スマブラ Abandon World 43「アスティマの本性」 |
「……」
一面の暗闇の中、ゼルダはぼんやりと外の様子を見ていた。
「これは……何ですか……?」
今、ゼルダはリンク達を攻撃している。
それは当然、彼女が望んでいなかったが、ゼルダは抵抗しようとしても動けない。
「私の身体なのに……誰かに勝手に動かされているようで……気持ち悪いです……。
でも……ここで負けるわけには……!」
ゼルダは必死で、闇の呪縛を解こうとしている。
それは、外での戦いだけでなく、内での戦いでも同じだった。
「お願いです、みんな……。私を、助けてください……!」
もうこれ以上、皆を、リンクを傷つけたくない。
ゼルダの思いは、今、ハオスがかけた闇の呪縛を上回ろうとしていた。
当然、ハオスの力は非常に強かったが、ゼルダの思いも徐々に強まっている。
「リンク……待ってください……。今、私が行きますから……!」
そして、ゼルダがようやく闇の呪縛から解放されかけ、彼女が前に一歩踏み出した時。
―ゼルダ……俺の目を……見ろぉぉぉぉぉぉぉ!!
大切なリンクの声が、聞こえてきた。
そして、リンクの左手がゼルダの右手に触れると、ゼルダは暗闇の中から脱出した。
「ゼルダ!!」
「……ぅ……リン、ク……?」
気が付くと、ゼルダはリンクに抱きかかえられていた。
彼女の瞳には光が戻っており、真っ直ぐにリンクの方を向いている。
「ゼルダ……戻ってきて、くれたんだな……」
「ただいま……そして、多くの罪を犯して、ごめんなさい……」
ゼルダは洗脳されていたとはいえ、リンクを傷つけ、シークを追い詰め、
魔物を使役してハオスに加担した。
彼女は洗脳が解けてからもこの事をはっきりと覚えており、その両目からは涙が出ていた。
「ゼルダ……長い間、暗い闇に閉じ込められていて辛かっただろう。
だが、もうお前は自由なんだ。解放されたんだ。お前に眠る光が、お前を縛る闇に勝ったんだ。
だから、俺はもう……お前を二度と、闇に奪わせない。そして、お前を闇から永久に守ってみせる」
リンクはそう言って、ゼルダをぎゅっと強く抱きしめた。
「しばらく、二人だけにしようか」
「そうね」
マリオ達は、それを温かい目で見守っていた。
「お、元の場所に戻ったぞ」
そして、ゼルダを支配していた闇の力が消えた事により、
この空間も消え、マリオ達は元の場所に戻った。
「これで、スマブラメンバーがみんな集まったね!」
クラウド、カムイ、ベヨネッタを救出し、ハオスに洗脳されたゼルダも元に戻った。
これにより、スマブラメンバーは全員揃ったという事になる……一人除いて、だが。
「後は、どうやって世界を救えばいいのか、アスティマに聞いてみるか」
「アスティマ? 誰だ、そいつは……」
「私も分かりません」
「私もよ」
「ありゃりゃ」
どうやらクラウド達はアスティマの事を知らないらしい。
マリオがアスティマについて話すと、三人は納得したように頷いた。
「だが、アスティマは今いなくなってるんだぞ?」
「きっとラストホープに帰って来てるさ。最後の仲間も助けたんだし、報告しに行こうぜ!」
「ああ!」
マリオ、リンク、カービィ、フォックス、ブラックピット、クラウド、カムイ、
ベヨネッタは意気揚々とラストホープに帰っていった。
しかし、ピカチュウだけは浮かない顔をしていた。
「……なんだか、嫌な予感がする……! 的中してなければ、いいんだが……」
こうして、スマブラ四天王一行はラストホープに戻った。
入り口では、アスティマが杖を持って立っていた。
「ただいま、アスティマ! ほら、この通り最後の仲間もゼルダも助けたぜ!」
「……」
マリオは喜んでアスティマに報告をしたが、アスティマは黙ったままだった。
何が起こったんだ、とクラウドが話しかけようとすると、突然、アスティマがこちらに杖を向けた。
「……アスティマ、何をするつもりだ!」
「……ライトチェーン!」
アスティマはマリオに狙いを定め、杖から蛇のように動く光の鎖を放った。
クラウドはバスターソードでそれを弾き返すと、すぐにそれをアスティマに向けた。
「何が目的だ。そして何故、マリオを狙った」
「まさか、お前……ハオスに操られたのか!?」
「いいえ。マリオさまを攻撃したのは私の意思です」
「何……!?」
あまりに衝撃的な発言に、リンクは驚愕した。
クラウドもアスティマの事を良く知らないが、その顔は度肝を抜かれているかのようだった。
「私はハオスとの戦いで、思い出したのです。
自分が何をするべきか、そしてこの世界を救うためには、どうしたのかを」
「なら、どうやって世界を救うわけ?
信じていた仲間を攻撃した時点で、お嬢ちゃんは救世主として失格よ」
「あなたが何をしたいのかは分かりませんが……マリオさん達を傷つけるなら、私も戦います」
ベヨネッタとカムイに武器の先を向けられたアスティマは、ゆっくりと口を開いた。
「この世界の終わりにして始まりは、ピュアカタストロフでした。あれは……私が生み出したのです」
マスターハンドとクレイジーハンドは、この世界の果てで綺麗な水晶を見ていた。
「完成したんだな、マスターハンド!」
「ああ、ついに完成した。これが人々の思いを力に変える魔導具、コルプネウマだ」
マスターハンドが作った魔導具、コルプネウマ。
それは人々の強い思いに反応して、その思いを具現化するもの。
もし人々が幸福を願ったならば、コルプネウマは本当に幸福を運んでくれるのだ。
「クレイジーハンド、君がいたから私はここまで来る事ができたんだ。
これは、私とクレイジーハンドで作った共同作品だ」
「共同作品……か。ああ、なんだか嬉しいな」
コルプネウマは人々の幸せのためにマスターハンドが作ったが、その後に起きた事は非情だった。
長く続く生活と乱闘のせいで人々の心は倦み疲れ、次第に病み始めていった。
世界を闇が取り巻いていき、そしてその闇に、コルプネウマは反応してしまった。
そして、その結果、ただこの世界を滅ぼすだけの存在、ピュアカタストロフが生まれた。
「なんだ、これは……!」
「あれは人々の心の闇が具現化したもの……。名を、ピュアカタストロフという……」
「何という事だ……マスターハンドの思いが、こんな結果を生んでしまうなんて……」
「ああ……全て私のせいだ……。人々の心を考えずに、こんなものを作ってしまった……。
私が、コルプネウマを作りさえしなければ……!」
突如として出現したピュアカタストロフは、瞬く間に大量の魔物を呼び出し、世界を蹂躙していった。
マリオの死と引き換えに魔物はある程度討たれ、そのままピュアカタストロフも討とうとした。
だが、ピュアカタストロフの力はあまりにも強大だった。
マスターハンドとクレイジーハンドの二柱の神、彼らに付き従った守護者をもってしても、
ピュアカタストロフを倒すまでには至らなかった。
世界は破壊されていき、文明も、世界法則も失われていった。
そこで、クレイジーハンドは世界が完全に消滅するのを阻止するべく、ある行動に及んだ。
「何をするんだ、クレイジーハンド!」
「もう、ピュアカタストロフを止めるためには、こうするしかないんだ!
止めないでくれ、マスターハンド!」
「やめろ……やめてくれぇぇぇぇぇ!!」
クレイジーハンドは、ピュアカタストロフに単身で戦いを挑んだ。
戦いはクレイジーハンドの勝利で終わったが、クレイジーハンドは神としての力を失った。
そして、その余波でマスターハンドも力を失い、
マスターハンドはアスティマ、クレイジーハンドはハオスとして生まれ変わったという。
「……これが、全ての真実です」
アスティマは、全ての真実を語り終えた。
その場にいた全員は、驚きのあまり固まってしまった。
「……アスティマ、これからどうするつもりだ」
「だから私は、ピュアカタストロフを呼び出し、
この世界を完全に破壊した後に、新たな世界を創造するのです!
私の中に残る、マスターハンドの力で……!」
「アスティマ……!」
世界を救おうとするアスティマの眼は本気だった。
そして、彼女が呪文を唱えると、灰色の空があの時のように引き裂かれた。
「後は、時間が経てば、この世界の過去からピュアカタストロフは現れます」
「そんな!」
「また、破滅を起こす気か……!? あれほど破滅は防ぎたいと言ったのに……!」
「何とか、復活を止めなきゃ!」
「なら、お前を倒してピュアカタストロフとやらの出現を止めるまでだ」
覚悟を決めたクラウドはバスターソードを構えた。
「お前の事はよく分かっていないが……こいつらは、俺が守る!」
スマブラメンバーとアスティマの戦いが始まった。
説明 | ||
ついに、ヒロイン・アスティマの「本当の目的」が明かされます。 | ||
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