新ビーストテイマー・ナタ58 |
翌朝早くにレッドドラゴンに乗って妖精界に来ると、世界樹の上空で妖精の騎士団長が現れました。取り囲んで弓を構えている妖精の騎士団員もいます。
「お前はこの前の獣人か?確か名前はゲイザーだったな…」
「覚えていてくださいましたか。今は人間に戻っています。知恵の実を食べましたので」
「まあ、オベロン様もお前たちならお会いになるだろう。しかしなんで人間に戻ったりしたんだ?獣人の方が人間より優れているだろう?」
「私も獣人のままでいようか悩んでいたのですが、妻が子供を産みたいと悩んでいたので…」
「なるほど、獣人は子供を産めないからな…。今日は何の用で来たんだ?」
「実は長寿の薬が必要なのです」
「なんだと!お前も妖精を捕まえて長寿の薬を作るつもりなのか?見損なったぞ!」
「ち、違います!この子が願いの叶う樹の実をたくさん食べ過ぎて、ほって置くと死んでしまうのです…」
ゲイザーは胴にしがみ付いているナタの頭に手を回して撫でながら言いました。
「願い事をたくさん欲張るとそうなるんだよ?自業自得だろ!」
「ナターシャはまだ十六の子供です。正しい判断が出来ない事もあります」
「チッ!仕方ねぇなぁ…。でもお前に一つ言っておく。妖精の粉を取るのはな、妖精にとって身を削ってるんだぜ?」
「身を削って…と言いますと?」
「人間にもわかりやすく説明してやるよ?お前の手足をもいで、寄越せと言ってるも同然なんだよ!」
迷路のように入り組んでいる、絡まった太い枝の道を奥まで案内されます。
「それにしても…何度見ても美しい国ですね。この樹の躍動感ある畝りは芸術的ですよ」
「人間のお前にもわかるのか?」
「しかし不思議です。なぜ我々が歩きやすい構造になっているのか?妖精には翅があるので、このような道は必要ないはず…」
「人間がたまに遊びに来るから、人間にも歩けるように作ってあったんだ」
「やはり妖精は人間と仲良くしたかったのですね」
「でも妖精が人間を大事に思ってても人間は妖精を大事にしないのに、こっちだってもう人間を大事にしたくなくなるだろ!」
「確かにそうですね…」
「お前は他の奴らと違うって思ってたのに…。ボクが出会った中では一番良い人間だったよ」
「私は良い人間ではありませんよ?妖精が人間を嫌う理由もよくわかります。私は人間だからこそ人間の嫌な部分をたくさん知っています」
「だから良い人間だと思った。自分は良い人間だと言う人間は良い人間ではないからさ?人間を信じて騙されて酷い目に遭わされて、もう人間なんか信じたくないんだよ…」
「私のことも信じないでください。いつあなたを傷つけるかわからないですから…」
「最初は人間の怪我や病気を治してやってたんだ。だけど人間はなぜか妖精を殺そうとして、恩を仇で返された気分だったよ」
「同じ人間として申し訳なく思います。謝って済む問題ではないですが、本当にすみません」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第58話です。 | ||
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