇として選ぶ対象となる。その後天皇になるための様々な教育を行い規定年齢に達したとき雷皇に触れ、ふさわしいと認められれば雷帝の加護のもと天皇の継承権を得る。もしふさわしくなければ雷皇に秘められた雷がその手を弾き触れることすら許さない」

 

秋蘭「まて。その場合、天皇家に女子が生まれなかったり、生まれたとしても全員がふさわしくないと判断されれば継承者がいなくなるのではないか?」

 

 それに頷く華琳と明雪。春蘭はすでに話についてきていない。

 

真「その場合、秘められた『相応しき者を選定する力』によって日本国内から最もふさわしい人物を雷皇が見つけ出しその人物のところまで飛来して雷帝の加護が与えられる。そして天皇家の養女に迎えられ先代となる現天皇の教えのもとさまざまなことを学ぶ」

 

 

明雪「そんなので回りが納得するの?」

 

真「実際その方法で国は常に安定し国民からの支持も高い。それに天皇家に男子がいた場合は結婚して天皇家に優秀な血を入れることができる。陛下の父君と母君が実際そうだった」

 

華琳「なるほどね。確かににそれなら無能な者や悪政を行おうとする者が天皇になることはないわね」

 

 そうだと頷く真。

 

明雪「しかし、それを廃止したりしようとする者や、それを無視して天皇を決めようとする者がいるのではないか?」

 

真「それを阻止するのが俺たちの役目だ。俺たち天皇直属隠密特務治安維持部隊『雷皇』は天皇直属の名の通り、天皇の地位にある者しか命令権を持たない。つまりもし剣に認められぬ天皇が現れたとしても、雷帝の加護を受けたことをその時の『雷皇』の隊長が見届けていない限りその者を天皇の名を騙った罪で即時抹殺する」

 

秋蘭「その雷皇に入るのは一体どんな人間なんだ?」

 

真「毎年50万人の職種を問わずあらゆる面から見た優秀な人間を算出する。その中からさらに100人まで絞り込み訓練を施す。人間の耐えうる極限の状態の訓練を1年間繰り返しそれに耐え抜いた者だけがやっと『雷皇』に入隊できる。最終訓練で半数が死ぬ。毎年1人合格して入隊できればいい方で、合格者なしなんてこともざらにある。入隊しても今度はありとあらゆる状況を単体で打破できるようにするための血反吐を吐くような訓練が待っているがな」

 

明雪「・・・・それの隊長だった真は・・・・一体どれほどの実力なのよ?」

 

真「前にも言ったはずだそれが知りたいのなら俺を膝まずかせることだ」

 

 フッと微笑みながらそう言うと真は話を続けた。

 

真「そして代々天皇直属隠密特務治安維持部隊『雷皇』に伝わるのが裏の雷皇、「神刀雷皇・終焉」。雷帝の破軍の力が秘められた戦いの剣だ」

 

 そう言って真は置かれていた雷皇を手に取ると鞘から抜く。抜き放たれた刀身は日の光を浴びて美しく輝く。4人はその美しさに思わず目を奪われた。

 

華琳「見れば見るほど美しい剣ね」

 

 うっとりする華琳に苦笑する真。

 

真「見た目はな。実際はとんでもない刀だよこいつは」

 

華琳「どういうこと?」

 

真「こいつの秘めた力は表の雷皇の比じゃない。この刀に認められたのは千年以上の歴史の中で常陸成親と俺の2人だけ。それ以外にも数千人の猛者たちが挑んだが誰一人として触れることができなかった。ただ問題なのはそこからだ」

 

秋蘭「何か問題があるのか? 触れられぬように弾くだけなのだろう」

 

真「言ったはずだぞ秋蘭。この刀は表の雷皇の比じゃないと。強大すぎる力は弾くどころか触れようとした者を一瞬にして灰へと変える」

 

4人「!!」

 

真「この雷皇に認められるにはいくつかの条件がある。

 

 一つ、己が強い信念を持ちそれを貫き通せる者

 

 一つ、刀が認めた主に忠義をつくし己のすべてをかけ護り抜く者

 

 一つ、国と民を愛しそれを守るために命を惜しまぬ者

 

 一つ、悪に染まらず悪を誅することを躊躇わぬ者

 

 一つ、天皇が道を誤った時それを諫め、場合によっては誅することができる者

 

 一つ、上記五つを生涯やり通すことをその名において天帝と雷帝に誓う者

 

この六つの条件の内一つでも守れぬ者はその場で即刻灰燼に帰す」

 

華琳「私に触れるなと言ったのは・・・・・・」

 

真「これが理由だ」

 

 華琳はあの時真の言うことを聞いておいてよかったと心底思った。そうでなければ今頃自分は灰になっていたことだろう。

 

真「そしてもう一つ。この刀は遣い手が見つかると守るべき主を探しはじめる」

 

明雪「それはどうやって決まるの?」

 

真「知らん」

 

明雪「・・・・・・い、いや、知らんってあなたねぇ」

 

真「雷皇が持ち主を選ぶ条件は常陸成親が晩年に記していたが、その主の選定方法までは記されていなかった。過去に主として認められたのは常陸成親の主で当時の天皇だった天雷の帝だけだ。天雷の帝は雷皇・終焉に触れることができ、常にその力に守られていたという。天皇家の歴史上唯一二振りの雷皇両方に認められ、歴史上最も優れた天皇といわれている」

 

明雪「何かわかることはないの?」

 

真「そうだな。・・・・・可能性があるとすれば、遣い手が絶対の忠誠を誓う者、ということぐらいだな」

 

華琳「ということはあなたが忠誠を誓った相手なら触れられるのね?」

 

真「あくまで可能性の話だ。確証はない」

 

 一応すべて話し終わったのだが4人はまだ何か聞きたそうだった。

 

真「この際だ。応えられる範囲で質問があれば聞くが?」

 

その言葉に真っ先に反応したのは今まで黙りこんでいた春蘭だった。

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 次回は真の技について書いていこうと思います。

 

 さらに次回ついにあの猫耳毒舌軍師と怪力大食い娘が登場です。

 

 ではまた次回お会い致しましょう。

説明
 今回は真の過去や神刀雷皇の成り立ちについてのお話です。今後のストーリーのカギとなるような内容も含まれますので是非読んでみてください。
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コメント
耳毒舌軍師・・・へたしたら死ぬんじゃないか?(ブックマン)
敵軍に投げ入れればそれだけで勝てそうだ・・・・(cielo spada)
刀だけでトンでもない力を持ってますね。其処に隊長本人が血反吐を吐くと言わしめる訓練が重なれば・・・凄いな・・・ 春蘭でフェードアウトしてるけど、戦ったりは・・・ 次作期待(クォーツ)
すごい設定ですね!!続きを楽しみにしてます!(HIRO)
続きを楽しみにしてます!!(キラ・リョウ)
続きが気になります!更新楽しみです!!(紫皇院)
誤字 2p そっと加えて→咥えて では?(ユウ)
危なかったな、華琳。真が理由を言わなかったら灰燼になっていたよ。次回の予告で、華琳様やみんなが再び頭を下げる事になるのだろうか?(ほわちゃーなマリア)
誤字かな。1p:世話になる異常 → 世話になる以上?(Nyao)
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