PokemonSM CosmosEpic 32:ポータウンにて |
「ここが、ポータウン?」
「ああ」
セイルに導かれて、ヨウカはポータウンに到着した。
だが、そこに到着したときに見えたものにたいし、ヨウカはポカンと口を開けてしまった。
何故ならばそこにあるのは高い壁であり、その町をとり囲っているように高くそびえていたのである。
まるで、要塞のような町だった。
「・・・で、どうやってはいるん?」
「・・・」
こんな要塞のような場所に入る手段はあるのか、とヨウカが問いかけるとセイルはジュナイパーをだしZリングをつけはじめた。
「え」
「ジュナイパー、Zワザを使う体制に入るぞ・・・」
「ちょちょちょちょちょっとまってーっ!?」
ヨウカは慌ててセイルを止めた。
彼はZワザでこの壁を破壊し中に進入しようとしていたのだが、それは流石にまずいと思い、ヨウカは必死になってセイルを説得した。
ほかに入れる場所を探してはいるのが一番いい、むやみに破壊して入ったらどんなしっぺ返しをくらうかわからないと付け足して。
「・・・」
「・・・はぁ、わかったわかった・・・別の手段を探す」
ヨウカの主張に押し負けたセイルはためいきをつきながら、壁を一周してポータウンの中に入る方法はないかを探す。
そのときヨウカは、人が入れる大きさの穴が開いている場所を発見してそこにセイルを呼び寄せた。
「セイルさん、ここに大きな穴が思いっきり開いてますよ!」
「そのようだな・・・よし、この穴から入るぞ」
「はいっ」
セイルとヨウカはその穴からポータウンの中に入った。
だが、中に入ったときの光景にヨウカはまた驚く。
「こ・・・これがポータウンの実態・・・!?」
「だろうな」
荒れ果てて、人気のない寂れた町にたいしヨウカは目を丸くした。
スプレーでマーキングされてるわ、穴の開いた屋根の家はたくさんあるし、各家の壁も黒ずんでいた。
こんなところに本当に人、というかスカル団がすんでいるのだろうか。
ヨウカが驚愕の表情と気持ちを隠せない中、セイルはどうでもいいと言うかのように涼しい顔をしていた。
そのとき、スカル団の一人が彼らに気付いた。
「・・・なっ・・・お前達、どっから!?」
「でっかい穴開いてたよー」
「あな・・・あぁぁぁっ!?
そういやデカイ穴が開いてるからなおせってアネゴに言われてたの、すっかり忘れてたぁー!!」
「・・・アホか」
冷たくつっこみをいれつつ、スカル団が出してきたポケモンにセイルはジュナイパーで迎え撃つ。
「ヨウカ、下っ端は一気に蹴散らしていくぞ」
「はいっ!」
「ジュナイパー、はっぱカッター!」
「ニャーくん、シャドークロー!」
ヨウカも様々なポケモンを出して、スカル団の下っ端と戦っていった。
バトルを繰り返していく中、下っ端達からボスであるグズマがいるのはポータウンの奥にある大きな屋敷だと聞いたので、ヨウカとセイルはまっすぐそこへ向かった。
「ついたぁ!」
「途中で変なクイズやら下っ端やらがあったが、なんとかなったな・・・」
「そうですねー、しかもどっかで見た模様のバリケードが道をふさいでたり・・・ポケモン達が毎回全力を出してくれてたからなんとかなりましたけど・・・」
ここにくるまでのことを思い出してそう会話をする。
屋敷の入り口ではグズマの信条を当てるためにそのヒントや答えをポータウン中巡って探して当てた。
グソクムシャ、エネココア、ふくろだたきという、なに一つとして繋がってなさそうな答えを聞いてセイルがキレそうになっていた。
途中では、タンクトップの違いについて揉めてるスカル団の女下っ端を何故か仲裁してなだめるという、わけのわからない事態に遭遇して一気に疲れた。
また、ヨウカがいうようにポータウンのあちこちには、まるでキャプテンゲートを模したようなバリケードが張り巡らされていた。
「・・・」
「どうした、ヨウカ」
「・・・ちょっと、気になることがあるんですが・・・それはボスにたいして直接いいたいとおもっとります」
「そ、そうか」
外装に違わず広いが、古く人のいる気配を感じないような屋敷の中を進みながら、セイルはヨウカがなにかを考え込んでいることに気付く。
だがヨウカはそれ以上口を開く気はないようで、淡々と進む。
「・・・」
セイルは最初に感じていたヨウカの印象と今の彼女を比べた。
彼女は当初明るく活発で、おしゃべりなイメージがあったが今はそんな姿は感じられない。
というよりも、この屋敷に進み入るまでに段々と口数が減ってきている。
このポータウンの憂鬱な空気に飲まれているのか、それとも友人を救いたくて必死になっているのか。
そんなことを考えているあいだに、2人はグズマが待ちかまえているという部屋の大きな扉をあける。
「・・・いた!」
そこにいたのは、間違いなくグズマだった。
「貴様が、ボスのグズマか?」
「いかにも俺様が、ぶっこわしてもぶっこわしてもキリがなく、手加減もしないから嫌われているグズマ様だぜ」
かっかっかと狂ったように笑いながらグズマは立ち上がる。
そして、セイルの存在に気付くと笑みをさらに深くした。
「・・・そういや、そこのめがねのガキ・・・お前も俺様達がぶっこわしたんだったな」
「・・・ああ、おかげで最悪な人生を送る羽目になったぜ。
まぁ唯一の救いといえば、家族や友人が俺にはいて、味方だということくらいだな」
そういいつつ、セイルはヤドキングを出した。
「もっとも、貴様等に殺されかけたせいで島巡りができなくなったことへの憎しみはなくなってないからな。
今度は俺が貴様をぶっ壊してやる・・・」
セイルがそういってグズマと戦おうとしたとき、ヨウカが腕を伸ばして彼を止めた。
「ヨウカ?」
「セイルさん・・・あなたの気持ちわかるけど・・・ここはあたしにこれと戦わせてください」
「これとはなんだ、これとは」
セイルに代わりヨウカは前にでて、ニャーくんを側に置き戦う体制に入りつつ口を開いた。
「あんたにはな、あたし・・・言いたいことがあるんだよ」
「あんだと?」
「・・・あんた達って・・・。
クイズ用意したり、試練のゲートっぽいのを用意したりとか・・・それでキャプテン気取って試練を突きつけてるつもりなのかな?
って思ってたんだ」
「あぁっ!?」
ヨウカのその言葉に対しグズマは青筋を立てる。
セイルは、ヨウカがずっと気にしていたのはこのことだったのかと目を丸くさせる。
グズマとセイルの反応を見返ることはせず、ヨウカは話を続けた。
「いくら気取ってて真似をしてても・・・。
ポケモンや人を傷つけてばっかの人なんかキャプテンになる資格はないと、あたしは思う。
あたしの知っているキャプテンの人達は・・・みんな人やポケモンを大事にしてて、自分の世界だけじゃなくて、アローラみんなのために頑張ってる人達だよ。
あの人達なら、守り神さんに選んでもらっているのがわかるもん」
真剣な表情と純粋な瞳で語るヨウカにたいし、グズマは身体を徐々に震わせていた。
「あんた達は・・・」
「グソクムシャ!」
彼女にこれ以上のことを言わせてたまるか、という勢いでグズマはグソクムシャに指示を出してヨウカを攻撃しようとする。
だが、そこに飛び出してきた、灼熱の炎をまとったポケモンによってその攻撃は阻止された。
「ガウゥゥゥ・・・!」
「・・・ニャーくん・・・!」
グソクムシャの攻撃を受け止めたのは、最終形態であるガオガエンに進化したニャーくんだった。
ニャーくんは大きな手でグソクムシャの爪を封じていたかと思えば、そのままグソクムシャの腕をつかんで、後方の壁に向かって投げ飛ばした。
「・・・今は戦って、落ち着かせた方がいい。
そうだよね、ニャーくん」
「グゥルルルル」
進化して、図体も大きくなってたくましくなったポケモン。
だが、ヨウカは姿形が変わっても、そのポケモンをニックネームのニャーくんと呼び続けるし、手放す気などない。
相棒であることは変わらないからだ。
「勝負だよ、ぶっこわし男!」
「せめて名前で呼べやぁあぁ!!」
相棒の進化を受け止めながら、ヨウカはグズマに対し勝負を挑む。
「グソクムシャ、シザークロス!」
「シャドークロー!」
シザークロスとシャドークローが衝突し、ニャーくんはそのまま至近距離でかえんほうしゃを放ち、グソクムシャを攻撃する。
「シェルブレード!」
「受け止めて!」
シェルブレードを受け止めて動きを封じたところで、ヨウカはさらに攻撃技の指示を出す。
「もう一発、かえんほうしゃ!」
そのかえんほうしゃも、グソクムシャにヒットした。
「・・・」
セイルはこの戦いには手を出さず、ただ2人の勝負を観戦していた。
その試合に見入っているセイルを見たジュナイパーは、セイルに声をかける。
「ジュゥゥゥ」
「・・・そうだなジュナイパー・・・ナリヤ博士には言われてるし・・・俺の出る幕もないしな」
ジュナイパーの言いたいことを察したセイルはそっとジュナイパーをなでながら、戦いに視線を戻した。
「・・・くっそ、くそがぁ!!」
グソクムシャに指示を出して戦い続けていたグズマは、段々といらだってきていた。
ガオガエンとなったニャーくんに攻撃を防がれて、逆に攻撃されているのだ。
自分の思い通りにならないことで、グズマは苛立ちを感じていたのだ。
「なんでだ・・・あのときも、今も!!
俺様は・・・今まで全部全部、ぶっこわしてきたってぇのに!
なんでてめぇはぶっこわれねぇんだよ!!?」
「どうでもいいからだよ!」
「はっ!?」
ヨウカは正直な気持ちをそのまま答える。
「・・・あんたのその、ぶっこわいたい衝動なんてね・・・ぶっちゃけあたしにはどーでもいいんだよっ!」
「あんだとっ!?」
ヨウカは赤い目を光らせながら、グズマに向かって怒鳴り続けた。
「あたしはあんた達に連れてかれた友達を助けにきただけだ!
あの子を助けて、また一緒に冒険したいだけだよ!」
前にグズマから、島巡りをしてどうするつもりだと問われたときのことを思いだし、それにたいする答えを出していく。
「島巡りもそう・・・あたしはただ、今はアローラの冒険を楽しみたいだけ。
ハウくんやリーリエちゃんや、たくさんの人と冒険をしたいの。
どんな理由があっても・・・その楽しみを奪う人は、あたしは嫌いだよ」
そう言い放つヨウカの目が一瞬、冷たく光った。
セイルとグズマが同時にそんなヨウカの目に驚いていると、ヨウカはすぐにニャーくんに技の指示を出した。
「ニャーくん、ケリをつけるよ!
DDラリアット!!」
「グォォオッ!!」
それは、ガオガエンに進化した瞬間に覚えた新しい技、DDラリアット。
回転しながら繰り出される強烈な物理攻撃を受けたグソクムシャは、背後の壁にたたきつけられ戦闘不能となった。
「グソクムシャ・・・!」
「勝負あったね。
ありがと、ニャーくん」
勝利を勝ち取ったヨウカはニャーくんをそっと撫でる。
彼女の戦いぶりをみていたセイルは、次にグズマの方をむくと彼はグソクムシャをボールに戻しつつうなだれ、なにか声を漏らしていた。
「あ・・・ああ・・・あ・・・」
「なんだ?」
「なにやってんだぁぁぁグズマァァァァ!!!」
「・・・!?」
突然、顔を上げて頭をかきむしりながら叫ぶグズマ。
その発狂ともとれる彼の姿にセイルは驚愕した。
「なんでまた負けたんだぁぁぁ、これじゃあ前のバトルの、2の舞じゃねぇぇかぁぁぁーっ!!」
「な、なにがおきているんだ・・・!?」
「あーあ、なーんかデジャブやね」
「で、デジャブ・・・?」
まさかこんなことを負けるたびにやってるのか、と思いセイルはグズマを睨んでいたがすぐに当初の目的を思い出しグズマに問いかける。
「そんなことよりも、貴様!
リーリエという女の子を連れていっただろ、すぐにその子を解放しろ!」
「・・・あぁぁ・・・?
そんな娘はいねぇよ」
「嘘をつくなら屋敷を破壊するぞ、ヤドキング・・・」
ヤドキングのエスパー技で屋敷を破壊しようとしたセイルにたいし、グズマはホントにいねぇよと叫んで止める。
ヨウカも、グズマの言葉を聞いてハァとため息をついた。
「・・・ここにいないなら、あたしもこんな町に用はないよ」
「なっ・・・」
「さっきも言ったやろ、あたしはリーリエちゃんを助けたいだけやって。
・・・ねぇ、あの子をどこにつれていったん?」
「・・・チィィ・・・誰が言うかボケッ!!
言ったら俺様は確実に・・・」
そこでグズマは言葉を止める。
確実に、のあとに何が続くんだとヨウカとセイルが疑問を抱いた次の瞬間、グズマはアリアドスを出してきた。
まだ戦う気か、と思った瞬間にアリアドスはヘドロばくだんを放ちヨウカとセイルはそのとき発生した黒い煙でグズマたちを見失う。
「・・・!?」
「逃げられた、のか・・・」
黒い煙をヤドキングが晴らしたときには、既にグズマの姿はなかった。
あのあと、ヨウカとセイルは屋敷の中をくまなく探したが、グスマもリーーリエも発見できなかった。
「・・・ここにリーリエちゃん、いませんでしたね・・・」
「ああ・・・別の場所につれてかれたのだろうな・・・」
「スカル団の大部分と、あの変なボスまでいなくなっちゃったし・・・次どこを探せばいいのかなぁ」
「・・・」
手がかりがなく、途方に暮れて落ち込むヨウカ。
セイルも、グズマを今度こそ倒さねばならないと思いながら立ち尽くしていると、男の声がした。
「ポータウンがあまりに騒がしいからきてみりゃ、ハデにやったなぁおい・・・」
「ほえ?」
「・・・しっかし、町に立てこもるスカル団と、ボールの中にいるポケモン達は、どっちが幸せなのかねぇ?」
「むっ・・・?」
声がした方をむくとそこには、マリエシティでぶつかってしまったあの中年の男がいた。
あのときのおじさんだ、とヨウカが思っているとセイルがその人物の名前を呼ぶ。
「クチナシさん・・・!」
「え、セイルさんこの人しっとるんですか?」
「ああ・・・彼はクチナシさんといって・・・こう見えても警察官で、このウラウラ島のしまキングだ」
「警察官で、し、しまキング!?」
この男、クチナシがしまキングとしりヨウカは驚きクチナシを凝視した。
彼の腕にはZリングがはめられており、その服には警官のマークがつけられている。
自分がしまキングであると知られクチナシは面倒くさそうに頭をポリポリかくと、ヨウカを見つめ返して、先程までのスカル団との戦いを実はみていたと語る。
「嬢ちゃん、スカル団の連中に対して派手に言い切っていたな」
「・・・」
「その態度が気に入った、今回は嬢ちゃん達に味方してやる。
大試練として、ポケモンバトルもしようぜ」
「えっ!」
確かにヨウカはこのウラウラ島の2人のキャプテンの試練は突破しているので、大試練に挑む資格はある。
だがあまりにも唐突だったので、状況を飲み込めていないのだ。
「どうするよ・・・?」
「・・・わかりました・・・大試練のポケモンバトル、やります」
あくまで装いでしかないが、ヨウカはクチナシの大試練を受けることを決めボールを構える。
だがクチナシは今すぐじゃない、とヨウカの頭に手を置いた。
「まずは引き返して、ポケモンを回復するか」
「あ、は、はい」
「・・・」
そのままヨウカはクチナシについて行き、セイルも同行した。
「・・・相変わらず、なにを考えているのかわからない人だ・・・」
と、クチナシをみてそう思いながら。
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この町は不気味だったなぁ。 | ||
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