真・恋姫†無双 〜長江の華〜 第十話 |
<登場人物紹介>
姓名 字 真名 簡単な説明
北郷一刀 錦帆賊志願兵に降格になった主人公。制服は目立つので自分で買った平民服を着ています。
甘寧 興覇 思春 錦帆賊の頭領。貰った鈴は、いつも着けているとは限りません。だって―w
丁奉 承淵 冬灯 錦帆賊の将。強烈なお姉さんが来たせいで最近影が薄い。いや、裏で頑張ってますよ
魯粛 子敬 琴鳴 錦帆賊の客将。最近、冥琳と紫苑が“ふゅーじょん”したイメージになってきた orz
<前回のてきとーなあらすじ>
初めての人殺しを経験した一刀くん。ちょっと凹み気味。
しかし、琴鳴の緊縛プレイに涙し、冬灯にラーメンを奢ってもらい復活。
そういや甘寧に鈴渡してねーやと思い出し、渡したところ首に刃を当てられるも真名をさりげなくゲット。
次の日、思春に呼ばれてリストラ宣告。それが嫌なら這い上がって来いと言われる。
そういや、金髪小悪魔とその保護者がなにやら裏で動き始めたみたいでどうなることやら・・・・・・
では、続きをお楽しみください。
思春「・・・・・・北郷、貴様は警備部隊から降格だ。志願兵と一緒に錦帆賊の選抜を受けろ」
一刀「はっ?はああああああ!?」
思春の言葉に俺が心の底から叫んだあの日、つまり俺が降格を言い渡された日から、一週間が経過していた。
降格の理由は、重大な命令違反―つまりは、上司である琴鳴の命に背き、保護対象である商人を放っておいて戦場まで来たこと、だそうだ。
それにはもちろん俺も、先輩の兵が来たこと、思春が戦場まで連れて行ってくれたこととを挙げて反論した。
しかし、返ってきた言葉は、
思春「・・・・・・そんなものは知らんな」
という無慈悲な言葉だけであった。
一刀「そんなぁ〜」
冬灯「そんなに気を落とすなよ、兄ちゃん。要するに気合だよ、気合」
がっくりと肩を落とし、うつむく俺を見かねたのか、冬灯が声をかけてくれる。
一刀「・・・・・・そうだよな、最初っから諦めちゃ駄目だよな!ありがとう冬―」
礼を言おうと顔を上げるとそこには、
一刀「絶対面白がってるだろ、その顔は!!」
いつも以上に口の両端を上げ、ニヤニヤしている冬灯がいた。
くそぅ、当社比2倍にニヤニヤしやがって・・・・・・
琴鳴「まあまあ、そんなに一刀ちゃんをいじめちゃ駄目よ、思春、冬灯」
一刀「琴―」
そこには微笑みの天使がいてくれた―そう思った次の瞬間、
琴鳴「選抜は一週間後、それまではいつもの宿で自費で生活してちょうだいね。確かそれぐらいの貯えはあるでしょう」
にっこりと微笑む天使の背には、般若が住んでおりました。
一刀「琴〜鳴ぇ〜」
泣きそうである。
確かに貯えはある。
薄給の一刀が少しずつ貯めていたへそくりが・・・・・・。
琴鳴「あらあら、ごめんなさいね。私、上(思春)の命令には逆らえないの」
顔を両の手の平で隠し、およよと泣き崩れる琴鳴。
もちろん芝居ですけどね。
思春「・・・・・・とにかく、これは決定事項だ!覆ることはない!・・・・・・以上だ、後は好きにしろ」
ということで、今日がその一週間後の選抜の日。
今いる場所は楼船のある船着場の前にある広場。
周りには自分と同じように志願兵が大勢いた。
一刀「うー、さすがに少し緊張してきたな。でも俺もこの一週間ただ無為に過ごしていたわけじゃないんだ」
この一週間を思い出し、腰にある支給品の剣の柄を握って自分を奮い立たせる。
この一週間、警備部隊の元同僚である先輩達にずっと相手をして貰っていた。
一対一はもちろん、一対多の訓練も行っていた。
一刀「でも、選抜っていったい何をするんだろ・・・・・・」
そんな風に一人でつぶやきながら周りを見回す。
皆、明らかに自分より強そうである。
何だか場違いな感じがしてきた。
一刀「あれっ?」
そんな中、自分より明らかに場違いな人間がいるのを発見した。
あれは・・・・・・女の子だ。
それも可愛い女の子だった。
一刀「あんな子も選抜を受けるのか―」
そういった瞬間、
―グゥワァァァァァァン
銅鑼が鳴らされた。
広場に集まった志願兵の皆が一斉にそちらの方へ向く。
思春「・・・・・・これより錦帆賊の選抜を行う!」
楼船から思春が出てきてそう宣言する。
志願兵「お、おい、あれ甘寧だぜ」
志願兵「あ、ああ、あの『鈴の―」
錦帆賊の頭領の登場で志願兵たちはざわめきだした。
思春「黙れ・・・・・・無駄口は叩くな」
静かに、しかしよく通る声での甘寧の一言に広場は静まり返る。
琴鳴「あらあら、皆さんお利口ね。では、私の方から今回の選抜について説明するわ」
思春の隣にいた琴鳴が穏やかに説明を始める。
その言葉に広場全員が息を呑むのが分かる。
琴鳴「まず初めにこれだけ言っておきますね。・・・・・・ここにいる312名全員、錦帆賊の兵として迎え入れるわ」
はっ?
広場にいる全員がそういう顔をしている。
そして徐々に、それならばこの選抜の意味はいったい何なんだ、という疑問を持ち、ざわつき始める。
―リィーン、チリィーン
思春「黙れと言ったはずだが・・・・・・」
思春は鈴音を構え、殺気を放ち始めた。
それを見た全ての人間の動きが止まった。
琴鳴「あらあら、ありがとうね思春。それじゃあ説明を続けるわ。今回の選抜は、新設する『特別な』部隊の選抜なの。
選抜方法は、単純明快に勝ち残りよ。五人一組になって最後の一組になるまで競ってもらうわ。
何か質問はあるかしら?」
琴鳴はそう言うが、皆突然のことに頭が混乱していて、誰一人質問をする人間は現れなかった―ただ一人を除いて。
一刀「すみませーん!質問良いですかー?」
誰もがその能天気な声の方に顔を向けた。
どんな馬鹿がいるのかと。
琴鳴「あらあら、うふふふ、いいわよ」
一刀「さっき、五人一組って言ってたけど、ここにいるのって312人だよね。余るんじゃないかと。
あとその組み分けはどうするんだ?」
そりゃそうだと皆が頷く。
琴鳴「五人一組といったけど五人を越えなければ何人でも良いわ。
二人だけの組になったら・・・・・・頑張ってとしか言いようがないわね。
組み分けは・・・・・・自分達で決めてちょうだいね。それも選抜の一つと思ってくれていいから」
つまりは、強い奴と組め、そう皆には聞こえていた。
琴鳴「他に質問は―ないようね。では二刻後、街の南の原っぱで集合ね。それまでに組を作っておいてね」
そう言うと思春、琴鳴の二人は楼船へと帰っていった。
一刀「はぁー、大変だな・・・・・・とりあえずどっかの組に入れてもらうか」
とは言ってみたものの、
一刀「あのー」
近くにいたに人たちから話かけて行ったのだが、
志願兵「悪いな、もう五人決まっちまったんだ」
やら、
志願兵「あーん、手前ェ見たいな貧弱そうなのは違う組に入れてもらえや」
とかで、明らかに俺は避けられている様子だった。
そしていつの間にやら、広場には俺ともう一人―先程見かけた女の子だけが残っていた。
???「おう、兄ちゃん。黄昏てんな」
突然、後ろから聞き覚えのある声がした。
一刀「あれ!?冬灯こんな所で何やってるんだ?さっきの説明のときにも思春達とも一緒にいなかったみたいだけど」
冬灯「何って、兄ちゃん・・・そりゃ仕事に決まってんだろ。ほら、コレ」
そういって自分の腕に付けている物を見せてくれる。
大きな文字で「審判、俺が法律」と書かれた腕章だった。
一刀「はあ、審判ね」
その後ろの俺が法律の部分がちと怖いがね。
冬灯「なんだよ兄ちゃんノリ悪ぃな。せっかく助言でもしてやろうと思ったのに」
ニヤニヤとしている。
コレは完全に面白がってやがる。
一刀「助言・・・・・・助言ねぇ。貰えるものは何でも貰うが良いのそんなことして?」
冬灯「んー、良いんじゃねぇか選抜に特に役立つわけでもねぇし・・・・・・まあ一言だけだ。『一週間前のお頭の言葉をよく思い出せ』ってな、それだけだ」
選抜に役に立たないって、助言って言うのか?
それよりも、
一刀「思春の言葉ねぇ・・・・・・それって―」
冬灯「まあ良いじゃねぇか。それよりも早くあの子のところに行ってやりな。余りもん同士なかよく頑張るんだぜ」
俺の言葉を遮るように、一人ポツンと立っている女の子を指差す。
そうだよな、まずは選抜を受けないと何も始まらない。
一刀「へーい」
冬灯の言葉の意味を考えながら一人立っている女の子に足を向けた。
一刀「やあ、こんにちは」
とりあえず少し離れたところから声をかけてみる。
その女の子は、小さな顔に対して、少し大きめな帽子。
丈の短いチャイナドレス。
片眼鏡。
そして、一番特徴的なのが長い袖。
そう、その女の子を観察していると、
女の子「・・・・・・んー」
ううう、睨まれている。
俺、なんか悪いことしたのか?
でも、このままじゃ選抜を受けるどころの話じゃない。
一刀はその女の子にゆっくりと近付いて行った。
一刀「は、初めまして」
女の子「ひぁうっ」
突然、声をかけられたという風に驚いていた。
そして、こちらを向いて鋭く睨みをきかせた。
一刀「ご、ごめん。驚かした・・・かな?」
女の子「い、いえ、こちらこそ気付かずにすみません。私ちょっと目が悪いもので・・・」
俺の言葉に答えた、女の子はとても丁寧に謝ってきた。
一刀「ああ、だからか、じゃあ俺が何か気に触ることをしたわけじゃないんだね」
良かった。
俺は無実だったようだ。
でも、この目の悪さはちょっとどころの話じゃない気がする。
女の子「?どうしてですか?」
一刀「いや、睨まれてたから」
女の子「す、す、す、すみません、すみません、すみません」
女の子は何度も頭を下げていた。
一刀「いや、そこまで謝らなくても。―っと、俺の名前は北郷一刀、字はないんだ」
まずは自己紹介、相手のことを知りたければ、自分からがマナーですね。
女の子「私は呂蒙。字は子明と申します」
一刀「君が―」
あの呂蒙子明―演義ではあの名高い関羽を討ち取ったとして有名な武将だったはず、それがこんな可愛い女の子だなんて。
呂蒙「はい?」
そんな一刀の思いを知るはずもない呂蒙は首をかしげていた。
一刀「いや・・・・・・俺達二人、余っちゃったみたいだね。とりあえず選抜受けに行こうか」
呂蒙「あっ・・・・・はい!」
そう言うと呂蒙は俺の後ろに付いて来た。
一刀「呂蒙さん、そんな後ろから付いて来るんじゃなくて、横に並んで話しながら行かないか?まだ時間もあるし」
呂蒙「そ、そうですね・・・・・・・あ、あと呂蒙さんって言うの止めてください、なんか恥ずかしくって。
呂蒙って呼び捨てにしてください」
一刀「分かった。じゃあ行こうか、呂蒙」
呂蒙「はいっ!」
呂蒙は、どこか緊張しながらも一刀の隣を歩いた。
一刀と呂蒙は選抜の集合場所である南の原っぱまで、のんびりと歩いていた。
一刀「それでさ呂蒙、君みたいな女の子がどうして錦帆賊に入ろうと思ったの?」
呂蒙「私みたいな・・・ですか?」
一刀「そう、君みたいな可愛い女の子が」
呂蒙「か、か、か、可愛い!?わた、わた、私がですか!?そ、そんな私みたいに戦うことしか出来ないような女がですか!?」
すごい衝撃だったのだろう、呂蒙は目を白黒させて慌てふためいていた。
一刀「?あれっ?戦うことしか出来ない??」
確か、呂蒙といえば武勇というよりも周瑜の弟子としての知略などで有名だったはずなんだけど・・・・・・どういうことだ?
呂蒙「?はい、そうですが。私、幼い頃から戦場にいまして、その、戦うこと以外の経験が少なくて・・・・・・
こういう風に男の人とゆっくり話をすることもあまり・・・というか全然ないものですから」
そう、恥ずかしそうに呂蒙は俯いていた。
だから緊張しているのか。
一刀「それじゃあ、ちょっと緊張するのも仕方ないね。大丈夫ゆっくり慣れていけば良いんだから」
ニコッ
呂蒙「//////は、はいっ//////」
一刀の微笑みにますます下を向く呂蒙であった。
一刀「それで、さっきの続きなんだけどどうして錦帆賊に?」
呂蒙「ひゃ、はい、それはですね、天の御遣い様がいるかも知れないという噂を耳にして・・・。
そこでならこんな自分でも、少しは人の役に立てるかもしれないと思いまして」
天の御遣い、か・・・・・・やはり、この世界では天の名は大きな意味を持つんだな。
こんな風に人を巻き込んでいくのか・・・。
それは、これから天の御遣いとして生きていく一刀にとっての現実だった。
一刀「でも、俺も結構ここにいるけど、そんな人間見てないって聞くよ」
少し意地悪なことを言っているのかもしれない。
でも、彼女の言う『天の御遣い』なんて居やしない。
ここにいるのは偽者の天の御遣い―そう、何も出来ない俺が居るだけ。
呂蒙「そうですか・・・・・・それでも・・・自分が変わるきっかけになれば、困っている人の役に立てればいいんです。
それに、錦帆賊は賊と言われながらも悪い噂は聞きませんし」
一刀の言葉にも呂蒙の決心は変わらないようだった。
ならば、俺の言うことはそんなことじゃないな。
一刀「じゃあ、呂蒙さん。君はこの選抜に受かって琴―ん、んん、さっきの魯粛さんの言ってた特別な部隊に入りたいと思う?」
おっと、危ない。
自分が元々錦帆賊にいて、将たちに真名を許されていると知ったら、呂蒙は余計に緊張してしまうだろう。
ここは黙っておこう。
呂蒙「いえ、特には。もうすでに錦帆賊に入ることが出来るのですし、そこから頑張って行けば良いんで」
呂蒙の言葉に嘘はないようで、にこやかに笑っていた。
一刀「・・・・・・すでに錦帆賊・・・・・・・・・そうか、そういうことか!」
呂蒙の言葉、そして先程の冬灯の言葉の意味に気が付いて、一刀は声を上げた。
思春はこう言っていた。
錦帆賊の選抜を受けろ、と。
そう、受からなくてもいいのだ。受けるだけでいいのだ。
そこに思春のどういった思いがあるのか分からない。
でも、心が軽くなったのは確かだった。
呂蒙「ひぁうっ」
突然の俺の大きな声に呂蒙は驚いていた。
一刀「ああ、ごめん、ごめん。それじゃあさ―――」
・
・
・
そうして一刀たちは集合場所までゆっくりと歩いていくのであった。
集合場所に着いたのは俺達が最後だったようだった。
思春「・・・・・・遅いぞ貴様等っ!何をちんたらしているのだ!!」
時間ギリギリにやって来た俺達に声を荒らげる思春。
その隣には、冬灯、琴鳴がいた。
呂蒙「すみません、すみません、すみません!」
呂蒙は恐縮して、ペコペコしている。
一刀「すみませーん、でも時間には間に合ってますし、それに―」
それに対して一刀は特に感じた様子もなく、飄々としている。
思春「それになんだ!!」
うう、そこまで怒鳴らなくても・・・・・・まあいいや、ちょうど良い。
一刀「もう、錦帆賊に入れたし、そんなに頑張らなくて良いかなーって思ってね」
思春「・・・・・・ちっ」
冬灯「ほーう」
琴鳴「あらあらまあまあ」
思春はイライラと、冬灯は面白そうにニヤニヤと、琴鳴は微笑みながら一刀のことを見ていた。
琴鳴「まあまあ、これで皆揃ったみたいね。それじゃあ詳しい説明をするわね。
選抜会場はこの原っぱ、錦帆賊の兵が縄で囲んでいるところが見えるかしら。その中が試合場ね。
場外に出ると失格になるから気をつけてね。あと、負けを認めた相手に攻撃するのも失格よ。
じゃあ皆、中に入ってね」
琴鳴の言葉に志願兵が全員動き出す。
原っぱには木が数本生えている程度で何もなく、ただ足首くらいまでの草が生えているだけだった。
全員が試合場の範囲内に入ったところで思春が前に出る。
思春「・・・・・・では、これより・・・・・・始め!!」
思春の言葉に皆が咆える。
志願兵「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」
さてと俺達はと・・・・・・。
周囲の組が俺達を狙ってじりじりと迫ってくる。
そりゃあ俺でも、狙うわな、弱そうなのから。
一刀「はーい、皆さん!俺達は別に部隊に入りたいと思ってないんでー!!」
そう大声で宣言しながら両手を上げた。
その瞬間、俺達の周りから人がいなくなっていった。
一刀「ふう、やれやれ」
一刀はすぐに側にあった木に腰掛ける。
一刀「呂蒙、じゃあここで座っていようか」
呂蒙「・・・・・・そうですね」
そういうと呂蒙は一刀の隣に腰を下ろした。
その間に、何組もの志願兵達が負けて場外へと出て行く。
―カン
―ガキン
―ガン
剣の打ち合う音が響いている。
他の組と手を組み戦う者達もあれば、自分達だけで頑張っている者達もいる。
皆一様に必死だ。
呂蒙「・・・・・・はぁ、本当にいいのかな」
まさか一刀の言うとおり、こうも上手くいくとは正直思っていなかった。
先程、この原っぱに来るまでの道のりで言われた言葉を思い出す。
・
・
・
・
・
・
一刀「ああ、ごめん、ごめん。それじゃあさ、ちょっと俺の言うとおりにやってみない?
失敗しても・・・まあ錦帆賊にはいられるんだし」
呂蒙「?はい、別に良いですけど・・・一体どうするんですか?」
一刀「戦わない・・・それだけだよ」
呂蒙「はい!?今何と?」
一刀「だから、戦わないんだよ・・・・・・上手くいけば結構良いとこまで残れるかもしれないよ」
呂蒙「・・・・・・はあ?まあ私は北郷さんの言うとおりにやってみると言いましたけど・・・・・・なんか卑怯じゃないですか?」
一刀「うんそうだね・・・・・・でも、これも兵法だと思うよ。いかに自分の被害を減らし、効率よく敵を倒すか。
・・・・・・それだけのことだよ」
でも、思春とか絶対怒りそうだよな・・・・・・・・・想像しただけで恐ろしい。
プルプルプルプル
一刀はチワワのように震えていた。
呂蒙「・・・・・・はぁ」
そんな一刀の様子を見て、呂蒙は溜め息をつくのであった。
・
・
・
・
・
・
そんなことを考えている間にも、戦いは続いており、いつの間にか四組が残るのみとなっていた。
その誰しもが無傷ではなかったし、肩で息をしている状態だった。。
思春「・・・・・・ふむ、そろそろか・・・・・・皆、残りは“五組”最後まで全力で戦え!!」
そう思春が言った瞬間、志願兵の全員が首をかしげた。
彼らの前には四組しか残っていないのである。
それなのに甘寧は、残り五組と言った。
試合場の内外にいる全員がざわめき始めた。
思春め、余計なことを言って・・・このままだったら最後の一組までいけたはずなのに・・・。
一刀はそういう思いで思春を見つめると思春は笑っていた。
思春「・・・・・・そこにいるだろう、先程から」
そう言う思春の指は、真っ直ぐに俺達に向いていた。
志願兵「しかし、甘寧様その者達はすでに棄権したのではないのですか?」
志願兵「そうだそうだ俺達は確かに聞いたぞ部隊には入りたくないって」
冬灯「おーう!!そこら辺は俺が説明してやるぜ」
突然現れた少女の言葉に皆そちらに向いた。
冬灯「いーか!手前ぇらよーく聞け!俺が法律だ!!」
腕の腕章を見せつけながらの登場に誰もが言葉を失った。
冬灯「別にそいつらは棄権してないぜ、ただ部隊に入りたいと思ってないと言っただけで、
選抜を降りるとは一言も言ってないぜ。座っているところも試合範囲内だしな」
そう、一刀たちは、元々範囲ギリギリのところにおり、そして、そこの木の下に座ったのである。
呂蒙「北郷さ〜ん・・・・・・まずくないですかこの状況・・・・・・」
一刀「そうだな呂蒙、残った四組20人全員が俺らを狙ってるみたいだな」
それもそのはずである。
自分達が必死で戦っている間中、ずっと座っていたわけである。
そりゃあ誰だって怒りたくもなる。
志願兵「「うぉおおおおおおお」」
20人全員が俺と呂蒙の二人に向かって突撃を仕掛けてきた。
一刀「呂蒙!分かっているよな!」
呂蒙「はい!北郷さん!」
こういう時のことも事前に呂蒙とは話し合っていた。
俺は剣を自分の後ろにある木に突き立てた。
その間にも怒り狂った志願兵たちが俺達めがけて突進してくる。
一刀「まだ、まだだ・・・・・・よし今だ!!」
俺の合図で、俺と呂蒙は木に突き立てた剣を足場に跳んだ。
本当にギリギリのタイミングで、突進してくる志願兵達を飛び越えるかのように。
呂蒙は華麗に跳んでいる。
でも俺は・・・・・・少し跳躍力が足りなかったらしく段々と落ちていく・・・・・・一番後ろにいた志願兵の上へと。
やばいこのままじゃ―
一刀「ごめん!!」
志願兵「げぇ!俺を踏み台に!!」
下にいた志願兵の肩を蹴ってもう一段高く跳んだ。
俺に蹴られた志願兵は、突進してきた勢いのままにバランスを崩し倒れていく。
前の兵達を巻き込みながら。
そして、俺は見事に落ちた。
高く跳びすぎた俺は、無様に着地を失敗し、転がった。
一刀「いっ、痛ぅ〜」
呂蒙「大丈夫ですか、北郷さん!」
心配した呂蒙が駆け寄る。
一刀「つつつ、うん、大丈夫、大丈夫」
手を振り無事をアピールする。
思春「・・・・・・そこまで!!勝者、北郷・呂蒙組!!」
またも皆がざわめき出す。
志願兵「どういうことですか甘寧様!?俺らはまだ負けていません!!」
志願兵「そうだそうだ」
志願兵「俺達は負けてない!」
俺達に突っ込んできた志願兵達が口々に言う。
そこに現れる腕章を持つ少女。
冬灯「静まりやが―」
思春「黙れ!!」
思春の一喝で静まり返る。
思春「・・・・・・自分達の足元をよく見てみろ」
志願兵たちはそう言われ自分達の足元を確認する。
志願兵「「あっ!?」」
そこは一刀たちが座っていた木の向こう側つまりは―
思春「・・・・・・場外だ」
その言葉に皆が一様に悔しがった。
そして、
冬灯「お頭〜、俺の仕事〜」
冬灯も悔しがっていた。
先程まで戦いが行われていた原っぱで選抜合格者発表が行われようとしていた。
中には、いまだ悔しさに顔を歪めている者達もいる。
琴鳴「それじゃあ、今回の選抜の結果を発表しましょうか。まずは勝者の北―」
一刀「待ってください!」
琴鳴が勝者を告げる直前に一刀はその言葉を遮った。
一刀「呂蒙とも話し合ったんですが、俺らの勝ちっていうの辞退します。そもそも俺達は最初に言った様に別に部隊に選ばれたいと思ってないし」
琴鳴「2人とも本当にそれで良いのかしら?」
琴鳴は微笑みながら2人に問うた。
一刀&呂蒙「「はい」」
呂蒙「やはりあれは少し卑怯な気がしますしね」
呂蒙は少し俯き加減で言った。
一刀「それにやっぱり・・・あれだけ本気で頑張っていた皆に失礼な気がするんで・・・・・・
でも、あの戦法については卑怯と言われようと間違ってなかったと思ってますんで」
琴鳴「それはどうして?」
琴鳴は嬉しそうに聞いてくる。
一刀「いかに味方の犠牲を少なくし、敵を倒すか。それが兵法の第一歩です。仲間が傷つくのは見たくないですし。
それに俺達二人でできることと言ったらあれくらいだったしね」
周囲の志願兵もその言葉を聞いて頷いていた。
先程まで悔しそうだった者達もその言葉に納得したようで、様々な表情を浮かべていた。
琴鳴「それじゃあ、今回の選抜はこれで解散ということにしましょうか。皆お疲れ様でした。
明日、辞令が届くので、それぞれ新兵として兵舎の方に部屋が用意されているからゆっくり休んでちょうだい」
新兵「「はっ!!」」
そうして皆は解散していった。
ある者たちは、笑いあいながら。
ある者たちは、肩を抱き合いながら。
ある者たちは、健闘を称えながら。
皆、疲れてはいたが顔は生き生きしていた。
呂蒙「それじゃあ、北郷さん私達も行きましょうか」
一刀「ああ。それにしても呂蒙、今日は本当に助かったよ」
呂蒙「いえいえいえいえ、こちらこそ本当に勉強になりました。
兵法って凄いですね。私もあんなふうに出来たら良いのに・・・・・・」
一刀「じゃあさ、もし良かったら一緒に勉強するかい?兵法のさ」
そう、この娘は、あの呂蒙子明なんだ。
勉強すれば必ず優れた軍師になれるはずだ。
呂蒙「い、いいんですか!」
呂蒙は、一刀の言葉に本当に嬉しそうに喰いついた。
一刀「うん、いい―あっ、そうだ。ただし条件が一つ」
一刀はニコリと笑う。
呂蒙「私に出来ることがあれば何でも言って下さい!」
その目は真剣そのもの、たとえどんな条件でも飲む、そんな目をしていた。
一刀「今更なんだけどさ、その北郷さんっていうの止めてくれないかな。なんか気恥ずかしくて・・・一刀で良いよ」
呂蒙「そんなことで良いんですか、えっと、一刀・・・さん」
一刀「うんありがとう呂蒙。一刀、それが俺の名前、字もなければ真名もない俺のたった一つの名前」
呂蒙「えっ、えええええ!!真名がない!?それにたった一つの名前って、それって真名じゃないんですか!?」
何気ない一刀の一言、しかしそれは呂蒙にすればとんでもない一言だった。
呂蒙は、何か考え込むように俯いた。
一刀「ああ、気にしないで俺のいたところじゃ真名って概念がなかったから」
呂蒙「でも、それじゃあ私の気がすみません・・・・・・・・・・・そうだ!私の真名は亞莎、これからは亞莎と呼んでください!」
呂蒙はパッと顔を上げ目を輝かせて言う。
一刀「良いの?会って間もない俺に真名なんて預けて」
一刀は心配そうな顔で亞莎をみる。
亞莎「良いんです。時間は関係ありません。一刀さんは信頼できる―そう私が信じたのですから」
一刀「ありがとう亞莎。これからも宜しく」
ニコッ
亞莎「//////」
一刀が笑いかけると亞莎はまた俯くように下を向いてしまった。
冬灯「ん、んんーそろそろ良いか兄ちゃん」
俺達の後ろに咳払いをしながらニヤニヤしている冬灯がいた。
そしてその隣には嬉しそうな琴鳴と―
思春「・・・・・・北郷、貴様一体何をしているのだ」
一刀「うう、やっぱり怒ってるし。やっぱりあんな戦法は卑怯だったかな、琴鳴」
助けを求めるように琴鳴に声をかけた。
琴鳴「いいえ、私は貴方の成長が見れて嬉しかったわ、一刀ちゃん」
だよね、ずっと嬉しそうだったし、そうじゃないかと思ってたよ。
えーっと、それじゃあ、
一刀「もしかして、新部隊の話を蹴ったこと・・・・・・でもありませんね」
そう、だって思春がまだ睨んでますから・・・。
冬灯「分かってないなー、兄ちゃん。さっきまでお頭は兄ちゃんのことを褒めようとしてたんだぜ。上手いことやったってな」
一刀「へっ?」
じゃあ何でだ?
亞莎「あのーすみません」
俺の服の袖を引っ張る亞莎は話に付いて行けず、目が点になっている。
一刀「ああ、ごめん亞莎。何だい?」
亞莎「も、もしかして一刀さんって、か、甘寧様のお知り合い・・・・・・だったりしますか?」
一刀「知り合いって言うか・・・・・・真名を許してもらってる関係・・・かな」
そう言って、思春の方を向くと・・・・・・睨まれてます。
先程よりも目が余計に鋭くなっておりますが俺何かしましたか?
亞莎「それって、将校並みに偉い人なんじゃ・・・・・・・・・すみません、すみません、すみません、すみません。
一刀さんなんて馴れ馴れしく呼んでしまって。一刀様と呼ばさせてくださいー!」
一刀「いや、別に様付けなんて・・・俺なんか偉くもないし、それに俺が呼んでくれって言ったんだよ亞莎。呼び捨てでも良いくらいだよ」
ニコッ
亞莎「/////////」
一刀の笑顔に亞莎は何も言えなくなってしまう。
思春「・・・・・・はぁ、全くお前は」
そんな2人の様子を見ていた思春は一刀を睨むのを止めた。
冬灯「んでだ、兄ちゃんそっちのは誰だ?」
亞莎「あ、すみません。私の名は呂蒙、字は子明。そして真名は亞莎です」
亞莎はあっさりと真名を言った。
冬灯「いいのかい嬢ちゃん、そんなにあっさり真名を預けてよ」
亞莎「はい私は元々錦帆賊に入って甘寧様や丁奉様、魯粛様のような将に会えたら真名を預けようと思っていましたし。
何より一刀様に真名を預けた方々に悪い人はいないと思いますので」
冬灯「んじゃあこっちも教えとかねぇとな。俺は、丁奉。字は承淵。んで真名は冬灯だ。宜しくな亞莎」
琴鳴「うふふ、私は魯粛子敬。真名は琴鳴よ。宜しくね亞莎ちゃん」
思春「・・・・・・甘寧興覇だ。真名は思春」
三人は三人とも亞莎に真名を教えた。
一刀「・・・・・・みんな、俺の時と違って真名をすんなり預けるんだな・・・・・・」
少し凹む一刀であった。
冬灯「だってなぁ・・・・・・」
思春「・・・・・・ああ」
冬灯「兄ちゃんは胡散臭すぎたんだよなー」
ああ、涙で前が見えなくなってきた。
翌日、楼船の前の広場に新設される部隊に選ばれた100名がそこにはいた。
もちろん、一刀、亞莎の姿はそこにはない。
そんな彼らの前に思春が楼船から姿を見せた。。
思春「・・・・・・皆、先日はご苦労だった。お前達はこれから・・・・・・『天の御遣い』直属の隊となる」
『天の御遣い』―その言葉に隊員たちがざわめく。
本当にそんな人物がいたなんてと。
思春「・・・・・・来い」
一人の男が、甘寧に促されて楼船の中から出てきた。
その姿に誰もが驚いた。
先日の選抜試合で最後まで勝ち残り、そしてその勝者の地位を皆に悪いとあっさりと捨てた男が―北郷一刀がそこにはいた。
一刀は、見たこともない光り輝く衣を纏い、その両腕には光を反射するかのような手甲を身に着けていた。
一刀「えー、ただ今、紹介に預かりました、『天の御遣い』と呼ばれる、北郷一刀です。字もなく、真名もない。
そんなただの平凡な人間です。でも、昨日みんなの前で言ったように、仲間が傷つくのは見たくない。
だから俺は俺の持つ天の知識の全てを使ってでも仲間を、君達を守る。
この腐った世の中を少しでも笑顔で暮らせるように共に戦おう」
そういうと一刀は拳を突き上げる。
太陽の光を反射した手甲は、光り輝いていた。
そう、彼らが思う本物の『天の御遣い』のイメージのままに。
全隊員「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
その瞬間、北郷の旗、島津氏の分家の北郷氏の紋である十文字の旗印が立てられた。
ここに錦帆賊の将、北郷一刀と北郷隊が発足したのである。
おまけ
一刀「そういや思春、何で怒ってたんだ?」
気になって思春に尋ねてみる。
思春「・・・・・・黙れ・・・もう忘れろ///」
思春は顔を背けて、歩いていてしまう。
一刀「?」
何だぁー?
冬灯「はぁ、さっきも言ったけど、兄ちゃんも分かってないねー」
一刀「??」
だから何が分かっていないのだろう。
冬灯「自分で考えろってことだぜ」
そう言うと冬灯も思春の後を追った。
一刀「訳わかんないや」
<あとがき>
毎度この駄文を読んでくれている方々には変わらぬ感謝を
初めてっていう人には、最初から宜しくという思いを
隅々まで呼んで誤字脱字の指摘や感想などのコメントをくれている方々には変わらぬ妄想を
どうもシルバーウィークなんて来なかったMuUです。
前回のお話に、な、なんと王冠付いてました!?
どこでどう間違えたのかランキングに入っちまったみたいですが、狂喜乱舞です。
そのお陰でしょうかお気に入りが80名を超えたー!!
御礼申し上げる。
今回も言っとこう
MuU「エイドリア〜ン!!\(^o^)/」
さて、今回ですが第『十』話ということで、どうしても一刀くんの旗印である十文字を出したかったのです。
だから今回のお話はちょっと長めだったかもしれませんね
そういや、呂蒙ちんが出てきましたね。
ぶっちゃけ出すつもりなかったんですがね・・・・・・。
なんかスッと出てきたのです。
この呂蒙さんはまだ武闘派で軍師になるとか夢にも思ってない頃ですね。
ちなみに戦闘力は76で丁奉と魯粛の間ってところです。
さてさてどうなることやらですね。
次回は呂蒙が増えたし、拠点ネタがいくつか浮かんできたので拠点しようと思います。
一刀くんの武具も出てきましたし。
その話も次回の中でしたいなと思っております。
次回更新は・・・・・・一週間以内に出来たら良いのにな orz
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やっと書きあがったので更新〜♪ 今回はちょっと長めかもしれませんが頑張って読んでくださいw 今回から1P目に前回のあらすじ的なものを入れてみました。 ではではお楽しみください。 |
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コメント | ||
亞莎!!亞莎!! (りばーす) 今日も一刀の鈍感スキルは絶好調ですねw(ブックマン) 最後の一刀の手甲が気になりますーーw(刀) 素晴らしい画期的なあらすじで、一発でわかりました。(v^ー゜)ヤッタネ!!(thule) なんか白い悪魔がいるようだな・・・(nanashiの人) 色々さすがの一刀ですな・・次回更新頑張れ(st205gt4) だいぶ戦力が揃ってきましたね。今度はどんな仲間が来るのか、楽しみです。(投影) 亞莎がここで仲間になるとは(*’д’)。他にも誰が仲間に加わるのか楽しみですね!(Nyao) 予想外の亞莎とはやりますね〜〜。たのしみですな〜続き^^(motomaru) にしても鈍いw(ななや) ニヤリととしてしまいましたよ、あのセリフにはw 甘寧殿・・・ニヤニヤ(・∀・)(よーぜふ) ア〜シェ〜っっっ ここで亞莎の登場とは予想GUYデス(ロンギヌス) 志願兵「げぇ!俺を踏み台に!!」この台詞は懐かしい!!(トーヤ) |
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