スマブラ Abandon World 41「暗躍する者」 |
「ベヨネッタさん、ごめんなさい……。私が、気付きませんでしたから……」
「私が気付くのも遅かったんだし、お互い様よ」
真っ暗で、何も見えない空間の中。
二本の柱に、カムイとベヨネッタが縛られていた。
「あの、何とかならないんですか? その足にある銃で、縄を切れないんですか?」
「どうやらこの縄は私達の力を封じているみたい。だから、私達では切る事はできないわ」
「そんな……」
「……」
さらに、二人が縛られた柱の隣にある柱に、逆立った金髪の剣士、クラウドも縛られていた。
息はあるものの意識はなく、目を閉じたまま動かない。
彼も安全な場所を探している途中、罠にかかり捕まってしまったのだろう。
二人に向かって、足音が近付いてくる。
足音が大きくなるにつれて、その人物がはっきりと見えてきた。
白と紫のドレスを着た長い耳の女性……間違いなく、ハイラルの王女ゼルダだ。
「ゼルダ……さん?」
「ゼルダ姫……?」
しかし彼女の眼には光が灯っておらず、表情も人形のように無機質だ。
ゼルダはカムイとベヨネッタの声に反応せず、ゆっくりとベヨネッタに近付く。
「ちょっとゼルダ姫、どうし……」
「……ディンの炎」
ベヨネッタが事情を聴こうとしたその時、彼女が縛られている柱に、ゼルダがディンの炎を放った。
「ああぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁぁあああ!!」
ベヨネッタの身体が、みるみるうちに炎に包まれていく。
「熱い、熱い、熱い、熱いぃああぁぁぁぁああ!!」
「貴様は確か、魔女と呼ばれていたな。ならば、その穢れた肉体を聖なる炎で焼こう」
「そん、な……ゼルダ、さん……」
ゼルダが発した言葉に呆然となるカムイ。
スマブラメンバーが、乱闘以外で他のスマブラメンバーを攻撃する事は、あり得ないはずだ。
なのに、ゼルダは今、ベヨネッタを火あぶりにしたのだ。
この異常な出来事にカムイは固まるしかなかった。
「……はっ! ベ、ベヨネッタさん! 今、私が助けますから!」
しばらくして、カムイは我を取り戻し、必死で自分を拘束している縄を外そうとした。
しかし、いくら足掻いても縄は外れなかった。
「無駄だ、その縄は貴様の力では外せない。このまま魔女が炎と共に消えるのを黙って見るがいい!」
「嫌です……ベヨネッタさんは……死なせない!!」
「貴様は黙っていろ!」
そう言うと、ゼルダはカムイに衝撃波を飛ばした。
衝撃波が命中したカムイは意識を失う。
「……アンブラの魔女よ、死ぬがよい……!」
「……っと!」
マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、フォックス、ブラックピットは、どし〜んと着地した。
「この中に仲間がいるんだな」
「クラっち、カムカム、ベヨ姉……」
「死ぬなよ、絶対に死ぬなよ!」
体勢を整え直した後、六人は暗い場所を歩く。
道は見えなかったが、自分の足元はふわふわとしていて、まるで雲のようだった。
「それにしてもここは長いな」
「ああ……本当に長い、な……。一体どこまで続くのだろうか」
「暗い癖にやけにはっきり見えるぜ」
この空間の異質さに、六人は少しうろたえる。
しかし、ここを抜ければ、クラウド達に出会う事ができる。
そう、最後のスマブラメンバーが見つかり、全員で一緒に帰る事ができる。
彼らはそれを信じて、真っ直ぐに道を歩いた。
六人が長い道を抜けると、広間に辿り着いた。
そこには、三本の柱が地面に刺さっていて、柱の近くには人らしきものが見えている。
また、三本の柱のうち、一本は炎で燃えていた。
「あ! まさか、あそこにいるのは……クラっち、カムカム、ベヨ姉!?」
カービィがそう言うと、柱の方に向かってパタパタと走り出した。
「おい、カービィ!」
「相手の罠にも気を付けろよ!」
マリオ達は、走っていくカービィを追いかけていった。
「クラウド!」
「カムイ!」
「ベヨ姉!」
ようやく、六人は柱の近くに辿り着いた。
柱には、クラウド、カムイ、ベヨネッタが縛り付けられていた。
しかも、ベヨネッタが縛られている柱は燃えており、このままでは彼女が焼死してしまう。
「……っ! ベヨネッタを助けるぞ! まずは、あの炎を消すんだ!」
「うん! ウォーターポール!」
「ポンプ!」
「みんなは他の人を助けに行ってこい!」
カービィはベヨネッタの柱に空を飛んで近付き、空中から水の柱を放つ。
マリオも、ポンプを使ってベヨネッタを包む炎を消していった。
消火できる技を持たない他のメンバーは、捕まっているカムイ達を助けようとした。
しかし、リンクがカムイのところに近付いた途端、彼はある人物の姿を見てしまった。
「ゼル、ダ……!?」
それは、スマブラメンバーの一人、ゼルダだった。
「お前が、クラウド達を捕まえたんだろ!? なんでだよ! なんでこいつらを捕らえたんだよ!!」
「……」
リンクは冷静になれずに彼女に叫んだが、彼女は全く反応しない。
「おい、聞いてるのか!? ゼルダ!」
「……」
ゼルダの目には光がなく、虚ろな表情だが、誰かの声に反応するように口を動かした。
まるで、誰かと通信しているかのように。
そして、その通信相手は……。
「まったく、ボクは今、忙しいからね? 捕まえたら好きにしていいよ?」
―御意。
ハオスだ。
彼女に操られているゼルダは、テレパシーでハオスと通信していた。
ハオスはテレパシーによる通信を切ると、ふふふと微笑みながらアスティマと向き合う。
「まさか、ボクを本気で倒しに来たのかい?」
「ええ。私の使命は、世界を救う事。
そして、この世界を滅ぼうとするあなたを倒し、世界を救って見せます!」
アスティマは杖を構え、毅然とした表情でそう言った。
対照的にハオスは微笑んだままだ。
「黒幕を倒して世界を救ってハッピーエンド。そんな“予定通りの結末”、ボクは大嫌いだ」
「予定通りでもなんでも、私は必ず世界を救う! あなたの戯れ言に、私は惑わされない!」
そう言って、アスティマは杖から光を集め、強烈な光と化してハオスに投射する。
ハオスはそれを回避し、闇の刃を大量に作り出しアスティマに放ったが彼女はそれを光で打ち消した。
「アスティマ。ボクを倒せば、世界を救えるとでも思っているのかい?」
「ええ。私が今まで見た事がある異変の結末は全て『黒幕を倒して世界を救い、大団円を迎えた』!」
「だから、今回の異変もこれと同じ結末。キミは、そう思っているんだね」
「……!」
ハオスに図星を突かれ黙るアスティマ。
それでも彼女は怯まず、ハオスに杖を向け、強烈な光の弾を無数に放つ。
「う……っ、痛い……」
「はぁ、はぁ……」
「キミは本当に何も覚えてないようだね。キミがあの時何をしたのか、本当に覚えてないの?
あの時世界を滅ぼしたのは、キミなんだよ?」
「黙りなさい!」
アスティマが振り下ろした杖を、ハオスは片手で受け止める。
「やれやれ……キミって臆病なんだね。自分で世界を滅ぼした癖に世界を救うのは人任せ。
本当に、キミは愚かな人間だよ!」
ハオスは手から黒い闇を放ち、それがアスティマに命中すると彼女の顔が青くなる。
闇に心身を蝕まれているアスティマは苦しそうな表情だが、攻撃をやめる事はない。
「ハ、オス……。愚かなのは、あなたの方ですよ……!」
アスティマは必死でハオスの言葉を否定しつつ、起き上がって杖を構え直した。
「セイントバスター!!」
アスティマは杖から高速の光の衝撃波を放った。
ハオスは避けられずに命中し、大きく吹き飛ばされた。
「まだやる気? まだやる気なの? もう戦いはやめなよ。ボクの負けだ、負け。
さあ、もうここから引くんだ」
「今更、そんな命乞いをするのですか? あなたは多くのヒトを苦しめた。
ヒトや生き物を操り、大切なヒトを消し去った!
これ以上、あなたのせいでヒトが、世界が、苦しむのを見たくないのです!
今度こそ、この世界から消えなさい!! ディヴァイン・パニッシュメント!!!」
アスティマは杖を光り輝かせ、巨大な聖なる光を打ち出す。
聖なる光がハオスに命中して大爆発すると、辺り一面が眩い黄金色に染め上がった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「は……もう……ボクに戦う力はない……! でも、このまま終わるわけにはいかないよ!」
「な……!」
大魔法を放って隙ができているアスティマに、ハオスは掴みかかる。
「さあ、真実を取り戻すんだ! そして、キミが望む救いをもたらすんだ!!」
「い……いやあああああああああああああ!!」
ハオスからにじみ出る闇の力が、アスティマの中に流れ込んだ。
そして闇の力がアスティマに全て入ると、アスティマはだらりと項垂れた。
「はは……もう、大丈夫だよ……!」
そう言い残して、ハオスはこの世から消滅した。
ハオスが完全に消えたのを確認すると、アスティマは虚ろな目でこう呟いた。
「……私は……」
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今回は珍しく(?)オリキャラの出番をつけておきました。 | ||
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