新ビーストテイマー・ナタ59
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オベロンのいる玉座の間までやってきました。樹の屋根があって外からは見えず、護られている場所です。若い魔導師の姿のユリアーノを見て、オベロンは顔をしかめています。

 

「ん?お前は…ユリアーノか!」

 

「若返りの桃を食べたのです。オベロン」

 

「ふむ、して今日はわしに何用だ?」

 

「弟子のナターシャが寿命を縮めてしまったようなので、妖精の粉をわけて欲しいのです…」

 

「十五年前にわしの作った新しい掟は知っておるかな?ユリアーノ」

 

「人間の為に妖精の粉を使ってはならない…」

 

「よくわかっておるじゃないか?掟は破る事はできん」

 

「そこをなんとか…。私に出来る事なら何でもしますので」

 

「ならん!掟は絶対だ」

 

「お師匠様。私、別に明日死んでも良いよ?」

 

ナタは淡々とした口調で言いました。その表情は死に対する恐怖を微塵も感じていないようです。

 

「ナターシャ、なんでそんな事を言うんだ?」

 

「だって私、死にたかったんだもん」

 

「ナターシャ!死にたいなんて言ってはいけない」

 

「私にはお友達なんて誰もいないの。仲良しだった妖精のお友達もいなくなっちゃったし…」

 

「ジョルジュやピーターがいるだろう?」

 

「ジョルジュやピーターの声、昔は聞こえてたんだけど、大きくなったら聞こえなくなっちゃった。私とは喋りたくないのかも?」

 

「違う!それはナターシャが大人になったからだよ?」

 

「私の周りからみんないなくなっちゃうの。アークにもフラれちゃったし、もう生きてても何も楽しい事がないよ?」

 

「ナターシャ様、私はフッてなどいません…」

 

「まさか…お前は死ぬ為にお菓子の実を食べていたのか?」

 

「うん、死ぬのって痛そうで怖いから、ずっと出来なくて…。でもお菓子を食べるだけなら怖くないよ?」

 

「お願いです。ナターシャ様!自殺しようなんて、もう考えないでください…」

 

「私、学校でもずっといじめに遭ってたの。みんな心配するから黙ってたけど」

 

アークはナタの身体を抱き締めると大粒の涙をボロボロと溢しました。

 

…つづく

説明
書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第59話です。
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