新ビーストテイマー・ナタ57 |
手を挙げて街中を走る馬車を停めると、ゲイザーとアークは乗り込みます。
「例えハッタリだとしても、妖精界に入国する際に妖精の騎士団長を説得なさったのは、素晴らしかったです」
「あれは別に…普通に話していたら、騎士団長殿が入国を許してくださっただけなので、心の広いお方だったのでしょう」
「あの騎士団長はカタブツで有名なのです。なかなか心を開かないので、天使族でも犬猿の仲である者もいるくらいですよ?」
「そうなのですか?そう言えばナターシャに会った時も私にはすぐ心を開いていたが、人間には心を開かない子だとユリアーノ様は仰っていて、なぜなのだろう?と思っていました」
「ご自分の巧みな話術に気付いておられないとは…。あれを計算なしでやっておられるのでしたら恐ろしい人ですよ」
「私は計算は苦手なのです。文化系でしたので絵を描いたり音楽を奏でる方が好きな子供でした」
「絵や音楽は頭が良くなくては出来ない事ですよ?むしろ計算の方がバカでも出来ます」
「私には計算が出来る方が頭が良いように感じますが…。絵は何も考えずによく見て描いてるだけですし」
「計算など一度公式を覚えれば誰でも解ける。私から見たら計算が出来ても全くすごいと思いません」
「うーん、いくら褒められても私は自分がすごいとは思えないのです」
「あの騎士団長を一度怒らせたら、鎮められた者はほとんどいません。ゲイザー様は騎士団長の怒りを鎮めて、気に入られていました」
「私が気に入られていた?」
「おそらくはゲイザー様があの騎士団長の言葉を全て受け止めたからです。私が天界でパニックを起こした際にも鎮めてくださいましたし」
「あの時は私もどうしようかと思いました…」
「きちんと向き合って話すと言うのは、案外難しいものです。大抵の者は相手を理解しようとせず、逃げ出したり黙り込んだりします」
「人間よりも妖精の方が私は話しやすかったですけどね。ストレートに言葉をぶつけてくれたので。人間のように奥歯に物の挟まったようなものの言い方をされる方が苦手です」
「ゲイザー様は相手を信じて心を開き、相手を理解しようと努力していたから、妖精の騎士団長も心を開いてくださったのでしょう」
「私は妖精について何も知りませんから、郷に入れば郷に従えと言うので、妖精の国の掟を知りたかっただけなのです。我慢強く私の相手をしてくださった、騎士団長殿には感謝しています」
アラヴェスタとマルヴェールの国境付近で馬車を降りて徒歩で帰りました。
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第57話です。 | ||
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