田舎村のゲオルグ邸は綺麗だった庭園も手入れされず、雑草が生い茂っていました。野良猫や野良犬がたくさん棲みついています。ロレインが植木鉢の下の鍵を見つけて家の中に入ると、ゴミが散乱していました。とても人が住んでいる家とは思えません。まるで廃墟のようです。

「ゲオルグはどこへ行ったのかしら？姿が見えないわね…」

「無事でおられると良いのですが…」

突然ゴミの山が崩れて中からホームレスのような汚い男が現れました。

「ゲ、ゲオルグ！…なの？」

「ロレインの幻が見える…。わしはもう死んでしまったのか…」

「お父様！ご無事で何よりです」

「はて？見知らぬ女神様も見える…。わしを天国から迎えに来てくれたのか？」

「申し遅れました。私はフラウ・マルヴェールと言う名でゲイザー様の妻です」

「ゲイザー？あいつはアラヴェスタで死んだと聞いたのだが…」

「ゲイザーは死にました。私の目の前で首をはねられて…」

「クソッ！あいつは最後の最後まで親不孝な息子だった…」

「お父様、ゲイザー様の家に来てくださいませんか？」

「ゲイザーの家だと？そんなもんどこにあると言うんだ！」

「獣人の国です。私はマルヴェール王国の女王をしています。お父様が移住してくだされば、死んだゲイザー様もお慶びになると思います」

「あいつが喜ぶもんか！わしの事を心底嫌っておったからな…」

「どうしましょう？ゲオルグはマルヴェールには行きたくないみたいね…」

「わしの家族たちもみーんな連れて行けるって言うなら行かない事もないが…」

「家族たち？この家に他に家族の方がおられるのですか？」

「おるだろうが？犬や猫がたくさん」

「あの野良猫や野良犬はあなたが拾って来たんですか？しょうのない人ねー。犬や猫は一匹だけにしてって何度も言ったでしょ？」

「きっと寂しかったのですね。わかりました。全員、連れて行きましょう」

嫌がる犬や猫を捕獲して馬車に積めるだけ積み込みました。

…つづく