英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇
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クロスベルに到着したリィン達は過去に起こったクロスベルでの結社が関わっている事件――――”クロスベル動乱”についての資料が保管され続けている元”特務支援課”の拠点にして、今は”インフィニティ”の本社でもあるビルの前に来た。

 

〜中央広場〜

 

「……ここは……」

「セティさん達――――”インフィニティ”の本社だけど、元はセティさん達やティオ主任が所属していた”特務支援課”の分室ビルだったそうよ。」

「と言う事は、もしかしてここでリィンさん達が………」

ビルの前に到着したマキアスはビルを見上げ、アリサの説明を聞いたエマは驚きの表情でリィン達に視線を向け

「ああ、数ヵ月程度だったがエマ達が第三学生寮で過ごしていたようにここでロイド達と共に寝食を過ごしていたんだ。」

「フフ、あれからもう2年近く経っているのに、ついこの間のように感じるわね。」

「はい………」

視線を向けられたリィンとエルファティシア、セレーネはそれぞれ懐かしそうな表情をしていた。

「確かこちらのビルの今のオーナーの方々はリィンさん達の元同僚で、オリヴァルトお兄様もお世話になった”匠王”ウィルフレド卿のご息女である方々でしたわよね?ふふっ、機会があればご挨拶をしたいと思っておりましたから、今からお会いするのが楽しみですわ。」

「その事なんだが……残念ながら、今朝セティ達に連絡した時に、朝から外回りの仕事があるって言っていたから、今はビルの中にはいないと思う。」

「そうだったのですか……ちょっと残念ですわ。」

期待している様子でビルを見つめて呟いたアルフィンだったが、困った表情を浮かべたリィンの話を聞くと残念そうな表情をした。

「そう言えば兄様達の話ですと、セシル様達が偶に多忙なセティ様達に代わって本社ビルで留守を預かっていたとの事ですから、ひょっとすればシズクさんともお会いできるかもしれませんね。」

「いや、それなんだが……セティ達の話だとセシル様達は今日は朝から病院で検診に行っているって言っていたから、セシル様もそうだけど、セシル様に付き添っているシズクちゃんやキーアはビルにはいないと思う。」

「そうだったのですか………アリオスさんにとっては、残念な偶然でしたわね……」

「――――俺への気遣いは無用だ。それに俺は少なくても俺の罪を償いきれるまでは、俺自身からシズクに会いに行く資格はないと思っている。」

「アリオスさん………」

「……………」

ある事を思い出したエリゼはアリオスに視線を向け、リィンの話を聞いたセレーネは残念そうな表情で視線を向けられたアリオスは静かな表情で答え、アリオスの答えを聞いたリィンは複雑そうな表情をし、シャロンは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「えっと……その、セシル様やシズクさんって、リィン達とはどう言った知り合いなのかしら?特にそのシズクさんという方はアリオスさんと何か関係があるようだけど………」

「そうだな………事情が色々と複雑だからどう説明すればいいかな…………」

「――――シズクは俺の娘だ。そしてセシルは俺の亡き友の婚約者だったが………どのような出会いがあったのかは知らぬが、今は”英雄王”の側妃の一人として”英雄王”の伴侶の一人になり、1年半前のクロスベル動乱で俺が逮捕された事で”親”という庇護を失い、更にクロスベル動乱の元凶の一人である俺の娘という事で世間での立場が非常に悪くなったシズクを養子として引き取り、俺の代わりにシズクを守り、育ててくれている。」

アリサの疑問に対してリィンがアリオスを気にしながら答えを濁しているとアリオスは静かな表情で説明し

「ええっ!?ア、アリオスさんの娘!?しかもそのセシル様って人は”英雄王”――――リウイ前皇帝陛下の側妃の一人って……!」

「一体何があってそんな超展開になったのよ………」

アリオスの説明を聞いてアリサやエマと共に驚いたマキアスは信じられない表情で声を上げ、セリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。

「フフ、ちなみにセシル皇妃陛下は”癒しの聖女”と名高い”癒しの女神(イーリュン)”教の司祭――――ティア皇女殿下やゲルドさんの”義母”でもあります。」

「ゲルドさんの……そう言えばプリネ皇女殿下からはゲルドさんが持つ異能――――”予知能力”を悪用しようと考える様々な勢力から守る為にゲルドさんをメンフィル皇家の分家の養子にする事でメンフィル皇家がゲルドさんの”後ろ盾”になった事を仰っていましたが、その分家はセシル皇妃陛下達の事だったのですか……えっと、病院に検診に行っていると言っていましたが、セシル皇妃陛下は身体のどこかが悪いのでしょうか?」

セシリアの説明を聞いたエマは驚きの表情で呟いた後ある事を思い出して不安そうな表情でリィン達に訊ねた。

「うふふ、別にセシルママは身体のどこかが悪いから病院に行っている訳ではないわよ?セシルママは今お腹の中にレン達の弟か妹がいるから、病院に通っているのよ。」

「ええっ!?レ、”レン皇女殿下の弟か妹がお腹の中にいる”って事は、そのセシル皇妃陛下は今、妊娠しているんですか……!?」

「ああ。」

レンの説明を聞いて驚いている様子のアリサの疑問にリィンは頷いたが

「うふふ、シズク様にとっても妹か弟ができますからとてもおめでたい話ですわね。―――ところで妊娠で思い出しましたが、リィン様とお嬢様は今回の要請(オーダー)を無事終えれば、”子作り”にも励んで頂けるのでしょうか♪」

「エリゼ達を出し抜いてそんな事をするつもりはないし、そもそもみんなの前でそんなとんでもない事を聞かないでよ、シャロンッ!!」

「だから、ハメを外さないって言っているじゃありませんか!?」

からかいの表情を浮かべたシャロンの問いかけに対して顔を真っ赤にしたアリサと共に反論し、その様子を見守っていたセレーネ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ハア………しかし、そうなると今ビルの中には誰もおらず、鍵がかかっていて入れないのでは?」

「いや、セティ達の話ですとセシル様達とは別の人物に留守を頼んだと言っていましたから、開いているはずです。」

我に返って呆れた表情で溜息を吐いたサフィナの疑問に答えたリィンは仲間達と共にビルの中へと入って行くと、白い狼が玄関付近にあるソファーの傍で寝そべって寛いでいた。

 

〜総合工匠会社”インフィニティ”〜

 

「へ……っ!?」

「お、狼……!?」

「えっと……もしかしてセティさん達が言っていた留守を頼んだ人物って………この狼の事なのかしら……?」

「どこが”人物”よ……”人”ですらないじゃない……」

白い狼を見たマキアスとエマは驚き、アリサは表情を引き攣らせ、セリーヌは呆れた表情で溜息を吐いた。

「ハハ……確かに”彼”も留守役としてピッタリだな。」

「そ、そうですわね。でもどうしてセティさん達は留守を預かるのが”彼”である事をお兄様に教えなかったのでしょう?」

「うふふ、わざと黙っていて貴女達を驚かせようとしたのじゃないかしら♪もしくは貴方の指示かしら?」

一方リィンとセレーネは苦笑し、エルファティシアがからかいの表情で狼に問いかけると

「フッ、別に我はセティ達に口止めもしていないのだから、恐らくセティ達の仕業だろう。」

「へ………お、狼がしゃべった!?」

「ま、まさかとは思うがあの狼も君達の関係者か……?」

「アンタ達ねぇ……人の言葉を解する動物は、みんな魔女の眷属(アタシ達)だと思っているんじゃないでしょうね?」

「ア、アハハ……少なくても魔女の眷属(私達)の中に狼を使い魔にした人達はいませんよ。」

何と狼はセリーヌのように人の言葉を口にし、狼がしゃべった事にアリサが驚いている中疲れた表情をしたマキアスに視線を向けられて呆れた表情で答えたセリーヌの話を聞いたエマは苦笑しながら答え

「白い狼で、リィン様達が全く驚いていない様子から推測すると………貴方が”幻の至宝”を見守っていた”空の女神”の”眷属”の一柱であられる”神狼”様なのでしょうか?」

「!!」

「”神狼”ですって!?」

狼を見つめて狼に問いかけたシャロンの推測を聞いてエマと共に血相を変えたセリーヌは声を上げて狼を見つめ

「左様。私の名はツァイト。かつて女神から人に贈られた大いなる”七の至宝(セプト=テリオン)”の一つ――――”幻の至宝”の行く末に在り続けた者だ。」

その場にいる全員に見つめられた狼――――”空の女神”の眷属の一柱にして、かつて”特務支援課”の”警察犬”でもあったツァイトは自己紹介をした。

 

「ええっ!?」

「そ、”空の女神”の”眷属”って……!何でそんな伝承上の存在がこのビルの留守を……!?リィン、君達とそちらの狼とは一体どういう関係なんだ……!?」

ツァイトが名乗るとアリサは驚きの声を上げ、マキアスは混乱した様子でリィン達に訊ねた。

「ハハ……ツァイトは”特務支援課”の”警察犬”だったんだ。」

「しかもロイドさん達の話によると、”特務支援課”が発足されて少ししてから起こった事件を切っ掛けに”警察犬”としてロイドさん達に協力してきたそうですわ。」

「ちなみにツァイトは”特務支援課”に所属していた期間はリィン達どころか、リィン達よりも長く所属していた私よりも古株なのよ〜?」

「け、”警察犬”ですか………」

「ハア……”神狼”の名が泣くわよ……」

「フフ、私もツァイト様の事を知った時は皆さんのように驚きました。」

リィン達の話を聞いてアリサやマキアスと共に冷や汗をかいたエマは表情を引き攣らせ、セリーヌは呆れた表情で溜息を吐き、アリサ達の様子を見たエリゼは苦笑していた。

 

「えっと……”空の女神の眷属”という事はもしかして、わたくしがグランセル城で女神様と共に出会った”竜”―――――レグナート様の……?」

「うむ、レグナートは私の同胞(はらから)だ。しかし……セティ達から予め聞いていたが、そなたもロイドのように随分と奇妙な縁に恵まれているようだな。かの”獅子心帝”の子孫に”風の剣聖”、そして”焔”を受け継ぎし一族の子孫と共闘する事になるとはな……」

「いや、”神狼”のツァイトもその『奇妙な縁』に入っていると思うんだが………それよりも”焔を受け継ぎし一族”って一体誰の事だ?」

アルフィンの質問に答えた後自分達を見回して呟いたツァイトの感想に疲れた表情で答えたリィンはある事が気になってツァイトに訊ねた。

「”焔”の名は遥か昔の名で、確か今は”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”と名乗っている一族の事だ。」

「ええっ!?エ、エマとセリーヌが……!?」

「………はい。私達――――魔女の眷属(ヘクセンブリード)はかつて”焔の眷属”と名乗っていたのですが様々な事情があって、今は魔女の眷属(ヘクセンブリード)を名乗っているのです。」

「―――とは言っても、その名を名乗っていたのは相当昔――――”獅子戦役”よりも遥か昔の話だけどね。」

(”焔を受け継ぎし一族”……”空の女神の眷属”である”神狼”が識(し)っていた事から考えると、まさか”焔”は”至宝”の事を示しているのか……?)

ツァイトの答えを聞いて驚いたアリサに視線を向けられて答えたエマとセリーヌの話を聞いていたアリオスは真剣な表情で考え込みながらエマとセリーヌを見つめた。

「お互いに色々と聞きたい事はあるでしょうが、今は”要請(オーダー)”を達成する事に集中した方がいいのでは?」

「あ………そうですね。――――それでは、早速始めよう。」

そしてセシリアに促されたリィンは仲間達と共に手分けしてテーブルを借りて資料などを広げ……クロスベルにおける”結社”の狙いと動きについて推測していく事にした。

 

「―――結社がクロスベルで何をしようとしているか……VIPの来訪や列車砲の搬入などで色々と状況は錯綜しているが……―――やはり鍵となるのは”実験”という言葉だろう。」

「実験……」

「オリヴァルト殿下が”道化師”に問い質していた言葉ね。」

「たしか、サザ―ラントでもその言葉が使われたそうですね?」

「そうね。サザ―ラントでの”実験”を考えると間違いなく”神機”が関係しているのでしょうね。」

「はい……もしかしたらお兄様がヴァリマールを使っての戦闘すらも”実験”の内に入っているかもしれませんし……」

「と言う事は向こうも、リィンさん達が来ることを想定しているかもしれないという事ですか………」

リィンの言葉を聞いた仲間達がそれぞれ考え込んでいる中セレーネの話を聞いてある事を推測したアルフィンは心配そうな表情でリィンを見つめた。

「ああ―――その意味で今回の件も前回の”続き”にあたるんだと思う。サザ―ラントと同じく―――”神機”が現れている事も含めて。」

「”神機アイオーン”――――かつて”クロスベル独立国”で運用された機体の後継機ですわね。確か、以前の”神機”はほとんどメンフィルやロイド様達―――”特務支援課”によって破壊されたと伺っておりますが……

「ああ………ただ、ロイド達が直接戦った”白の神機”―――――”アイオーンα”に関しては結社の”第六柱”が撤退時に自身と共に”転移”で去ったそうだが……」

「”第六柱”……――――”蛇狩り”から生き伸びた”蛇の使徒”のノバルティス博士ですか。そうなると前回と今回の”神機”の開発には間違いなくノバルティス博士が関わっているのでしょうね。」

「そうね。ノバルティス博士は結社の”十三工房”を纏めている立場だし。」

リィンの言葉に続くようにかつての出来事を訊ねてきたシャロンの疑問に対してアリオスは静かな表情で答え、考え込みながら呟いたサフィナの言葉にレンは静かな表情で頷いた。

 

「サザ―ラントでの情報も聞いたけどそもそも、そんな巨大な質量の機体が動いていること自体がおかしいのよね。あのゴライアスを超えるサイズなのに2本足で立っていたみたいだし。」

「ああ……シュミット博士も似たような事を言っていたな。タワーに現れた神機はスリムだったがそれでも騎神を遥かに上回る大きさだ。そして―――飛び去るスピードはヴァリマールを超えていたと思う。」

「……まさか騎神を超える人型がエレボニアの外で造られてたなんてね。」

「でも……神機を造った”結社”も当初は使いこなせなかったそうです。人が再現した”女神の至宝”でようやく動かせていたそうですが……」

「かつて”零の御子”と呼ばれた”特務支援課”が保護していた女の子か。フランさんからも聞いたが、その力はとっくの昔に失われてるんだろう?」

「マキアスはフランと会った事があるのか………ああ、それについては俺やロイド達も自分の目で確認しているから今のキーアに”零の御子”の力がほとんど失われている事は断言できる。」

「残っている僅かな力も、少なくても”神機”のような凄まじい存在を動かせる事ができる力は全く残っていない事は”空の女神”であるエイドス様も断言しましたわ」

「ですが、あの”紫の機体”は昨夜、当然のように動いていましたが……そして、あの火焔魔人――――”劫炎”の言葉………」

昨夜の出来事を思い返したエリゼはリィン達と共にマクバーンの言葉を思い返していた。

 

ま、”至宝”の力がねぇから中途半端に動かせねぇけどな。もう少ししたら色々と愉しませてやれると思うぜ?

 

「……あれ、気になるわね。少なくとも”至宝”が無い状態で機能が制限されていながら……何らかの条件が整ったら至宝無しでも機能が使えるようになるって事よね?」

「ええ……”至宝”とは”女神の力”。それに代わる”何か”というのは正直、想像もつきませんが………―――ですが大前提として、あの神機が、大量の”霊力(マナ)”を使っているのは確かだと思うんです。」

「ああ、それは感じたわ。」

「霊力―――霊子エネルギーね。」

「僕達が普段使っている導力とどういった違いがあるものなんだ?」

「私の知る限り……導力はオーブメントによって精製されたより使いやすい”霊力”みたいですね。オーブメント機能は謎が多くて、詳しい事は私にはわかりませんが……」

「まあ、誰にでも魔術と同等の”力”が使えるようになる時点で、色々と謎が多いわよねぇ。」

「そうですね………我々の世界にも魔術の心得がない者達でも作動させることができる”魔導具”は存在しますが、戦術オーブメントのような魔導具は存在しませんね。」

エマの意見にそれぞれ同意したエルファティシアは苦笑し、セシリアは考え込みながら呟いた。

 

「うーん、そのあたりは発明者のエプスタイン博士しか知らないって話ね。ただ、どちらも本質的には似ていて大型機械を霊力で動かす事も可能みたい。………教会あたりが霊子駆動の飛行船を運用しているって噂もあるくらいだし。」

「……………」

(お兄様、その飛行船はもしかして……)

(間違いなく”メルカパ”の事だろうな……)

アリサの話を聞いて心当たりがあるシャロンは目を伏せて黙り込み、セレーネはリィンと小声で会話をし

「フム……霊力で動く大型機械という意味では騎神も同じでしたね。」

「はい―――ですがあの神機が騎神以上に非常識な力を実現できているとしたら話は別になると思います。おそらく、”外部”から霊力を過剰に取り込んでいるのではないでしょうか?」

「いわゆる過剰供給(オーバーチャージ)ね……!」

「すると、霊力を大量に供給できる何らかの場所(スポット)……そこに、あの紫の神機がいる可能性があるのではないでしょうか……!?」

考え込みながら呟いたサフィナの言葉に頷いたエマの推測を聞いて血相を変えたアリサとアルフィンはそれぞれ推測を口にした。

 

「なんだ、見えてきたじゃないか!」

「……でも、このクロスベルって無数に霊的な場(パワースポット)が存在してるのよね。」

「え”。」

「そ、そうなの?」

今後の方針が見えた事に明るい表情をしたマキアスだったがセリーヌの答えを聞くと表情を引き攣らせ、アリサは困惑の表情を浮かべた。

「……ええ、姉さんを捜すついでに色々と調べてみたんですが……北東の古戦場に、湖の湿地帯、暗黒時代の僧院なんかもあります。」

「どの場所も全く違う方向に存在していますから、しらみつぶしに捜す訳にもいきませんね。」

「ああ……VIP達が来ている以上あまりノンビリしていられない。―――って、そう言えばツァイト、さんだったか?君―――じゃなくて貴方は”空の女神の眷属”で、しかも遥か昔からクロスベルにいるような口ぶりを考えると、何か知っているのではないでしょうか?」

エマの話に続くように考え込みながら呟いたエリゼの言葉に頷いたマキアスはソファーの側で寝そべって寛いでいるツァイトに声をかけた。

「”ツァイト”でよい。”神機”の行方だが………―――そなた達には悪いがその件については私は介入する事はできない為、何も話せぬ。」

「ツァイトさんは介入できないって………一体どういう意味なんですか?」

「………――――今回現れた”神機”も”七の至宝(セプト=テリオン)”が関わっているからではないのか?」

ツァイトの答えを聞いたセレーネが首を傾げている中ある事に察しがついたアリオスは静かな表情でツァイトに問いかけた。

 

「へ……何で”神機”に”七の至宝(セプト=テリオン)”が関わっているからってツァイトが介入できないんだ……?」

「――――それはツァイトが”空の女神の眷属”だからよ。”空の女神エイドス”は”眷属”達に”至宝”の行方を見守ると共に”至宝”に関する介入は禁じているのよ。」

「……そう言えば”リベールの異変”で姿を現した”空の至宝”についてもアンタの同胞――――”古竜レグナート”は介入しなかったわね。という事は今回の神機の件……まさかとは思うけど、他の”至宝”が関わっているのかしら?」

「……………………」

「あの様子からすると、直接的にせよ、間接的にせよ”当たり”なのは間違いないでしょうね。」

「女神様は一体何故レグナート様やツァイト様にそのような命令をしたのでしょう……?」

「さあね。元々神が考えている事なんて”人”の身では決してわからないんだから、それこそ言葉通り”神のみぞ知る”、よ。」

マキアスの疑問に対して答えたレンの説明を聞いたセリーヌはある事を思い出してツァイトに問いかけたがツァイトは何も答えず黙り込み、ツァイトの様子から判断したシャロンは静かな表情で呟き、不安そうな表情で呟いたアルフィンの疑問にエルファティシアは疲れた表情で答えた。

「……何か方法は無いのかしら。たとえば何らかの探知機構………レーダーみたいな仕組みを使うとか。」

「その意味では、エマが霊脈を霊視するのが一番近道っぽいけど……さすがにクロスベル全体は無理よね?」

「ええ……姉さんやお祖母ちゃんもそこまでは無理だと思う。霊視能力を増幅できるようないい方法があればいいんですが………」

「霊視能力の増幅、か。」

「霊視能力の増幅………もしかしたら、ティオさんだったら何か力になるのでは?確かティオさん、ご自分が扱える魔術を”エイオンシステム”を利用して威力を増強したり、大魔術を制御したりしていましたし……!」

「そうね。幾らあの娘が特異な能力の持ち主でも、あの若さで大魔術の制御を何の補助もなしにするなんて、普通に考えて無理だもの。」

「うふふ、早速ティオの力を借りる時が来たようね♪」

「でしたら、まずそちらの端末を使ってティオさんに連絡を取りましょう。」

その後リィン達はティオに連絡して事情を説明した。

 

「――――なるほど、そういう事ですか。それならば確かにジオフロントが探知に利用できるかもしれません。」

「本当ですか……!?」

「かつて錬金術を発展させた魔導科学に利用された地下区画……」

「やれやれ、こんな都市の下にそんな場所があったなんてね。」

「正に”灯台下暗し”、ですね。」

ティオの答えを聞いたアリサは明るい表情をし、エマが考えている中呆れた表情で溜息を吐いたセリーヌの言葉に続くようにセシリアは苦笑しながら答えた。

「ふふ、いい着眼点かと。―――詳細は省きますが、ジオフロントはクロスベル全土の霊脈と接続する形で構成されています。そちらのエマさんの霊視能力と、わたしのエイオンシステムを連動させれば広域の探知(サーチ)も可能でしょう。以前、行方不明になった遊撃士を捜索した時のノウハウも活かせそうですし。」

「よ、よくわからないが……」

「でも、伺っているかぎり、何とか光は見えてきましたね。」

「ええ……できればティオ主任もこちらに合流してもらえませんか?」

「ええ、勿論です―――といいたい所ですが。実はこの後、ヴァイスさん―――ヴァイスハイト皇帝陛下の要請によってエリィさん達と協力する”仕事”がありまして。リィンさん達に合流して探知(サーチ)を手伝う余裕はないんです。」

アリサの頼みに対して意外な答えを口にしたティオの答えを聞いたリィン達は驚いた。

 

「そ、そうなんですか!?」

「ヴァイスハイト皇帝陛下が関係しているという話も気になりますね………」

「ああ、ひょっとしたら昨夜道化師達が口にした件―――――クロスベルの領土に潜伏している”情報局”や”鉄道憲兵隊”の捜査や摘発に関係しているかもしれないな………」

「うふふ、状況からしてどう考えてもその件が関係している可能性が高いでしょうね。」

「あ……………」

(今朝、クロスベル帝国政府から連絡があった”例の件”の事でしょうね……)

マキアスの推測を聞いたレンは意味ありげな笑みを浮かべ、アルフィンは呆けた声を出した後辛そうな表情で黙り込み、事情を知っているサフィナは目を伏せて黙り込み

「も、もしかしてセティさん達が留守にしているのもティオさんと同じ”仕事”なのでは……?」

「―――はい。しかも現在、テロ対策のためか多くの区画が封鎖されています。広域探知に向く場所は一つありますが、皆さんだけで向かう必要がありますね。」

「案内ナシか……ま、仕方ないでしょ。」

「ああ、何も問題はない。―――それで、俺達はどこに向かえばいいんだ?」

セレーネの推測に頷いたティオは説明を続け、ティオの説明を聞いたセリーヌは溜息を吐き、リィンは静かな表情で頷いてティオに続きを促した。

 

「……そちらにアリオスさんがいるのですから、ひょっとしたらアリオスさんに先導してもらえるかもしれない場所です。」

「”アリオスさんに先導してもらえるかもしれない場所”という事はまさか………」

「――――イアン先生の事務所の地下にある区画か?」

「はい。やはりアリオスさんもご存知でしたか………ジオフロントB区画・”SU”エリア―――――”旧グリムウッド法律事務所”の地下から降りられる機密エリアです。」

ティオの話を聞いてある事を察したエリゼはアリオスに視線を向け、静かな表情で問いかけたアリオスの問いかけに頷いたティオはリィン達にとって驚愕の答えを口にした。

「な、なんだって……!?」

「よりにもよってイアン・グリムウッドの事務所の地下ですか………」

「……わかった。後の事は任せてくれ。ティオ達の代わり――――何としても成し遂げてみせる。」

「ふふ、ランディさんから聞きました。こんな状況ですがわたしも最大限のサポートをするつもりです。探知ポイントの詳細と、それと別にちょっとした情報も集めたのでよかったら確認してみてください。それでは、また――――ジオフロントの探索を開始したら連絡していただけると。」

その後リィン達はツァイトに見送られた後ティオから貰った情報の中にあった手配魔獣の撃退とクロスベルで情報を集めた後、市役所に事情を説明して”旧グリムウッド法律事務所”の鍵を借りて”旧グリムウッド法律事務所”の中へと入り、事務所の地下にあるジオフロントでの探索を開始した――――

 

 

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という訳で予告していたリィン達が再会する零・碧キャラはツァイトでした!なお、余談ですが並行世界のユウナ達からもたらされた閃Vの情報は零・碧陣営はランディとワジ以外は既に知っている事になっています。後エステル達もww閃Wでも果たしてツァイトは登場するのやら……初期の特務支援の4人とキーアは登場する事は確定しているようですが……

説明
第57話
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