裏ビーストテイマー・ナタ26
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アークがナタの部屋に戻るとロレインがナタの寝顔を見ながら泣いていました。

 

「ロレイン様、どうなさいましたか?涙が…」

 

「あの子の小さかった頃を思い出していたの。本当に可愛かったわ。もうあの子はこの世にいないなんて…。今でも信じられない」

 

するとアークが突然、ロレインを背後から抱き締めました。

 

「あなたの傷ついた心をお慰めしたいです…」

 

「ビックリしたわー。天使さん、優しいのね」

 

「ロレイン様はとてもお美しいお方だと思います」

 

「からかわないでちょうだい。息子より若い男が、こんなおばさん本気で相手にするわけないでしょ」

 

「人間は肌と肌を合わせる事で幸せを感じるのだと習いました。天使とは幸せを届ける存在ですので」

 

「あら、天使ってそんなサービスもしてくれるの?知らなかったわー」

 

「人間の愛はエロスですが、天使の愛はアガペーです。人間は相手を自分のものにしたがりますが、天使は相手を自分のものにしたいと思いません」

 

「言ってる事が難しくて、おばさんにはよくわからないわ」

 

「エロスとは性欲を意味する言葉ではありません。なぜかそのように曲解されている人間が多いですが…」

 

「私もずっとそうだと思っていたわ」

 

「エロスとは求める愛。アガペーとは与える愛の事です。ですから私が性的な行為をするのはアガペーに当たります」

 

「わかったような、わからないような…」

 

「ロレイン様が望むなら私は愛を与える事が可能です」

 

「うーん、人間の愛と天使の愛は価値観が違うのね…」

 

「人間の価値観については随分詳しく習ったのですが…。アカデミーでは人間の心理学を専攻していました。ミカエル様の個人授業でも人間の感情についてのお話がほとんどでした」

 

「あのね、あなたは私よりもかなり年下の男性でしょう?普通はあなたみたいに若い男の人はこんな年上の女性にそんな事、言わないものですよ?」

 

「こう見えても私はロレイン様より遥かに年上なのですけどね…。天使は人間より寿命が長いので老いるのも遅いのです」

 

「年上だったの?ゲイザーより若く見えたわ」

 

「ゲイザー様も私より二千歳ほど年下ですね」

 

…つづく

説明
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第26話。
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