Under Of World ZERO 14話-開戦-
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作戦当日、俺達三人はハーミットさんに呼ばれ、リフト上の共同開発を行っている施設に居た。

「これが……俺達の」

「ああ、言うなら第二世代型ってとこだ。まだまだ調整の余地はあるがな」

 眼前に並ぶ、鈍色、深緑、紫紺の三機体を前に息を?む。

「各機はそれぞれお前さん達のスタイルに合わせて作り込んである」

「それで外観が三者三葉なのね」

 確かに機体のフォルムはそれぞれ異なっている。鈍色の機体はジャックさんの機体に近く、全体的に細身。対して深緑の機体は厚みがあり、キングさんの機体を彷彿とさせるが、キングさんのそれに比べるとシャープな印象を受ける。そして紫紺の機体。全機の中で最も細身で女性的なフォルムが見て取れる。どの機体が誰の者かは見当が付く。

「俺のはコイツっすね。良い顔してるぜ」

レンジは深緑の機体にそっと触れ、笑みを浮かべた。

「私のはこの子ね。ちょっと窮屈そうな気もするけど」

「どの辺が窮屈なんっすかねー」

「出撃前に怪我したいの?」

「おー怖っ」

「さあ、無駄話はその辺にして説明に入るぞ。基本は習ったな?」

この三日、俺達はエイクァについての基礎を教わっていた。基礎といっても脱装着や計器の見方程度のもので、装着すれば後は自動で動きに合わせて機能するそうだ。

「はい、大丈夫です」

「ジャックとキングはもうゲートで準備を進めている。早速だが、着たらゲートに向かってくれ。こいつがデバイスだ」

「っしゃ! 行こうぜ!」

ハーミットさんから小さなブレスレット型の操作デバイスを受け取ると、待ちきれないと言わんばかりにレンジが装着を始め、俺とハングもそれに続いた。デバイスのスイッチを入れる。駆動音と共にそれぞれの機体が起動し、前屈するように上半身か折れ、背部が開く。その脚部に片足ずつ足を乗せると、折れた上半身が起き上がり、俺を包み込んだ。視界自体がモニターと化したように、隅に数種類の数値が表示されている。

「取り敢えず軽く動かしてみろ」

俺達はハーミットさんに従って、各々確かめるように四肢を動かそうとした。

「なんだこれ……」

レンジが珍しく弱々しく言う。無理もない。全くという訳では無いが、自由に動かないのだ。身体が見えない糸で引かれるような妙な感覚。反応を見るに二人も同じような感覚に襲われているのだろう。こんなのをジャックさんやキングさんはあそこまで使いこなしているのか……。

「誰でも最初はそうなる。取り敢えず慣れるまではアシストを入れておく。多少のラグは生じるが戦えるだろう」

そう言うとハーミットさんはタブレット端末を操作し、俺達の視界に『Assist System Active』とウィンドが表示された。先程までの感覚が徐々に消え、滑らかに四肢を動かせる。だが確かに、思考してから実際に動くまでに一瞬の差を感じた。

「これなら何とか行けそうですね」

「アシスト無しで動かすには時間が掛かりそうね」

「練習あるのみだろ。兄貴達みてぇに戦える様にならねぇとな」

「そうだね」

「さあ、行け。儂らの傑作の力を示して来い」

「はい!」

「よっしゃ! 暴れて来るっす!」

「行ってくるわ」

俺達はハーミットさんに見送られ、ゲートに向かった。

「遅えぞお前ら」

「おやおや、三人とも見違えたね。馬子にも衣装ってやつかな」

 ゲートには、俺達を待っていたジャックさんとキングさんの姿と、初めて見る輸送車らしきトラックがあった。

「何ですかこれ」

 俺は正直に尋ねる。

「これかい? 機体が増えたからね。新しい機体輸送用のトレーラーだよ」

 ジャックさんがトレーラーと呼んだそれは、六輪駆動の車体で、T字の柱の様な物が建てられた荷台を牽引する形で走行するものだった。既に荷台の柱には真紅、紺碧の二機体が固定されている。どうやらあの柱に吊るす様に固定しているみたいだ。

「これに乗るんすか?」

「ああ、そうだ。ハンガーに吊るされた服みてぇにお前ら引っ提げて行くんだよ」

「成る程ね。支柱の両サイドに行けばいいの?」

「そういうこった。分かったらさっさと乗っちまえ」

 言われるがまま、俺達は荷台の支柱に吊るされ、何とも滑稽な様相でトレーラーはゲートを潜った。

 どれくらい走っただろう。暫く時間が経つと、吊るされた状態の俺達は暇を持て余していた。レンジに至っては寝てしまっている。

「しかしこの状態、何も出来ないわね」

「仕方ないよ。荷台に機体は積めても、トレーラーは二人乗りだったし」

「あの馬鹿はこんな状況で良く寝れるわね」

「確かにそうだね。肝が据わってるよ」

「とことん馬鹿なだけでしょ」

「戦いになると心強いんだけどね」

「戦い……ね。一人ではしゃがなきゃいいけど」

 やっぱりハングにも不安はある様だ。敵の数も震源地の状況も不明なんだ。俺だって不安要素が無いとは、とてもじゃないけど言えない。

「そろそろレンジを起こせ。もう近いぞ」

 暗い思考を打ち切る様にキングさんが無線越しに言った。直にトレーラーは停止し、レンジも叩き起こされると、俺達は荷台から降ろされた。眼前には鬱蒼とした森林地帯と山が広がっている。

「この森を抜けた先が目的地だ。気を引き締めて行くよ」

 ジャックさん達も機体を纏い、俺達は山間に踏み込んだ。

「各自異変があったら直ぐに報告しろよ」

 広く警戒を行う為に、全員の視野が被らない様、警戒をして進む。

「しかし、想像以上に緑が深いね。嘗てこの一帯は市街地だったらしいけど」

「そう言や建物の残骸っぽいのも、ちらほら見えるっすね」

「長い年月で完全に植物に飲まれたのね、この一帯は」

「やけに静かですよね。セルも全然見当たりませんし」

 それがかえって不安を煽る。震源地が発生元と言うのも仮説ではあるけど、嫌な予感がしてならなかった。

「そろそろだね。湖が見える筈なんだ」

「そこが震源地、か」

 ジャックさんの言葉通り、徐々に草木は薄くなって来た。そして、開けた場所に到達する。湖だ。

「なに……あれ」

 その異形な光景に誰がも言葉を失った。湖にはセルの外殻を思わせる、黒い棘の様な大きな何かが地面を突き破り、姿を現していたのだ。そして、その棘の周辺には、小型のセルが佇んでいる。目視出来るだけでも二十体以上は確認できた。

「ふっ。これは凄いね」

「仮説立証だな」

「ど、どうするの?」

「どうするも何も、ここまで来て手ぶらでは帰れねぇだろ」

 状況に反して、高揚の伺えるキングさんの声に俺は覚悟を決める。

「今の君達は生身じゃない。幸い相手は小振りなのばかりだ。十分に勝機はあるよ」

 そうだ。今までとは違う。セルとの圧倒的な力の差はもう存在しない。なら、俺達だって。

「勝ちます。その為にここまで来たんだ」

「ゼロ、そう来なくっちゃ。兄貴方、見てて下さいよ! 新型と俺らの力を!」

「調子乗んな。アシストも外せねぇひよっこが。俺とジャックに付いて来い。こっからが死地って奴だ」

 ハングも覚悟を決めたのか、深呼吸をひとつ。

「そうよ、突っ込んで死んだら後世の笑いものだわ。でも、足手まといにはならない!」

「それじゃ行こうか。全員生きて大手を振って帰ろう。戦闘、開始だ」

 ジャックさんの号令を合図に、俺達は一気に森林から抜け出し、湖の畔、僅かに残った市街地跡に飛び出した。

説明
震源地に向かう一行を待ち受けるものとは―――

ゼロ視点でお送りいたします。
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機体 廃墟 地上 ロボット クリーチャー SF 

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