裏ビーストテイマー・ナタ19
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獣人は人間より腕力も素早さも上でした。特に元マルヴェール国王のフォンの強さは突出しており、騎士団員が五人がかりで襲いかかっても薙ぎ払われてしまいます。フラウは一番後ろで待機していたので、まだ手を汚してはいませんでした。アラヴェスタ騎士団は幹部二人を残して壊滅しました。

 

「ギルバートとテオドールは私が殺します…」

 

「はっ!フラウ様、あちらに捕らえてございます」

 

「お前がフラウか?噂に違わぬ美しさだな…。カタブツのゲイザーが惚れるのも無理はない」

 

「褒めても何も出ませんよ?ゲイザー様の親友でありながら、裏切った罪は重いです。テオドール、あなただけは決して許しません!」

 

「言い訳に聞こえるかもしれないが、許して欲しい。ゲイザーを裏切るつもりはなかった…」

 

「許せるわけがないでしょう!あなたが裏切らなければ、ゲイザー様は…」

 

「私の愛する女が人質に取られていたんだ。だから…」

 

「だから何です?私は愛する人を失いました」

 

「後悔しているよ…。どうすればゲイザーを死なせずに済んだか、ずっと考えていたが何も思いつかなかった」

 

「言い残したい事はそれだけですか?テオドール」

 

「本当にすまなかった…。それ以外にはもう言う事は思いつかない…。出来れば生きて妻と生まれてくる子供を幸せにしてやりたかった…。だが、これも私の運命なのだろう…」

 

フラウはテオドールの首を締め上げて殺してしまいました。

 

「こんな事をしても私の哀しみは消えない…」

 

続いて命乞いをするギルバートとアラヴェスタ国王の首を締め上げて、フラウは合計三人を殺害したのです。その顔には何の躊躇いもなく、命を奪った事に対する罪の意識も感じていません。

 

「この国は今日から我々、獣人が支配する事になった!新国王にはこのわし、フォンが就く事とする。アラヴェスタ国王は傍若無人の限りを尽くし、目に余るものがあった。我が同胞であるゲイザーの命を奪った罪は万死に値する…」

 

城の前でフォンが演説をしています。人間たちは恐怖に縮み上がっていました。城の前に遺棄された騎士団員の遺体を遺族たちが引き取りに来ています。

 

「テオ!どうしてこんな酷い事を…」

 

「あなたがテオドールの恋人ですか?あなたのせいで私の愛する夫は殺されたのです…」

 

テオドールの遺体の前で泣いている娘にフラウが声をかけます。

 

「あなたにテオの何がわかるの?テオはあなたの夫を殺してしまった事、ずっと後悔していたわ!それを…なぜ…わかってくれないの…」

 

「あなたには謝罪の言葉はないのですか?被害者は私の方なのですよ?テオドールは最後まで謝っていました。謝っても許すつもりはありませんけど…」

 

「私はあなたを許さない!私の愛する人を奪った…。絶対に許せない!この悪女め」

 

「私もあなたの恋人に愛する人を奪われたの。絶対に許せないのは同じ気持ちです」

 

「ここまで人を憎んだ事はないわ!あなたを殺してやりたい…」

 

「私もここまで人を憎んだのは初めてですよ?テオドールを何百回…何千回…いえ、何万回殺しても、永遠に許す事など出来ないでしょう」

 

…つづく

説明
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第19話。
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