PokemonSM CosmosEpic 34:暴かれる黒いもの |
グラジオが加わり、ハウも意地ではあるが立ち上がったことで、ヨウカはリーリエを救い出すために再起することができた。
「でもグラジオくん、リーリエちゃんが連れてかれた場所に心当たりがあるの?」
「そういえばそうだね、なにか知ってるの?」
「ああ・・・奴らの行き先はすでに知っている」
「ポータウン以外に、奴らが根城にしている場所があるというのか・・・」
「奴らがいるのは・・・」
グラジオは一気に眉間にしわを寄せ、自分達が向かっている場所を口にした。
「エーテルパラダイスだ」
「えっ・・・!?」
「エーテルパラダイスー!?」
グラジオの口からでた場所の名前にヨウカとハウは驚くと、その場所に向かってこの船を操縦しているツキトに、急いで確認をとる。
「ツキトくん、知ってたの?」
「ああ、だから今そこに向かって船を動かしてるんだぜ」
ツキトは冷静にそう返しつつ船の舵を動かし続ける。
エーテルパラダイスになにがあるのかも気になったが、スカル団がリーリエごと連れて行ってしまった・・・否、本当の目的であるコスモッグのことが特に気になったので、ヨウカはコスモッグのことをグラジオに質問する。
「ねぇ、グラジオくん・・・。
ほしぐもちゃん・・・もといコスモッグって・・・なんやの・・・?
確かに珍しいポケモンかもしれないけど、そんなに悪い人の手に渡ったら危険な子なの?」
旅の中、リーリエといつも一緒にいた無邪気で小さなポケモン。
何事にも好奇心旺盛につっこんでいくが、風にはあっさりとばされるしポケモンを相手には戦えない。
はっきり言って、弱いポケモンだ。
滅多に見かけないポケモンであり珍しいことには変わらないが、それとは別にねらわれる理由があるのではないか。
彼女とともに連れてかれたポケモンと知ったとき、ヨウカはそう思っていたのだ。
「・・・コスモッグ自体は戦う力を持っていない、弱いポケモンだ。
だが・・・あのポケモンの中には無尽蔵に近い力が眠っていて、無理矢理にでもその力が発動すれば、このアローラに厄災を及ぼす・・・。
だからお前達に、コスモッグを守れといったんだ」
「そうだったんだー・・・」
それを果たせなかったことにハウがまた落ち込みだすと、グラジオは目を伏せる。
自分ですらわからなかったのだ、コスモッグがどこにいるのか、どうしてスカル団がコスモッグを探すのかを。
だからグラジオはハウをこれ以上責めなかった、その権利が自分にはないと思っているから。
「・・・まぁ・・・まさかリーリエがコスモッグを連れているとは、想像していなかったけどな・・・」
「・・・」
グラジオはコスモッグのことも、リーリエのことも知っている。
これはどういうことなのだろうと、その場にいた誰もが疑問を抱いたとき、船を操舵していたツキトがヨウカ達に大きな声で呼びかけた。
「おい、みんな!
エーテルパラダイスがみえたぞ、準備しろ!」
気付けばこの船はすでに、エーテルパラダイスの元へ着いていたのだ。
「オレはこの船を守っておく。
もしエーテル財団がこれを見つけて、船を没収されたりしたらたまんねぇからな!」
「ああ、頼む」
「あたし達も頑張って、戻ってくるからね!」
「いってきまーす!」
「おうよ!」
船の停留所で船を守るためそこに残ることを決めたツキトは、ヨウカ達を見送る。
彼らとともにいくというセイルにも、ツキトは真剣な顔で忠告する。
「奴らはきな臭い・・・それはずっと前から感じていたが・・・気をつけろよ」
「ああ」
そうして彼らが去っていって数分後のことだった。
ツキトを発見したエーテル財団はツキトをにらみつけながら彼と船をとり囲う。
「・・・そんな内面ブス丸出しみてーな悪人ヅラじゃ、保護したポケモンは逃げてくぜ?」
今の彼らはポケモンを積極的に保護し救助する慈善家な姿は感じられない。
眉はつり上がり表情も硬く、目に宿る光も鈍く濁りがみえる。
そんな彼らを見渡して、その見た目に対しツキトは嘲笑を浮かべているとエーテル財団はポケモンを繰り出していく。
そのうちの一匹であるレディアンが、ツキトに向かってシグナルビームを放ってきた。
「おっと!」
ツキトはその攻撃をかわして、3個のボールから3匹のポケモンを出す。
「アシレーヌ、れいとうビーム!
カイリキー、メガトンパンチ!
ドデカバシ、タネマシンガン!」
彼の指示にあわせてポケモン達がバトルを開始した頃、グラジオを先頭にヨウカ達は先へと進む。
「でも、ここからどーするの?
ここの人達に話を聞く?
それとも・・・あたし達でリーリエちゃんとほしぐもちゃんを探す?」
「・・・とりあえず、エレベーターに向かうか」
グラジオの発言に対し3人はえ、と声を漏らし鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「とりあえずって・・・」
「ヨウカー、セイルさーん!
この人ノープランだよー!」
「・・・うーん・・・」
大丈夫かな、と思いながらもグラジオについて行って、彼の言うとおりにエレベーターに乗る。
三角形のような形をしたエレベーターにはコントロールパネルがあり、グラジオはそれを操作する。
だが、すぐに首を横に振った。
「・・・覚悟は決めていたが、かなりクルものがあるな・・・」
「どうしたんだ?」
「本当は地下へいきたかったんだが・・・地下へは関係者以外は入れないらしい・・・。
仕方ないから、上へあがるぞ」
「うん、わかった」
一瞬、彼の言葉に何かひっかかるものがあったが、ヨウカ達はあえてそれ以上はなにも問わなかった。
グラジオが操作したとおり、エレベーターは上へ向かう。
「ここって、フロント?
誰もいないねー」
「せやねー・・・フロントを空けちゃうなんて不用心や・・・」
ヨウカとハウがこの空間に対しそうつぶやくと、奥の方から足音とともに声がして、その音と声の正体が姿を見せる。
「・・・おやおや、招いていないのにいらっしゃるとは・・・」
「あ、変なオジさんだ」
「変なオジさんではないっ!!」
緑色の大きなめがねが目立つ初老の男、ザオボーはヨウカの適当な言葉に対し怒りを露わにする。
「私、ザオボーは世界で唯一のこのエーテル財団の支部長なのですぞ!」
「そんなのどうでもいいよ、あたしらの事情の方が大事だし!」
「言われなくともこちらの用件はすぐにわかろう、ザオボーであろう人なら!」
ザオボーの言葉をヨウカはあっさり切り捨て、グラジオがそれに続けといわんばかりに言葉を浴びせる。
グラジオの顔を見たザオボーは一度驚きながらも、不気味な笑みを浮かべながらグラジオにたいし言葉を返す。
「うっひっひ・・・これはこれはグラジオ様・・・。
いやぁ・・・すっかり世間にお染まりになられて・・・」
「・・・」
「ですが・・・そのお願いにはかなえることはできませんよ。
あなたとあろうお方なら、その理由・・・わかりますね?」
「!」
そのときザオボーがスリーパーを出してきたので、すかさずグラジオはヨウカとハウを庇うように彼らの前にでる。
スリーパーはそのときサイコウェーブを放ってきたのだが、それが彼らに届くことはなかった。
「ジュナイパー!」
ジュナイパーのはっぱカッターが、スリーパーのサイコウェーブを相殺したのだ。
そのジュナイパーを繰り出した張本人はメガネをくいとうごかしつつ、ザオボーをにらみつける。
「セイルさん!」
「ポケモンバトルなら、大人も子供も関係なかろう?」
セイルの目が、メガネ越しに光った。
勝負の果てにセイルがザオボーを倒し、ザオボーにエレベーターのコンパネを操作して貰ったことで、そのエレベーターは地下へと進んだ。
そのときザオボーは意味深な笑みを浮かべていたのだが、その表情には誰も気付くことはなかった。
「・・・っ」
「どうした?」
「・・・いや、大丈夫だ・・・心配はいらん・・・」
その途中でセイルは少し顔をゆがませた。
セイルが左腕を押さえていたのをみて、ヨウカはイリマの話を思い出した。
彼はスカル団によって重傷を負い、今も傷跡がまだのこっているという話を。
今も彼は腕の傷を抑えているのだと知り、無理させないようにしなくちゃと思い直す。
それと同時にエレベーターは、目的としていた地下のフロアに到着した。
「・・・変わらないな・・・。
・・・といっても、2年間しかいなかったが・・・」
「うわー、秘密基地みたい!」
「・・・あんまりはしゃぐなよ、ハウ。
まぁ、ガチガチに緊張するよりはマシだがな」
そう口で言うグラジオは呆れたような、安心しているような笑みを浮かべてる。
「どうするん?」
「この先にラボが二つある・・・簡単に言えば研究所がな。
そのラボを片っ端から調べるぞ。
俺は手前のラボAを調査するから、お前達は奥のラボBを任せた」
「かなり広そうだが、お前は一人で大丈夫か?」
「問題ない」
そう言ってグラジオはさっさとラボAに向かっていった。
残った3人は彼の指示通りにラボBに向かったが、そこでセイルはあることに
「にしても・・・お前達は調べ物が苦手そうだな・・・」
「うっ」
「ぎくっ」
セイルの言葉が図星だったのか2人は動揺を見せ、そんな2人のリアクションをみたセイルはグラジオが自分達を同じグループにした理由を理解して苦笑する。
「・・・まぁ、気付いたものや気になることがあればオレに相談しろ・・・わかったか」
「はいっ!」
「よし、では捜査開始だ」
そうしてハウとヨウカはセイルの指揮の元、ラボBを調べてまわった。
ヨウカはまず目の前にあった部屋に入り、その中を探してみる。
「ひゃ・・・ファイルがいっぱい」
どうやらヨウカが入ったのは書類が保管されている部屋のようだ。
途中でエーテル財団の職員に見つかってバトルを申し込まれたが、ヨウカはそれもあっさり蹴散らす。
「ナイスだよ、サニちゃん」
「さにっご!」
バトルで活躍してくれたサニちゃんをボールに戻し、ヨウカは引き続き友人達の行方を探す。
「・・・これ、文字汚くて読めない・・・。
これも・・・わかんないなぁ。
どこにいるんだろ・・・」
「タイプフルとか実験とか・・・なんのことやろ・・・」
はぁ、とため息が漏れてしまう。
途中で資料をいくつか発見したものの、それらは文章が多すぎて今一つ頭に入ってこないのだ。
「ここまで調べたけど・・・資料に書いてあることもわかんないし・・・リーリエちゃんとコスモッグもいないよぉ。
エーテルの人達も、なんか前と違って怖いし・・・なにがどうなってるのやら・・・」
頭が混乱しそうになり、とりあえず本来の目的であるリーリエとコスモッグはここにはいないことだけを理解したので、それ報告しようと思ったときだった。
「あいたっ!?」
ヨウカは机にぶつかりそこに積み上げられていた資料を地面に一気に落としてしまう。
それにたいしあわてていたヨウカだったが、その中に一枚の写真が紛れ込んでいたのに気付き、それが気になってその写真を抜き取る。
「・・・っ!」
その写真に写っていたものに対し、ヨウカは目を丸くした。
そこには一人の女性と男の子と女の子が一緒に写ったものであり、全員目の色も髪の色も同じ。
そして、その3人の顔には見覚えがある。
「・・・これって・・・」
その写真を見たヨウカは胸にざわめきを感じ、写真を手に持って急いでグラジオのところへ向かおうとラボの外へでて廊下を走る。
「・・・どうした」
「あっ・・・!」
だがその途中でこちらに向かってきたグラジオに気付き、ヨウカは立ち止まってしまう。
そのときヨウカはどうしてもグラジオに聞きたいことがあったにも関わらずそれが口からでなくなってしまったので、思わずぜんぜん関係ないことを問いかけてしまった。
ラボを調べてたんじゃないの、と。
「・・・ああ・・・ラボAにはなにもなかったから、そのことをお前達に話そうと思っていたんだ」
「そ、そうなんだ・・・」
「・・・それはっ!?」
グラジオがヨウカの手に持っているものに気付き、驚き目を丸くさせる。
彼がこの写真に反応を示したことで、ヨウカはやっぱり、と小さくつぶやく。
「・・・グラジオくん・・・もしかして、あなたは・・・」
「フッ・・・その写真でそこまで推測するなんて、カンが鋭いじゃないか」
「・・・っ!」
自分が見つけてしまったもの、ザオボーとは顔見知りであるという事実、さらんい彼がこの施設に詳しい理由。
それらから連想できること。
その考察のせいでヨウカは戸惑いの感情を顔に出した瞬間、奥からメテノが突っ込んできた。
「ヨウカッ!!」
「え、きゃ!?」
すぐにグラジオはヨウカを自分の方へ引き寄せメテノのとっしんから彼女を守り、ボールからリオルを出して技を指示する。
「かわらわりからのはっけい!」
まずかわらわりでメテノをまとっていた堅い殻を壊し、そこからはっけいを浴びせて追加効果の麻痺を発動させる。
そこにバレットパンチを打ち込んでメテノを倒すと、物陰にいたエーテル財団の職員が舌打ちしつつメテノをボールに戻しそこを足早に去っていった。
「・・・怪我はないな?」
「うん、あ、ありがとう・・・ちょっと、ビックリしたけど・・・」
「そうか・・・そうだな」
リオルをボールに戻すと、ヨウカが見つけた写真のことを思い出し、その写真を奪い取る。
自分の手にあった写真がグラジオの手に渡ったことにヨウカが気付いた後でグラジオは彼女から離れながら話を続けた。
「・・・お前がなにに気付いて、どうしようとしているか・・・なにを思うのかは察しがついている」
一瞬、奥からこちらに向かってくるハウとセイルをみたあとで、彼女にだけ聞こえるように、言葉を続ける。
「だが・・・もう少し、このことは秘密にしてくれ・・・。
そのときがきたら、俺の口からすべて話すから・・・」
「・・・」
その顔はどこか、哀愁が漂っていた。
だからヨウカはそれ以上はなにも言わずグラジオに従うのだった。
「まんまとはめられたな・・・」
上へ向かうエレベーターの途中で、グラジオは自分が地下へと向かうと言ったのは誤りだったと語る。
バトルで打ち負かしたとはいえ、ザオボーがすんなりそこへ行かせたのも、ここにリーリエもコスモッグもいないことを解っていたからだと理解してすぐに上へ戻ったのだ。
「・・・腐っても支部長だ。
見つけ次第、真実を聞き出すつもりだが・・・」
「だが?」
自分の考えの甘さと誤りを知ったグラジオは、ヨウカ達にそのことを謝罪する。
「完全に俺の失態だ、すまなかった」
「そんな、グラジオくんは悪くないよ!
エーテル財産の人の攻撃からあたしを守ってくれたもん、そんな人をどうして責めなきゃいけないの?!」
「・・・」
ヨウカが正面で向かい合ってそういうので、グラジオは自然と気持ちが穏やかになっていった。
そのとき、別の方向から女性の声がした。
「ぼっちゃま」
「ぼっちゃまーっ?!」
声の方をむくとそこには、以前エーテルパラダイスでお世話になった女性、ビッケがいた。
ビッケはその目に懐かしさを秘めており、微笑みながらお辞儀をする。
「・・・ビッケさん!」
「・・・お久しぶりです、おぼっちゃま・・・それと、ヨウカさんにハウさん・・・と・・・」
「・・・セイルです」
初対面であるので一応名前を名乗ると、ビッケは頷く。
「セイルさんですね。
あなた達の目的は解っております、リーリエお嬢様のことでしょう・・・」
「どこにいるのか知ってるんですか?」
「ええ・・・おそらく今は、代表のところに」
代表、と聞いてヨウカもハウも驚き、セイルは眉間にしわを寄せ、グラジオは体を一瞬ふるわせた。
そんな彼に気づいたのは、ヨウカだけだ。
彼はすぐに行動を開始しようとする。
「・・・会いに行くぞ、代表に」
「代表ってルザミーネさんのことだよねー?
いい人だからきっと、話を聞いてくれるよー」
「興味のない相手にだったら優しく振る舞えるだろうさ」
それだけを言い、グラジオは早速動き出した。
セイルも黙ってついて行き、ハウはグラジオの言っている意味が分からず首を傾げつつもついていった。
「ヨウカさん」
「・・・はい?」
ヨウカもついていこうとしたが、そのときビッケに呼ばれて立ち止まる。
そのときのビッケの顔からは、おそらくグラジオを心配しているであろう感情を感じる。
「・・・グラジオぼっちゃまと、リーリエおじょうさまを・・・お願いします。
一度行動を始めたら立ち止まらなくなるところも、そのとき前しか見なくなるところも・・・お二人はそっくりですから。
だからどうか、お願いします・・・守り、助けてください」
「・・・はい!」
元々そのつもりだったヨウカはビッケの願いに対し、より一層力強く声を張って返事をし、頷き、足早に彼らを追っていった。
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ここら辺は胸アツ展開ですね。 | ||
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