裏ビーストテイマー・ナタ33
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四年前、フラウは寝室で一人、自分を慰めていました。

 

「はぁ…ゲイザー様…今頃どこか別の世界で…生きていて…私と同じ顔をした…私ではない誰かを…その胸に抱いているのですか?」

 

何度、自分で自分を慰めても満たされる事はありませんでした。

 

「ああ、もう耐えられない…。別の世界の自分に嫉妬してしまうわ…。毎晩のように夫から愛されて…幸せに暮らしているなんて!ううっ…こんな生活いつまで続けなくてはならないの」

 

抱き枕を獣人の鋭い爪で引き裂いて、羽毛を部屋中に撒き散らします。

 

「もう、嫌!死にたい…。死んだらラクになれるのに…。どうして生きなきゃいけないの?」

 

フラウは真夜中にフラフラと夜の街に出て行きました。

 

「ねぇちゃん、美人だね。いくらだい?」

 

「いくらに見えます?」

 

「うーん、二万かな?」

 

フラウが立ち去ろうとしたので男は食い下がりました。

 

「すまん!五万ならどうだ?五万でも足りないって言うのか?じゃあいくらなら良いんだ!」

 

「お金などいりません。私をめちゃくちゃにしてください」

 

「ただで良いのか?こいつはラッキーだぜ!」

 

フラウが見知らぬ男と宿屋に入ろうとしているところで、アークが男の肩に手を置きました。

 

「すみませんが、私の連れなんです」

 

「ゲッ!旦那に見つかったか?」

 

男は慌てて逃げて行きました。フラウは家に連れて帰ろうとするアークの手を無理やり振り払います。

 

「どうして邪魔するんですか?」

 

「自暴自棄にならないでください。様子がおかしかったので跡をつけてきました…」

 

「私なんかもうどうなっても良いんです…。ほっといてください!好きにさせて…」

 

「あなたの身分を考えてください。この事がもし公になればスキャンダルになります…」

 

「そんな事、もうどうでも良いわ…」

 

「それなら私がお相手します。行きましょう」

 

「えっ…、ちょっと待ってよ?アークとするなんて嫌よ!」

 

アークがフラウの手を引っ張って無理やりフロントに連れて行きました。金貨を数枚カウンターに置くと、フロントが釣り銭の銀貨とルームキーを渡します。

 

「宿代は私が出します。少し手持ちがありますので…」

 

「こんな事をして、許されるはずがないわ!」

 

…つづく

説明
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第33話。
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