新ビーストテイマー・ナタ56
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ゲイザーは処罰に関する書類を手早く作成して判を捺印しました。そして詰所の控え室で待たされている騎士団員の前で読み上げます。

 

「下記の者を一週間の謹慎処分とする。反省文を四百文字詰めの原稿用紙に五枚書いて提出する事。以上」

 

「ゲイザー様…。妻は今、身重で私が騎士団を解雇になると路頭に迷ってしまいます…」

 

「解雇にはしませんよ?奥様には一週間のバカンスをもらったとでも言いなさい。その間、身重の奥様を大事になさってください」

 

「本当ですか?あ、ありがとうございます!」

 

「今後、このような失態がないように、他の者も注意するように!では私の後任は前回と同じく、よろしくお願いします」

 

「はっ!ゲイザー様に敬礼」

 

騎士団の詰所から帰宅する途中もアークはしつこく食い下がってきました。

 

「私が上官ならあの者は処罰しません!こんな事をしていたら、ゲイザー様に対する不信感が強まります」

 

「私の悪口を言っている者が多いのは知っていますよ?毎日アラヴェスタ・タイムスには目を通していますが、政治評論家が言いたい放題です」

 

「このままではゲイザー様の事を誤解して謀叛を起こす者も現れるやもしれません」

 

「私は政治評論家に対する反論の演説を何度も街頭で行なっていますよ?私の支持者も少ないですがいます。死刑廃止後に犯罪率はむしろ下がっている。釈放後の再犯も減りました。そんなに私が無能だと罵るなら、評論家など辞めてあなたが幹部に立候補しなさい、とね…」

 

「悪質な評論家たちをなぜ野放しにしているのです?彼らを罰するべきでしょう!」

 

「言論の自由を奪う事は出来ません。言いたい事があるなら誰でも自由に言えば良い。ただし私の反論に対して論理的に議論できるならば…ですけどね」

 

「ゲイザー様と議論出来る者はごく僅かの限られた者だけだと思いますが…。ほとんどは一方的に罵るだけで、解決策は出さずにダメ出ししているだけですからね」

 

「そう言う意味ではアーク殿は貴重な存在ですよ。私に意見を言ってくれるのはアーク殿以外にあまりいませんからね。上官の間違いを正せるのが良い部下であるとフォン様も仰ってました」

 

「私も天界にいる頃によくそう思ってました。みんな神の言葉に頷くだけで、反対する者はいないのです。もしいたとしてもユダ様のように謀叛を疑われます。ゲイザー様は神を超えているのかもしれません…」

 

「アーク殿は私を過大評価し過ぎですよ…。私は頭があまり良くありません。ナターシャやユリアーノ様の方が遥かに頭脳は上でしょうね」

 

「ゲイザー様は頭脳明晰であられます。なぜご自分を過小評価なさるのですか?ゲイザー様の頭脳より、私の頭脳の方が遥かに劣っていると言うのに…」

 

「ナターシャは十ヶ国語を解読可能ですし、ユリアーノ様はあの複雑な迷宮の道を一度行っただけで記憶なさっていた。私には到底、無理です」

 

「ナターシャ様とユリアーノ様も頭脳明晰だと思います。おそらく得意分野の違いだけでしょう」

 

「私はハッタリをかますのが得意なだけです。本当は頭が悪いのにまるで良いように見せかけて、敵を撹乱するのが私の特技ですから」

 

…つづく

説明
書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第56話です。
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