裏ビーストテイマー・ナタ63
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アークはリズを家まで送ってあげました。この日はもうお別れのキスはせずに帰ります。

 

「もうルシファーにキスやハグをしてもらえる事はなくなるのね…。残念だわ」

 

夜空に消えて行くアークを見送りながら、リズは呟きました。部屋に入るとサルバドールの寝顔を見てホッとします。

 

「ごめんね、サル…。あなたの新しいパパになってくれるような人を頑張って探すわ。ルシファーは既婚者だから、パパの代わりにはならなかった」

 

家に帰って来たアークは、いつものように風呂に先に入りましたが、今日のうがいは短時間で終わりました。ナタは膝を抱えてソファーにうずくまって待っています。ご機嫌斜めなのが、心眼ですぐにわかりました。

 

「こんな時間までどこに行ってたの?アーク」

 

「仕事で遅くなりましたが、やっと全部片付きました」

 

「私ね、本当はわかってたの。感覚共有の呪いがあるから、アークが浮気してるって事」

 

「浮気はしていません。私はナターシャ様一筋です。フォン様から秘密諜報員の任務を受けていて、とある女性を説得していたんです」

 

「なんかアークすごく嫌そうにエッチな事してたんでしょ?帰って来たらうがいしまくってたし」

 

「本番はしていませんよ?キスとハグだけで済ませました」

 

「それでも嫌なの!アークが他の女とキスとかハグとかしてるって思うと、気持ち悪くなってくる…」

 

「申し訳ありません…。やはり感覚共有の呪いは、解除された方がよろしいかと思われます。ナターシャ様が苦しむところは見たくありません」

 

「確かに気持ち悪い事もたくさんあるけど、使い魔がピンチの時にわからないのも嫌なの…。だから呪いはそのままにしておくよ」

 

「私の事が信じられないのでしょうか…。浮気は絶対にしませんので、呪いを早く解除してください。お願いします」

 

「これだけは残すって決めてるの!使い魔が生きてるかどうかもわかるし、この呪いがなかったら死んでてもわかんなくなるんだよ?」

 

「ゲイザー様の死に際の苦しみも疑似体験なさったのでしょう?並の精神力では耐えられるものではありませんよ…」

 

「私もっと怖いものもたくさん見てきたから、全然平気だよ?」

 

「もっと怖いもの…と言いますと?」

 

「お師匠様に挑んで来た自称勇者たち、ほとんどお師匠様の返り討ちにあってたの」

 

「あの塔は攻略が難しそうでしたよね…」

 

「うん、百人いても一人か二人くらいかな?生きて昇って来れた勇者は…」

 

「なるほど、他の勇者は皆さんお亡くなりになったわけですか?ご愁傷様です」

 

「だから死体とか見慣れちゃってるの。一歳の頃から見てたから。お師匠様も無表情で片付けてるし」

 

…つづく

説明
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第63話。
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