Under Of World ZERO 第17話-差異-
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「全く。シラクチに挑むなんて、とんだ命知らずも居たもんだ」

 黒煙を吐き、重低音を鳴らし続ける機械から、酷い音質で少年の声が発せられた。

「ありゃあ有人機なのか」

キングさんが構えを解かず言う。

「どうやらそうらしいね。しかも都市の人間じゃないだろう」

「え。どういう事よ、それ」

「まさか、地上で生きている人間ってことですか?」

「そうなるだろうね」

「そんなの有り得るんすか」

 信じ難いけど、眼前の有人機が現実を物語っている。でも核戦争が起こったのは史実の筈だ。それにセルだって蔓延っていただろう。

「まあ、相手は人間だ。話も出来そうな相手だしね。やあ、我々は地下都市の地上探索部隊の者だ。お互い聞きたいことは色々とあるだろうけど、場所を変えないかい?」

 ジャックさんは戦闘態勢を解き、機械の搭乗者に声を掛けた。

「成る程、地底人か。本当に居たんだね。まあいいや。付いて来なよ」

 彼はそう言うとどこかへ向かい動き始めた。

「行くのか? ジャック」

「うん。彼は何か知っている。それにキングの治療もしたい」

「そうっすね。ビビってても仕方ないし、行きましょう」

「セルもいつ襲ってくるか分かりませんしね」

「俺はまだ動けるが、機体が不味い」

「強がっちゃって」

「うるせぇな」

 一先ず俺達は、警戒しながらも彼の後に続いた。暫く移動し、行き着いたのは辛うじて形を保っている廃校だった。彼は校舎の入り口近くに機体を止めると、頭部と思しき箇所がハッチの様に開き、そこから地面に降り立った。掛けていたゴーグルを首に下げた彼を見るに、俺と変わらないか、それ以下の歳頃の少年だ。背丈は小さく、ボロボロのツナギを着ている。

「君達も降りたら? そのままそうしていても仕方ないっしょ」

 彼に促され、俺達も機体を降りた。

「先ずは危ない所を助けてくれてありがとう。それで君は何者なんだい?」

 ジャックさんが彼に尋ねる。

「僕はハイロ。何者って言われても困るなー。特に目的を持って何かをしている訳じゃないし。強いて言えばサバイバー? かな」

「さばいばー? てかそれは何なんだよ」

 レンジは彼の乗っていた機体を指さした。

「ああ、これ? 僕達はファントムって呼んでるけど、意味はよく知らないや」

「達ってことは貴方以外にもまだ人がいるの?」

「そりゃあいるさ。この辺には僕とドクターくらいだけど、もっと西の方へ行けばいくつか集落があるよ」

「こいつは驚いたな」

「えっと、そのドクターって言う方は誰なんですか?」

「ああ、そうだそうだ。上にあがろっか、僕の相棒を紹介するよ。君達の知りたい様な事は、ドクターの方が詳しいだろうから」

 俺達はハイロに連れられ、校舎に足を踏み入れた。中は柱や壁が所々補強されている。ひび割れたコンクリートの階段を上がり、廊下を端まで歩くと、彼は一室の扉を開けた。室内には大きなテーブルが幾つか並んでいて、隣の部屋との壁が崩れたのか、縦長の広い一つの空間が広がっていた。奥はカーテンが閉じられていて、薄暗くよく見えない。

「ドクター。お客さんだよー。地底人だよー」

「地底人?」

「まあ、あながち間違ってないでしょ」

「そうだね、地下に住んでる訳だから」

 ハイロの声に応え、部屋の奥から白衣の男が姿を現した。

「これは珍しいお客さんだ。私はラヴァ。ドクターでも構わない」

「初めまして。私は地下都市の地上探索部隊で取りまとめ役をやっているジャックと言います。お会いして早々に悪いんですが、医療設備があればお借り出来ませんか?」

 ラヴァと名乗った男はジャックさんの言葉を聞き、息が荒くなってきているキングさんに目やった。

「成る程、大したものは無いが一階にちょっとした医務室がある」

「感謝します。レンジ、頼めるかい?」

「うっす」

「悪いな……」

 レンジがキングさんに肩を貸し、部屋を後にした。やはりキングさんは相当無理をしていた様だ。大事に至らなければいいけど。

「ハイロ、彼らに椅子を。ジャックさんと言ったかな?」

「敬語は結構だよ。堅苦しいのはどうも好きになれなくてね」

「はは、ではお言葉に甘えて。私もかしこまるのは得意じゃない」

「はいどうぞ」

 俺達はハイロから背もたれの無い簡素な椅子を受け取り、目の前のテーブルに着いた。

「それで、地下都市から来たと言ったね? 詳しく聞いても?」

「そうだね、掻い摘んで説明させて貰うよ」

 ジャックさんは地下都市の事や、ナラクの事、それに俺達が習って来た史実なんかを簡単に話した。

「なんかファンタジーみたいな話だな。本当に地下にでっかい都市があるなんて」

 ジャックさんの話を聞き終わったハイロが言う。

「私達からすれば今の地上の現状の方がファンタジーよ」

「地下都市……か。興味深い」

「それじゃあ次は私達が話を聞いてもいいかな?」

「ああ、そうだな。何が聞きたい?」

「地上に起こった全てを」

「そうか。良いだろう」

 そして俺達は知ることになる。多くの人類が地下へ潜っていた百年の歴史を―――

説明
危機的状況に現れた謎の機体の正体とは――――?

ゼロ視点でお送りいたします。
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機体 廃墟 地上 ロボット クリーチャー SF 

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