新ビーストテイマー・ナタ21
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アークは握った拳をゆっくりと開きました。爪が刺さって掌に出来た傷を見つめながら話を続けます。

 

「私はゲイザー様がテオドール様に首をはねられた時、助けることができたのに見殺しにしたんです」

 

「それは過去の話だろう?今のアーク殿はそんなことはしない」

 

「いいえ、おそらくは今の私も同じことをします」

 

「テオドールもおそらくは…ギルバートに何か弱みを握られていたのだろう?」

 

「ええ、恋人の花屋の看板娘であり、現アラヴェスタ王妃が人質に取られていたのです。身重だった恋人のお腹の中にはテオドール様の子供もおりました…」

 

「それでは逆らえなくても仕方がないだろう」

 

「テオドール様は恋人とお腹の子の為にあなたを手にかけ、私はそれを見ているだけで助けませんでした」

 

「別に軽蔑するような内容ではないが?」

 

「私は…あなたがいなくなれば良いと思っていたのです。そうすればナターシャ様の愛は私が独り占めにできると思っていました」

 

「無理やり聞いたりして悪かったが、昔話はこの辺にしておこう。手がかりを探さなくては」

 

「ゲイザー様はこんな話を聞いて腹が立たないのですか?」

 

「テオドールがどんな思いで私の首をはねたのかもわかるし、それを見ていたアーク殿の気持ちもわかるような気がする」

 

「それだけではありません!私はゲイザー様がギルバート様に一度倒された際、ゲイザー様が殺されるかもしれないのをわかっていながら、見捨てて逃げることを選択しました」

 

「あれは結果的に上手く行ったから問題はなかったと思うが?」

 

「あの時、私はあなたが死ぬのを望んでいたような気がします」

 

「考えすぎだろう?あの時のアーク殿の行動には何の落ち度もなかったと思うが…」

 

「しかしあなたが死んでしまった後、過去の世界は崩壊してしまった。あなたがいなくなると人類は滅亡してしまいます」

 

「やはりこの書物は見るべきではなかった…。私のミスだ。申し訳ない。他を探そう。手伝ってくれないか?」

 

…つづく

説明
書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第21話です。
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