新ビーストテイマー・ナタ23 |
アークは大きな樹の絵の描かれたページに目を止めました。
「この幸せの樹と言うのは、もしかしたら…」
「それが願いの叶う金のリンゴのなる樹か?」
「紹介文には樹の前に恐ろしい番人がいる、との記述もありますし、おそらくは…」
「ナターシャはどこへ連れて行かれたのかわかるか?早くフラウの元へ戻らなければ…」
「多分ミカエル様の自室だと思われます」
「急いで案内してくれ」
ミカエルの部屋の前に来るとナタが楽しそうに話しているのが、ドアの外にも聞こえてきました。
「ナターシャは無事だったか…。私の取り越し苦労で良かった」
「ミカエル様がナターシャ様に何かなさるとお思いでしたか?」
「いや、アーク殿のことを見守っておられるお方だ。ナターシャにも手荒な真似はしないと思っていたよ?ただ下級天使は信用できるかわからない」
「確かに下級天使は上級天使よりも人間に近い存在です。天使は神が造られた使い魔ですし、人間は神が自分に似せて造られた愛玩用ペットだったようですから…」
「先ほどの昔話を聞いた限り、天使も人間とさほど変わらない思考をするようだなと思ったので少し不安に駆られた」
「他の天使たちも私のような邪悪な心を持った者だと思ってしまわれたのでしょうか?」
「そうではない。アーク殿がアカデミーにいた頃にいじめを受けていたと聞いたからだ」
「私がいじめを受けたのは…おそらくミカエル様から特別な愛情を注がれていると勘違いされた為でしょう。ミカエル様は誰に対しても分け隔てなく愛情を注がれているのですが…」
「なるほど、天使と言うのは純白の布のようなものか?人間のように薄汚れた布ならば、汚れは目立たないが、純白の布だと汚れが目立つ」
「ゲイザー様はまるでミカエル様のように深いお考えをされるのですね。私のような邪悪な考え方をする者には真似できないです」
「ミカエル様ほどではないよ?それに私はどちらかと言うと邪悪な思考をしている。以前アーク殿に盗みを働かせたりしたから、ミカエル様からお叱りを受けるかと覚悟していたのだが…ミカエル様の懐の深さを実感したよ」
「あれは元々、私がナターシャ様を唆してピーターを売らせたりしなければ…。諸悪の根源は私自身なのです」
ゲイザーたちの話し声に気づいてナタがドアを開けました。
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第23話です。 | ||
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